
掌編連作【今日も平和に愛でてます】25.「いつもの」
「いつもの」
奏斗くんに淹れてもらったコーヒーを飲む
いつも同じ味で美味しい
ほっとして染み渡る味
インスタントコーヒーを作る時
奏斗くんは
いつもちゃんとスプーンで計って淹れる
私は…
いつも適当に目分量で
マグカップに粉を入れてる
作り方から安定感が違う
もちろん、インスタントじゃないときも
風味は安定しているように思う
奏斗くんが淹れるコーヒーたちは
一言で言えば
“美味しい”
のである
一方、自分で淹れるコーヒーは
目分量で作るだけあって
その時の味を
“楽しむ”
のである
どちらも好きな私のコーヒータイム
でも…
別にお店じゃないし
そんなきっちり私のコーヒー作らなくて
いいんだよ?
と思う時もある
だから、この前聞いてみた
「奏斗くん…
奏斗くんって
レシピ見てる時もあるけど
料理は目分量で作ってる印象…
だけど…
コーヒーはいつもちゃんと計ってるよね?」
すると…
「あー…うん
確かにそうかも…
あの〜…そうだねぇ…
…あんまり意識してなかったなぁ
でも、なぎも
どうせなら安定した美味しいコーヒー
飲みたいでしょ?
あ、てか、なぎも
俺に淹れてくれる時は
コーヒー計ってるじゃん?
あー…でも、自分のは
バーってそのまま瓶からマグカップに
ダイレクトに入れるよね
あれ、はじめて見た時
おったまげたね」
笑いながらの返答
それに対し
私は
「…申し訳ない…」
と、ごにょっと呟いて俯く
「んふっ…
あれって、いつも同じ味になるの?」
思ってもなかった
奏斗くんからの質問
(…確かに)
そう思って一瞬の沈黙…
「…ならない
奏斗くんの言う通り
目分量なんで
味は毎回…たぶん…違う…」
自分の答えに疑問符が付く…
“気にしてなかった”
それが正直な答えである
でも、きっと…
「ぅえ!?
どういうこと??
たぶん って?
え…飲んでますよね?」
ほら…
奏斗くんの…
理解を超えた
返事になってしまったらしい
奏斗くん、すごい考えてる顔してる
「ふはっ!
そんなに考えることじゃないよ」
と笑って奏斗くんに伝える
「目分量で入れてるから
当然、味は一定じゃない…
でもね
私はその変化も“楽しむ”の
その時の味を楽しむ…
まぁ、インスタントでも
余程じゃないと
めっちゃ不味いコーヒーにならないよ
それに、目分量なので
濃いや薄いをその時の気分で
調整しやすいの」
ちょっとドヤ顔で
困惑中の奏斗くんに返す
「んふっ、濃さの調整は
計っててもできますよ
あー、そっかぁ
“楽しむ”かぁ…
いいね、それ!
今度、俺のも目分量で淹れてよ」
奏斗くんが
無邪気な笑顔で
リクエストしてくれる
「う……それは…」
今度は私が困惑…
「え?…」
奏斗くんも困惑
2人で困ってても仕方ないので答える
「あのー…奏斗くんからしたら
私の目分量は不味いと思います…
引かれたくないので
ちゃんと計らせてもらいます…」
ペコっと頭を下げて
リクエストを却下させていただくと
「ふははは!
なんだよ、それ〜
なぎの目分量コーヒー飲めると
思ったのになぁ
あ、俺が淹れるコーヒーは?
いつも一緒の味だと思うけど
それは楽しめてるの?」
残念そうにしながらも
あっさりと引いた奏斗くん
その状況に
少しホッとして
「うん、もちろん!
いつも同じ味ってのは
“安心”があるし
奏斗くんが淹れてくれたなぁって
思えるもん
私のと違って
いつも間違いなく美味しいし…
これ以上の楽しみある?
最高だよ!」
笑顔で上機嫌に答える私
ふと、奏斗くんが顔を背けた
え……
あ…
奏斗くんの耳が赤い…
え…?
ん?…なんかしたかな…
そんなことを
笑顔を残したまま
考えてると
奏斗くんが
「あー…あれだね!
あの〜…こういう話してるとさ
コーヒー飲みたくなっちゃった
なぎも飲む?」
と言いながら
キッチンに駆け込んで行った…
「え、あ、お願いします!」
慌てて答える
少しして
キッチンには
コーヒーの香りを漂わせだした
奏斗くんの背中が見えていた
ーfinー
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