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Photo bydongmu

『発達障害のよりみちが、それでも生きる理由。』を元教師が読んでみた

    よりみちさんの本『発達障害のよりみちが、それでも生きる理由。』を読んだ。

    よりみちさんは、絵本作家や画家として活動をしている方だ。編集者さんを通して知り合い、昨年はオンラインでお話させていただいた。私は現在の姿を先に知っていたから、本を読みながら、何度も立ち止まった。

    今、絵を描いている人。
    自分の表現を持っている人。
    その人の作品を見て、素敵だなと集まる人がいる。

    けれど、そこにたどり着くまでの道のりは、決してまっすぐではなかった。


    本には、子どもの頃から学校で居場所を持ちにくかったことが書かれていた。ADHDがあり、けれど当時は今ほどそうした障害や特性についての知識が一般的ではなかった。

    本人も周囲も、何に困っているのかが分からないまま、ただ「うまくできない」「なじめない」「怒られる」という経験が積み重なっていく。


    大人になってからも、挫折に何度も見舞われる。

    それでも、家族に支えられ、ご本人も踏ん張りながら、今がある。読み終えたあと、私は「よかった」と思うと同時に、どうしても学校のことを考えてしまった。


    私は元中学校の教員である。

    もともと学校という場所は好きだった。先生という生き物も、なんだかんだ好きだった。子どもがいて、日々いろいろなことが起きて、予定通りに進まなくて、面倒で、騒がしくて、それでもたまに信じられないくらい美しい瞬間がある。そういう場所だった。

    けれど、一緒に働いていて「なんなんだこの人は」と思う教師も、正直少なくはなかった。

    もちろん、先生にも相性がある。ある子にとっては怖い先生が、別の子にとっては頼もしい先生になることもある。厳しさが必要な場面もあれば、ゆるさに救われる場面もあった。

    「いい先生とは何か」をひとことで言い切ることはできない。私自身、至らなさも多々あったと自覚している。

    それでも、よりみちさんの本を読んでいると、願わずにはいられない。 よりみちさんのような時代を過ごしている子のそばに、たった一人でもいいから、理解を示せる大人がいてほしいと思う。

    学校では、集団と同じように動ける子が「ちゃんとしている」と見られ、それができない子は「わがまま」「やる気がない」と片付けられがちだ。

    でも、その子の中では本当に困っているのかもしれない。聞いていないのではなく聞き続けることが難しい、反抗しているのではなく不安を処理しきれない。

    すべてを特性のせいにすべきではないし、先生が一人で完璧に全員を見るのには限界がある。それでも、見方が一つ変わるだけで、子どもへの言葉は変わる。

    「なんでできないの」ではなく「どこで困っているのか」を考える。
    「ちゃんとしなさい」の前に「どうしたらできそうか」を一緒に探す。

    それだけで、子どもが受け取るものは違ってくる。

    教師は、子どもの人生を丸ごと救える存在ではない。家庭環境を変えられないし、特性を消すことも不可能だ。

    けれど、子どもが自分を「だめな子」と決めつけてしまう前に、別の見方を渡すことはできるはずだ。

    「あなたは怠けているのではなく、困っているのかもしれない」 そうした言葉を大人が持っているだけで、その子の中に残るものは変わるのではないか。

    子どもの頃の学校は、世界のほとんどを占める。

    大人になれば、学校なんて人生の一部だったと思えることもある。けれど、子どもにとってはそうではない。教室で居場所がないことは、世界に居場所がないことにかなり近い。

    毎日通う場所で、うまくできない自分を突きつけられるのは、かなりしんどい。

    よりみちさんの本には、そのしんどさがあった。けれど同時に、家族の支えも、ご本人の踏ん張りもあった。簡単に「救われてよかった」とまとめられるものではないけれど、それでも今、表現する人として立っている。その事実に、私は静かな強さを感じた。

    そして、だからこそ思う。

    今、学校のどこかにも、同じように居場所を持ちにくい子がいるのだと思う。その困り感を見落とさない大人が、学校に一人でもいてほしい。

    これは、学校にだけ向けた願いではない。

    職場にも、家庭にも、地域にも、「なんでこの人はこうなんだろう」と思われている人がいる。その背景には、本人にも説明しきれない困りごとがあるのかもしれない。

    その視点を持つだけで、言葉の出し方は変わっていくだろう。


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