
長崎県美術館と、駅弁3つ。〜長崎2泊3日④〜
もっさりは2人の自撮りを撮る時、3〜4枚撮影する。そして後からいい写真だけを選別して残す。
3日目の朝、目を覚ますと もっさり が私の右に横たわっていた。
何がどうなったのか、浴衣は首に巻きついて、たるんだお腹にズレたパンツからお尻を半分のぞかせている。息をしていなければ、私は殺人犯だ。
眺めていると、死体は突然喋り始めた。
「写真いっぱい撮ってるやんか。昨日大分消したんやけどな、どっちもいい顔、どっちも不細工、色々あるやろ。どっちかだけいい時のはな、むくみが良いのを残しといた。女がいい顔の方が良いやんか」
いいこと言うやん。でも、その姿で言われても説得力がない。
もっさり、ごめん。
私はいつも自分がいい顔の写真を残している。そして これからも自分が良い顔の写真を残すと思う。
朝食を食べていると1人の男性がもっさりの隣に腰を下ろした。
その瞬間、私に目で訴えるもっさり。
朝食会場はピークを過ぎ、空席が目立つ。1人用のカウンター席も空いている。
パーソナルスペースが広いもっさりは、明らかに不快感を示している。
その男性はパーソナルスペースが狭く、バイキングが取りやすい席に座りたかったか、もっさりに一目惚れをしたのだろう。
男性は和食派だった。何気なく見ると、冷奴をお椀に入れ、お味噌汁の具にしている。感心していると、納豆に温泉たまごを割り入れた。唐揚げと南蛮漬けも取っている。バイキングをアレンジし、すべてのタンパク質を摂取している。バイキング上級者。
東京ポッド許可局で朝食バイキングについて語る回があった。彼も許可局員かも知れない、と密かに気になった。
チェックアウトを済ませ歩いて長崎県美術館へ。お天気も良く、汗ばむ暑さ。海風が強いので日傘は両手で持っていないと飛ばされそうになる。
途中チャンスセンターの前で「ちょっと待って」ともっさりは宝くじを買いだした。なんで今なんだ。と思ったけど、旅先で買ったら当たりそうな気もする。当たったら、美味しいものをご馳走してもらおう。
美術館が見えてくると、海岸沿いを歩きながらもっさりがはしゃぎ出した。
「わ〜。懐かし〜。ここや。俺が来たんここや!」
もっさりは何年か前に、ヨンフォア(1974年発売のバイク、ホンダCB400FOUR 旧車好きの間では人気のバイク)で埼玉から長崎まで来ている。
「福山先輩!」(福山雅治のこと)
そう言って懐かしの場所を写真におさめると、満足した様子で美術館への階段を上がった。
長崎県美術館は隈研吾の設計で川を挟んで2棟の建物からなる。2階と屋上が渡り廊下でつながっている。ルーバーが多用され、隈研吾的なデザイン。
屋上庭園からは長崎港が一望できて気持ちが良い。ここから夕日を眺めるのもいいだろうな。
海、川、風、空、太陽。色んなものを感じる。近所にあったら間違いなく通いたい場所No.1。
でも、私が屋上で過ごしている間、誰1人として来なかった。勿体無い。
もっさりも屋上庭園には上がらず、下の階のベンチで休憩をしていた。
(これも、疲れた、お腹すいたサインだったのかもしれない)
常設展は須磨彌吉郎が第二次世界大戦中にスペインで収集した須磨コレクションが展示され、ピカソやミロの作品もあった。他にはシャガールのサーカスシリーズが良かった。
タクシーで長崎駅に戻り、駅直結の商業ビル AMU をブラブラする。お昼は新幹線で駅弁を食べようと言っていたのに、もっさりは突然、中華料理屋さんに入ろうと言い出した。
長崎に着いた日、そのお店でちゃんぽんを食べようと言ったら「商業ビルなんかで食べたくない」と言っていたのに。
長崎に来て美味しいちゃんぽんを食べられなかったことが、余程悔しかったのだろう。しかし数組が待っていて、電車に間に合わなさそうだったので諦めた。
ちゃんぽんを諦めたもっさりは「長崎物語でも買って帰るか」と、唐草の「長崎物語」を自分用に箱買いした。今回2度目の購入。相当な気に入りようだ。
私は初日に行けなかった喫茶店 セヴィリア を経営する松翁軒の季節限定渋皮栗寄せの抹茶カステラを自分用に購入した。
西九州新幹線かもめに乗るともっさりは長崎物語を取り出して食べ始めた。
「いるか?」と聞かれたが、これから博多駅で駅弁を買って食べる。
「駅弁食べるからやめとく」
そう伝えると、もっさりは2本も食べた。
2本で約300kcal。お茶碗大盛り1杯分くらいのカロリー。
武雄温泉で特急リレーかもめに乗り換え博多へ行き、そこから東海道新幹線のぞみで新大阪へ帰る。
チケットを予約する際、新鳥栖からのチケットは売り切れで、唯一取れたのが博多発の のぞみ だった。しかし、その のぞみ もグリーン車しか空席がなく、もっさりと私はこれから人生初のグリーン車を体験する。
博多駅の駅弁屋さんで
「食べたいの選び」ともっさり。
鮭の西京焼きと厚焼き卵のお弁当を選ぶと、「もう1個選び」と言われ、
長崎街道 七つ街道巡り(かしわ飯の入った幕内弁当的なもの)に決めた。
これで終わり、と思ったら再び「もう1個選び。2人やから3つはいるやろ」
なんか計算がおかしい。
でも、言われるままにイカが好きな私はイカしゅうまい弁当を選んだ。
お茶を買いに駅構内のコンビニに入ると、入り口にあまおう苺加工専門店「伊都きんぐ」のどら焼きが、今届きたてだと言って販売されていた。
駅弁を食べたら、私の胃にこの大きなどら焼きが入るスペースはない。でも、今しか食べられない。欲しいけど食べられない、と恨めしそうに見ていると、もっさりが買ってくれた。
3つの駅弁に、大きなあまおう苺と生クリームのどら焼きが2つ。
これだけの食料があれば2日くらい大丈夫そうだ。
そしていよいよ初めてのグリーン車に乗り込む。