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観葉植物の虫の対処法|土から出る虫と葉につく虫で手当てが変わります

    鉢の上を、小さな黒いものが飛んでいる。

    葉の付け根をふと見たら、白い小さな粒のようなものがへばりついている。観葉植物を部屋に置いていて、こうした虫の姿を見つけたときの嫌な気持ちは、よく分かります。

    三十年、この商売をやってきました。店先でお客さまからいただくご相談のなかでも、虫に関する悩みは特に切実なものばかりです。せっかく大切に育ててきた鉢ですから、部屋の中で虫を見かければ、誰だって慌ててホームセンターへ走り、殺虫剤を買いに行きたくなります。

    ですが、薬を吹きかける前に、少しだけ立ち止まってみてください。

    観葉植物の虫は、土から出たのか、葉についていたのかの2つに分けると手当てが変わります。

    土から湧いてくる虫と、葉や茎に取りつく虫とでは、植物に与える影響も、必要な対処もまったく違います。慌てて手近な薬をかけても、見当違いな場所に対処していては解決に向かいません。まずは目の前の一鉢をよく見て、その虫がどちらの群なのかを切り分けること。すべてはそこから始まります。


    その虫が、どこにいたかを先に思い出してください

    観葉植物の虫を、いた場所で土の虫と葉の虫に分ける図。土から出たキノコバエ・トビムシは株を食べず表土を乾かす、葉や茎のカイガラムシ・ハダニ・アブラムシは汁を吸うので葉裏を見て拭き取る、と体長つきで並べている。
    観葉植物の虫を、いた場所で土の虫と葉の虫に分ける図

    虫を見つけたとき、何より先に行うべきは「その虫がどこにいたか」を思い出すことです。名前を当てるのはその後で構いません。

    見かけた瞬間に手近なスプレーを吹きかけたくなるものですが——まあ、私も昔はやったのですが、それでは、同じことが繰り返されます。

    観葉植物にあらわれる虫を見分ける手がかりは単純です。いた場所、体長、そして葉に跡が残っているか、この3点を見るだけで十分です。この3点さえ確認できれば、今日やるべき最初の一手は自然と決まります。

    土から出てきた虫であれば、今日やる一手は「表土を乾かすこと」です。
    葉や茎についていた虫であれば、今日やる一手は「葉裏を確認して拭き取ること」です。

    ここで、代表的な虫の大きさを頭に入れておきましょう。

    土の周りを飛ぶキノコバエは体長1〜2mm。
    土の上をぴょんぴょん跳ねるトビムシは体長2〜3mmです。

    一方で、葉や茎につく虫はどうでしょうか。
    かすり傷のような跡を残すハダニは、わずか0.3〜0.5mmしかありません。
    新芽や葉の裏に群がるアブラムシは体長1〜4mm。
    そして茎や葉の付け根に固着するカイガラムシは、体長2〜10mmと幅広く、貝殻のような殻や粉をまとっています。

    この数値を頭の片隅に置きながら、まずは目の前の鉢を観察してください。

     

    土から出てきたのなら、株は食べられていません

    土の表面を小さな虫が這っていたり、水やりをした拍子に鉢の上をふわりと黒い虫が飛んだりすると、多くの方は「植物が食い荒らされて枯れてしまう」と強い不安を抱きます。

    ですが、安心してください。土から出てきた虫であれば、観葉植物そのものを食べているわけではありません。

    葉をじっくり見回してみてください。かじられた痕跡や、不自然な穴が空いている場所はないはずです。飛んでいる体長1〜2mmの黒い虫や、土の上を跳ねる2〜3mmの虫が食べるのは、土に含まれる有機質や、土壌中の菌、あるいは腐植です。

    植物を傷めることはなく、人にとって目障りなだけの虫です。目の前の鉢が今すぐ枯れる心配はありません。まずは慌てず、葉に食害の跡がない事実を確かめてください。

     

    葉や茎についていたのなら、吸われています

    一方で、虫がいた場所が葉の表面、葉の裏、新芽、あるいは茎の分岐点だった場合は、話がまったく別です。

    葉や茎についていた虫は、植物の汁を直接吸っています。

    こちらは植物に直接の害を与える虫たちです。葉裏や茎の付け根といった目立たない場所に潜み、植物の管に口針を刺して樹液を吸い取ります。汁を吸われた植物は光合成をする力を削ぎ取られ、葉の色が悪くなったり、新芽の成長が止まったりします。

    見極めの決め手になるのが、葉に残された痕跡です。

    葉の表面が白くかすれたように色が抜けているなら、ハダニが汁を吸った痕跡です。あるいは、葉の表面がベタベタと粘っていたり、黒いススのようなカビが広がっていたりするなら、アブラムシやカイガラムシの排泄物が原因です。

    葉や茎に虫を見つけたら、すぐに葉を裏返して全体を確認しましょう。

    ここまでの切り分けを、頭の中で整理しておきます。

    ■ 土から出た虫(体長1〜2mmの飛ぶ虫、2〜3mmの跳ねる虫) → キノコバエやトビムシを疑う → 今日やる一手は「表土を乾かす」
    ■ 葉や茎についていた虫(体長0.3〜0.5mmのかすれ、1〜4mmの群れ、2〜10mmの殻) → ハダニ、アブラムシ、カイガラムシを疑う → 今日やる一手は「葉裏を確認して洗い流す、または拭き取る」
    ■ 白いものを見つけたときは、葉や茎に張りついて動かないならカイガラムシ、揺らすと飛び立つならコナジラミ、土の上で跳ねるならトビムシ


    土から出る虫は、薬ではなく土の表面で止めます

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    土から湧いてくる虫を見つけると、部屋の空気にスプレーを噴射したくなるものです。

    しかし、土から出る虫の手当ては、薬で虫を退治することではなく、卵を産み育つ場所をなくすことです。

    土の中に幼虫や卵が残っているかぎり、飛んでいる成虫をいくら薬で倒しても、数日後には次の世代が土から這い出してきます。勝負する場所は土の表面です。

    有機質とは、腐葉土や堆肥のように、もとは生き物だったものが土に混ざっているものを指し、その反対が、赤玉土や軽石のように鉱物だけでできた無機質の土です。

     

    キノコバエ — 成虫は4〜10日、幼虫は有機質を食べています

    室内の鉢植えの周りを、ふらふらと頼りなげに飛ぶ体長1〜2mmの黒〜暗褐色の虫。これがキノコバエ類です。

    蚊のように人を刺して血を吸うことはなく、人体に直接の害をおよぼすことはありません。ですが、リビングや書斎のコップの周りを飛ばれるのは、誰にとっても気分のよいものではないでしょう。

    成虫を薬で退治したのに、なぜ数日経つとまた飛んでいるのでしょうか。

    その理由は、昆虫の寿命と生息場所にあります。愛知県豊田市の情報提供資料( 豊田市「クロバネキノコバエ類について(情報提供)」 )によると、キノコバエの成虫の寿命は4〜10日程度です。短期間で交尾をすませ、土に卵を産み落とします。そして幼虫は、朽木の腐った部分や、有機質に富んだ土壌中の腐植物を食べて育ちます。

    成虫だけを薬剤で駆除しても効果が一過性に終わってしまうのは、土の中に次の世代が控えているからです。豊田市の資料でも、屋内で大量の薬剤を広範囲に散布することは健康被害の懸念があり避けたほうがよいと書いています。

    室内での発生源は、屋外からの侵入、購入した株への卵の混入、そして堆肥などの有機物が多い土です。

    やるべき手当ては3つに絞られます。

    ひとつ目は、土の表面をしっかり乾かすこと。土の表面の色が濃い茶色から白っぽく変わり、指で触れても湿り気を感じないところまで待ちます。キノコバエは湿った有機質に卵を産むため、表面が乾いていれば産卵できません。
    ふたつ目は、有機質の少ない土に植え替えること。
    みっつ目は、受け皿に溜まった水を放置せず、こまめに捨てることです。

    コバエが飛んでいるときの手当てと、卵のある深さは、別の記録にまとめてあります。

     

    トビムシ — 跳ねるだけで、根も葉も食べません

    水やりをした直後、土の表面で体長2〜3mmの細長い虫がぴょんぴょんと跳ね回るのを見ることがあります。これがトビムシです。

    あまりの素早さに驚かれるでしょうが、トビムシは観葉植物の根も葉も一切食べません。

    園芸薬品メーカーのKINCHO園芸(旧・住友化学園芸)のコラム( KINCHO園芸「観葉植物につく小さい虫とは?虫の発生原因や駆除方法を解説!」 )でも、トビムシは土中のバクテリアや菌、腐葉土を食べる益虫だと書いています。土壌の有機物を分解してくれている存在なのです。

    トビムシが発生する主な条件は、日当たりや風通しが悪く湿気がこもっていること、そして土が古くなって腐植が進んでいることです。

    植物をかじらない虫ですから、神経質になって強力な薬剤を土に流し込む必要はありません。土が古くなっている合図と受け止め、風通しのよい場所に移動させたり、次の植え替えの機会に新しい清潔な土へと更新したりすることで、自然と姿を消していきます。

    土に虫が出てしまったあと、何から手をつけるかの順番は、別の記録にまとめてあります。



    葉につく虫は、大きさで手当てが変わります

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    葉や茎につく虫は、植物の樹液を吸う実害をもたらします。

    しかし、ひとくちに吸汁害虫といっても、虫の大きさや身にまとう殻によって、薬の効きやすさは大きく異なります。虫の大きさと殻の有無に合わせて、手当ての手段を選び分けます。

     

    カイガラムシ — 2〜10mm、殻ができる前に

    茎の節や葉の付け根に、白や茶色の小さな粒がへばりついて動かない。爪でこするとポロリと取れる。これがカイガラムシです。

    体長は2〜10mmほど。貝殻のような硬い殻や、ロウ状、粉状の分泌物で全身を覆っています。

    カイガラムシの厄介なところは、植物の樹液を吸って株を衰弱させるだけでなく、排泄物にカビが生えて葉が黒くなる「すす病」や、枝が膜で覆われる「こうやく病」を引き起こす点にあります。そしてもうひとつ、硬い殻やロウ物質がバリアとなり、一般的な殺虫剤を弾いてしまう性質を持っています。

    そのため、カイガラムシの薬剤散布は、まだ殻をかぶっていない幼虫の段階で行うのが効果的です。

    もしすでに成虫になって殻を固めてしまっているなら、薬をかけるだけでは効きにくいため、古い歯ブラシや濡らした布を使って、物理的にこすり落とす作業が欠かせません。

    専用の薬剤を使う場合は、「カイガラムシエアゾール」などの登録農薬を用います。使う際は植物から30cm離して数回断続噴射し、総使用回数は4回以内にとどめる規定になっています。

    カイガラムシが鉢に入ってくる経路と、殻ごとこすり落とす手順は、こちらのカルテにまとめています。

    殻ができる前に一本用意しておくなら、これです。

    カイガラムシの具体的な見つけ方と落とし方については、プロの園芸店が動画で詳しく解説しています。作業前に一度動きを見ておくと、落ち着いて処置できるでしょう。

     

    ハダニ — 0.3〜0.5mm、葉裏と乾燥

    葉のツヤがなくなり、細かな白い斑点が無数に出てかすれたようになる。葉の裏を凝視すると、砂粒のような小さなものが動いている。これがハダニです。

    体長はわずか0.3〜0.5mm。クモの仲間です。

    ハダニが発生しやすい時期は、梅雨明けから夏にかけてです。気温が高く、空気が乾燥している場所を好んで急激に繁殖します。エアコンの風が直接当たるような乾燥した部屋は、ハダニにとって絶好の環境といえます。放置すると葉緑素を吸い尽くされ、生育が悪くなり、葉色も悪くなって最終的には葉が落ちてしまいます。

    ハダニへの最初の一手は、葉水(はみず)です。ハダニは気温が高く乾燥した場所で増えます。葉水は、その乾燥を断つ一手です。霧吹きを使い、葉の裏側にしっかり吹きかけてください。

    数が増えてしまった場合は、登録のある薬剤で対処します。たとえばアーリーセーフを600倍に希釈して葉裏へ散布するか、バロックフロアブルを2000倍に薄めて散布します。バロックフロアブルの総使用回数は1回と決まっていますので、規定を厳守してください。

    希釈して葉裏にかけるなら、この一本です。

     

    アブラムシとコナジラミ — 1〜4mm、肥料と風通し

    やわらかい新芽や葉の裏に、びっしりと群がっている体長1〜4mmの虫がアブラムシです。体色は黒色、緑色、黄色など様々です。

    また、夏から高温で乾燥した環境で発生しやすく、植物を揺らすと白い小さな虫が一斉に飛び立つなら、それはコナジラミです。どちらも植物の汁を吸い、葉色を悪くさせ、甘い排泄物によって「すす病」を誘発します。

    これらの虫が発生する大きな引き金となるのが、窒素肥料の過多と、日当たりや風通しの悪さです。窒素分が多すぎると植物の組織が軟弱に育ち、アブラムシの好む状態になってしまいます。

    コナジラミの駆除には繰り返しの殺虫剤散布が必要になりますが、アブラムシであれば適用のある薬剤がいくつか揃っています。

    希釈せずにそのまま使えるスプレーとしては、ベニカXネクストスプレー(原液・総使用回数4回)があります。水で薄めて散布するなら家庭園芸用マラソン乳剤(2000倍希釈・総使用回数6回)が使えます。

    また、鉢土に施して根から有効成分を吸わせるオルトランDX粒剤(1株あたり1g、40g/㎡まで・総使用回数4回・生育期株元処理)も選択肢になります。株元の土に規定量を施すことで、吸汁する害虫の発生を防ぎます。

    薄めずにそのまま使えるのは、こちらです。



    薬を買う前に、裏の「農薬」の2文字を見ます

    観葉植物の殺虫剤を農薬と不快害虫用に分けて見る図。農薬は容器の裏で適用作物名・適用害虫名・総使用回数の3点を確かめ、不快害虫用は「植物保護の目的では使用しない」とメーカーが書いている、と左右に分けている。
    観葉植物の殺虫剤を農薬と不快害虫用に分けて見る図

    園芸店やホームセンターの棚に行くと、緑色のボトルに入ったスプレーがずらりと並んでいます。パッケージには魅力的な言葉が並び、どれも効きそうに見えます。

    しかし、手に取ったそのボトルをレジへ持っていく前に、必ずボトルの裏面をひっくり返して見てください。

    裏面に「農薬」という2文字が書かれているかどうかです。

    園芸用の棚には、植物を守るための「農薬」と、人間にとって不快な虫を退治するための「不快害虫用スプレー」が、まったく同じ棚に並んでいるからです。

     

    「花き類・観葉植物」に登録があるか

    農薬は、どの植物のどの虫に何回まで使えるかが、登録で決まっています。

    農薬の登録では、私たちが室内で育てる観葉植物は「花き類・観葉植物」という作物群に分類されます。

    薬品ボトルの裏ラベルを見るとき、確認すべき場所は決まっています。

    ここは、カルテに書いておきましょう。

    見るべきポイントは次の3点だけです。

    ■ 適用作物名 → 「花き類・観葉植物」という記載が含まれているか
    ■ 適用害虫名 → 今出ている虫(カイガラムシ、ハダニ、アブラムシなど)の名前があるか
    ■ 総使用回数 → その薬剤を何回まで使ってよいか

    KINCHO園芸が公表している農薬適用一覧( KINCHO園芸「農薬適用一覧」PDF )を確認すると、すべての農薬がこの3つの組み合わせで細かく指定されていることが分かります。

    たとえば、同じスプレー剤であっても、アブラムシには使えてもハダニには効果が認められていないものがあります。また、薬害を防ぎ、安全に使うために「総使用回数4回」といった上限が必ず決まっています。

    観葉植物に使える農薬の例として、同じシリーズの「MY PLANTS 虫からやさしく守るミスト」があります。こちらは「花き類・観葉植物」に適用がある正規の農薬で、原液散布で総使用回数は4回までと決まっています(ばら、きく、ガーベラ、カトレア、カーネーション、ひまわり、ペチュニア、パンジー、ストックを除きます)。

    植物用という言葉だけで安心せず、ラベルの3点を確認する習慣をつけておきましょう。

    ラベルの行の読み方と、使った回数の数え方は、こちらのカルテにまとめています。

     

    不快害虫用は、植物を守る薬ではありません

    一方で、同じ棚に並ぶコバエ用スプレーの中には、農薬ではない製品も数多く存在します。

    たとえば、同じブランドから出ている「MY PLANTS コバエを退治するミスト」の公式製品ページ( KINCHO園芸「MY PLANTS コバエを退治するミスト」製品ページ )を見ると、はっきり明記しています。

    「農薬ではないので植物保護の目的では使用しないでください」

    メーカー自身が、植物を守る薬ではないと明記しているのです。

    この製品が対象としているのは、キノコバエやトビムシをはじめ、ノミバエ、ハヤトビバエ、チョウバエ、ショウジョウバエ、ヤスデ、ゲジ、ハサミムシ、ワラジムシ、アリ、カメムシ、クモといった、住まいの中で人間を不快にさせる虫たちです。使い方は「観葉植物周りに直接散布」となっており、鉢の周囲を飛び交う虫をその場で静める用途で作られています。

    ただし、植物のそばで使う以上、注意点があります。製品の注意書きには、アジアンタムなど葉の弱い観葉植物には使用しないよう書かれています。薄い葉にかかると、薬液で葉が傷んでしまう恐れがあるためです。

    ここで、多くの方が知らない事実をお伝えします。

    トビムシには「花き類・観葉植物」に対する農薬登録が1件もありません。クロバネキノコバエ類には登録がありますが、家庭向けに売られているのは1剤だけで、使えるのは発生初期に2回までです。

    つまり、土から出るこれらの虫を「植物用の農薬」で退治しきる道は、ほとんどありません。だからこそ、強い薬を土に流し込まず、土の管理で向き合います。

    人の側の不快さを消す一本は、これです。農薬ではありません。



    虫が出にくい部屋の作り方

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    虫が出てから慌てて退治するよりも、最初から虫が寄りつかない環境を部屋の中に作っておくほうが、はるかに手間がかかりません。

    KINCHO園芸が提案している予防法は、3つに絞られます。虫が出にくい部屋づくりは、土の質、葉水、そして風通しの3つで決まります。

    ひとつ目は、有機質の少ない土を使うことです。

    キノコバエの幼虫は、土の中の腐植や堆肥を食べて育ちます。堆肥や腐葉土を多く含む土は、虫たちにとって格好のエサ場になります。室内で育てる場合は、堆肥を使っていない清潔な土や、人工用土、赤玉土や軽石のような鉱物主体の用土に植え替えるだけで、土から出る虫の発生を大幅に抑えられます。

    ふたつ目は、こまめに葉水を与えることです。

    乾燥を好むハダニや、新芽に群がるアブラムシは水分を嫌います。霧吹きで葉を湿らせるだけで、住み着く確率を大きく下げられます。

    ここでのポイントは、葉の表面だけでなく、葉の裏側にもしっかり水を吹きかけることです。害虫の多くは雨風を避けるため、葉の裏側に潜んでいます。葉の表側だけをさっと濡らしても、裏にいる虫には届きません。下から上に向けて霧を吹き、葉裏を濡らしてください。

    みっつ目は、日当たりと風通しのよい場所で育てることです。

    空気がよどみ、薄暗く湿った環境は、トビムシやアブラムシが繁殖する温床になります。レースのカーテン越しに柔らかな光が届く窓辺や、人の出入りがあって空気が動く場所を選びましょう。もし部屋の構造上風が通りにくい場合は、扇風機やサーキュレーターを回して、空気を循環させるだけでも効果的です。風が常に葉を揺らしている環境では、虫は落ち着いて繁殖できません。

    そして最後に、新しい鉢を迎え入れたときの注意点です。

    購入したばかりの鉢には、生産現場や店舗で虫の卵が混入していることがあります。買ってきたばかりの株は、いきなり他の鉢と並べず、しばらく少し離した場所に置き、虫が潜んでいないかを観察してから定位置へ移すと安心です。

    これから鉢を選ぶときに、品種より先に見ておきたい土と買い方は、別の記録にまとめてあります。



    まとめ

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    虫が出た鉢を前にすると、誰でも動揺し、すぐに強い薬をかけたくなります。

    ですが、焦る必要はありません。

    枯れるのには、必ず理由があります。

    そして虫が出るのにも、必ず理由があります。虫が土から出たのか、葉についていたのかを冷静に見極めれば、目の前の鉢に対して今何をすべきかは自ずと見えてきます。

    今回の要点を、最後に5つに整理しておきます。

    ■ 土から出る虫は株を食べない:キノコバエやトビムシは有機物を食べる不快害虫であり、表土を乾かして産卵を防ぐ
    ■ 葉につく虫は樹液を吸う害虫:ハダニやアブラムシ、カイガラムシは葉裏を確認し、洗い流しや捕殺、登録農薬で対処する
    ■ 薬を買う前に「農薬」の文字を確認する:植物を害虫から守る薬と、周囲の不快害虫を鎮めるスプレーは目的が異なる
    ■ 土から出る虫に使える農薬は、ほとんどない:トビムシには登録が無く、キノコバエも家庭向けは1剤・2回まで。強い農薬で根絶しようとせず、清潔な土と乾燥で管理する
    ■ 予防の基本は土・葉裏への葉水・風通し:無機質の土を選び、サーキュレーター等で風を動かして虫を寄せつけない環境を作る


    よくある質問

    Q1. 観葉植物の虫は牛乳で駆除できますか?
    A. 結論:牛乳は農薬として登録された使い方ではないため、使用はおすすめしません。 牛乳は「花き類・観葉植物」に使える農薬として登録されていません。安全に手当てするのであれば、水で洗い流すか、登録のある薬剤をお使いください。

    Q2. 殺虫剤はどこにかければいいですか?
    A. 結論:葉の裏や新芽など、虫が実際に潜んでいる場所へ直接吹きかけます。 観葉植物の空間全体にやみくもに散布しても、害虫にはほとんど届きません。カイガラムシやハダニ、アブラムシの多くは、葉の裏側や茎の分岐点に張りついています。植物を少し傾け、下から上へ向けて葉裏を狙うように吹きかけるのが効果的です。

    Q3. 殺虫剤を使う頻度は?
    A. 結論:虫の発生を確認したときに、ラベルの総使用回数の範囲内で使います。 殺虫剤は予防用ではありません。薬剤ごとに「総使用回数4回」などの規定があり、過剰な散布は植物に薬害をもたらします。見つけたら規定に従って使い、普段は葉水や風通しなどの環境管理で予防してください。

    Q4. 観葉植物を室内に入れると虫がつきますか?
    A. 結論:室内であっても、土の性質や環境によって虫が発生することはあります。 外に出していなくても、窓の網戸の隙間から微小な虫が侵入したり、買ってきた鉢土に卵が混ざっていたりすることがあるためです。また、室内は風が通りにくく空気が滞留しやすいため、一度入った虫が増えやすい一面もあります。日当たりと風通しを整えることが大切です。

    Q5. 絶対に虫がつかない観葉植物はありますか?
    A. 結論:生きている植物である以上、絶対に虫がつかない品種はありません。 どんな植物であっても、極度の乾燥や風通しの悪さが重なれば虫がつく可能性はあります。ただし、葉が硬い植物や、肉厚な葉を持つ植物は、葉が柔らかい植物に比べて汁を吸われにくく、虫がつきにくい傾向があります。管理のしやすさの目安として捉えておくとよいでしょう。


    虫を見つけた瞬間は、誰しも嫌な気持ちになるものです。

    ですが、虫のいた場所をよく見て、植物が今どういう状態にあるのかを切り分ければ、打つべき手は必ず見つかります。

    薬に頼り切る前に、まずは鉢の表面を乾かし、葉の裏を覗き込んでみてください。今日の一手が、目の前の一鉢をすこやかに保つ助けになれば幸いです。

    店先でよくいただく植物の相談や、店先で見てきた植物との向き合い方については、こちらのプロフィールでもお話ししております。

    では、よい緑を。

     
     
    枯れるのには、必ず理由があります。観葉植物の店を三十年やってきた常盤です。症状から原因を切り分けて、品種ごとに、測ってから書きます。 楽天のアフィリエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。

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