
【本日のお品書き】黒毛和牛サーロインステーキ|理不尽な大人を許す、極上の脂と甘やかし
今日もお疲れ様。おいちゃんです。
我が家でいちばんの早起きは、娘だ。
夜も早く眠るから自然と目が覚めるのだろうけれど、その体内時計の正確さには毎朝脱帽する。
誰に言われるでもなく一人ですっと起き出し、自分でテレビをつけて静かにEテレを見ている。
そしてしばらくすると、寝室のドアをトントンと叩いて
「パパ、ママ、おきてー!」と天使のように起こしにきてくれるのだ。
本当にしっかり者で、誇らしい我が子だと思う。
……なのに、だ。
のそのそと重い体を引きずって起きてきた大人が、開口一番に娘へ浴びせる言葉ときたらどうだろう。
「早く着替えなさい!」
「ほら、準備して!」
「早く朝ごはん食べちゃって!」
怒涛の催促ラッシュ。
理性も余裕もない大人の都合を、容赦なく小さな背中に押しつけてしまう。
夜、台所に一人立って、グラスを片手に静かに反省した。
誰よりも早く起きて準備万端で待っていた娘に対して、ギリギリまで眠りこけていた大人が上から目線で急かすなんて、これほど身勝手で理不尽な話があるだろうか。
ごめんね、お姉ちゃん。
明日はパパ、今より30分早く起きるよ。
そんな反省と、健気な娘への最大級のリスペクトを込めて、今夜は奮発して黒毛和牛のサーロインを焼くことにした。
今日の「だれやめ」メニュー:黒毛和牛サーロインステーキ
大人というものは、都合のいい生き物だ。
疲れた、眠い、時間がない。そんな言い訳を並べて、一番無垢な存在に甘えてしまう。
だから今夜のサーロインは、ただの贅沢ではない。
自らのちっぽけな理不尽を洗い流し、家族を無条件に肯定するための「免罪符」であり、祈りのような精神安定剤だ。
カンカンに熱した鉄板の上で、美しいサシが音を立ててほどけていく。
その暴力的なまでの香りは、日々のちっぽけな罪悪感をすべて優しさへと昇華してくれる気がする。

【材料】(2人分)
・黒毛和牛サーロインステーキ肉:2枚
・塩、胡椒:適量 ・ニンニク:1片(スライス)
・牛脂(またはサラダ油):適量
《特製玉ねぎソース》
・玉ねぎ:1/2個(すりおろし)
・醤油:大さじ3 ・みりん:大さじ2
・酒:大さじ2
・砂糖:小さじ1
・ニンニクすりおろし:チューブで2cm
《レンジで簡単マッシュポテト》
・じゃがいも:2個 ・有塩バター:15g
・牛乳:大さじ2〜3(固さを見ながら)
・コンソメ(顆粒):小さじ1/2
・塩、胡椒:少々
《じっくりにんじんグラッセ》
・にんじん:1本(角をしっかり面取りする)
・有塩バター:15g
・砂糖:大さじ1
・塩:小さじ1/4
・水:にんじんがひたひたに浸かるくらい

【作り方】
サイドメニューを仕立てる。にんじんは角を丁寧に面取りして小鍋に入れ、水、バター、砂糖、塩を加えて弱火にかける。水分がツヤのある蜜へと変わるまで、じっくりと煮詰めていく。(角を取るひと手間で、驚くほど味がまろやかになるんだよな) じゃがいもは一口大に切ってレンジで加熱し、熱いうちにフォークで丁寧につぶす。バター、牛乳、コンソメ、塩胡椒を混ぜ合わせる。(舌触りを極上にするなら、ここで裏ごしを惜しまないこと)
肉の温度を整える。ステーキ肉は焼く30分前に冷蔵庫から出し、部屋の空気に馴染ませておく。(芯まで冷たいまま焼くと、火入れの調和が崩れてしまう。この待ち時間が一番大事だったりする) 焼く直前に、両面へ潔く塩と胡椒を振る。
鉄板に命を吹き込む。ステーキ鉄板に牛脂とニンニクスライスを入れて弱火で温める。芳ばしい香りが立ち上ったらニンニクを引き上げ、火を強める。煙がうっすら立つ極限の熱さのなかへ、肉を滑り込ませる。両面に香ばしい焼き色を一気につけたら、一度引き上げて温かい場所で休ませる。(肉汁を閉じ込めるための、短いお昼寝の時間)
旨味を回収するソース作り。肉を焼いた鉄板の脂を軽く拭き、そこへ玉ねぎソースの材料を一気に流し込む。ジュワッと沸き立つ蒸気とともにアルコールを飛ばし、肉の残香をすべてソースへ溶け込ませる。
舞台を整える。熱々の鉄板にステーキを戻し、脇にマッシュポテトとツヤツヤのグラッセを添える。上から玉ねぎソースをたっぷりとかければ完成。
熱い鉄板の上でジュウジュウと歌う肉にナイフを入れると、信じられないほどすんなりと刃が沈んでいく。
口に運んだ瞬間、芳醇な脂の甘みが舌の上でほどけ、すりおろし玉ねぎのキリッとした酸味と醤油の香ばしさが重なって、思考が一瞬で止まった。美味しい、という安易な言葉では追いつかない。
日中の慌ただしさも、理不尽に怒ってしまった自分への嫌気も、すべてがこの濃厚な温もりの中に溶けて消えていく。
「お店みたーい!」
と目を輝かせる子どもたちの笑顔。
「お肉柔らかいね、ソース最高」と顔をほころばせる妻。
その光景を見つめながら、冷えたグラスを傾ける。
家族の笑顔に救われているのは、いつだってパパのほうだ。
明日こそは、一番に起きて娘に「おはよう」を言おう。
たとえそれが叶わなかったとしても、また夜に美味いものをこしらえて、
笑い合えばいい。
今日も1日おやっとさぁ。
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