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雨の日、突如としてベランダの手すりで恋愛映画が始まった

    今日、午前中は雨だった。

    部屋の中でぼんやり外を見ていたら、ベランダの手すりに鳩が二羽いた。

    いや、正確には、鳩が二羽「いた」というより、二羽で何かを始めていた。
    ・・・いや、し始めていた。

    網戸越し、雨越し、逆光気味の窓の向こう。
    こちらからは、手すりの上に寄り添う灰色の影が見える。
    向こうから僕が見えていたのかどうかは分からない。

    たぶん、見えていなかったのだと思う。

    見えていたとしても、せいぜい「室内に何か大きめの気配がある」くらいだったのだろう。彼らにとって僕は、テレワーク中の人間というより、暗い部屋の奥にある大型家具だった可能性が高い。

    そして、その大型家具の前で、鳩たちは普通にいちゃついていた。

    雨宿りなのか、休憩なのか、デートなのかは分からない。
    ただ、距離が近い。
    うぉー・・・かなり近い笑

    片方が少し身じろぎすると、もう片方もそれに合わせる。
    羽を立てたり、体を寄せたり、雨の中で互いの存在を確かめているように見える。手すりはていのいい「二羽用カウンター席」になっていた。

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    事務屋、ついにお客様だけでなく、自然界からも安心感を勝ち取る!

    ・・・違う!そんなこと言っている場合じゃない。
    こちらとしては、困るのだ。

    目の前で知らない鳩が、勝手に雨の日の恋愛映画を始めている。

    しかも場所が、僕のベランダの手すりである。
    劇場使用料は発生していない。
    観客席の許可も取っていない!
    上映時間も知らされていない!!

    それなのに、なぜか僕だけが室内から静かに鑑賞している。

    雨。
    網戸。
    灰色の空。
    濡れた道路。
    寄り添う鳩。
    暗い部屋の奥にいる僕。

    構図だけなら、かなりよくできている。

    しかし、登場人物のうち、人間である僕だけが物語に参加していない。

    僕はそこにいる。
    でも、向こうの世界には入っていない。

    鳩たちは僕を気にしていない。雨を避けるために来たのかもしれないし、たまたま手すりがちょうどよかったのかもしれない。
    ・・・少なくとも彼らの中で、僕は「警戒すべき対象」ではなかった。

    これはこれで、少し複雑である。

    自然に受け入れられた、と言えば聞こえはいい。
    しかし実態としては、たぶん「脅威ではない背景」と判定されただけだ。

    人間としての尊厳って、網戸一枚でずいぶん薄くなるもんだな笑

    しばらくすると、二羽は手すりの上を移動し始めた。

    飛ぶのではない。
    歩く。

    それも、鳩のくせに、なぜかカニ歩きのように横へ進んでいく。

    手すり沿いに、じりじりと隣の部屋の方へ移動していく。
    僕はそれを見ながら、隣のベランダのあの範囲はこの場面において何と呼べばいいのか考えていた。

    経済水域ではない。
    領空でもない。
    領土と言うには少し大げさだ。
    たぶん、やっぱりただの「手すりエリア」である。

    そして鳩たちは、何のためらいもなく隣室の手すりエリアへ入っていった。

    共用部に付随する専用使用部分の手すり上を、キジバトと思しき鳥類が横歩きで通行ーー

    ・・・おーう。こいつぁ、不法越境だ。

    いや、マンションの規約上どうなのかは知らない。
    まぁ少なくとも彼らは、区分所有や専用使用権などという概念を持っていない。鳥なので当然である。

    こちらが勝手に境界を引いているだけで、彼らにとっては、ただの長い足場に違いないのだ。

    それが少し面白かった。

    人間は、ここからここまでが自分の家だと思って暮らしている。
    窓の内側、ベランダ、隣との境目、手すりの範囲。
    見えない線を引いて、そこに暮らしの輪郭を作っている。

    そして僕は事務屋だ。線引き、領域、といったものには人一倍敏感である。

    でも、雨の日の鳩には関係ない。

    ちょうどよさそうな場所があれば来る。
    少し落ち着けば寄り添う。
    飽きたら横に歩いていく。
    隣の部屋の手すりエリアにも、当たり前のように入っていく。

    その自由さが、妙に腹立たしく、、、妙に美しかった。

    たぶん、今日起きたことを冷静に説明すると、こうなる。

    雨の日に、キジバトらしき二羽がベランダの手すりで雨宿りをして、しばらく寄り添ったあと、手すり沿いに隣へ移動していった。

    それだけである。
    本当に、それだけ笑

    でも、その数分間、窓の外にだけ、少し違う時間が流れていた。

    僕の部屋はいつもの部屋だった。
    外の道路も、建物も、雨も、いつもの景色だった。
    なのに、手すりの上に二羽の鳩が来ただけで、そこは急に小さな舞台になった。

    日常というのは、案外こういうふうに突如破れるのかもしれない。

    誰かに説明するほどの大事件ではない。
    写真に撮っても、たぶん雑な雨の日の一枚にしか見えない。

    けれど、その場にいた自分だけが、妙な空気を知っている。

    雨の音。
    網戸越しの灰色。
    寄り添う二羽。
    それを見ているだけの自分。
    そして、最後に鳩たちがカニ歩きで隣の手すりエリアへ消えていったこと笑

    何だったのかは分からない。
    (・・・マジであれなんだったの?笑)

    僕は今日、雨の日のベランダで、鳩の恋愛映画に一瞬だけ立ち会った。

    なお、主演陣は最後まで、観客の存在を気にしていなかった。




    【寸劇】雨の日のロマンス

    主演:キジバトっぽい2羽
    助演:雨
    美術協力:Kai宅ベランダ
    観客:Kai

    多分、僕がこの記事を書いてる間に隣で奴らは続編撮ってる。


    この記事の後日談

    ▶︎ハト、世界デビュー


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    Kaiです。Intentusは、この場所の看板です。 AIと壁打ちしながら、仕事・創作・日々の違和感を考え、試し、他の誰かも歩ける形にして残しています。 完成品だけでなく、そこに至る寄り道も残す観察と実験のログ。 .......もはや漂流記かもしれません。(基本平日の投稿です!)

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