
⚖️ 第3話・完結「喉頭展開は、本当に消防隊員にはできないのか?」―救急隊員、兼任救急隊員、そして「救急の技術」をどう生かすのか―
お疲れ様です🍵
あおぞらです🌤️
ここまで、
第1話では、
「救急車が来るまで、何ができる?」
という問いを。
第2話では、
「消防車にも喉頭鏡を積んではどうか?」
という、あるベテラン救命士の提案を取り上げました。
そして今回は、このシリーズの完結編です。
少しだけ視点を変えて、
「そもそも、消防隊員と救急隊員の境目って何なのだろう?」
というところから、調べてみたいと思います。
🔎 まず、「救急隊員」って誰?
私は以前、
「救急隊員」という言葉を聞くと、
当然ながら、
救急車に乗っている隊員
を思い浮かべていました。
でも、消防庁の資料を調べてみると、少し違うことが分かります。
令和7年版消防白書では、
救急隊員には、専任の救急隊員だけでなく、
「救急隊員としての辞令が発せられているが、ポンプ自動車等他の消防用自動車と乗換運用している兼任の救急隊員」
も含まれるとされています。
つまり、
「消防車に乗っている=救急隊員ではない」
と単純に線を引くことはできないわけです。
ここは、今回の話を考える上で、とても大切なところだと思います。
🚒 「消防車に乗っている人」の中にも……
現在の消防では、
専任の救急隊員だけでなく、
兼任救急隊員
という形で活動している職員もいます。
さらに消防庁によると、令和7年4月1日現在、
救急隊員としての資格要件を満たす消防職員は約13万9千人。
そのうち約6万8千人が救急隊員として救急業務に従事しています。
また、より高度な応急処置を実施できる250時間の「救急科」を修了した消防職員は約9万2千人で、そのうち約3万3千人が救急隊員として救急業務に従事しています。
ここから見えてくるのは、
消防職員の中には、救急に関する教育を受けた人がかなり多くいる
ということです。
もちろん、
「救急科を修了したから、消防隊として何でもできる」
という意味ではありません。
そこは、はっきり分けて考える必要があります。
🔦 では、「喉頭鏡」はどうなのか?
ここが今回の核心です。
消防庁の「救急隊員の行う応急処置等の基準」を確認すると、
一定の救急隊員が行う応急処置として、
「喉頭鏡及び異物除去に適した鉗子等を使用して吐物及び異物を除去する」
ことが明記されています。
つまり、
喉頭鏡を使用した異物除去そのものが、救急業務の中で想定されていない技術というわけではありません。
むしろ、
救急隊員が行う応急処置の一つとして、
明確に位置づけられています。
📝 そして、もう一つ興味深いことがありました
消防庁の「救急業務に携わる職員の教育指針」を見てみると、
兼任救急隊員の教育項目の中に、
「喉頭展開・異物除去」
が入っています。
しかも、
「口腔内清拭・吸引・咽頭異物除去」
「用手気道確保」
「BVMによる人工呼吸・胸骨圧迫」
「除細動」
などと並んで、
実技教育の項目として示されています。
これを見たとき、
私は少し考えました。
🤔 では、なぜ「消防車にも喉頭鏡を」という話が難しいのか?
ここまで調べると、
「じゃあ、消防車に積めばいいじゃないか」
と思ってしまいそうです。
でも、
そこが今回の話の難しいところです。
大切なのは、
「喉頭鏡を使える技術を持っているか」
だけではありません。
誰が使うのか。
その人は、どのような立場なのか。
どのような教育を受けているのか。
その技術を維持する訓練をしているのか。
どのような活動基準で使用するのか。
医療との連携はどうするのか。
そして、
その消防本部で、どのような運用をするのか。
こうしたことを一つひとつ考える必要があります。
⚖️ 「資格」と「技術」は同じではない
ここは、救急に携わった経験がある方なら、
きっと分かっていただけると思います。
資格を持っている。
教育を受けた。
だからといって、
いつでも、どこでも、同じ処置ができるわけではありません。
救急活動では、
教育、
訓練、
活動基準、
メディカルコントロール、
組織としての運用、
そして個人の技術維持。
こうしたものが重なって、
初めて安全な活動につながります。
消防庁の教育指針でも、救急業務に携わる職員について、継続的な知識・技術の維持向上や、組織として教育の機会を確保することの重要性が示されています。
だからこそ、
「救命士だからできる」
でもなく、
「消防隊だからできない」
でもない。
私は、ここに今回の答えがあるように思います。
🚑 救急救命士の気管挿管を考えてみる
少し話を大きくしてみます。
現在、救急救命士には、一定の条件のもとで気管挿管などの特定行為が認められています。
もちろん、すべての救急救命士が自由に気管挿管できるわけではありません。
必要な教育・認定や、定められた手順、メディカルコントロールのもとで行われます。
つまり、
昔は難しいと考えられていた処置についても、
教育し、訓練し、条件を整え、安全に実施できる仕組みを作る
という方向に、救急医療は変化してきました。
ここに、
今回の「消防車に喉頭鏡を」という提案を考えるヒントがあるのではないでしょうか。
🌱 「できる人がいる」からこそ、考える
私は今回の話を、
「消防車に喉頭鏡を積むべきだ!」
という結論にしたいわけではありません。
むしろ、
「そういう選択肢を検討してもいいのではないか?」
という問いとして残したいと思っています。
例えば、
消防隊として先着した隊員の中に、
救急隊員としての経験があり、
必要な教育を受け、
継続的に訓練をしていて、
組織として一定の条件を整えている人がいたとします。
その人の知識や技術を、
救急車が到着するまでの数分間に、
安全に活用できる仕組みがあったらどうでしょうか?
もちろん、
「やるか、やらないか」
だけではありません。
「どうすれば安全にできるのか」
を考える。
そのために、
教育する。
訓練する。
基準を作る。
医療と連携する。
そして活動を検証する。
そんな仕組みを考えることも、
救命につながる一つの方法なのではないでしょうか。
🚒 消防車は「消防隊の車」だけれど……
第1話でお話しした、
あの窒息CPA。
もし、先着した消防隊の中に、
救急の経験を持つ隊員がいたら。
そして、その隊員が、
救急車が到着するまでの数分間に、
自分が持っている知識や技術を、
安全に生かせる体制があったら。
傷病者にとって、その数分間はどんな意味を持つのでしょうか。
もちろん、
実際の活動では、
その場の状況や傷病者の状態、
隊員の能力、
使用できる資器材、
そして組織の活動基準など、
さまざまな条件を考えなければなりません。
だから、
単純な「正解」はありません。
でも、
だからこそ、
考える価値があるのだと思います。
💭 私がこの3話で伝えたかったこと
このシリーズを書き始めたきっかけは、
たった一つの現場でした。
窒息CPA。
そして、
救急車が来るまでの数分間。
そこから、
「消防隊に、もっと何かできることはないのだろうか?」
という疑問が生まれました。
そして、
あるベテラン救命士の、
「消防車にも喉頭鏡を積んではどうか?」
という提案を知りました。
最初は、
「なるほど、そんな考え方もあるのか」
くらいだったのかもしれません。
でも、
調べてみると、
救急隊員、
兼任救急隊員、
救急科、
喉頭展開・異物除去、
メディカルコントロール、
生涯教育……
いろいろなものがつながっていました。
そして私は、
この話の本当のテーマは、
「消防車に喉頭鏡を積むかどうか」
ではないのではないかと思うようになりました。
🌤️ 「救急の技術を、どう生かすのか?」
救急の現場で身につけた知識や技術。
救命士として経験したこと。
救急隊員として積み重ねた経験。
それらを、
配置や乗務する車両が変わったからといって、
すべて眠らせてしまう必要があるのでしょうか。
もちろん、
安全を無視してはいけません。
資格や制度を無視してもいけません。
組織のルールを無視することもできません。
だからこそ、
「人命を救う」という消防・救急の使命を実現するために、法令・教育・メディカルコントロール・組織の仕組みの中で、どう安全に活用できる体制を作るのか。
私は、そこを考えていくことが大切なのではないかと思います。
🌱 3話を終えて
ここまで3話にわたって、
私の問いにお付き合いいただき、
本当にありがとうございました😊
第1話では、
「救急車が来るまで、何ができる?」
第2話では、
「消防車にも喉頭鏡を積んではどうか?」
そして第3話では、
「では、制度や教育の中ではどうなっているのか?」
というところまで、一緒に考えてきました。
この話に、
一つの答えを出すことが目的ではありません。
消防隊として活動する方。
救急隊として活動する方。
救命士を目指している方。
そして、かつて救急の現場にいた方。
それぞれの立場で、
感じることは違うと思います。
だからこそ、
もしこの記事を読んで、
「自分の現場だったら、どうだろう?」
と思っていただけたなら、
それだけでも、この3話を書いた意味があったと思っています。
そしてもし、
皆さんの現場にも、
「救急車が来るまで、もう少し何かできないだろうか?」
と感じた経験があるなら、
ぜひ、その経験や考えも聞かせてください。
最後まで読んでいただき、
本当にありがとうございました。
それでは、
このシリーズはここで完結です。
お疲れ様でした🍵