
【ご挨拶】はじめまして、一綾(いちあ)です。― 三つの物語、一つの真実。
はじめまして。一綾(いちあ)と申します。
昼間の私は、数字と論理が支配する幾何学の世界に身を置いています。
そこでは「正解」だけが価値を持ち、言葉にならない震えや、行き場のない感情は「ノイズ」として静かに削り取られていきます。
けれど、深夜。
タクシーの窓を流れる雨に滲む街の灯(あかり)を見つめるとき。
あるいは、静まり返ったオフィスで最後の一口の冷めたコーヒーを飲み干すとき。
私は、自分の中に沈殿した「澱(おり)」のような、けれど誰よりも切実な言葉たちの体温を感じていました。その数字では割り切れない感情を掬い上げ、物語という形にするために、私はこの場所に来ました。
「綾(あや)」とは、糸が交差し、美しい模様を描くこと。
私たちの人生も同じです。嘘と真実、愛と憎しみ、光と影。無数の糸が絡み合って、複雑な模様を描いています。その膨大な「綾」の中から、誰かにとっての切実な真実となる「一筋」を編み上げたい。そんな願いを込めて、「一綾(いちあ)」と名乗ることにしました。
ここでは、属性や肩書きを脱ぎ捨て、人間の心の深淵を描く三つの物語を綴っています。
一つは、組織の論理に抗い、真実を奪還する再生の記録。
もう一つは、旋律にのせて、言葉にならない夜の感情を編み上げる。
そして、最先端の科学捜査で、声なき死者の沈黙を翻訳する。
TOKYO SILENT FILES
科学は嘘をつかない。嘘をつくのは、いつも人間だ。
病死や事故として処理され、誰も事件だと気づかないまま埋もれていく——そんな「声を上げられなかった死」だけを、最先端の科学で暴く独立機関、S-Lab。ごく微量の分子から、死者の声を聴く物語です。
File.01「毒殺の左手」は、創作大賞2026 ミステリー小説部門の中間選考を通過しました。
あなたが、誰にも言えない言葉を抱えて眠れない夜。
この場所にある物語が、青いインクのように静かに心に滲み、ほんの少しでも「味方」になれることを願っています。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
一綾