
【アマノ文筆クラブ】『武藤さんは甘くない』【コメディ】
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ようこそ、皆さま! セイウチです。
お気に入りのコーヒーを淹れて浜辺で一休みしていたら、足元にひとつ、小さなボトルが流れ着きました。
中にあったのは、読んだ後に少し口の中が甘くなるような、可愛らしい放課後のお話です。
アナタのコーヒーのお供に、ぜひ読んでみてくださいね。
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武藤さんは甘くない。
物理的にも、精神的にも、青春の甘酸っぱさすら一切感じさせない女子高生だ。
媚びない。群れない。頼らない。
校則スレスレまで崩した着こなしなんて絶対にせず、ビシッと着こなしたブレザー姿。
放課後、女子たちが「〇〇君ってかっこよくない!?」とキャッキャ盛り上がっていても、
「顔面の造形と期末テストの点数には何の関係もありません」
と、絶対零度の冷や水をぶっかける。
リアリストでドライ、口を開けばハバネロ並みに辛口だ。
クラスでの評価は「孤高のクールビューティー」「男前すぎる」。
しかし同時に、「隙がなさすぎて怖ぇ」「男子を全員論破しそう」と男子からは遠巻きにされ、本当はただの不器用で意地っ張りな強がりなのに、困っていても「武藤なら一人で大丈夫でしょ」と放置されていた。
完全に損な性格である。
だが、私は知っている。
いや――私だけが知っている!
あれは先週、放課後の部室棟の裏手でのことだ。
日陰になった物陰で、武藤さんが周囲を不審者のようにキョロキョロ見回していた。
普段のクールな雰囲気はゼロ。
「怪しい計画でも企てているのか?」と気になって物陰から覗き込んだ私は、衝撃の光景を目撃する。
彼女が制服のポケットから取り出したのは、ドピンクのパッケージに首をかしげたイチゴのキャラクターが踊るパックジュース。
『超・激甘!いちご練乳ミルクセーキ』と書かれた、女子小学生すら躊躇するレベルのファンシーな一品だ。
武藤さんは震える手でストローを刺すと、誰にも見られないよう勢いよく吸い上げる。
『ちゅーーーーーーっ!!』
「……んふぅううう、あま~い……っ!!」
崩壊した。
あの「絶対零度の氷の女王」の顔面が、一瞬で溶けたマシュマロのようにふにゃふにゃになった。
頬をピンクに染め、トロンとした目でパックを大事そうに抱え、足をジタバタさせて悶絶している。
さらにポケットから『とろけるチョコブラウニー(追い練乳つき)』を取り出し、一口でパクリ。
「ふあぁ……生き返る……放課後の糖分最高……」
うっとりと天を仰ぐその横顔に、いつもの凛とした面影は1ミリも残っていない。
あまりのギャップと奇行に、私は物陰で膝から崩れ落ちそうになった。
学校生活も、人間関係も、口から出る言葉も一切甘くない武藤さん。
でも、誰もいない放課後のスイーツタイムだけは、劇薬級に甘いのだった。
(了)
※この物語はフィクションです。
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最後まで読んでいただきありがとうございます❗😭✨
強がりで損ばかりしてしまう武藤さんですが、放課後のあの数分間だけは、誰にも邪魔されない至福の時間です。
甘いものでMPを回復して、また明日からブレザーをビシッと着こなす彼女の日常を、少しだけ覗き見したような感覚を楽しんでいただけていれば幸いです。
【甘野 充】さん本当に素敵な企画ありがとうございます!
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