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【亀好書房④】いずれ来る老眼に備えて

     はじめましての人も、前から知ってる方も、ごきげんよう。
     岡埜おかの 由木古ゆきこです。

     いずれ足元からすくわれる。

    (文字数:約1200文字)


     点字使用者は視覚障害者の中でもたったの8%、

     という統計を、私がどうにも信用し切れないのは、
     中途失明者が点字習得にたどり着くまでの道のりがあまりに狭いからだ。

     気持ちは痛いほど分かる。

     家族も友達も社会全体も、基本的には点字を知らないし、知ってはいても日常的に使って生活していない。
     従って周囲の人々は、これまでのようなコミュニケーションが取れなくなる方を怖れ心配する。あるいは音声での代替をまず考える。
     前向きに、明るい展望を持って、点字の習得を勧め切れる人がいない。

     完全に見えなくなってしまうまでは、印刷の彩度を高めたり、文字のコントラストを強めたり、拡大鏡を使ったりして、どうにか目視で文字を文章を読み取ろうとする。
     しかし、進行性の症状である場合は尚更、点字を早めに習得してなるべく視神経を休めた方が良い、と私などは思ってしまう。


     それに何も失明に至らなくても、
     皆さんにも、いずれ来ますよ。老眼が。

     私の配偶者は今五十代なのだが、大好きだったトム・クランシーの文庫本を開けば悲しい顔になるし、役所や車のディーラーからの封書が届いて封を開ける度に、
    「見えない」
    「読めない」
    「書けない」
     とイライラする機会が増えた。

     イライラしながら返送書類にサインしたりするのでミスもしやすくなる。見かねて私が書いてあげたりもするが、記載内容の確認などの作業が終わるまではイライラしっぱなしだ。どうにかしてくれ。

     私も四十代後半を迎えて、そろそろ忍び寄ってきた。私は極度の近視なので、むしろ眼鏡を外さなければ見えないというカオス。

     皆さんにもいずれ読書が好きな方ほど悲しむ日が、イライラして配偶者に当たる日々が、ほぼ必ずやってくるのです。
     極度の近視である私は緑内障のリスクも高い。だけど私の心持ちは比較的平穏。なぜなら触読も身につけているから。

     ちなみに点字翻訳ボランティア員でも触読ができる者は少数派です。
     触読できなくたって点字編集システムは、カナ文字表示できるし音声読み上げ機能あるから。なんなら点字知らなくたってオッケー。

     触読も専用の教科書を買って半年ほどかけて身につけましたから、簡単とは言いませんが、逆に言えば半年かければ身につくんです。
     初めのうちはやたらと疲れますが、これまでに無かった回路が脳に築き上げられ組み上がっていく感覚が楽しめます。

     やってみたい方にはぜひおすすめしたいのですが、
     三日続けて一日休む、くらいのペースで続けた方が、休んだ翌日の読み進み具合がスムーズになります。
     脳の回路が構築されるまでには「触れない時間」もあった方が良いっぽいです。

     もちろんですが、指にも老眼は訪れる、つまり指先の感覚も老いるので、習得するのならなるべく若いうちが良い。しかし一度身に付けば蘇ります。

     習得できたならちょっと嬉しい事として、両手を前に差し出すだけで、
    「読める! 読めるぞ!」
     とムスカごっこが出来ます。

     しょうもない、と今苦笑した方も、きっと一度はやりますから。


     触読については2023年に記事にしましたので、興味がある方はそちらもどうぞ。↓

    以上です。
    ここまでを読んで下さり有難うございます。

    この記事は、
    #創作大賞2026
    #ビジネス部門  応募作です。


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