メインコンテンツへスキップ
見出し画像

【風まかせ文芸部】『炭酸 — 縁側のラムネ』【青春】

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


    ようこそ、皆さま!セイウチです。

    今日も冷たいお気に入りのコーヒーを片手に、誰かが海に託した「物語」を解き明かしてみようと思います。

    ​今回拾い上げたボトルメッセージには、ひとつの短い夏が閉じ込められていました。

    アナタの心にも、シュワッと小さな泡が弾けるような懐かしい風が届きますように。

    ​~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




    ​小さい頃、炭酸飲料が苦手だった。

    ​口の中でパチパチとはじける感覚が痛くて、「大人になれば飲めるようになるのかな」なんて本気で考えていたっけ。

    ​「ねえ、今日も暑くない?」

    ​団扇(うちわ)で首元をパタパタと煽りながら、幼なじみのあいつが欠伸(あくび)を噛み殺す。

    ​背が少し伸びて、声がちょっと大人びて。
    一緒にいるのが当たり前すぎて気づかなかったけれど、僕たちの時間は少しずつ、確実に進んでいる。
    そんなことをぼんやりと考えていた、夏休みの終わりのこと。

    ​「ねえ、喉乾いた。なんか買ってこようよ」

    ​あいつの提案に乗り、僕たちは近所の駄菓子屋へ向かった。

    ​
    ​夏も後半、夏休みももうそろそろ終わる。

    ​いつもの駄菓子屋で、お菓子とラムネを2本買って帰り、家の軒下の縁側で並んで座った。

    ​「せーのっ」

    ​合図に合わせてラムネのビー玉を押し込む。
    しゅわっとあふれ出てくる炭酸に慌てつつ、僕たちは顔を見合わせて笑いながら口をつけた。
    ​昔はあれほど苦手だった炭酸も、この夏の日に飲むとシュワシュワして気持ちがいい。

    ​「あー、美味しかった!」

    ​ラムネの瓶を置き、今までのことやこの夏休みの思い出を振り返ってひと通り話したあと、あいつがふっと息を吐いた。

    ​「……アタシ、来週都内に引っ越すんだぁ」

    ​唐突な告白だった。

    ​「……え!?」

    ​急な話に僕が驚いていると、彼女は少し遠くを見つめながら続ける。

    ​「親が都内に転勤するんだってさ。それで……」
    ​「……そっか。両親の都合じゃ仕方ないよね」

    ​ショックを隠すように、ぎこちない笑顔で答える。
    気持ちを落ち着かせようと、もう一度ラムネの瓶に手を伸ばそうとしたその時——
    ​あいつが、僕の手をそっと握りしめた。
    ​視線を上げると、そこには真っ直ぐな眼差しで僕を見つめる彼女がいた。

    ​「だから、最後の思い出を作ろうと思って……」

    ​あんなに騒がしかった蝉の声も、この時だけはピタリと静まり返った。

    ​軒下の縁側で、まるで時間そのものが止まってしまったかのような沈黙が流れる。

    ​勢いで言った自分の言葉に、あいつは急に恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤にして慌てて目をそらした。
    握られた手から、熱が伝わってくる。
    ​手もとにあったラムネのビンを、大きな水滴がゆっくりと伝い落ちる。
    ​真夏の太陽に照らされてキラリと光り、瓶の中で弾けた炭酸が、小さくシュワっと音を立てた。



    (了)

    ※この物語はフィクションです。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



    最後まで読んでいただいてありがとうございます!


    今回、二度目の企画となります。
    そして、初めて「恋愛青春モノ」を書きました!
    かなり難しかったです💦
    ですがいい経験になりました。(作品のような経験はありませんが……)
    楽しんでいただけたなら幸いです。
    そして、参加させていただきまして本当にありがとうございます!

    毎週火曜日に自分の作品を投稿、企画に参加させていただく時は不確定的に投稿しています!

    気に入った方は是非スキやフォロー、シェアしてもらえると嬉しいです。


    ↓こちらの企画に参加させていただきました!


    ↓前回参加させていただいた企画


    ↓今までの #風まかせ文芸部 企画参加 作品集


    現在連載中❗『世界でいちばん遠回りな呪いの殺し方』 〜10年かけて俺を殺すはずの黒羽さんが、婚姻届を出してくるまで〜
    ↓TALESリンク↓


    ↓自己紹介リンク


    #風まかせ文芸部
    #ショートショート
    #波打ち際の漂流記
    #小説
    #青春
    #恋愛
    #夏の終わり
    #エッセイ風小説
    #切ない
    #創作

     
     
    寄せては返す波打ち際で、流れ着いたボトルメッセージを拾い集めるセイウチです。 ​ここに並ぶショートショートや日記は、すべて海が運んできた「誰かの漂流物」。 いつかあなたの心に届く言葉が見つかりますように。 ゆっくりしていってください。

    あなたへのおすすめ