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【風まかせ文芸部】『線香花火』【コメディ】

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    ようこそ、皆さま!セイウチです。

    今日も波の音と一緒に、誰かの想いが僕の元へ届きました。
    ​
    今回皆さまにお届けするのは、この世界を回す、ある「神様」の日常のお話です。

    ​指先で爆ぜる、小さな小さな命の灯火。
    その輝きが尽きる時、一体何が起こるのでしょうか。

    ​それでは、僕と一緒にボトルの中を覗いてみましょう。

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    ​神様の日課は、実にシンプルだ。

    片手に小さな線香花火をかざし、もう片方の手でクルクルと青い地球を回す。
    ただそれだけの作業である。

    ​その花火の先端で赤く爆ぜる橙色の火玉こそが、人間たちの言う「太陽」だった。

    ​地球上の季節が変わるのは、地球の公転だの自転の傾きだののせいではない。
    すべては神様のその日の機嫌と、気まぐれな思いつき次第なのだ。

    ​ポカポカと暖かい春になると、神様は機嫌がよくなって手元をフワリと緩める。
    すると、やわらかな日差しが地球を包み込んだ。

    「いやあ、春は陽気で心地がいいねえ」

    気分を良くした神様は、地球を回す手つきも軽やかになる。

    ​だが、夏になると一転する。
    手元の火玉から伝わるあまりの熱気に神様はウチワを取り出し、バタバタと自分を扇ぎはじめた。
    その扇ぎ起こした猛烈な風と熱気が地球に吹きつけ、人間たちは「猛暑だ、酷暑だ」と大騒ぎすることになる。

    ​秋が訪れると、神様は読書に夢中になった。
    地球を回しながら片手でページをめくり、手元の線香花火を読書灯代わりに本へと近づける。
    その絶妙な距離感のおかげで、地球には夜長を照らす秋の穏やかな光がもたらされるのだった。

    ​そして凍える冬。

    「うぅ、寒い寒い……」

    ​身を縮こませた神様は、暖をとろうと線香花火の火玉にグッと顔を近づける。
    吐く息で火を消してしまわないよう、片手でそっと包み込むようにして暖をとるため、地球にはキリリと冷たい空気と、かすかな陽光だけが届くことになる。

    ​こうして地球の四季は、神様の気ままな日常によって巡っていた。

    ​しかし、この世界には人間たちの知らない重大な危機が、日常茶飯事として潜んでいる。

    ​神様も長く生きていると、作業中にどうしても強い眠気に襲われることがあるのだ。
    神様は眠気で頭をコックリコックリと前後に揺らしながら居眠りをして指先の線香花火をグラリと揺らす。
    火玉がポロリと落ちそうになるたび、神様はハッと目を覚まし、間一髪で手元を引き戻す。
    人間たちが「日食だ!」と大騒ぎしている裏で、神様は「危ない危ない、冷や汗が出たよ」と胸を撫で下ろしているのだ。

    ​またある時は、宇宙のホコリが鼻に入り、大きなくしゃみが出そうになる。

    「……っハ、……ハックション!!」

    ガタガタと腕が大きく揺れ、火玉は今度こそ指先から滑り落ちそうになるが、神様は決まってギリギリのところで踏みとどまる。

    ​「ふぅ、なんとか今日も持ちこたえたぞ……」

    ​神様は額の汗をぬぐい、安堵の息をつく。
    だが、指先の線香花火を見つめる神様の表情は、少しだけ引きつっていた。

    ​火玉はすでにプツプツと細かく爆ぜ、いつ落ちてもおかしくないほど重たく膨らんでいる。
    線香花火の命が、そろそろ終わりに近づいているのは誰の目にも明らかだった。

    ​神様はゴクリ……と唾を呑み込み、落ちそうな火玉をそっと見つめながらつぶやいた。

    ​「……これ、あとどれくらい持つんだろうなぁ」



    (了)

    ※この物語はフィクションです。
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    最後まで読んでいただいてありがとうございます!


    今回のお題『線香花火』ということで、「太陽=線香花火の火玉」という発想がポンっと浮かび勢いで書き上げてみました♪
    神様の人間味あふれる仕草と終盤の静かな緊迫感のギャップを楽しんでいただけると幸いです。

    【i】さん今回も素敵な企画をありがとうございます!


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    寄せては返す波打ち際で、流れ着いたボトルメッセージを拾い集めるセイウチです。 ​ここに並ぶショートショートや日記は、すべて海が運んできた「誰かの漂流物」。 いつかあなたの心に届く言葉が見つかりますように。 ゆっくりしていってください。

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