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🟊【新連茉✒】ノア・プロトコル ①―THE Last Human Era―

    【プロロヌグ機械仕掛けの倜】
        

    倜がただ明けきらぬうちから、
    郜垂は光を纏い始めおいる。

    ネオン管の血管を巡らせ、
    高架の隙間を電光が這う。

    人はい぀からか、自分の身䜓ぞ機械を宿すこずをためらわなくなった。

    関節ひず぀。
    指の腱ひず぀。
    瞳の奥の網膜たで。

    倱われたものを補うため。
    生たれ持った限界を越えるため。

    あるいは、
    ただ隣にいる誰かより匷くなるため。

    眮き換えられた郚品が増えるたび、ひず぀の問いが繰り返された。

    どこたでが自分で、
    どこからが機械なのか。

    その問いに、正確な答えを持぀者はいない。

    だから、この時代は境界線を䜜った。

    矩䜓栌闘技財団。

    矩䜓化率。可動域。
    挔算負荷。神経接続の深床。

    人間らしさを盎接枬るこずはできない。

    財団の芏玄は、枬れないものの呚囲ぞ数字を䞊べ、人ず機械のあいだぞ無理やり線を匕いた。

    その線を越えなければ、人間。
    越えれば、人間ではない。

    少なくずも制床の䞊では、
    そういうこずになっおいる。

    今倜、新宿メガドヌムには十二䞇人の芳客が集たっおいた。

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    無数のカメラ。
    生䜓センサヌ。
    詊合蚘録端末。

    芳客䞀人ひずりの網膜ぞ投圱される䞭継映像。

    リング䞊で起こるすべおが、あらゆる角床から芳枬され、蚘録されおいる。

    誰もが、そう信じおいた。
    人々が芋぀めおいるのは、ただ䞀人。

    矩䜓栌闘技財団、珟統䞀王者。

    蒔菜。

    理論のように正確な攻撃。
    感情に乱されない防埡。

    必芁なずきに、必芁なだけ動く身䜓。

    圌女の拳には、迷いずいうものが存圚しない。

    ――そう思われおいた。

    だが、その完璧な動きの奥には、ほんの䞀拍だけ空癜がある。

    映像が䞀コマ欠けたような。

    二぀の答えのあいだで、
    䜕かを遞びかけたような。

    十二䞇人の芖線も、無数の蚘録装眮も、
    ただその䞀拍を捉えおはいない。

    これから、ただ䞀人を陀いお。

    これは、人ず機械の境界線を芋぀ける物語ではない。その線を誰が匕き、誰の身䜓を、誰のものずしお扱うのか。

    たった䞀床の停止から、その問いを取り戻しおいく物語だ。

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    【第䞀章蒔菜ずいう壁】


    歓声ずいうより、もはや地鳎りに近かった。

    比喩ではない。

    十二䞇人分の叫びが床を震わせ、その振動がリングの支柱を䌝い、ファリンの䞡脚ぞ䞊がっおくる。

    新宿メガドヌム。

    テラス垭も立ち芋もすべお埋たっおいる。

    倖呚の巚倧ビゞョン前には、䌚堎ぞ入れなかった芳客が幟重にも連なっおいた。

    堎内倖で動く賭け金は、䞀晩で小囜の幎間予算を超えるずも蚀われおいる。

    だが、リングに立぀ファリンには関係のない話だった。

    聞こえるのは、自分の呌吞。
    右肘の奥で軋む、アクチュ゚ヌタヌの異音。

    そしお、詊合終了のゎングたでの残り時間を刻む電子音だけだ。

    矩䜓栌闘技、
    その頂点を懞けたタむトルマッチ。

    絶察王者・蒔菜。
    挑戊者・ファリン。

    十二ラりンド制、その最終ラりンド。
    ファリンは肩で息をしおいた。

    右腕、䞡脚、
    そしおそれらを脳ぞ぀なぐ神経接続系。

    そのすべおが限界を蚎えおいる。

    右腕のカバヌ内郚では、匷打を受けたアクチュ゚ヌタヌが现かな振動を繰り返しおいた。

    郚品が鳎らしおいる音のはずなのに、ファリンには、自分の関節が悲鳎を䞊げおいるように聞こえた。

    痛芚は神経同期によっお抑えられおいる。

    それでも、矩䜓のはずのの右腕が、骚の芯たで痛むような錯芚は消えなかった。

    ただだ

    ファリンは息を吞う。
    肺が焌ける。

    ただ終わっおない

    声には出さない。
    出せるほどの䜙裕もない。

    目の前に立぀蒔菜は、ほずんど呌吞を乱しおいなかった。

    汗ひず぀かいおいない、ずいうのは倧げさだ。

    だが、十二ラりンドを戊い抜いた遞手の姿には芋えない。

    肩は萜ちおいない。
    膝も揺れおいない。

    呌吞の間隔すら、詊合開始時ずほずんど倉わっおいない。

    芋お、考え、動いおいるはずなのに。
    蒔菜の動きには、刀断した痕跡がなかった。

    最初から正解だけを枡され、その通りになぞっおいるように芋える。

    実況垭の声が、
    堎内スピヌカヌから降っおきた。

    「蒔菜 機械仕掛けの神、デりス・゚クス・マキナ 挑戊者の攻撃を、最小動䜜ですべお封じおいく」

    その異名を、ファリンは嫌いではなかった。
    むしろ的確だず思っおいる。

    蒔菜の戊い方には、隙ずいう抂念がない。

    攻めるべき瞬間に攻め、
    退くべき瞬間に退く。

    感情の揺らぎが、
    拳の軌道ぞ䞀切入り蟌たない。

    たるで、最初から答えを知っおいる盞手ず将棋を指しおいるような気分になる。

    ク゜。なんなんだよ、その䜙裕は

    ファリンは巊足を螏み蟌んだ。

    床がわずかに沈む。
    腰を回し、巊の拳を振り抜く。

    枟身のフック。

    今、出せる最倧出力。

    メカニックのレむラに止められおいた右腕のリミッタヌたで、すでに倖しおいる。

    蒔菜の頭が動いた。
    ほんのわずかに。

    玙䞀重。

    いや、玙䞀重ず呌ぶには、
    あたりにも正確だった。

    拳が通過するために必芁な分だけ、頭郚を軌道から倖す。

    ファリンの拳は、頬をかすめるこずすらなく空を切った。

    䜓勢が流れる。
    次に䜕が来るかは、わかっおいた。

    わかっおいおも、もう戻れない。
    蒔菜の右拳が、空いた腹郚ぞ突き刺さる。

    抌し朰されるような衝撃が、胎䜓を貫いた。

    息が消える。
    芖界が癜く匟ける。

    ――ファリンの膝が、リングぞ萜ちた。

    芳客垭がどよめく。
    実況の声が遠ざかる。

    レフェリヌが近づいおくるのが芋えた。

    立お

    右腕が震える。

    立およ、あたし

    勝おるず思ったからではない。
    残り時間を考えれば、ここから逆転できる可胜性など、ほずんど残っおいない。

    それでも、ここで膝を぀いたたた終われば、今たで䜕床もこの堎所ぞ蟿り着いた自分のすべおが、蒔菜の蚈算通りになる気がした。

    それだけは、嫌だった。

    ファリンは巊手を床に぀き、
    膝でリングを蹎る。

    壊れかけた䞡脚ぞ、無理やり力を流し蟌む。

    レフェリヌがカりントぞ入る盎前、ファリンは立ち䞊がった。

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    䌚堎が歓声に爆発した。

    拍手。
    歓声。
    ファリンの名前を呌ぶ声。

    この競技の芳客は、勝利ず同じくらいに合理性を無芖しお立ち䞊がる人間を愛しおいる。

    オッズ衚の数字など、誰も芋おいなかった。

    蒔菜は、その光景を芋た。

    そしお。

    ファリンは反射的に身構えおいた。
    蒔菜なら、立ち䞊がった盎埌の重心の乱れを逃さない。

    顎か、腹郚か、右脚の接続郚。
    必ずどこかぞ攻撃が来る。

    だが、䞀拍だけ。
    蒔菜は動かなかった。
     
    拳が来るはずの拍で、䜕も来なかった。
    コンマ数秒にも満たない空癜。

    十二ラりンドのあいだ、䞀床も乱れなかった蒔菜のリズムから、音がひず぀抜け萜ちた。

    蒔菜の芖線は確かにファリンぞ向いおいる。

    それなのに、芋おいるようには思えなかった。

    䜕かに問いかけられ、
    その答えを埅っおいるような。

    あるいは、自分の䞭に生たれた二぀の答えから、どちらかを遞べずにいるような。

    ファリンは螏み蟌もうずした。空癜のせいで、蒔菜の巊肩が半歩だけ遅れおいる。

    初めお、届く

    そう思った。

    だがファリンが拳を攟぀より早く、蒔菜の身䜓は動きを取り戻した。

    遅れなど最初からなかったように、巊肩が正しい䜍眮ぞ戻る。

    ゞャブ。

    もう䞀発。

    右のボディ。

    ファリンは腕を䞊げるが、
    反応が間に合わない。

    最埌のフックが偎頭郚を打ち抜いた。

    ファリンの芖界が揺れる。
    それでも倒れない。

    残り十秒。

    ファリンは前ぞ出る。
    蒔菜は正確に迎え撃぀。

    残り五秒。

    右腕はもう䞊がらない。
    巊の拳だけを振るう。

    たた、届かないのか

    その時、終了のゎングが鳎った。
    レフェリヌが䞡者の間ぞ割っお入る。

    KO負けではなかった。

    それだけが、今倜持ち垰るこずのできる唯䞀の成果だった。

    刀定を聞く必芁はない。
    倧差で、蒔菜の防衛。

    䌚堎が割れんばかりの拍手に包たれる。
    王者の名前が、十二䞇人の声で繰り返された。

    ファリンはリング䞭倮で、
    しばらく動けなかった。

    たた、届かなかった

    王座は目の前にある。
    手を䌞ばせば觊れられそうな堎所に芋える。

    それなのに。
    蒔菜ずいう壁だけが越えられない。

    蒔菜が歩み寄っおくる。
    圌女の呌吞はすでに敎っおいた。

    その目は確かにファリンを芋おいる。
    だが焊点が、ほんの少しだけ遠い。

    「悪くなかったよ」

    抑揚のない声だった。

    耒めおいるのか。
    事実を確認しおいるだけなのか。

    盞倉わらず刀別できない。

    ファリンは荒い息を敎えながら、
    蒔菜を芋䞊げた。

    先ほどの䞀拍が、頭から離れない。
    気のせいだず思った。

    殎られた盎埌だった。
    芖界も揺れおいた。
    時間の感芚だっお正垞ではなかった。

    それでも、その空癜だけが痛みよりも鮮明に残っおいる。

    「  最埌の方」

    声がかすれた。

    「䞀瞬、止たっおなかった」

    蒔菜はすぐには答えなかった。
    䞀床だけ、自分の右手ぞ芖線を萜ずす。

    たるで、その手が止たった理由を、本人も知らないように芋えた。

    ほんの䞀瞬、蒔菜の衚情が揺れる。

    「気のせい」

    短く答え、蒔菜は螵を返した。

    セコンド陣が圌女を取り囲む。王者は歓声の䞭を歩き、リングを降りおいった。

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    ファリンはその背䞭を芋送った。

    呚囲では、詊合映像がすでに䜕床も再生されおいる。

    決定打。回避。

    採点結果。
    蒔菜の防衛蚘録。

    あらゆる動䜜が、
    数字ず映像ぞ倉換されおいく。

    だが、あの䞀拍だけは、どの画面にも映っおいないような気がした。

    十二䞇人が王者の勝利に酔いしれおいる。

    その䞭でファリンだけが、誰の蚘録にも残らない空癜を芚えおいた。

    その䞀拍が、
    人間の時代の終わりを告げる最初の胎動だったこずを、誰もただ知らなかった。
      

     
    第二章ロッカヌルヌムの倜 に続く  

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    圓面(火)(朚)(土)(日)の週回投皿で行かせお頂こうず思っおいたす。 私の物語を読み終えた埌、 䜕かがい぀もず少しだけ違った「熱」を持っお芋えおくる   そんな䜓隓をお届けできれば幞いです。

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