機関投資家が作った『出来高増加』が、未来の株価上昇の兆しとなる
出来高は、巨人の足跡
市場には、目に見えない業界慣習ルールがあります。 たとえば、大きな資金をあつかう機関投資家には、『一日の売買出来高の20%を超えて株を買わない』といった自主規制が存在します。大量の注文で相場をゆがめることが、固く禁じられているからです。
機関投資家が銘柄をポートフォリオに入れる時には、何日間かに分けて連続で買い進めるしかありません。
とはいえ、買うと決めたなら、下手に買ってることがバレたまま、ゆーっくりと買うわけにもいきません。
よって、必然的に、以下のような足跡が残ってしまうのです。
『連日にわたって、出来高が増加した日足チャート』
これは、大口の機関投資家が、その銘柄を『買い集めている』兆候です。
通常よりもあきらかに高い出来高が、複数日に渡って続き、株価が上がる。正確には、上がらざるをえなくなるのです。
こんな形でしか流動性が低い小型株を買うことはできないのですから、機関投資家からしたら『すぐに逃げられない』覚悟で買っているのです。市場に『ばれる』ことも、織り込み済みです。
それはつまり、一度買い上げられた株が、しばらくは市場に出てこないことを意味します。
未来の売りを『先食い』する出来高
機関投資家が買い集めて株価が上がると、小さな個人投資家が「やった、ようやく上がったぞ!」と売りをぶつけてきます。
もともとは流動性が低いので、高くなった株価が、元の株価に、小さな出来高(個人の少しの売り)で戻ることも、よくあります。
「あれ、さっきの上昇は夢だったのかな?」
多くの人がそう感じます。
しかし、現実は違います。
最初の大きな出来高は、未来に発生するはずだった『すぐ利確する弱い投資家の小さな売り』『やれやれ売り』を、『先食い』しているのです。
株価は元に戻ったように見えても、水面下では、次に進むための準備が静かに整っています。
一度、連日にわたる大きな出来高を伴って株価が上がる。
小さな出来高で、上がる前の価格帯に戻る。
しかし、最初の出来高で、未来に発生するはずだった『小さな売り軍団』が、大量に『先食い』されている。
こうして、未来の売り圧が消えてしまい、その後に発生するアップトレンドを静かに生み出す。
『小ささ』という、個人投資家の武器
個人投資家は、ファンドマネージャーたちに比べて、自分たちは不利だと感じているかもしれません。「資金力も情報も桁違いだしな…」と。しかし、そこには決定的な利点があります。
それは、個人投資家の『トレードサイズ』が小さいこと。この『小ささ』こそが、最大の武器となるのです。
たとえ流動性の少ない株であっても、個人投資家は相場にほとんど影響を与えることなく、素早く、自由に、ポジションを動かせます。
大きな船が港に入るのに時間がかかるように、機関投資家は、大きな『トレードコスト(マーケットインパクト・スリッページ)』を支払わなければ、ポジションを取ることも、手じまうこともできません。
逆に、個人投資家は、その身軽さゆえに、巨人の足跡を見つけたら、そっと後ろに相乗りできます。なにか異変を感じたら、彼らが売り抜けるよりも先に、さっと市場から出られます。この機動力こそが、個人投資家が持つ最大の強みです。
テクニカル分析は、可能性をさがす道具
今回の話で、『日足チャートの出来高の増減』という情報に、一つの着眼点を増やすことができます。
こういった武器を一つ増やすだけで、それは立派なテクニカル分析のスキルです。
「〇〇というサインが出たら、必ず儲かる!」
残念ながら、そんな魔法はありません。
テクニカル分析とは、絶対的な未来を予測するものではなく、『確率的に有利な選択をするための道具』です。
別の言葉で言いましょう。
『少しだけ有利になる可能性が高くなる道具』です。
今回とりあげた出来高の法則も、絶対ではありません。 チャートの向こう側でトレードしている相手を想像するための、『可能性の高い想定』のひとつなのです。