
「ロミオよロミオよ、あなたはどうしてフィジーカーなの?」筋肉界の名門同士がバルコニーで愛を囁くマッスルロミオとジュリエット
信仰の違う両家の顔合わせがこちら
舞台化にあたって脚本家の考えるキャスト(妄想)

パワーリフター一家:角田信朗・北斗晶・土屋太鳳
第二幕 キャピュレット家のパワーラックの夜
夜の帳が、キャピュレット邸を包んでいた。
庭の中央には、大会仕様のパワーラックが鎮座している。
シャフトに残ったチョークが月光を受け、白く浮かび上がっていた。
そのとき、二階の窓が静かに開いた。
暖かな光の中に、ジュリエットが現れた。
物陰のロミオは、思わず息を呑んだ。
「待て。あの窓からこぼれる光は何だ。あそこが東なら、ジュリエットは太陽だ」
黒い夜を背景に、彼女はひと粒の宝石のように輝いていた。
世界大会で三人の審判がそろって灯す白いランプよりも、ずっとまぶしく。
ジュリエットは手すりに頬杖をついた。
「ああ、せめて、あの手に残るチョークの粉になれたなら。そうすれば僕も、あの頬に触れられるのに」
ジュリエットは誰もいないと思い、深いため息をついた。
「ああ、ロミオよロミオ。なぜあなたはロミオなの?」
庭の物陰に潜んでいたロミオが、息を呑んだ。
「あなただけが、どうしてよりによってモンタギュー家のフィジーカーなの?」
ジュリエットは月を見上げた。
「お父様の教えを否定し、そのお上品なサーフパンツを脱ぎ捨て、BIG3に専念してほしい。それが無理だというのなら、せめて私をあなたの専属の補助者だと認めて」
彼女は胸に手を当てた。
「そうすれば私はキャピュレットの名を捨て、明日からBIG3をやめて、サイドレイズに命を捧げるわ」
物陰で、何かが鳴った。カシャカシャッ。
ジュリエットが振り返る。
「誰?」
ロミオは、握っていたプロテインシェイカーを見た。

そして観念して、月明かりの下へ出た。
「ジュリエット。君がそこまで言ってくれるなら、僕は今日からフィジーカーを辞める。パワーリフターにでも、クロスフィッターにでも、HYROXの選手にでも、何にでも生まれ変わるよ」
「待って。あなたは、いつからそこに?」
「サーフパンツを脱ぎ捨てろというあたりから」
ジュリエットは両手で顔を覆った。
「ほとんど最初からじゃない!」
「どうか恥じないでほしい。君の言葉は、どんな歓声より僕の胸に響いた」
「どうやって庭へ入ったの? 塀は高いし、見つかったら父に殺されるわ」
「愛の翼で塀を越えた」
「ティボルトに見つかったら、あなたのBIG3をその場で測られるわよ」
「君の父上の視線より、二百キロのスクワットのほうがまだ優しい」
ジュリエットは笑った。
だが、すぐにその表情を曇らせた。
「ロミオ。モンタギューとは、いったい何なの?」
彼女は手すりへ身を預けた。
「肩でもない。胸でもない。背中でもなければ、腹筋の溝でもない。ただ人が後からつけた名前にすぎないわ」
ロミオは黙って聞いていた。
「フィジーカーを別の名で呼んだところで、あなたの広背筋の広がりは変わらない。ロミオ、その名を捨てて。その名の代わりに、私のすべてを受け取って」
「その言葉を信じよう」
ロミオは一歩、バルコニーへ近づいた。
「僕をただ、あなたの愛する人と呼んでくれ。そうすれば、僕は新しく生まれ変わる。もうモンタギューでも、広告塔でもない。ただのロミオになる」
ジュリエットは彼を見つめた。
「でも、本当にフィジークを辞めないで」
「さっきと言っていることが違うじゃないか」
「あなたに競技を捨ててほしいわけではないの。あなたの身体を、家やスポンサーではなく、あなた自身のものにしてほしいだけ」
「では君も、BIG3を捨ててはいけない」
「いいの?」
「君が何の競技をやるかを誰かに決めさせる必要はない」
ジュリエットの目に涙が浮かんだ。
「あなたは私が何キロ挙げたか、覚えている?」
「正直、覚えていない」
「ひどい人」
「君の親は数字で見ているけれど、僕は君を見ていたから」
ジュリエットは涙を拭い、微笑んだ。
「では、私を愛していると誓って」
「この月に誓う」
「月は駄目。満ちたり欠けたりして、減量末期の水分量より安定しないもの。もっと確かなものに誓って」
「では、この上腕二頭筋に」
「パンプは三十分で消えるわ」
「何に誓えばいいんだ」
「あなた自身に」
ロミオは胸へ手を置いた。
「僕自身に誓う。君がどれほど重いバーベルを持っても、その最後の一レップまで勝手に手を出さない。だが本当に潰れたときには、必ず支える」
「それは愛の誓い?」
「最高の補助者の誓いだ」
屋敷の中から、乳母の声がした。
「お嬢様! 就寝前のカゼインのお時間です!」
ジュリエットは振り返り、
「今行くわ!」
叫び、再びロミオを見下ろした。
「明日の朝、乳母をあなたのもとへ遣わします。本当に結婚するつもりなら、式を挙げる場所と時間を伝えて」
「明日を待てない」
「筋肥大にも体を絞るにも休息が必要よ。」
「愛にも?」
「愛には、もっと必要かもしれないわ」
「おやすみ、ジュリエット。愛しているよ」
「もう一回聞きたいわ」
「愛している!」
ジュリエットは満足そうに微笑んだ。
「愛の言葉は、高回数で三セットで言って欲しいわ」
二人は別れようとして、また見つめ合った。
月の下、二人は何度も別れを告げた。
庭のパワーラックには、一本のバーベルが静かに横たわっていた。
その夜、二人の間に生まれたものだけは、体型でも重量でも測ることができなかった。
(おわり)

これ本当にパロディ?目から水抜きがかなう😭
「フィジークって何?パワーリフターって何?」
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