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畑の遠隔自動制御システムを、一人農家が低コストで全て自作した話について

    はじめに

    こんにちは、一人花農家、FarmEolicaの関口です。

    今回は少し長い連載記事になります。一言で言うと、畑に行かなくてもハウスの中の様子を知りたいし、なんなら窓の開閉や水やりなどの管理を、自動で済ませたいと思い、低コストでゼロから全て自作した話になります。

    私は福島県浪江町で切り花を栽培している農家です。2024年に就農し、今年で3年目になります。パイプハウスの中で一年を通して花を育てていて、作業は基本一人です。

    就農した最初は資材費高騰真っ只中。必要設備を立てるだけで精一杯。スマート農業なるものに興味はもちつつも、そんなの導入するお金はない。

    すべてアナログで管理しなきゃいけないので、ハウスの中で何が起きているかは、畑に行かなければ分かりませんでした。気温が上がりすぎていないか、換気窓は風で煽られていないか、水は土にちゃんと届いているか。畑まで車を走らせて、自分の目で見るしかありませんでした。

    現在は、ハウスの環境が手元のスマホで分かり、窓の開け閉めもストーブの運転も水やりも、スマホから遠隔で動かせます。 それだけでなく、ハウスの中の気温などのデータをもとに自動制御の仕組みもできました。

    これは、花を育てるかたわら、電子工作と生成AIを使って、自分の手で組んできた仕組みです。

    ハウス5棟を遠隔で動かすところまで、就農してから機能ごとに少しずつ積み上げてきました(屋号名からとって、「エオリカシステム」と呼んでいます。ちょっとカッコつけです)。

    この記事は、そのエオリカシステムの全体像をまとめた入口です。ハブ記事とでも言いましょうか。

    システムを構成している機能を大まかに4つに分けました。

    センシング・換気・加温・灌水というそれぞれの機能について、機能ごとに連載を書いていきます。

    本当であれば単発記事でわかりやすくかければよかったのですが…設計のこだわりなどもあり、文量も多くなるため、4つの機能それぞれに、3回ずつの小連載を用意します。作ろうと思った理由を書く①着手編、設計の考え方を書く②設計編、配線や制御の数値など技術的なところまで書く③完成編の3本です。

    (2024年よりコツコツ2年掛けて頑張って設計導入しました…ちょっと長いですがご容赦ください^^;)

    気になる機能から読んで大丈夫です。複雑な話も出てきますが、そういう技術的なところは完成編にまとめています。

    なかでも、”着手編”は、なるべく読みやすいように書いたつもりです。よければお付き合いいただければ幸いです。

    ※各回の記事は準備中です。公開したらリンクを入れます。

    • ①センシング編(全3回) — ハウスの中を、行かなくても測れるようにする(準備中)<!-- soon:センシング編① -->

    • ②換気編(全3回) — 窓の開け閉めを、気温と風まかせにする(準備中)<!-- soon:換気編① -->

    • ③加温編(全3回) — 石油ストーブの運転を、遠隔で・自動で(準備中)<!-- soon:加温編① -->

    • ④灌水編(全3回) — 水やりを、畑まで行かずに終わらせる(準備中)<!-- soon:灌水編① -->

    あえて先に示しますと、技術的には、自宅のRaspberry PiをサーバーにしたFlask(Python)のウェブアプリになります。外出先からの接続は、当初はVPNでしたが、今はCloudflareを使っています。ハウスに置いたマイコン(ESP32)と自宅のサーバーは、AWS IoT Core(MQTT)でやり取り。センサーの値はMySQLに貯めて、分析用にGCPのBigQueryへ。ストーブはSwitchBotのAPI経由で動かし、スマホへの通知はPushoverで飛ばしています。このあたりが技術のキーワードとなります。


     

    ハウスの中の様子が、畑に行かないと何も分からなかった

     

    ハウスで花を育てるって、何してるの?

    改めて自己紹介。私は福島県浪江町にて、切花を栽培している花農家です。新規就農3年目(2026年現在)。主にパイプハウスの中で通年栽培している、施設園芸農家になります。

    切花農家に馴染みが無い方も多いかもしれませんが、”花”自体は身近なものだと思います。自然豊かな場所では、勝手に四季折々の花が育ちます。露地(そのままの畑)でも、なんならそこら辺の土手や荒れ地でも、苗を植えれば(環境さえ合っていれば)植物は育ちます。

    じゃぁナゼ、わざわざ野暮ったいパイプハウスをたてて花を育てるのか。理由としては色々ありますが、雨除けや保温、防虫などを目的に、作物が快適に、意図したように育つよう管理するためになります。

    とはいえ、そのままほったらかしにしていると、色々と大変です。

    夏場に日差しが強まれば、ハウス内はすぐに40度を超える高温になるし、雨は入らないので水やりも必要です。思うような気温管理ができないと、植物にストレスがかかり、場合によっては生育の遅れや品質の低下につながりかねません。

    植物が快適に育ってもらうためには、天気や作物の状況を見て、露地作物以上に適切な管理をする必要があります。

     

    換気・保温・水やりで、ほったらかしに出来ないハウス栽培

    色々と作業をする中でも、”換気”は、一番手間のかかる作業でした。

    朝には窓をあけて涼しい空気を取り込み、夕方には閉める。寒ければ開けずに様子をみて、日差しが強まれば開け、雨が降ったり、風が強まったりしても開閉を調整する。

    就農して最初の頃、この開け閉めをすべて手作業でやっていました。一人で5棟のハウスを回りながら、行ったり来たりだけで一日が終わる感覚を、今でも覚えています。

    また冬場は、"保温"の問題もありました。夕方になると夜間の冷え込みを防ぐために、毎晩保温カーテンを閉じます。朝方は気温や日差しの強さを見て、そそくさと明ける。就農当初は、これも全部手作業でした。

    難しいのは、開け閉めのタイミングです。朝から日差しが強い快晴の日は、7〜8時ごろからハウスの中が高温になっていくので、保温カーテンはすぐに開けたほうがいい。逆に寒さが厳しい日は、朝は開けるのを遅らせたほうがいいし、夜になる前の明るいうちから閉じることもあります。

    その塩梅が手動だと難しく、ハウスまで行かないと開閉できないので、なおさらシビアでした。ちょっと油断すると、ハウス内はすぐに気温が乱高下し、植物のストレスになります。

    それに私が営農している場所では、厳冬期にはハウスの外で-6℃まで冷え込みます。そんな日は、凍結を防ぐためにストーブを焚きます。最初に使っていたのは、普通の石油ストーブ、いわゆるダルマストーブでした。

    夕方5時ごろに家へ帰り、夕飯を作って家族と食べ、一段落したところで、夜7時か8時ごろにまた車で5分から10分かけてハウスへ向かい、ストーブに火をつけて帰る。これを、冬の間ほぼ毎日くり返していました。

    ストーブの燃焼時間は、一番弱い火力でつけても体感で10時間ほど。夕方早い時間につけると、一番気温が下がる朝方に燃料が切れてしまいます。

    毎日毎日、毎朝毎晩、ハウスへ向かう。ハウスの中がいま暑いのか寒いのかも、行ってみるまで分からない。

    気温計を見るためだけに、畑を往復することもありました。水やりも同じで、土が乾いているかどうかは、行ってみないと分かりませんでした。畑に行ってみないと、気温も湿度も分からず、窓を閉めるべきか、水をやるべきかも、何ひとつ判断できませんでした。

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    いま、ハウスで動いている自動化の仕組みについて

    それが今では、ハウス内の環境はスマホ一つでチェックできるし、高温になったら通知がポンと届く。

    暑くなったら勝手に窓は開き、日差しが強まれば遮光カーテンが閉じる。冬の保温カーテンも、自動で開け閉めできます。手動のころに苦労した開け閉めのタイミングも、いまは仕組みが判断してくれます。

    水やりもスマホでボタンを押すだけで、完了する。

    全て、完全自作・低コストで組み上げたDIYによる”スマート農業(自称)”の仕組みになります。

    ハウスの中で測っているのは、気温や湿度、土の状態など。屋内は、モジュールセンサーをつないだマイコン「WioNode」が値を集め、専用のサーバーへ送っています。換気の制御などに使うマイコン(ESP32)とは別の機器ですが、連携して動いています。屋外は気象センサー「Tempest」で、気温や湿度に加えて風向きや雨など、判断に必要な指標を自動で取得できるようにしています。

    集めたデータは、あとから分析にも使えるように、クラウド側のデータ置き場(主にBigQuery)に貯めています。

    (なおデータの活用についても、自作した仕組みがあります。農業DXを超えた、個人農家用オペレーションシステムを作りたい!ということで…これはまた別記事にて)

    実際にハウス内で動かしているのは、ハウスの管理に関わるもの。換気窓とカーテン、石油ストーブ、灌水のバルブです。どれも、測った値をもとに自動で切り替わったり、スマホひとつで遠隔から操作できたりします。

    これらの機能は、それぞれ段階的に実装してきました。最初はセンシングに着手し、そこから換気の制御、冬場のストーブの自動オンオフ、最後に灌水の制御という順に取り組んできました。灌水を最後に回したのは、資金面と優先度の問題に加えて、水やりは勘どころが大きく、自動化するリスクも大きいと考えたからです。

    センシングを最初にしたのは、測る側がなければ、動かす側は判断できないからです。測る仕組みが土台になり、その上に窓・ストーブ・水やりを動かす仕組みが乗る形に落ち着きました。

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    センシング・換気・加温・灌水、4つの機能それぞれの入口

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    ここから、センシング・換気・加温・灌水、それぞれの入口を紹介します。どの機能も、①着手編・②設計編・③完成編の3本で書いていきます。

     

    ①センシング編:畑に行かなくても、ハウスの状態が分かる

    畑に行かなくても、ハウスの中や屋外の状態が分かるようにする仕組みです。 ハウスの中では気温・湿度、土の水分量と温度、日照を、屋外ではそれに加えて、気圧、風速と風向き、日射、雨量なども集めています。

    このセンシングを始めるきっかけは、就農したタイミングで参加した、ある実証試験でした(この経緯は、記事の後半で簡単に補足しています)。センシング編では、どのセンサーをどこに取り付け、どんなデータをどうクラウドに保存しているかまでを扱います。

    ※各回の記事は準備中です。公開したらリンクを入れます。

    • ①着手編 — わざわざ畑に行かなくても、ハウスの中が分かるようにしたかった(準備中)<!-- soon:センシング編① -->

    • ②設計編 — センサーをどこに・何を測るために置いたか(準備中)<!-- soon:センシング編② -->

    • ③完成編(有料) — センサー設置からクラウドに上げるところまで、全部見せます(準備中)<!-- soon:センシング編③ -->

     

    ②換気編:窓とカーテンを、気温と風向きで自動で開け閉めする

    側面の巻き上げ換気、屋根部分の谷換気、それから保温・遮光のカーテン。これらをモーターで自動的に開け閉めする仕組みです。気温だけでなく、屋外の風向きや風速、雨量といった情報もあわせて、窓とカーテンの開け閉めを自動で判断します。 すでに実際に動いていて、大変助かっています。一人で5棟のハウスを見て回る負担を、どうやって減らしていったかを書きます。

    ※各回の記事は準備中です。公開したらリンクを入れます。

    • ①着手編 — 一人で毎日、窓を開け閉めしに行くのは無理だった(準備中)<!-- soon:換気編① -->

    • ②設計編 — 巻き上げ・谷換気・保温カーテンを、気温と風向きでどう自動化するか考えた(準備中)<!-- soon:換気編② -->

    • ③完成編(有料) — モーターの配線から自動制御ロジックまで(準備中)<!-- soon:換気編③ -->

     

    ③加温編:冬のストーブを、遠隔でも自動でもつけ消しする

    冬場のストーブを、ハウスのセンサーと連動させて、遠隔でも自動でも確実につけ消しする仕組みです。 最初は、市販のスマート家電リモコンだけで済ませようとしました。ただ、それだけでは危ない場面がありました。

    厳冬期に、そのリモコンのオートメーション機能でストーブを制御してみたときのことです。誤作動やリモコンの仕様もあって、オンオフの状態をうまく保持できず、ついていると思っていたストーブが、実はついていませんでした。ハウスの中は氷点下まで下がっていました。

    先にセンシングができていたので、通知で気づくことはできました。ただ、そのときはお酒を飲んでいて、すぐには駆けつけられず、朝になってから緊急で対応しました。

    実際の被害は少なかったものの、作物にはストレスがかかりました。品目によっては、致命傷になることもあります。この経験から、ハウスのセンサーと連動させる設計に切り替えました。

    石油ストーブやスポットエアコンのように、タイマーがなかったり、あっても細かい設定や気温に連動した制御ができなかったりする家電でも、同じ仕組みで遠隔から動かせます。収穫後の作物を保管する予冷庫のスポットクーラーや、育苗チャンバーの中に設置したエアコン(1台)も、この仕組みで動かしています。

    ※各回の記事は準備中です。公開したらリンクを入れます。

    • ①着手編 — 冬の夜、ストーブをつけに畑まで車で走っていた(準備中)<!-- soon:加温編① -->

    • ②設計編 — 市販のリモコンだけでは危なかった。センサーと連動させて誤作動を無くす設計(準備中)<!-- soon:加温編② -->

    • ③完成編(有料) — ストーブ・育苗チャンバーのエアコン・予冷庫のスポットクーラー、同じ仕組みをどう使い回したか(準備中)<!-- soon:加温編③ -->

     

    ④灌水編:バルブを遠隔操作して、水やりを手元で済ませる

    バルブの開け閉めを遠隔でできるようにする仕組みです。塩ビパイプとバルブを組んで、灌水の設備そのものも自作しました。4つの機能の中では一番あとに手をつけた分野で、水やりのために畑を往復していた作業を、手元に持ってきました。

    ※各回の記事は準備中です。公開したらリンクを入れます。

    • ①着手編 — 水やりのために畑を往復するのをやめたい。ハウスの灌水を自動にする(準備中)<!-- soon:灌水編① -->

    • ②設計編 — バルブとパイプをどう組むかで、水やりは段取りから消える(準備中)<!-- soon:灌水編② -->

    • ③完成編(有料) — 自分のハウスで灌水を自動で回すまで。配管からアプリまで(準備中)<!-- soon:灌水編③ -->


     

    この連載の読み方:無料で読める範囲と、有料の③完成編

    ①着手編と②設計編は無料で読めます。③完成編だけ有料(980円)で、配線・部品・構造・制御の数値など、設計で詰まるところとその解き方を書きます。あわせて、同じ仕組みを自分のハウスでも動かしたい方が、自分の生成AIに設計を手伝わせるための指示書も用意します。

    最初に公開するのは、センシング編の①着手編です。

    集めたデータをどう見える化するか、栽培の履歴とどうつなげるかという話は、この連載では扱いません。そちらは、すでに書いている「農家自作アプリ全解剖」というシリーズに譲ります。

    (参考: 「農家自作アプリ全解剖」CMS① 全体概要)

    有料部分を、無理に読んでもらう必要はありません。無料の①着手編・②設計編だけでも、それぞれの機能がどう動いているかは分かるようにしています。 ③完成編は、同じ仕組みを自分でも作ってみたい方のための、踏み込んだ内容です。


     

    余談:自作するに至ったきっかけ

    就農したタイミングで、国の農業研究機関である”農研機構”が進めていた実証試験に誘っていただきました。「通い農業支援システム」という仕組みを流用した試験で、ハウスにセンサー機器を取り付けるという内容でした。

    畑に行かなくても、ハウスの中の気温や湿度、作物の様子が分かる。それが、この構想の目指すところでした。

    同じやり方を、自分でも広げられるのではないか。そう考えたのが、エオリカシステムの出発点でした。

    この「通い農業支援システム」は、農研機構が製作マニュアルとプログラムを無料で公開している技術です。センサーの選び方も、取り付け方も、公開された資料をたどれば分かるようになっています。ここから先の制御の仕組みは、自己責任で実装を重ねてきたものです。仕組みを作り始めたキッカケは、この実証試験で入った機材が起点となっていますが、おおよその仕組みは、そこから自分で作りました。

    非エンジニアの一人農家でも、ここまでできるんだと示したうえで、ぜひ「真似したい!」という方の助力になればと思います。

    ※なお、換気制御や灌水などの設備の一部には、町の支援制度を活用しました。導入の経緯や当時の試行錯誤は、以前の記事にも書いています。

    (参考: 「ハウス5棟の環境を自宅から制御する――エオリカシステム開発記」)


     

    筆者について
    福島県浪江町在住、34歳。2024年より切り花栽培を開始。理系出身の知識を活かし、IoTシステムを自作してスマート農業を実践中。屋号「Farm Eolica」にて、データドリブンな花卉栽培に挑戦している。

    Homepage: https://farmeolica.com
    Instagram: @farm_eolica
    X (Twitter): @FarmEolica
    note: https://note.com/farm_eolica

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    「人生は一度きり、主体性をもって楽しんで生きていこう」がモットーの34歳農家。福島県浪江町で切り花栽培中。2歳児のパパ。前職は出版社営業→人生リスタートで新規就農。理系知識×ITスキルで農業をアップデート。失敗も成功もリアルに発信|Farm Eolica|

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