メインコンテンツへスキップ
見出し画像

観葉植物の土に虫がわいたら|跳ねるか飛ぶかで見分けて表面を乾かす

    水をやった拍子に、土から小さいものが飛んだ。あるいは、鉢の縁を小さな粒が跳ねて横切った。

    「気持ち悪い」「もうこの鉢を捨ててしまおうか」と思う気持ちは、よく分かります。部屋の中で小さいものが動くのを見ると、気分が沈みます。

    ですが、慌てて鉢ごと処分する必要はありません。枯れるのには、必ず理由があります。同じように、虫が土から出てくるのにも、はっきりとした理由と仕組みが存在します。

    いま飛んでいる虫を追っても、虫は減りません。減らす相手は、土の中にいる卵と幼虫です。

    土の上を飛んでいる虫だけを追いかけても、問題は終わりません。土の中の環境に目を向けることが、解決への確かな道筋になります。


    跳ねるか、飛ぶか。まずそこを見ます

    観葉植物の土の虫を跳ねるか飛ぶかで見分ける図。跳ねたらトビムシで資料は益虫と書き、飛んだらキノコバエ類で体長1〜2ミリメートル、相手は土の中の次の世代と、動きで手当ての向きを分ける。
    観葉植物の土の虫を跳ねるか飛ぶかで見分ける図

    土に虫を見つけたとき、最初にやることは一つです。その虫が「跳ねるか、飛ぶか」を見てください。実用の答えは、この動きの違いから始まります。

    鉢を軽く叩いたり、水をやったりしたときの動きを見てください。

    土の表面や受け皿のあたりで、ぴょんと跳ねるように動くなら、跳ねるものはトビムシです。KINCHO園芸の解説によると、トビムシは土の中のバクテリアや菌、腐葉土を食べる益虫だと書いています。土の中の有機物を分解する側の虫です。見た目の不快感はありますが、株そのものへの害は資料に出てきません。

    一方、土から飛び立って宙を舞うなら、飛ぶものはキノコバエ類(クロバネキノコバエ類など)です。体長は1〜2ミリメートルほどで、体色は黒から暗褐色をしています。伊東市が公表している防除の資料によれば、刺すなど人に被害を及ぼすことはないと書いてあります。蚊のように血を吸うこともなく、毒針で人を刺すこともありません。

    ここで一つ、明確に断っておかなければならない点があります。室内の鉢から出た虫が、自治体の資料にあるクロバネキノコバエ類とまったく同じ種であるとは限りません。キノコバエの仲間は種類が多く、家庭の植木鉢に現れる微小なハエを特定することは容易ではないからです。

    それでも、体長1〜2ミリメートルの暗褐色の虫が土の周りを飛んでいる場合、生活のしかたや好む環境の性質は共通しています。自治体の資料にある生態情報は、私たちが対策を進めるうえで確かな目安になります。

    動きの違いを整理すると、次のようになります。

    ■ 跳ねる → トビムシ(土中の菌や腐葉土を食べる益虫。根を食害しない)
    ■ 飛ぶ → キノコバエ類(体長1〜2ミリメートル、黒〜暗褐色。人に害はない)

    どちらの虫であっても、今日すぐに植物を枯らしてしまうような緊急事態ではありません。まずは落ち着いて、目の前の虫が跳ねているのか、それとも飛んでいるのかを見極めてください。


    土から出る虫に、使える薬はほとんどありません

    画像

    店先で受ける相談の中で、特に多いのが「市販の殺虫剤を土にまけば虫は消えますか」という質問です。三十年、この商売をやってきましたが、虫を見つけると反射的に薬剤のスプレーを手にしてしまう方は後を絶ちません。

    気持ちは察しますが、土から出る虫に対して、観葉植物に使える薬はほとんどありません。

    植物に使用する農薬には、国の厳格な登録制度が存在します。薬剤を選ぶ際は、適用作物名、適用害虫名、そして総使用回数の3点を必ず確認しなければなりません。農薬の登録情報を見ると、トビムシに対して花き類や観葉植物で使用できる登録は1件もありません。クロバネキノコバエ類には登録がありますが、家庭向けに売られているのは1剤だけで、使えるのは発生初期に2回までです。

    では、ドラッグストアやホームセンターで売られているコバエ用のスプレーはどうでしょうか。それらの多くは、家庭内の衛生管理を目的とした不快害虫用の製品です。製品の表示をよく読みますと、メーカー自身が「農薬ではないので植物保護の目的では使用しないでください」とはっきりと記載しています。農薬ではない薬剤を植物や土に吹きかければ、油分や噴射ガスによる薬害で葉が変色したり、根を傷めたりする原因になります。

    室内の空間を飛んでいる成虫を捕らえる粘着トラップや、部屋全体に使う殺虫剤は存在します。しかしそれらは、室内に入り込んだ虫を減らすための部屋の道具です。鉢の土を治す薬とは別ものだと考えてください。

    土から出る虫と、葉につくハダニやカイガラムシのような虫とでは、手当ての考え方が根本から異なります。虫のいた場所による詳しい切り分けについては、別の記事に整理してあります。

    観葉植物の虫について、発生した場所ごとの見分け方と対処の基本はこちらの記事で詳しく解説しています。



    成虫は4日から10日、卵から成虫までは20日

    キノコバエ類の成虫の寿命と卵から成虫までの日数の図。いま飛んでいる成虫の寿命は4日〜10日、土の中の次の世代は卵から成虫まで20日間程度で、表面を乾かす手当てが効くのは次の世代だと示す。
    キノコバエ類の成虫の寿命と卵から成虫までの日数の図

    薬に頼れないと知ると、途方に暮れる方もいらっしゃるでしょう。ですが、虫の寿命と発生の周期を把握すれば、正しい手当ての方向が見えてきます。

    伊東市の資料によれば、クロバネキノコバエ類の成虫の寿命は4日から10日程度です。鉢の虫が同じ種とは限りませんが、目安として置いておきます。成虫の命は非常に短く、いま目の前を飛んでいる成虫は、仮に何もしなかったとしても数日から長くとも十日ほどで命を終えていきます。

    私たちが目を向けるべきは、その次です。同じ資料において、卵から成虫までは20日間程度とあります。成虫が土に卵を産み付けると、孵化した幼虫が土の中で成長し、およそ20日をかけて次の成虫となって飛び出してきます。

    幼虫のエサになるのは何でしょうか。資料には「腐った木や有機質に富んだ土壌中の腐食物などを食べ」るとあります。土に含まれるたい肥や腐葉土といった有機物が、彼らの格好のエサ場になっているのです。

    この虫の発生源は一つに特定されておらず、畑や植木鉢などさまざまな場所から発生することが考えられます。鉢の中だけを見ていても、出どころは確かめきれない、ということです。

    ここは、カルテに書いておきましょう。

    表面を乾かす手当ては、いま飛んでいる虫ではなく、土の中の卵と幼虫に効きます。

    成虫を何匹叩いても、土の中が湿り、エサとなる有機物があれば、20日周期で次の成虫が次々と現れます。だからこそ、土の表面を乾かして産卵を防ぎ、幼虫の活動を止める手当てが大切になります。

    ここで注意したいのは、「20日経てば虫がいなくなる」という単純な計算ではない点です。土の中に産み落とされた時期が異なれば、羽化してくる日もずれていきます。20日というのは、あくまで1つの世代が卵から成虫になる目安の日数です。次の世代が完全に途切れるまで、土を乾かす管理を根気強く続ける必要があります。


    土を替えるか、表面だけで済ませるか

    画像

    土の中で世代交代が進む仕組みが分かれば、打つ手は定まります。土の管理でできるのは、虫のエサを減らすことです。

    室内で虫が発生する経路には、屋外からの侵入、購入した株への卵の混入、そして有機物の多い土という3つの要因があります。この3つは、どれも別の場所で起きています。窓の外から入るもの、買った鉢に最初から入っていたもの、鉢の中で増えたもの。土を替えて止まるのは、最後の一つだけです。替えたのに翌週また飛んだ、という話は、たいてい残りの2つのほうから来ています。とくに2つ目——買ってきた株に最初から入っていた分は、土を替えるまでのあいだに止められます。新しい鉢を迎えたら、部屋に置く前に葉の裏まで見ておいてください。このうち、私たちが土の管理によって直接対処できるのは、有機物をどう抑えるかという一点に限られます。

    最初に取り組むべき手当ては、水やりの間隔を空けて土を乾かすことです。水分を好むキノコバエにとって、常に湿った土は絶好の産卵場所になります。水やりを行う条件は、土の表面が乾いて白っぽくなっていること、そして土の中を触って完全に乾燥していることの2つが揃ったときです。表面だけでなく、指を入れて中まで乾いているかを確かめてください。

    ——ええ、枯らしました。堂々と枯らしました。虫を嫌って干からびさせるのも、心配で水を足しすぎるのも、どちらもよくある行き違いです。土を乾かすというのは、株をしおれさせる作業ではありません。湿っている時間と、乾いている時間の差をつける作業です。

    あわせて、水やりをしたあとに受け皿の水は必ず捨てること。受け皿に水が溜まったままだと、鉢底から湿気が抜けず、トビムシやキノコバエの温床になります。

    表面の土だけを入れ替える手つきは、映像のほうが早く伝わります。培養土のメーカーが、表面の土を取り除いて赤玉土をのせるところを見せています。

    有機質を多く含んだ土を使っていて発生が収まらない場合は、土を丸ごと替える選択肢もあります。その際は、たい肥を使わず、粒状の原料だけで作られた室内向けの培養土を選びます。鹿沼土やパーライト、赤玉土を主原料とし、速効性化成肥料や緩効性化成肥料を配合した土であれば、幼虫のエサとなる腐植物が含まれていません。

    室内向けの培養土としては、プロトリーフの室内向け観葉・多肉の土のような無機主体の用土が扱いやすいでしょう。粒状の土は表面がさらりと乾くため、虫が産卵しにくい環境を保ちやすくなります。

    土を替えることで虫を抑えられる範囲と、土だけでは防ぎきれない屋外からの侵入については、用土の選び方を解説した記事で詳しく触れています。

    虫を減らす土の選び方と、土でできる対策の限界についてはこちらの記事にまとめてあります。



    部屋の側でできること

    画像

    鉢の土をいくら乾かして清潔に保っていても、部屋の外から次々と虫が入ってきては解決しません。自治体の資料でも、クロバネキノコバエ類は駆除が極めて難しいハエ類であり、屋外の畑や植木鉢などから飛来することもある、と書かれています。

    鉢から湧く問題とは別に、部屋の側で外からの侵入を防ぐ手立てを講じる必要があります。

    まず有効なのは、発生しやすい時期に窓やドアを閉めることです。特に大量発生の恐れがある梅雨時や7月から9月にかけて、そして虫が活発に動く日の出以降の午前中は、外気を取り込む開口部を閉じておきます。

    換気を行いたいときは、網戸に殺虫剤や虫除け剤を塗布・噴霧しておくと侵入防止に役立ちます。また、窓やドアに向けて扇風機を設置し、外から近づけないよう横から風を送る方法も自治体の資料が挙げています。換気扇の吸気によって虫が引き込まれる場合もあるため、近隣で発生が見られる時間帯は室内換気扇を停止することも対策になります。

    室内に侵入してしまった成虫に対しては、空間用の殺虫剤を使って駆除することができます。ただし、これは部屋の中を飛んでいる成虫を落とすためのものであり、植物にかけるものではない点にあらためて注意してください。

    鉢の周りの予防について、KINCHO園芸の解説は土の質・葉水・風通しの3点を挙げています。ここは役割を分けて読んでください。土の虫に効くのは、土の質と風通しの2つです。葉水は、葉につく虫のほうへの備えです。土を乾かす話と葉水の話は、別の場所を見ています。

    伊東市の資料は、季節と時間帯にも触れています。梅雨の時期に発生が多く、7月から9月ごろにかけて大量発生する可能性があり、飛ぶのは日の出以降の午前中が中心です。窓を開ける時間を少しずらすだけでも、入ってくる数は変わります。

    ★部屋の道具は使ってかまいません。 伊東市の資料も、室内に大量に侵入したときは殺虫剤で駆除する、網戸に殺虫剤や虫除け剤を塗布・噴霧する、という方法を挙げています。ただし、株にも土にもかけないでください。 それらは部屋に入ってきた虫を減らすための物であって、鉢の中の手当てではありません。

    コバエに絞った手当て(鉢ごと水に沈める・表面の土を替える・粘着剤のトラップ)は、別の記録にまとめてあります。



    まとめ — 出たときの順番

    画像

    土に虫が現れると、どうしても慌てて強い薬を探したくなります。ですが、虫の生態と周期を理解していれば、迷わず順番に対処できます。鉢の前で進めるべき手順は、次の4点です。

    ■ 見分ける → 鉢を軽く叩き、跳ねる(トビムシ)のか飛ぶ(キノコバエ類)のかを確認します
    ■ 薬に頼らない → 土の虫に家庭で使える農薬は、キノコバエ用の1剤だけです。不快害虫用のスプレーを鉢に吹きかけるのは避けます
    ■ 表面を乾かし続ける → 水やりは表面が白く乾き、中まで乾燥してから行います。受け皿の水は毎回捨てます
    ■ 替えるかを決める → 有機質の多い土で虫が収まらないなら、たい肥を使わない粒状の室内用土への植え替えを検討します

    いま飛んでいる成虫ではなく、土の中の卵と幼虫を断つこと。 これが、土の虫を収束させるための確かな道筋です。


    よくある質問

    Q1. 観葉植物の土に虫がわいたら、まず何をすればよいですか?
    A. 結論:まずは虫が跳ねるか飛ぶかを確認し、土の表面を乾かす管理に切り替えてください。 跳ねるトビムシであれば植物に害はありません。飛ぶキノコバエ類の場合も慌てて薬をまかず、土の表面が白く乾き、中まで乾燥するまで水やりを控えます。あわせて受け皿に溜まった水をすぐに捨てることが第一歩となります。

    Q2. 室内で育てているのに、なぜ土から虫が発生するのですか?
    A. 結論:土に含まれる有機物と湿り気、そして屋外からの侵入が重なることが原因です。 キノコバエ類の幼虫は、土の中の腐葉土やたい肥といった有機物をエサにして育ちます。窓やドアの開閉時に外から成虫が入り込み、湿った有機質の土に産卵することで鉢の中で世代交代が始まります。

    Q3. 虫が出た鉢の土は、すぐに全部植え替えるべきでしょうか?
    A. 結論:すぐにすべての土を替える必要はありません。 植え替えは植物の根にも負担を与えます。まずは水やりを控えて土をしっかり乾かし、受け皿の水を捨てる手当てを続けて様子を見てください。それでも発生が収まらない場合に、たい肥を含まない無機の粒状培養土への植え替えを検討するのが安全です。

    Q4. 市販の殺虫スプレーを、土や植物に直接かけてもよいですか?
    A. 結論:土や植物に直接吹きかけてはいけません。 市販されているコバエ用スプレーの多くは不快害虫用であり、メーカーも植物保護目的での使用を禁止しています。直接かけると薬害で葉が傷んだり、根を傷めたりする原因になります。使用する場合は、部屋の空間を飛んでいる成虫に対してのみ使ってください。

    Q5. 手当てを始めてから、どれくらいの日数で虫はいなくなりますか?
    A. 結論:何日で消えると断定はできず、土の中の卵と幼虫がいなくなるまで続けます。 キノコバエ類の卵から成虫までは20日間程度が目安ですが、土の中で産卵された時期にはばらつきがあります。現在いる成虫の寿命である4日から10日が過ぎ、さらに土の中に残った卵や幼虫が羽化しなくなるまで、表面を乾かす管理を継続してください。


    土から虫が出るのは、腕の問題ではありません。むしろ、土に有機物があって水も切らさずに与えられている鉢ほど、虫の側には住みやすい条件が揃います。責めるところは、どこにもありません。土の中に有機物があり、適度な湿り気があれば、自然界の小さな生き物が集まってくるのは当たり前の摂理です。

    大切なのは、虫を見かけたときに焦って強い薬に手を伸ばさないこと。そして、土の表面を乾かし、相手が繁殖できない環境を淡々と作っていくことです。

    長く植物と向き合ってきましたが、植物も土も、時間をかけて道理にかなった手当てを続ければ必ず応えてくれます。鉢を覗き込む日々に、少しでも早く穏やかな時間が戻ることを願っております。

    店主・常盤がこのブログを立ち上げた理由と、植物に向き合う姿勢については、こちらの記事に書いております。

    では、よい緑を。

     
     
    枯れるのには、必ず理由があります。観葉植物の店を三十年やってきた常盤です。症状から原因を切り分けて、品種ごとに、測ってから書きます。 楽天のアフィリエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。

    あなたへのおすすめ