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海倖メンタルヘルス察策事䟋シリヌズ vol.2䌑職ず埩職〔䞭線〕

    読了玄6分


    前線では、䌑職は「急に」起こるのではなく、助けを求めるこずがそもそも遞択肢に入りにくい職堎で、ずっず手前から続いおいた䞍調が、蚺断曞ずいう圢になっお初めお衚に出る――ずいう話をしたした。そしお、支えは手厚ければ届くずは限らず、手厚さが"肩代わり"になるず、かえっお自分から助けを求める力を匱めおしたう、ずも。

    では、その「助けを求める力」を、職堎はどう育お盎せばいいのか。今回は、そこぞ進んでみたしょう。

    ひず぀、倚くの䌚瀟が実際にやっおいるこずから怜蚎をしおみたいず思いたす。「぀らくなったら、い぀でも盞談しおね」ず䞊叞が䌝え、産業医やカりンセラヌぞの窓口も案内しおある。盞談できる先は、きちんず甚意しおある。それでも、そこぞ盞談が来ないたた、やはり蚺断曞が先に届く――ずいうこずが起こりたす。

    なぜ、盞談できる先を甚意しおも、人はそこぞ盞談しないのでしょうか。

    「い぀でも盞談しお」が、なぜ効かないのか

    海倖の研究に、ひず぀の手がかりがありたす。助けを求めるずいう行為には、それ自䜓にコストがかかる、ずいうこずです。

    ミシガン倧孊の瀟䌚心理孊者フィオナ・リヌは、職堎で人が助けを求めるずきに䜕が起きおいるかを調べ、次のように敎理しおいたす。助けを求めるこずは、「自分はこれを䞀人では扱えない」ず認めるこずであり、無胜に芋える・頌りないず芋られるずいう瀟䌚的なコストを䌎う。しかもそのコストは、盞手が自分より䞊の立堎であるほど、評䟡にさらされる堎面であるほど、重くなるLee, 1997; 2002。

    この芖点に立぀ず、「盞談先を甚意する」こずの限界も芋えおきたす。窓口を案内するのは、盞談のための入り口を増やす手圓おです。けれど、人が盞談しないのは、入り口が足りないからではなく、盞談するこず自䜓に瀟䌚的コストがかかるからです。窓口をいく぀増やしおも、「頌ったら、できない人だず思われる」ずいう負担そのものは䞋がりたせん。前線で芋た「そもそも助けを求めるずいう遞択肢が立ち䞊がらない」ずいう芏範の話は、この瀟䌚的コストの研究ず地続きです。

    このコストは、胜力の問題ではありたせん。実際に䞀人で扱えるかどうかずは別に、「助けを求めるず、どう芋られるか」ずいう評䟡ぞの懞念が、求める行為を抌しずどめおいる。裏を返せば、このコストは個人の資質ではなく、職堎ずいう堎のなかで䜜られたものです。だからこそ、蚭蚈の方向が芋えおきたす。手を入れる先は、本人の資質ではなく、「助けを求めるこずが、どう芋られ、どれだけ負担になるか」ずいう堎の条件のほうではないでしょうか。もしくは、「どういった条件の元であれば、助けを求めるこずが可胜になるのか」ずいっおもいいでしょう。

    「もっず気軜に盞談しおいいよ」ず本人を励たすだけでは、コストは䞋がりたせん。䞋げるのは、助けを求めるこずの蚭蚈のほうです。誰に・どのタむミングで・どんな圢で声を出すのかを、本人の勇気任せにせず、あらかじめ職堎の偎に組み蟌んでおく。――「助けお」は、勇気ではなく、蚭蚈で匕き出す。ここからは、それを実際に詊みた海倖の䟋を、二぀芋おいきたす。

    助けを求める先を、䞀人に集めない

    ひず぀めは、支える偎の"眮き方"です。

    むギリスずオランダの研究者たちは、これたでに積み䞊がっおきた埩職研究を䞀぀に束ね盎しお、IGLOO ずいう枠組みを瀺したしたNielsen ら, 2018。前線の最埌で觊れた「埩職研究は本人の回埩ばかりを芋お、呚りの支えを芋萜ずしおきた」ずいう反省の、その先に出おきた提案です。IGLOO は、支えが働く五぀の局の頭文字を䞊べたものです。本人Individual、同僚Group、䞊叞Leader、䌚瀟の制床Organisational、そしお䌚瀟の倖医療や公的な仕組みOverarching context。たずえば、本人のセルフケアだけでは足りず、同僚が普段から様子を気にかけ、䞊叞が業務量を調敎し、䌚瀟の制床が段階的な埩垰を支え、必芁なら瀟倖の医療に぀なぐ。この五぀が重なっお初めお、人は戻り、戻り続けられる、ずいう芋方です。これ自䜓は効果を実隓で枬った介入ではなく、散らばっおいた知芋を束ねお「どこを芋るべきか」を敎理した枠組みです。

    この枠組みが効くのは、「助けを求める先を䞀人に集めない」ずころです。倚くの職堎では、「぀らいこずがあったら䞊叞に」ず、支えが䞊叞ひずりに集䞭したす。けれど、䞊叞は評䟡者でもある。前線で芋たコストの理論からすれば、評䟡者に向かっお「できたせん」ず蚀うのは、いちばんコストの高い盞談です。求める先が䞊叞しかなければ、助けを求められなくお圓然なのです。同僚の暪の぀ながり、制床の窓口、䌚瀟の倖の専門家――助けを求める先が耇数あっお、しかもコストの䜎い入り口が混じっおいるこず。それ自䜓が、助けを求めるハヌドルを䞋げる蚭蚈になりうるのです。

    もうひず぀、「局で支える」ずいう発想が芁る理由を、別の研究が瀺しおいたす。オランダのトリンボス研究所粟神保健・䟝存症の囜立研究機関で、職堎のメンタルヘルスず埩職を研究するダニ゚ル・フォルカヌらは、メンタル䞍調で䌑職しおいる人に向けた「ECO」ずいうプログラムを詊したしたVolker ら, 2015。本人がオンラむン䞊で、症状があっおも埩職に向けお考え方を敎え、問題解決を緎習し、再発を防ぐ――ずいった五぀のモゞュヌルに取り組み、あわせお産業医にも、症状の経過に応じた助蚀が届く。オンラむンず産業医の協働を組み合わせた、本人の回埩に寄り添う蚭蚈です。

    結果は、わかりやすい䞀方向ではありたせんでした。支揎を受けた人のほうが、最初に職堎ぞ戻るたでが速く戻るたでの日数の䞭倮倀で、およそ50日察77日、9か月埌に症状が治たっおいた人も倚かった56%察37%。ずころが、「完党に元どおり働けるたで戻る」段階では、はっきりした差は出たせんでした。本人の回埩を手厚く支えれば、埩垰は速くなるけれど、戻り続けられるかどうかは、それだけでは決たらなかった。速く戻すこずず、戻り続けるこずは、別の問題だったのです。戻ったあずも支えが耇数の局から続くこず――IGLOO が「局」にこだわるのは、ここに理由がありたす。

    「助けお」を、手続きに組み蟌む

    ふた぀めは、「助けを求めるこず」そのものを、本人の決断ではなく、手続きの䞀郚にしおしたった蚭蚈です。

    オランダ・フロヌニンゲン倧孊メディカルセンタヌで、メンタルヘルスず仕事の関係を研究するアむリス・アレンツらは、埩職した人の再発を防ぐための「SHARP-at-work」ずいうプログラムを䜜り、その効果を無䜜為化比范詊隓で確かめたしたArends ら, 2014。SHARP は「健やかな就劎参加ず再発予防を埌抌しするStimulating Healthy participation And Relapse Prevention」の頭文字で、䞭身は、構造化された問題解決の進め方です。

    進め方は、五぀のステップに分かれおいたす。埩職した本人が、産業医の支えを受けながら、順に螏んでいきたす。①職堎で匕っかかっおいる問題ず、逆に掻かせそうな機䌚を掗い出す。②その解決策を䞀緒に考える。③解決策ず、必芁な支揎を曞き出し、実行できそうか芋極める。④それを䞊叞ず話し合い、具䜓的な行動蚈画にする。⑀蚈画がどう進んだかを振り返る。ここで産業医は、問題の䞭身に立ち入っお答えを䞎えるのではなく、「どう考えるか」を問いかけお本人の思考を助ける圹に培したす。䞊叞が正面から関わるのは、第四のステップ――行動蚈画づくり――です。

    ここに、蚭蚈の芁点がありたす。この進め方では、「困っおいるこずを挙げる」こずが、特別な告癜ではなく、決められた手順の最初の䞀歩になっおいたす。本人が勇気を振り絞っお「実はしんどくお」ず切り出すのではなく、ステップに沿っお進めれば、困りごずは自然に蚀葉になり、䞊叞も行動蚈画の段で必ず関わる。リヌの蚀う"助けを求めるこずの瀟䌚的コスト"――できない人だず思われる、ずいう負担――を、個人の性栌に頌るのではなく、手続きの圢で䞋げようずする取り組みです。

    結果は、このプログラムを受けた人たちは、受けなかった人たちに比べお、1幎のあいだにメンタル䞍調で再び䌑職する人が、少なかったこずが瀺されたした再発のしにくさを瀺す調敎枈みオッズ比で0.40、95%信頌区間0.20〜0.81。再発たでの期間も延びたした。ただし、このプログラムは、本人の抑う぀や䞍安ずいった症状の尺床を、通垞のケア以䞊に改善したわけではありたせん。効いたのは、「たた䌑職に至る」のを防ぐずころ――぀たり、戻っおきた人を、たた同じ堎所ぞ戻しおしたわないずころでした。埩職支揎がいちばん避けたいのは、その再発です。「助けを求めるこずを蚭蚈に組み蟌む」ずいう発想が、そこに実際に効いたのです。

    埌線ぞ

    ここたで、海倖で詊みられ、効き方たで調べられた二぀の䟋を芋おきたした。助けを求める先を䞀人に集めない局の眮き方IGLOOず、助けを求めるこずを手続きに組み蟌む構造SHARP。どちらも、「助けお」を個人の勇気から、職堎の蚭蚈ぞず移そうずする工倫でした。

    では、これを日本の珟堎に、どう接続させるのか。日本には「4぀のケア」ずいう枠組みがありたす。海倖の詊みず芋比べるず、芋えおくるものもある。「職堎埩垰支揎の手匕き」や安党配慮矩務ずいう足堎ずどう組み合わせるかで、効き方も倉わっおきそうです。埌線は、その接続の話です。しっかりやっおきた䌚瀟だからこそ、次に䜕ができるのか――そこぞ進みたいず思いたす。


    䞻な参照元䞭線

    • Lee, F. (1997). “When the going gets tough, do the tough ask for help? Help seeking and power motivation in organizations,” Organizational Behavior and Human Decision Processes, 72(3), 336–363.

    • Lee, F. (2002). “The social costs of seeking help,” Journal of Applied Behavioral Science, 38(1), 17–35.

    • Nielsen, K., Yarker, J., Munir, F. & BÃŒltmann, U. (2018). “IGLOO: An integrated framework for sustainable return to work in workers with common mental disorders,” Work & Stress, 32(4), 400–417.

    • Volker, D. ほか (2015). “Return@Work,” Journal of Medical Internet Research, 17(5), e116.

    • Arends, I. ほか (2014). “Prevention of recurrent sickness absence in workers with common mental disordersSHARP-at-work,” Occupational and Environmental Medicine, 71(1), 21–29.

     
     
    堀田剛HORITA Tsuyoshi 合同䌚瀟はたらく人ず 代衚瀟員公認心理垫 富山県を拠点に党囜の䌁業に向けお、メンタルヘルスケア、人事コンサルティング、職堎環境改善、心理カりンセリングなどを行っおいたす。 https://www.hatarakuhitoto.com

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