メインコンテンツへスキップ
見出し画像

観葉植物の根腐れは、鉢から抜く前に手が分かれます|断水か、植え替えか

    幹を押したら、ぶよりと沈みました。

    いつもと違う土のにおいに気づき、黄色くなって落ちる葉を見て、慌ててハサミや新聞紙を用意している方もいらっしゃるでしょう。

    根腐れだと分かった瞬間、多くの方が「一刻も早く鉢から抜いて乾かさなければ」と思い込みます。

    ですが、焦って抜く前に、立ち止まって確かめていただきたいことがあります。

    抜くかどうかは、株元の幹を押して決めます。硬ければ水を止めて様子を見て、ぶよぶよと沈むなら抜いて黒い根を落とします。

    なお、この記事でお話しするのは、土に植わった観葉植物の鉢についてです。水栽培やハイドロカルチャーの管理とは条件が異なりますので、土植えの鉢を手元に置いてお読みください。


    ① まず、抜くかどうかを決めます

    観葉植物の根腐れで抜くか断水かの判断の図。株元の幹を親指で押し、まだ硬ければ抜かずに断水、ブヨブヨと沈めば鉢から抜いて黒い根を切り落とし、根の量に合わせた鉢に新しい用土で植え替える、と二つに分けている。
    観葉植物の根腐れで抜くか断水かの判断の図

    検索して上位に出てくる解説を読むと、どれも「鉢から出して根を乾かす」という作業から始まっています。

    しかし、東京都市大学の飯島健太郎教授が監修したメーカーの資料を開くと、そこには別の道筋が書いてあります。

    「根腐れのケースでは、断水して様子を見る方法もありますが、ひどい場合は植え替える必要があります。根が黒くなっていれば腐っているため、切り落としてから植え替えましょう。」

    資料にある選択肢は、一つではありません。「断水して様子を見る」か、「植え替える」か。最初の手当ては二つに分かれています。

    では、どちらを選ぶべきでしょうか。分かれ目の手がかりは、株元の幹の硬さにあります。

    押す場所は、土から出てすぐのところ。親指の腹で、軽く。力はほとんど要りません。木の棒を押したような手応えが返ってくるなら硬い側、指が沈んで戻ってこないなら柔らかい側です。上のほうの枝ではなく、いちばん下、土に近いところを確かめてください。根に近い場所ほど、先に傷みます。

    別の園芸メーカーの資料には、幹がまだ硬い場合は回復の可能性があります、とはっきり書いてあります。

    幹を押してみて、まだ硬さが保たれているなら、株には体力が残っています。この段階であれば、わざわざ鉢から抜いて根を傷める必要はありません。水を断って、土が乾くのを待つ手当てを選びます。

    一方で、幹や茎を押してブヨブヨと沈むなら、資料が挙げている症状の1つめに当てはまります。こちらが「ひどい場合」の側です。鉢から抜いて植え替えます。

    資料が挙げる根腐れの代表的な症状は、次の五つです。

    ■ 幹や茎がブヨブヨに柔らかくなる
    ■ 根が黒く変色している
    ■ 土から腐敗した臭いがしたり、コバエが湧いている
    ■ 白いカビが土の表面に生えている
    ■ 葉が茶色や黄色に変色し、落ちやすくなる

    もしコバエが湧いてお困りであれば、別の機会にまとめた 虫のカルテ も参考にしてみてください。

    手当ての分岐を整理しておきます。

    ここは、カルテに書いておきましょう。

    ■ 幹がまだ硬い場合 → 抜かずに水を止めて様子を見る(断水)
    ■ 幹がブヨブヨと柔らかい場合 → 鉢から抜いて植え替える

    根腐れのほかの原因も含めて、弱った鉢を土から切り分ける手順は、こちらのカルテにまとめています。



    ② 抜かないと決めたら、水を止めて、受け皿を空にします

    画像

    幹が硬く、抜かないと決めた場合の手当ては「断水」です。

    文字どおり、水を一切与えずに過ごします。弱った植物を見ると、元気づけようとして水をやりたくなるのが人情というものでしょう。

    ——ええ、枯らしました。堂々と枯らしました。

    弱った鉢を前にすると、人はたいてい水をやります。気持ちは分かります。ですが根腐れの鉢で起きているのは、水が足りないことではありません。

    根腐れを起こしている鉢の土の中は、水で隙間が埋まり、空気の入る隙間がありません。そこへ追い打ちの水を足せば、乾くのはさらに先になります。

    土が白っぽく乾くまで、水やりを完全に止めます。

    では、いつ再開するのか。このブログで水やりの合図にしているのは、土の表面が白っぽく乾いていることと、指を入れて湿り気を感じないことの2つがそろったときです。根腐れのあとも、この2つは変わりません。むしろ、ここで日数を数えはじめると、また同じことになります。

    そして、今すぐ鉢の底を確認してください。

    受け皿の水は必ず捨てる。

    受け皿に水が溜まったままだと、鉢底の穴が塞がれ、土の中の空気が動きません。どれほど表面を乾かそうとしても、底から湿気が上がり続けて根を腐らせます。溜まった水は、一滴残らず流してください。

    水やりを日数で決めない理由と、鉢底から流れ出るまで注ぐ量の目安は、こちらのカルテにまとめています。

    もう一つ、絶対に避けるべきことがあります。

    弱っている株に肥料を与えない。

    資料は、根腐れの原因のひとつに肥料のやりすぎによる根の肥料焼けを挙げています。弱った株への肥料は、手当てではなく追い打ちになります。

    もし今回の根腐れが肥料の与えすぎに心当たりがあるなら、原因を取り除く必要があります。

    ■ 置き肥 → 土の表面ごとできるだけ取り除く
    ■ 液肥 → 水を多めに与えて洗い流すか、土ごと取り替える

    置き場所は、直射日光の当たらない日陰へ。根が水を吸えない状態で葉から水が出ていけば、株の負担が増えるばかりです。


    ③ 抜くと決めたら、黒い根を落とします

    観葉植物の根腐れで黒い根を切る順番の図。鉢から抜く、土を落として黒く変色した根を探す、白い根を残して黒い根を切る、硬い根鉢をほぐす、新しい土で植え込む、上の枝葉も剪定する、の6段を並べている。
    観葉植物の根腐れで黒い根を切る順番の図

    幹が柔らかく沈むなど、症状が重いと判断したときは、いよいよ鉢から株を抜きます。

    鉢の縁を軽く叩き、植物の根元を優しく支えながら慎重に引き抜いてください。

    土を軽く落として根を観察します。

    資料にはこう書かれています。

    根が黒くなっていれば腐っているため、切り落としてから植え替えましょう。

    資料が挙げているのは「根が黒く変色している」という一点です。白い根は残し、黒くなった根を落とす。判断はそれだけで足ります。

    清潔なハサミを使い、黒く腐った根を根元から切り落としていきます。

    ここで多くの方が迷うのが、「どこまで切ってよいのか」という加減でしょう。

    根詰まりの救済について書かれた資料では、ひとつの目安として、根を3分の2程度切り詰める、と書いてあります。

    腐った部分をすべて切り落とすのが大原則ですが、根鉢がガチガチに固まっている場合の処置も資料に記載があります。

    根鉢(根と土がひと塊になった部分)が硬くなっている場合は、絡まっている根の一部をハサミで切り取り、ほぐしてから行うとよいでしょう。

    周りの硬い根を少し切り、指先で優しくほぐして古い土を落とします。

    植え付ける鉢は、元の鉢と同じか、根の量に合わせたものを用意します。通常の植え替えなら「ひと回り大きな鉢」まで。ただし腐った根を落として根の量が減っているなら、鉢を大きくする理由はありません。

    鉢底には必ず鉢底石を敷き、水はけの良い清潔な新しい観葉植物用の土を使って植え込みます。

    手つきだけでも見ておくと、はじめての方は迷いが減ります。



    ④ 根を減らしたら、上も減らします

    画像

    根の整理を終えたら、次に目を向けるべきは地上部、つまり枝と葉です。

    地下の根を大幅に切り落としたということは、植物が水を吸い上げるポンプの規模が小さくなったことを意味します。

    それにもかかわらず、枝や葉が元の生い茂ったままでは、葉から蒸散する水分量に根の吸水が追いつきません。株の側が苦しくなります。

    根を減らした分だけ、上の負担も軽くしてやる必要があります。

    資料の言葉を見てみましょう。

    植物全体が弱っている場合は、伸びすぎた枝や混みあっている枝を剪定するなどして整えてあげることも大切です。

    枝を間引いて風通しを良くしてあげることで、蒸散のバランスが整い、残った根への負担が大幅に和らぎます。

    さらに、傷んだ葉の処置についても資料は明確です。

    枯れた葉や腐った部分は元の状態には戻らないので、早めに切り落としましょう。

    黄色く変色した葉や、茶色く枯れ込んだ葉は、放置していても緑に戻ることはありません。資料も「早めに切り落としましょう」と書いています。

    悪くなった部分を取り除くことでトラブルの拡大を防ぎ、新たな出芽と伸長を促し、再生しやすくなります。

    葉柄の根元から清潔なハサミで切り取り、姿をすっきりと整えてあげてください。


    ⑤ 「乾かす」は、どの植物への指示なのか

    画像

    インターネットで根腐れの対処法を調べると、判で押したように「鉢から抜いて、新聞紙の上で根を数日間乾かす」という手順に出くわします。

    気持ちは、たいへんよく分かります。土が湿りすぎて根が腐ったのですから、外に出して風に当て、カラカラに乾かせば治るように思えるものです。

    しかし、園芸の専門資料をどれほどめくっても、観葉植物の手当てとして「鉢から抜いて根を乾かす」という指示は見当たりません。

    それどころか、資料には明確な書き分けが存在します。

    「乾かす」という指示は、観葉植物への手順ではなく、多肉植物への指示です。

    株全体が傷んでおり、元気な部分を切って挿し木で再生させる手順について、資料は次のように記しています。

    挿し木をする場合は、カットした部分を水につけ、十分に水を吸わせてから植えてください。

    そして、その直後にこう続きます。

    「ただし、多肉植物の場合は切り口を乾燥させてから挿し木をしましょう。」

    同じ段落の中で、観葉植物は「水を吸わせてから」、多肉植物は「乾燥させてから」と、正反対に書き分けられているわけです。

    なぜ書き分けているのかまでは、資料にありません。ですから私も、そこから先は申し上げません。

    「乾かすな」と言うつもりもありません。私が持っている資料には、観葉植物の根を乾かせという記述が無い。 言えるのはそこまでです。

    そのうえで、私は切ったらそのまま新しい土へ植えています。乾かせという手順がどこにも見当たらない以上、わざわざ足す理由が見つからないからです。


    ⑥ 植え替えたあと、待つ時間があります

    画像

    植え替えが終わった後の管理にも、守るべき約束事があります。

    よく「冬場に植え替えをしてはいけないのでは」と躊躇される方がいらっしゃいます。

    確かに植え替えの基本は春から初夏にかけての成長期です。ですが、資料にはこう書かれています。

    一般的に、植え替えは暖かい時期に行いますが、根腐れがあったときには早めの対処が求められます。

    春を待つあいだも、土の中では同じことが続きます。適期のほうを待たない。 資料が「早めの対処」と書いているのは、そういうことでしょう。

    根腐れがないときの植え替えは、月ではなく株のサインと気温で時期を決めます。こちらのカルテにまとめています。

    植え替え直後の鉢は、直射日光を避け、日陰で2週間程度、静かに休ませます。

    切り口を抱えた株に、強い光は要りません。直射日光の入らない場所で、二週間ほど静かに置いてください。

    植え込み直後は、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと水を与えます。そして、受け皿に溜まった水は必ずその場で捨ててください。その後は、土の表面がしっかり白く乾くまで次の水やりを控えます。

    ここでも肥料は厳禁です。弱った根に肥料を吸う力はありません。

    ただし、発根を促す活力剤であれば、傷ついた植物の立ち直りを穏やかに助けてくれます。

    もし土の表面に白いカビが見られた場合は、土の湿気が抜けにくくなっていたサインです。土のカビのカルテ でも原因と日常の対策を詳しく触れておりますので、環境を見直す際の参考にしてみてください。


    ⑦ まとめ — 私の答え

    画像

    三十年、この商売をやってまいりましたが、根腐れの相談で持ち込まれる鉢の多くは、異変に慌てて水を足したり、あれこれと触りすぎたりしたことで手遅れになっております。

    枯れるのには、必ず理由があります。

    水を与えすぎたのか、受け皿に水を溜めていたのか、あるいは鉢に対して土が多すぎたのか。理由は必ず土の中に隠れています。

    手当ての手順を、もう一度整理しておきましょう。

    ■ ① 幹を押して硬さを確かめる
    ■ ② 幹が硬ければ断水、ブヨブヨなら植え替えと決める
    ■ ③ 抜いた場合は黒く腐った根を落とし、新しい土へ植える
    ■ ④ 減らした根に合わせて、上の枝葉も剪定して風通しを良くする
    ■ ⑤ 直射日光を避け、日陰で2週間静かに見守る

    抜くかどうかは、幹の硬さで決めます。

    逆に、この手当ての最中にやらないことも、ひとつだけ挙げておきます。あれこれ足さないこと。 肥料も、置き場所の変更も、鉢の買い替えも、いま一度に重ねる必要はありません。切って、植えて、日陰に置く。株が動きだすのを、こちらが待つ番です。

    最後に、その株がまだ生きているのか、手遅れなのかを見極める方法をお伝えします。

    茶色くなった幹や枝をハサミで少し切ってみてください。

    中心まで湿っていれば休眠中で、茶色く乾燥していれば枯れています。

    切り口の中心にわずかでもみずみずしさが残っていれば、その株はまだ終わっていません。

    そして、切ってみて乾いていたとしても、それは切った場所の話です。もう少し下、根に近いところで同じことを試してみてください。上から順に確かめていけば、どこまでが生きているかの境目が見つかります。境目から上を落として、残った部分に賭ける。それが最後の手になります。


    FAQ

    Q1. 根腐れは放置するとどうなりますか。
    A. 結論:資料は、根腐れを放置すると枯れる側の原因として挙げています。 症状として挙げられているのは、幹や茎がブヨブヨになる/根が黒くなる/土から腐敗した臭いがする/白いカビが出る/葉が茶色や黄色に変色して落ちやすくなる、の5つです。幹がまだ硬いうちなら回復の可能性がある、とも書かれています。硬さがあるうちに手を打つ、と考えてください。

    Q2. 根はどこまで切ればいいですか。
    A. 結論:黒く変色して腐った根だけを切り落とします。 白や淡い色で硬さのある根は生きていますので、大切に残してください。根詰まりを起こして根鉢が硬く固まっている場合は、絡まった根の一部をハサミで切り取ってほぐし、全体の3分の2程度まで切り詰めて整理します。

    Q3. 鉢から出して乾かしたほうがいいですか。
    A. 結論:私が持っている資料に、観葉植物の根を乾かせという記述はありません。 切り口を乾燥させるのは「多肉植物の場合」と書き分けられており、観葉植物の挿し木については「カットした部分を水につけ、十分に水を吸わせてから植えてください」とあります。逆の指示です。私は切ったらそのまま新しい土へ植えています。

    Q4. 根腐れした土は再利用できますか。
    A. 結論:資料は、植え替えに「必ず新しい用土を用いて」と書いています。 根腐れの原因として挙げられているのは、水やりのしすぎと排水性の悪い土の使用、そして肥料のやりすぎです。同じ土に戻せば、原因のひとつをそのまま残すことになります。

    Q5. もう手遅れかどうかは、どこで分かりますか。
    A. 結論:幹や枝を切ったときに、切り口の中心が乾燥しているかどうかで見分けます。 茶色くなった枝を少し切ってみて、中心まで湿り気があればまだ生きており、休眠している状態です。中心まで茶色くカサカサに乾燥していれば、その部分は枯れています。生きた部分が残っていれば、切り戻して再生を待つことができます。


    根腐れの兆候を見つけると、誰しも動揺するものです。

    ですが、植物の都合を一つずつ確かめていけば、今やるべき手当ては自ずと定まります。

    まずは鉢の幹に触れてみてください。そこから、回復への道が始まります。

    では、よい緑を。

     
     
    枯れるのには、必ず理由があります。観葉植物の店を三十年やってきた常盤です。症状から原因を切り分けて、品種ごとに、測ってから書きます。 楽天のアフィリエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。

    あなたへのおすすめ