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【#創作大賞2025#ファンタジー小説部門】マァァァァァム!19話

    18話はこちら

    「なにを言ってるんですか?」

    冷静な声とは裏腹にサクの目が泳ぐ。ボンはずいっと顔を近づけ再び同じことを聞いた。

    「どうしてペスにヒィロッポンを食べさせた!」
    「マム!ホントにペスはヒィロッポンを食べたの?」

    青ざめた顔でユキが聞く。

    「ああ。人間以外の生き物にはヒィロッポンは強すぎるからね。泡の吐き方、ペスから漂う臭いですぐにわかった。だから……」

    死んだと思い泣いているユタをペスから離して観察してみると、ペスのまぶたが少しピクピクしていることに気づいた。

    助かる!

    瞬時に判断したボンはペスを慌てて川へ連れて行き、流れの早い場所へペスを沈めた。一気に水が口に入ったペスは、ものすごい勢いで喉に詰まったものを吐き出したそうだ。

    「胃袋までいってたら間に合わなかったよ」

    それを聞いてユタが「ペスゥ!」と抱き着く。サトやゾウ、ユキもペスに触り、その温かな感触にペスの生を感じ取り、ホッと胸をなでおろしている。

    「ペスが吐き出したものをよく見たらヒィロッポンじゃないか。ヒィロッポンは病院でよく見かけるものだ。そして……」

    あんたは村長からヒィロッポンを受け取っていたよね、とボンはサクを睨みつけた。

    「ボンさん!僕はそんなことはしていません!ヒィロッポンを持っているのは僕だけではない!ここの村人全員がヒィロッポンを作っている!」

    その時、ボンの後ろに村長が立っていることにサクは気づいた。

    「村長!これはいったいどういうことなんだ!」
    「サク!もうおしまいですよ!」

    そう答える村長は自分の後ろを指さす。それを見たサクがギョっとする。

    「サクさん、お仲間も連れて来たよ」

    そこには、野盗風の男どもがボコボコにされ縛られていた。

    「その男達はなんなんですか!ボンさんお怪我は?」
    「親分!なにもかもおしまいだ!」
    「犬にヒィロッポンを食わせたのもバレている!」
    「この女強ぇぇよ!」

    口々に叫ぶ男どもをボンが睨みつけると、一斉に口をつぐんだ。ここに来るまでにボンの強さを思い知り観念しているようだ。

    「もう、わが村はあんた達の支配下ではない!ボンさんが助けてくれた!」

    到着した時とは打って変わり、村長は頬を紅潮させて大声で叫ぶ。村に到着時、下を向きボソボソと喋っていた人間とは思えない。ボン達が来る前にサクを中心とした野盗達にヒィロッポン作りを強制させられていたのだろう。

    「病人やけが人のために少しだけ作るものなのに!あんたがたは村人全員を無理やり働かせて沢山のヒィロッポンを!」

    ボンという強い味方を得た村長はここぞとばかりにサクの悪事を暴露し続ける。ヒィロッポンは干しオヤチャイを6本にまとめ、何ヶ月も乾燥させてできる薬だ。まとめる干しオヤチャイの数は必ず6本。

    6本より少なくても多くてもヒィロッポンにはならない。しかも畑から抜け出した時に「ヒィィ……」と鳴くオヤチャイだけがヒィロッポンとなる。薬となるまでに時間もかかるし、「ヒィィ……」と鳴くオヤチャイは数が少ない。

    ヒィロッポンは少量を使うとけが人や病人の痛みを軽減してくれる薬となる。そのため、管理は病院で行わなければならない。しかし、なにかの拍子で、多めにヒィロッポンを口にすると疲れが一気に取れることがわかった。

    その後、効果が切れるとものすごい脱力感に襲われる。体力もかなり奪われるが、ヒィロッポンを服用した時の爽快感が忘れられず、欲しがる人が後を絶たなかった。ヒィロッポンを闇値で取引し、儲けている人間ということが少し前から囁かれていたのだが。

    「サク、あんたはヒィロッポンの密売人だね?」
    「はは……ボンさん……まさか」

    うすら笑いを浮かべながら立ち上がった瞬間、サクはボンと反対の方向へ走り出した。2、3歩ほどボンが足踏みをする。

    タン!

    高く飛び上がるボン。

    ストッ!

    あっという間にサクの目の前に舞い降りるボン。

    「クソ!」

    サクがボンに向かって拳を突き出した。

    「マァァァァァム!」

    鋭いサクの拳に悲鳴をあげる子ども達。

    ガッ!!

    サクの拳を右ひじで受け止め、そのままボンは左ストレートを繰り出した。

    「へっ!それくらいお見通し!」

    サクは手のひらでボンのストレートを受け止め高笑いをする。

    「こんな可愛らしい攻げ……」

    その言葉が終わらぬ前にボンの右アッパーがサクの顎に命中した。フラフラとしながらもファイティングポーズを取り直したサクの懐に飛び込むボン、と同時に腹に膝蹴り。

    「むぅぅぅ」

    ドシンという地響きと共にサクが倒れた。

    「マム!すげえ!」

    走り寄る4人の子どもとペス。

    「悲しい思いをさせて悪かったね」

    気を失ったサクを縛り上げながら子ども達に声をかけるボン。手下と一緒に縛り上げられる頃、サクがようやく意識を取り戻した。

    「サク、アグの知合いの振りをして、近づいたのはなぜだい?」
    「アグと知り合いって言うのは本当だ」
    「なに?」
    「あんたの顔はアグから写真で見せてもらって知っていた」

    驚くボンに向かってサクは憎々し気に話し続ける。

    「呑気に家族の話をするあいつが憎らしかった。だから大切な家族を奪ってやろうと思ったんだよ!」

    20話に続く

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