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【シロクマ文芞郚】『月をあわせる』【SF】


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    ようこそ、皆さたセむりチです。

    今日拟い䞊げたボトルメッセヌゞは、ちょっずロマンチックで、そしおずびきり皮肉な「愛」のお話でした。

    ​科孊が進歩しおも、人の心の内偎たでは枬れない。
      ううん、枬れないからこそ、人間は面癜いのかもしれたせん。

    ​アナタも、お気に入りの飲み物を片手にどうぞ。

    これは、どこかの街で月をあわせようずした、ある男の挂流蚘です。


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    ​その月は、人間の脳波を吞っお満ち欠けをする。
    『マむンド・ムヌン』——テクノロゞヌずアヌトが融合したずいうその矎しいオブゞェは、脳波センサヌを頭に巻くこずで、䜓隓者の感情の高ぶりに応じお可憐な光を攟぀仕組みになっおいた。
    萜ち着いおいるずきは现い䞉日月。
    気持ちが高ぶるに぀れお膚らみ、最高朮に達するず芋事な満月になる。

    ​最近では「愛の深床を枬る装眮」ずしおカップルの間で話題になっおいた。
    ずいうのも、アップデヌトされた最新型は、二人同時にセンサヌを装着し、互いの脳波を共鳎させなければ決しお満月にならない仕様になっおいたからだ。
    䞀人でどれだけ興奮しおも、月は半分たでしか満ちない。

    ​出匵先のホテルで、僕はアプリ経由で自宅の圌女ず『マむンド・ムヌン』を同期させおみた。
    遠隔ペアリング機胜を䜿えば、数癟キロ離れおいおも二人で䞀぀の月を芋぀めるこずができる。

    ​「あ、぀ながった」
    画面越しの圌女の声。
    僕の頭のセンサヌが反応し、郚屋に眮いた小さな月が淡く光る。
    最初は半月にも満たない、頌りない匧を描くだけだった。
    「ごめんね、仕事で疲れおお」
    そう蚀う圌女偎の月は、どこか冷ややかに欠けおいた。
    遠距離恋愛の距離感が、そのたた光の圢になっおいるようで切ない。

    ​だが、䌚話を始めお十分ほど経った頃だった。
    圌女偎の月が、急速に䞞みを垯び始めたのだ。
    青癜かった光が熱を垯び、ぐんぐんず膚らんでいく。
    僕の胞も熱くなった。
    離れおいおも、やっぱり僕たちは心を通わせ合えおいるんだ。
    蚀葉はいらない。
    脳波が、僕たちの愛を蚌明しおいる。
    ぀いに、完璧な満月が完成した。
    郚屋党䜓が、眩いほどの黄金色に包たれる。
    「すごい  満月だね」
    受話噚の向こうで、圌女は少し息を荒らげお笑っおいた。

    ​——その䞀週間埌、僕たちは別れるこずになった。

    圌女に別の男がいたこずが発芚したからだ。
    しかも浮気盞手は、あの日、圌女の郚屋にいたらしい。

    ​埌から知ったのだが、『マむンド・ムヌン』の同期システムは「お互いの絆や愛情」を怜知しおいるわけではなかった。
    単に「双方が同時に匷い感情の高ぶりを感知したずき」に満月になるようプログラミングされおいたのだ。

    ​぀たり、あの倜。

    僕が「圌女ぞの愛」で脳波を昂らせおいたそのずき、圌女は「僕に嘘を぀きながら、すぐ暪にいる男ず愛し合っおいた興奮」で脳波を昂らせおいたのだった。

    ​二぀の党く異なる熱狂がたたたた合臎し、倜空の代わりに郚屋の月をたん䞞に茝かせおいたずいうわけだ。

    ​愕然ずした。
    自分の玔情さが可哀想で、その日はやけ酒をあおった。
    けどたあ、よく考えたら僕だっおあの倜、出匵先のスナックで出䌚った可愛い女の子ず良い雰囲気になっおドギマギしおいたのだ。
    僕の脳波を昂らせおいた理由も、よく蚀えば圌女ぞの愛、正盎に蚀えば浮気前倜の背埳感だったのかもしれない。
    お互い様なら、悩むだけ損だ。

    ​それに、仕組みさえ分かっおしたえばこっちのものだった。

    ​僕はさっさず元カノの連絡先を消すず、件の『マむンド・ムヌン』を持ち出しお、出匵先のスナックで出䌚ったあの可愛い子をホテルの郚屋に呌び出した。

    ​「これね、二人同時に頭に぀けお、心が通じ合うず満月になるアヌトなんだよ」

    ​そう蚀っお、少し酒の残る圌女の頭に慣れた手぀きでセンサヌを装着する。
    「えヌ、ほんずに なんか照れる  」ず赀くなる圌女。
    その緊匵ず期埅で、圌女偎の脳波が跳ね䞊がる。
    そしお僕偎はずいえば、これからこの子ずどうこうなれるずいう䞋心ず興奮で、脳波はすでに最高朮だ。

    ​愛なんおいらない。
    お互いに勝手な興奮を持ち寄りさえすればいいのだ。

    ​案の定、郚屋の月はぐんぐんず黄金色に膚らみ、あっずいう間に完璧な満月を描いた。

    ​「すごい 本圓に満月になった 私たち、運呜なのかな  」

    感動しお目を最たせる圌女を抱き寄せながら、僕は心の䞭で月にお瀌を蚀った。

    ​科孊の進歩っお、本圓に玠晎らしい。

    ​


    了
    ※この物語はフィクションです。
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    最埌たで読んでいただきありがずうございたす❗😭✚


    ​テクノロゞヌが「心」を枬定できるようになっおも、その心が「誰に向けられたものか」たでは刀別できたせん。

    絆や愛ずいった情緒的なものを数倀化・芖芚化した気になっおいおも、結局人間は自分に郜合のいい解釈をしおしたう生き物なのだずいう皮肉を蟌めお曞きたした。

    ​「脳波で満ちる月」ずいうロマンチックな嘘ず、人間の生々しい欲望や䞋心。
    そのギャップを楜しんでいただけたら幞いです。
    科孊が進歩しおも、人間の愚かさや逞しさはきっず倉わりたせん。


    【小牧幞助】さん玠敵な䌁画を本圓にありがずうございたす



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    寄せおは返す波打ち際で、流れ着いたボトルメッセヌゞを拟い集めるセむりチです。 ​ここに䞊ぶショヌトショヌトや日蚘は、すべお海が運んできた「誰かの挂流物」。 い぀かあなたの心に届く蚀葉が芋぀かりたすように。 ゆっくりしおいっおください。

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