
薄暗い仕込みから、いちばん小さな“だれやめ”へ|だれやめ語り
ありがとうのひと言と、空っぽのふた
おやっとさぁ。 「居酒屋だれやめ」店主のおいちゃんです。
今日は、子どもたちの遠足の日でした。
まだ外が薄暗いうちから台所に立って、ステンレスのバットを並べます。うちのいちばん小さな「仕込み」です。
枝豆と塩昆布を混ぜたごはんを握る。タコさんウインナー。甘い醤油の卵焼き。チーズ入りメンチカツは半分に切って、断面を見せてあげる。アスパラとベーコンを炒めて、ちくわの穴にきゅうりを押し込む。プチトマトは、ほんの色の足しに、ぽん。
いちばん難しかったのは、白いおにぎりに海苔で顔を貼る工程でした。てげてげなおかずばかりなのに、なぜかここだけは真剣になる。

玄関でのこと。
「お弁当作ってくれてありがとう」
ええ、たったそれっぽっちのひと言です。でもそのひと言で、まだ眠い頭も、出勤前のバタバタも、一気に「いけます」。今日一日が、いきなり最高の始まりになります。
うちの店にたとえるなら、開店前のシャッターの前で「今夜も楽しみにしてるよ」と言われる感じかなぁ。あれ、けっこう効きます。
パパとママの朝ごはんは、お弁当の残りでした。
茶碗に枝豆ごはんをよそって、バットに残ったおかずをつつく。
飲み屋の仕込み中に、揚げたてをふたりで半分こする、あの感じ。
遠足の朝は、なぜかちょっといい朝ごはんになります。

ちなみにメニューは
・枝豆塩昆布ごはん
・アスパラベーコン(お姉ちゃんリクエスト)
・チーズメンチカツ(お姉ちゃんリクエスト)
・卵焼き(お姉ちゃんリクエスト)
・たこさんウインナー(お姉ちゃんリクエスト)
・からあげ(お姉ちゃんリクエスト)
・ちくわキュウリ
・ミニトマト(弟君リクエスト)
ほぼ姉ちゃんリクエスト。
弟君からの選抜はミニトマトのみでした(笑)

日中はあっという間。
夕方、たくさん遊んで帰ってきた子どもたちが出してきたお弁当箱は、空っぽ。
「おいしかったよ」
その二連発で、今日一日の疲れが、ごぼん、と抜けていきました。
空っぽの箱って、どんなお礼よりも雄弁だなぁ。うちの店でいちばんうれしいのは、「ごちそうさま」のあとの、きれいになったお皿です。あれと同じ。いや、あれ以上かもしれない。
夜の晩酌は、焼酎の水割りをひとつ。あては、仕込みの端っこに残っていた枝豆ときゅうりの浅漬け。なんてことのない一皿ですが、今日はなんだか、うまい。
遠足のお弁当というのは、つくるほうはどきどき、食べるほうはわくわくで。ふたを開けた瞬間に、遠足のど真ん中へちょっとだけ出張する、いちばん小さな「だれやめ」なんだと思います。
今夜は、空っぽのふたを洗いながら、「いい一日だったなぁ」と、ひとりごと。
あなたの家では、どんなひと言に、ふっと力が抜けますか。
「ありがとう」かもしれないし、「おかえり」かもしれないし、空っぽになったお皿かもしれない。
それでは今夜も。 おやっとさぁ。
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