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掌編連作【今日も平和に愛でてます】26.「うちがわ」

    「うちがわ」



    今日は休日

    休日といえど
    やるべきことは山積みで…

    自室の椅子に腰掛けて
    天井を仰いでいると

    コンコン…

    ドアをノックする音がした

    「は〜い…」

    返事をしてドアを開けると
    奏斗くんが
    マグカップを持って

    「コーヒー淹れたけど
    飲む?」

    「あ、うん…
    ありがとう…
    せっかくだから
    そっちでいただきます」

    そう笑顔で応えて
    奏斗くんから
    コーヒーの入ったマグカップを
    受け取ると
    リビングのソファーへと向かう

    山積みの現実に背を向け
    ほっと一息…

    ソファーに座った後
    マグカップのコーヒーを
    いただいた

    …

    …

    ん?

    コーヒーをまた一口飲む

    …
    …
    あれ?

    また一口、コーヒーを含む

    …んー?

    マグカップの中のコーヒーを見つめる

    確かにコーヒーの色…
    …色?
    今日のマグカップは
    藍墨色の焼物
    …たぶん
    いつもと同じ色だとは思う…

    そう考えながら
    コーヒーを飲み進めていく

    …

    …

    ちゃんとコーヒーの香りはする

    …

    …

    私、疲れてる?
    …風邪引いた?

    …

    奏斗くんが淹れてくれたのに…

    え…

    もしかして…

    感染るやつ?

    え?
    どうする?

    え?
    ほんと?

    のど痛くないよ?

    熱?

    …

    マグカップを
    そっとテーブルに置き
    自分の額や首に触れる…

    んー…わかんない!!

    隣でカフェオレを
    飲んでいる奏斗くんの首筋に
    反対の手のひらを当てる

    「んぐっ!
    ぷはっ…なに!?
    どうした?
    吹き出すかと思った…」

    奏斗くんが驚いて答える

    「え…?
    え?」

    私の手は忙しなく
    自分の額や首、頬と
    奏斗くんの額や首筋、頬を
    行ったり来たりしだした


    …たぶん
    熱なさそう…
    えっと…じゃぁ…
    なんだろ…
    味覚なくなった!?

    頭の中の思考が止まらないまま
    怖くなり…
    動揺を隠しきれなくなって
    奏斗くんに伝えた

    「…奏斗くんが
    淹れてくれたコーヒーなのに
    …味があんまりしないの」

    もう涙が溢れ出そう…
    変な病気かな…

    不安と動揺の中…

    奏斗くんが
    慌てて
    マグカップをテーブルに置いて
    空いた両手で
    私の肩を包んだ

    「あぁ!
    ごめん…ごめん!
    これは俺が悪い!!
    あの〜…」

    そう勢いよく話し出した奏斗くんは
    途中で、なぜか顔を逸らして
    堪え笑いをしだした

    「いや…
    クッ…いや、笑ったら失礼だね
    ごめん、こんな顔をすると思わなくて…」

    はい…?
    なんで、奏斗くん、謝ってるの?

    私の頭はより混乱する

    心の困惑が
    そのまま顔に出る…

    「あ、いや〜…
    んふっ…ふふ…
    はぁ〜…
    だめだね、ごめん、ほんとごめん!
    俺が悪いの
    なぎは大丈夫!
    風邪、引いてないと思う!
    少なくとも、今はきっと大丈夫!
    コーヒーの味だよね?
    味、薄かったよね?」

    奏斗くんは
    笑いを堪えるのと
    説明するのに忙しそう…

    なんか…
    状況が理解できたかも…

    奏斗くんが隣で
    饒舌な説明を始めた

    「あの〜…
    前にさ…
    なぎは
    目分量で入れたコーヒーの
    味の不安定さを楽しむって
    言ったじゃない?」

    うん…
    確か前にそんな話した気がする…

    「その話を今日思い出してさ
    その〜…
    あ〜…ちょっと俺も
    やってみようかなって…」

    私は奏斗くんに
    話を聞いている合図として
    冷たい視線を送りつつ
    マグカップを手に取り
    残りのコーヒーもどきを
    飲み始めた

    「あ、いやね…
    ほんと、ごめん!
    そんな顔すると思ってなくて
    なぎを横で見てたら
    こんなことになっちゃった…」

    コーヒーもどきを
    飲みきった時

    「なぎ、ごめん!
    いやね、俺も自分のカフェオレ
    めっちゃ牛乳じゃん!!って
    思ってたのよ
    だから、なぎのコーヒーも
    薄いんだろうなって
    どうしようかなぁ〜って
    一緒に飲み始めてから
    思ってたのよ
    ほんと、ごめん!
    不安になったね…」

    「んふっ…
    めっちゃ牛乳って思ってたんだ
    そのカフェオレもどきに」

    奏斗くんの必死な弁明を
    聞いているうちに
    笑いが込み上げてきた

    「もう!
    ほんとに心配になった!
    奏斗くんに感染る風邪だったら
    どうしよって焦った!
    でも…」

    真実を知って安心
    真実を知って怒り
    真実を聞いて…
    焦ってたのは
    私だけじゃなかったと知る…

    「奏斗くんの
    初めての目分量コーヒーは
    珍事件でした
    色だけコーヒー
    ご馳走様です…
    はぁ…
    私
    すごい想像力働いちゃったよ
    コーヒー一つで
    こんなに自分が狼狽えるなんて…
    んふっ…
    これはこれで
    楽しめたね」

    笑いながら
    謝り続ける奏斗くんに伝えた

    奏斗くんは
    「すみませんでした!
    …参りました!」
    事件の犯人のような
    セリフを言って
    ほっとした顔で
    私の顔を見た

    そして…

    「俺、熱あった?」

    ニヤリとした奏斗くんに
    私の手から放たれたクッションが
    直撃した


    ーfinー 



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    よし

     
     
    頭の中の映像を言語化・視覚化できるよう言の葉を紡いでいく作業をしたく思い、始めました。 創作に作者の影響は否めません… 共感や興味を持っていただけたら幸いです。

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