
【ショートショート】透明な秘薬 黒歴史情報保護法 [毎週ショートショートnote]
透明な秘薬 黒歴史情報保護法
「閣下。完成しました」
「おお、ついにできたか」
人払いをした室内で、領主は男から、一本の硝子瓶を受け取った。瓶の中には、無色透明の液体が収められていた。一見、何の変哲もない、ただの水とも思われる。
「これを用いれば、証拠を残さず、目的を遂げることが叶いましょう」
この液体は、毒薬だった。薬剤によっても、魔法によっても、検出不能。使用された痕跡を残さず、対象となった人物を、葬り去ることが可能である。
「よくやった。褒賞は、望むままだ」
これで、邪魔者は全て、排除することができよう。そして、この毒薬の作製に関わった者を全員始末すれば、秘密は、永劫に守られる。早速、手配せねばなるまい。領主の口唇に、酷薄な笑みが滲んだ。
その夜、領主は、己の配下の暗殺者を街へと送り出した。
翌朝、暗殺者は、何らの成果もなく、館へと戻った。標的は、既に皆、街から逃れていた。
館は、騒然とした空気に包まれていた。領主が、昨夜のうちに、急死したのだという。
その後、徹底的に調査がなされたものの、そのかいはなく、死因は永久に不明のままだった。
了 453字
今回、こちらのお題に参加させていただきました。
どうもありがとうございます。
本作は、拙作長編ファンタジー小説〈隻翼の竜の書〉シリーズの世界の、黒歴史の一端です。〈隻翼の竜の書〉については、こちらをご覧ください。
前回参加した作品はこちらです。