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【#創作大賞2025#ファンタジー小説部門】マァァァァァム!18話

    17話はこちら

    「マァァァァァム……」

    泣きじゃくるユタを抱きしめながら、ボンはペスを見つめる。サクがそっとボンの肩に手を乗せた。

    「お気の毒に……」

    騒ぎを聞きつけて家から出て来た子ども達も呆然とペスを見つめる。昨日まで元気に歩いていたペスがどうして……。具合の悪そうな気配は全く感じなかった。それとも見逃したのだろうか。困惑のあまり棒立ちになる。

    「ペスゥ……」

    サトがシクシク泣き出した。ゾウも唇を強く噛みしめ、ぎゅっと拳を握っている。目には一杯の涙。黙って涙を流しているユキに、ボンが泣きじゃくるユタを預ける。

    「マム?」

    ボンはユキの頭をポンポンとすると、ペスを抱き上げ歩き去った。ボンはペスを埋めるのだろうか?そう思った瞬間、ユキの口から大きな声があふれ出す。

    「ペスゥ!!!うわぁぁぁん!」
    「ユキにーぃぃぃ」
    「辛いよね。でもこれも寿命だったんだよ」

    そう言いながらサクがユキからユタを奪い去るように抱き上げた。

    「ユタを離せ!」

    泣きながらゾウがサクに向かって叫ぶ。大切な弟に触れて欲しくない、という気持がゾウの声から漏れ出ているようだ。サトもゾウにしがみつきながらサクを睨んでいた。そんな2人を鼻で笑いながらサクが話す。

    「我慢しないでいいんだよ。ゾウ君。これからはユタ君は僕が……あ!」

    しっかりと抱きしめていたユタをサクが離した。その姿はちょうど「高い高い」をしようとしているようだ。

    「ふぇぇん……出ちゃった……」

    ユタの声を聞き、サクの胸元を見るとびっしょりと濡れていた。ユタの洋服からもポタポタと水が垂れている。ペスのことで頭がいっぱいだったため、ユタはトイレに行くのを忘れていたのだ。ゾウとサトの口元がにやけた。「ざまあ」と言いそうだったのをユキが慌てて制止する。サクの態度には腹が立ったし漏らしたユタを褒めてやりたい気持ちがある。しかし、ここは謝らないと。そう思ったユキがサクに謝ろうとした時、信じられないことが起きた。

    「このクソガキ!」

    サクがユタを地面めがけて投げ落としたのだ。ユキとゾウが慌てて落下地点へと走り、なんとかユタは地面と激突せずに済んだ。

    「こっちが下手に出てればいい気になりやがって!」

    汚ねぇ!を連発しながらユキ達に向かって脱ぎ捨てた服を投げつける。

    「こんないい家に泊まれたのは誰のおかげだよ!俺がいたからだろ!汚れた服をさっさと洗ってこい!」
    「ご……ごめんなさい」

    謝るユキに悪鬼のような表情を向けるサク。

    「大人を馬鹿にするな!」

    これだから父親のいない子どもらはと呟いたのをゾウは聞き逃さなかった。

    「ダドはいる!」
    「いるかもな」

    そう言いながらニヤリとするサク。

    「でも、大切な犬が死んだのにそばにいない父親なんていないも同然だ」

    俺はこれからも、お前らとボンさんのそばにいてやれる頼りになる男なんだぜと言う。

    「でも、サクさんはダドのところまで道案内するって」

    急変したサクにとまどいながらユキが尋ねる。

    「言ったさ。でもな、怪我が治ってもお前達のところに来てくれない父親なんて会ってもしょうがないんじゃないか?」
    「どういう意味ですか?」
    「あいつはな、俺が一緒に家族の元に行こうって誘ったのに病院に残ったんだよ」
    「嘘だ!」

    ゾウが叫ぶ。

    「嘘なもんか。病院で新たな家族を見つけたようだしな」

    それを聞いたユキは全身が強ばるのを感じた。否定の言葉を発したいのに声が出ない。病院が移動する時に家の近くを通ったにも関わらず、ダドが自分達のところに戻らなかったのを、ユキはうっすらと疑問に感じていた。マムもそうなのではないかと思ったこともある。サクの言葉はその疑問を事実へと導くような毒を含んでいた。

    「嘘だ!嘘だ!嘘だ!」

    ゾウが泣き叫んだ。

    「嘘なもんか!だから俺がお前らのダドになって……」

    そこまで言った時だった。

    「たちゅけて!ペス!」

    ユキにかじりついていたユタがサクに向かって叫ぶ。突然のユタの叫びに驚くユキ・ゾウ・サトの目に、茶色の影が映る。それは、サクのふくらはぎめがけて飛び込む。

    「ぎゃっ!!!」

    サクのふくらはぎに、先ほどまで泡を吹いて倒れていたはずのペスが噛みついている。サクは必死にペスを引き放そうとするが、離れない。

    「ペス!!!」

    子ども達の顔が歓喜で溢れる。

    「離せ!クソ犬!」

    膝をつき、ペスを引きはがそうとするサクを黒い影が覆う。

    「サクさん、聞きたいことがあるんだがね」
    「あ……ボ……ンさん」

    静かな怒りを浮かべたボンがサクを見下ろしていた。

    「ペス!離しな!」

    サクから離れたペスは子ども達のところへと飛んでいく。子ども達にもみくちゃにされながら尻尾を振り続けるペス。

    「アグさんの新しい家族の話ですか?」

    卑屈な笑いを浮かべるサクにボンは鋭い視線を向ける。

    「どうしてペスにヒィロッポンを食べさせたかだよ!」

    19話に続く

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