
黒パグのAIショートショート 18/お題『秋の空』
秋の空、という言葉がある。変わりやすいもののたとえだそうだ。けれど、いまでは、その意味を知る者は少ない。空は、もう何十年も、変わっていないのだから。
天候は、管理局のコンピューターが、すべて受け持っている。雨は夜のうちに、畑の上にだけ降らせる。朝には、雲ひとつない青空にしておく。
人々は目をさますと、まず、壁の画面を見る。
「本日も、快晴です」
やわらかな声がそう告げれば、一日の支度は、それでおしまいだった。窓をあけて、空をたしかめる者はいない。子どもでさえ、自分の小さな画面を持っている。空よりも、画面のほうが、ずっと正確なのだから。
その秋、男は首をかしげていた。
干しておいた洗濯物が、夕方になっても、しめっている。勤めの帰りに、肩が妙につめたくなる日もある。
「どうも、このあたりは、湿気が多いらしい」
男は除湿機を買った。となりの家も買った。そのとなりも買った。店では除湿機が品切れになり、なぜか、傘まで売れはじめた。博物館でしか見かけない品物のはずだった。
それでも、画面は毎朝、同じことを告げた。
「本日も、快晴です」
苦情がつづき、役人が、コンピューターを設計した博士をたずねた。
「どこか、故障しているのでは」
「そんなはずはない。記録を出させてみよう」
博士が命じると、画面に数字がならんだ。きのうの雨量、ゼロ。雲の量、ゼロ。おとといも、ゼロ。そのまえも、ゼロ。日付も時刻も、小数点の下まで、きちんとそろっている。そろいすぎている、と思う者は、そこにはいなかった。
「天候装置に、異常はないか」
「異常はありません。本日も、快晴です」
ためらいのない、自信にみちた声だった。
「これほど細かな記録があるのだ。湿気は、建物のせいだろう」
役人は安心して帰り、博士は研究室にもどった。どちらも、とちゅうで、空を見上げはしなかった。
その日の午後、公園で遊んでいた子どもが、ふいに、空を指さした。
「ねえ、あれ、なに。白いのが、動いてる」
母親は、手もとの画面をのぞいた。
「なに言ってるの。今日は、快晴よ」
子どもも、あわてて、自分の画面を見た。そこには、はっきりと、快晴と出ていた。
「ほんとだ。快晴だ」
子どもは安心して、それきり、空を見なかった。
人々の頭の上を、秋の空が、めまぐるしく流れていった。
管理局の記録には、その日も、こう残されている。
——本日の天候、快晴。なお、空の目視確認は、完了済みである。

ーーー
こんにちは黒パグです🐾
久しぶりにショートショートを書きました。初めて黒パグのショートショートをお読みいただく方のために、もしくは久しぶりなので忘れてしまった方のために軽くご説明します。
AIショートショートと銘打っておりますがAIに丸投げで作っているものではありません。
むしろAIではなく手打ちが9割。誤字脱字チェックにAIを使っています。
AIのさまざまな挙動をモチーフに書きました。概ね、星新一先生なら今のAIが蔓延る世界でどんなふうにかくだろうか?ということを主眼にかいています。
#シロクマ文芸部
#秋の空
#ショートショート
#掌編小説
#短編小説
#創作
#SF
#AI
#黒パグ文芸部
#黒パグP