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【風まかせ文芸部】『7月32日 #2』【ホラー】

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    ​ようこそ、皆さま。セイウチです。

    今日も波打ち際を歩いていたら、少し湿ったガラス瓶がひとつ、足元に打ち寄せられていました。

    ​中に入っていたのは、ある編集者に届いた一通の手紙……いえ、漂流記のようです。

    どうやら、カレンダーの数字が少しだけ狂ってしまった世界の記録みたいですよ。

    ​アナタの元にあるカレンダーは、今日、何月何日を指していますか?

    温かいコーヒーでも飲みながら、ゆっくりとお楽しみください。

    ​それでは……ボトルを開けてみましょう。


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    ​

    8月1日。

    2日連続の徹夜作業で、私の眠気は限界に達していた。
    雑然とした編集部デスクのパソコン脇に、一通の封筒が置かれている。
    中には一枚の写真が入っていた。
    どこにでもあるような、静かな四ツ辻の道祖神が写っているだけだ。
    裏返してみると、拙い文字でこう書かれていた。

    ​『◯◯村入り口より 7月32日』

    ​「……はは、またタチの悪いイタズラか……」

    ​限界を迎えた頭で呟き、私は写真を胸ポケットに押し込むと、逃げ込むようにソファへ横たわった。

    ​
    ◇

    ​妙に明るく、のどかで、けれど何とも言えない不穏な空気が漂った場所に立っていた。
    目の前には、あの写真に写っていた四ツ辻の道祖神。

    ​(……◯◯村の入り口か。嫌な夢だな)

    やけに意識がはっきりしている。
    頬をつねってみたが、やはり痛みはない。

    (なんだ、やっぱり夢か)と胸を撫で下ろした。
    ​村の中へ足を踏み入れると、一人の老人が縁側に座って休んでいた。

    「すみません、少々お尋ねしたいのですが……」

    ​話しかけようとした私の視線が、老人の脇にある日めくりカレンダーに釘付けになった。
    そこにははっきりと、太い文字で印字されていた。

    ​——『7月32日』

    ​「……冗談ですよね? 今日は8月1日ですよ」」

    ​そう口にした瞬間、老人はカッと目を見開き、半狂乱になって私にしがみついてきた。

    「お前、外から来たのかぁ!? 頼む、ワシを外へ連れていってくれぇーっ!!」

    ​老人の絶叫が響き渡ると、村のあちこちから地鳴りのような足音と叫び声が近づいてきた。

    「ワシも連れていけぇー!」
    「外へ!」
    「置いていかないでくれぇー!」

    ​「うわああああっ!」

    恐怖に耐えかね、私は老人を振り払って入り口へ向かって一目散に走った。
    背後から迫る、大勢の悲痛な叫び声から逃れるように、必死に足を動かす。

    ​(だ、誰か助け——)

    ​ーープツン。
    テレビの電源が切れたように、目の前が漆黒に染まった。

    ​
    ◇

    ​「おい! 大丈夫か!?」

    ​肩を激しく揺すられ、飛び起きる。
    目の前には心配そうな顔をした同僚の姿があった。
    荒い息を吐きながら辺りを見回す。
    見慣れた編集部の風景。

    ​「あぁ……夢か……」

    ​身体中の汗をぬぐい安堵する私に、同僚が苦笑いしながら言った。

    「すごい魘(うな)されてたぞ。……ん?」

    と同僚は床に落ちていたモノに目が行き、それを拾い上げた。
    それは……例の写真だった。
    寝ている時に胸ポケットから落ちたのだろう。

    「床に写真が落ちてるぞ」

    同僚から例の写真を手渡されたが、あまり見たくはない。
    見たくはないが妙な好奇心が湧き上がり、怖いもの見たさでゆっくりと写真に目を落とす。
    表面には寝る前に見た四ツ辻の道祖神が写っているだけだ。

    (なんだ、ただの夢だったんだ。)

    深く息を吐き出し、念のため写真をひっくり返す。
    ​その瞬間、私の思考が凍りついた。

    裏面の文字が……変わっている。

    ​固まる私の見開いた耳元に、同僚がゆっくりと顔を近づけ、不敵な笑みを浮かべて囁いた。

    ​
    ——「ようこそ、7月32日へ」



    (了)



    ※この物語はフィクションです。
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    最後まで読んでいただいてありがとうございます!

    まさかの続編です(笑)。
    どうしても繋げて書きたかったので💦
    思いついたのなら仕方ないですよね??

    また、企画に参加できたらなと思っています。
    本当にありがとうございました!!


    毎週火曜日に自分の作品を投稿、企画に参加させていただく時は不確定的に投稿しています!

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    寄せては返す波打ち際で、流れ着いたボトルメッセージを拾い集めるセイウチです。 ​ここに並ぶショートショートや日記は、すべて海が運んできた「誰かの漂流物」。 いつかあなたの心に届く言葉が見つかりますように。 ゆっくりしていってください。

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