
植物育成ライトと普通のLEDの違い|明るさでは見分けられません
「普通のLEDじゃ、だめなんですか。」
店先で、この相談を受けることがよくあります。部屋にある照明で足りるなら、わざわざ専用のライトを買わなくてもいいのではないか。そう考える気持ちは、たいへんよく分かります。
しかし、植物育成ライトと普通のLED電球の違いは、明るさでは見分けられません。
見た目の明るさを示す数字と、植物が光合成に使う光の強さは、測っているものが違います。カタログに並ぶ数字を見比べずに「明るいから育つだろう」と選んでしまうと、植物にとって必要な光が届かないままになってしまいます。
今回は同じメーカーの製品カタログから数字を抜き出し、普通のLED電球と植物育成ライトで何が違うのか、どこを見ればよいのかを整理しました。
① カタログで見るのは、PPFDと推奨照射距離です

植物育成ライトのパッケージやカタログを開くと、ルーメンやルクス、消費電力など、たくさんの数字が並んでいます。どれを比べればよいのか、迷ってしまう方も多いでしょう。
ここは、カルテに書いておきましょう。最初に見るべきは、「PPFD」と「推奨照射距離」の記載です。
カタログには「光合成光粒子束密度(PPFD)」という長い名前で載っています。単位はμmol/m²s。名前のとおり、光合成に使われる光がどれだけ届いているかを表す数字です。
一方、私たちが普段「明るさ」と呼んでいるルーメン(全光束)は、人の目に見える明るさの単位です。ルクスも同じで、人の目が基準になっています。
測っているものが、はじめから違うのです。
カタログにPPFDの数値と推奨照射距離が書かれていなければ、その製品は植物のために作られたものではない、と考えてよいでしょう。
ここで、ひっかかりやすい点をひとつ。ルクス(照度)が大きく書いてあるからといって、それは植物向けの数字ではありません。 ルクスも人の目が基準の単位です。今回見た植物育成ライトのカタログには、ルクスとPPFDが両方、しかも距離ごとに並べて書いてありました。片方しか無い製品なら、そこで見切りをつけてかまいません。
また、数値を確かめるときは、必ず「距離」とセットで見なければなりません。メーカーの資料を見ると、植物育成ライトの推奨照射距離は、どちらも5〜10cmでした。
この距離から離れてしまうと、植物が受け取れる光の強さは大きく落ちてしまいます。まずはカタログにPPFDと推奨照射距離が載っているか。その1行を確認してください。
② 育成ライトのほうが、普通のLEDよりルーメンが低いこともあります

理屈だけでは分かりにくいため、実際に販売されている製品の数字を比べてみましょう。同じオーム電機が製造している、一般家庭用のLED電球と植物育成ライトの仕様を並べてみます。
■ 一般のLED電球(60形相当・昼白色) → 全光束 860ルーメン/消費電力 6.6W/平均演色評価数 Ra82/PPFDの記載なし
■ 植物育成ライト(折り畳み式) → 全光束 660ルーメン/消費電力 14.0W/平均演色評価数 Ra95/PPFD記載あり
■ 植物育成ライト(吊り下げ式) → 全光束 400ルーメン/消費電力 7.0W/平均演色評価数 Ra95/PPFD記載あり
この3つを並べると、意外な事実に気づきます。ルーメンの数字だけで比べると、一般のLED電球がいちばん明るいのです。
60形相当のLED電球が860ルーメンであるのに対し、植物育成ライトは折り畳み式が660ルーメン、吊り下げ式は400ルーメンしかありません。人間の目には、普通の電球のほうが明るく見えます。
しかし、消費電力を見ると逆転します。一般の電球が6.6Wなのに対し、折り畳み式の植物育成ライトは14.0Wと、倍以上の電気を使っています。
一般の電球の特長欄には「全光束860ルーメン、白熱電球60形相当の明るさ」と書かれているだけで、PPFDや推奨照射距離の記載はありません。
一方、植物育成ライトの特長欄には「室内で太陽光の補完をしてくれる植物育成ライト」とあります。目に見える明るさだけで選ぶと何を見落とすのか、このカタログの数字がそのまま示しています。
③ 育成ライトどうしでも、明るいほうが強いとは限りません

普通の電球と育成ライトの違いだけではありません。実は、植物育成ライトどうしを比べたときでも、「ルーメンが大きいほうが強い」とは言えません。
先ほど挙げた2つの植物育成ライトを、もう一度見比べてみてください。
■ 折り畳み式 → 全光束 660ルーメン/消費電力 14.0W/直下2.5cmのPPFD 約370(単位はμmol/m²s)
■ 吊り下げ式 → 全光束 400ルーメン/消費電力 7.0W/直下2.5cmのPPFD 600
全光束は折り畳み式が660ルーメン、吊り下げ式が400ルーメンです。目で見れば、折り畳み式のほうが明るく感じられます。消費電力も14.0Wと7.0Wで、折り畳み式のほうが2倍の電力を使っています。
ところが、直下2.5cmで測定したPPFDを見ると、吊り下げ式が600μmol/m²s、折り畳み式が約370μmol/m²sとなっています。400ルーメンの吊り下げ式のほうが、直下の光合成に必要な光はおよそ1.6倍も強いのです。
では、吊り下げ式のほうがいつでも強いのかというと、そうでもありません。同じカタログの表を、距離ごとに最後まで追ってみてください。
■ 直下2.5cm → 折り畳み式 約370/吊り下げ式 600
■ 5cm → 折り畳み式 約270/吊り下げ式 410
■ 10cm → 折り畳み式 約180/吊り下げ式 170
■ 20cm → 折り畳み式 約90/吊り下げ式 60
10cmのあたりで、2つの数字は並びます。そして20cmでは、立場が入れ替わります。
近くでは吊り下げ式が強く、離れると折り畳み式のほうが残る。同じメーカーの、同じ「植物育成ライト」という名前の製品でも、数字の落ち方がまるで違うわけです。
なぜそうなるのかまでは、カタログには書かれていません。書かれているのは、この数字の並びだけです。ですから私も、そこから先は申し上げません。
ただ1つだけ、確かなことがあります。ルーメンの大小では、この逆転は説明できない。 育成ライトどうしを比べるときも、見るのは距離ごとのPPFDの表です。
④ 距離で、光は落ちます

植物育成ライトを使ううえで、カタログの数値と同じくらい重要なのが「ライトと葉の距離」です。
光は、光源から離れるほど急激に弱くなります。カタログに記載されている照射距離ごとのPPFDの推移を見てみましょう。
■ 折り畳み式(品番 06-5241)のPPFD(単位はμmol/m²s)
直下2.5cm → 約370
5cm → 約270
10cm → 約180
20cm → 約90
■ 吊り下げ式(品番 06-5240)のPPFD(同じ単位)
直下2.5cm → 600
5cm → 410
10cm → 170
20cm → 60
2.5cmから20cmまで離しただけで、折り畳み式はおよそ4分の1、吊り下げ式は10分の1にまで光が落ちてしまいます。照度(ルクス)で見ても、吊り下げ式は2.5cmで約36,000ルクスあったものが、20cmでは約3,200ルクスまで下がります。
照度(ルクス)の表も、同じ落ち方をしています。折り畳み式は直下2.5cmで約22,000ルクス、5cmで約16,000ルクス、10cmで約10,000ルクス、20cmで約5,000ルクス。吊り下げ式は約36,000ルクス、約25,000ルクス、約10,000ルクス、約3,200ルクスです。
どちらの表を見ても、10cmを過ぎたあたりから数字の減り方が急になります。
だからこそ、メーカーは推奨照射距離を5〜10cmと書いているのでしょう。設置高さの上限も、折り畳み式が約29cmまで、吊り下げ式が約30cmまでとなっています。そもそも、遠くから照らす道具として作られていません。
店に持ち込まれる相談で多いのが、せっかく買った育成ライトを、棚の天井や部屋の照明と同じくらい高い位置に取り付けてしまっている例です。
部屋の天井にある照明は、鉢から何メートルも上に離れています。人の目には部屋全体が十分に明るく見えていても、鉢の高さに届く光はほんのわずかです。
植物に光を届けるなら、ライトをしっかりと植物の近くまで寄せて設置してください。
人の目には明るく見えても、植物には光が足りない。その代表が玄関です。置く前に何を測るかは、こちらのカルテにまとめています。
この記事で数字を借りた吊り下げ式は、こちらです。
⑤ 何時間つけるか — メーカーのタイマーが答えです

「育成ライトは、1日に何時間つけておけばいいですか。」
店頭でも本当によく聞かれる質問です。この疑問の答えも、製品に内蔵されているタイマー機能の仕様を見れば分かります。
折り畳み式のライトには、8時間・12時間・16時間の3段階で設定できるタイマーがついています。「8時間の場合、8時間点灯後、16時間消灯。その後再度8時間点灯」という仕組みで、自動で点灯と消灯を繰り返します。
一方、吊り下げ式のライトは、16時間点灯/8時間消灯のオートタイマーが固定です。切り替えはできません。
この仕様から分かることが、ひとつあります。メーカーは、一日中つけっぱなしにする使い方を想定していません。どちらの製品にも、消灯する時間が必ず組み込まれているからです。
8時間つけたら16時間消す。16時間つけたら8時間消す。足せば、どちらもちょうど24時間になります。タイマーの3段階は、点灯時間の選択肢であると同時に、消灯時間の選択肢でもあるわけです。
なぜ消灯時間が要るのかまでは、カタログには書かれていません。ですが、タイマーの作りがそう言っているという事実は、そのまま受け取ってよいはずです。
折り畳み式には、100%から20%まで5段階の調光もついています。距離を詰めたうえで、光の量を落とすこともできるわけです。
なお、製品の設置高さは折り畳み式が約29cmまで、吊り下げ式が約30cmまで対応しています。
また、メーカーが案内している推奨植栽環境は、温度が18〜28℃、湿度が50〜60%です。光の当て方だけでなく、室内の温度や湿度にも目を配っておきましょう。
ここで、買う前に一度、引き算をしてみてください。設置できる高さの上限から、推奨の照射距離である5〜10cmを引く。残った高さが、そのライトの下に入る株の高さです。鉢の高さも忘れずに足してください。背の高い株なら、そもそもこの形の道具では届かない、ということが買う前に分かります。
形ごとの取り付け方と、はさめる厚みの上限は、こちらのカルテで5つの形を並べています。
実際に部屋へ取り付けて使っている様子も、一度ご覧になっておくと早いでしょう。文字で読むより、距離の感覚がつかめます。
⑥ 色と、演色評価数

植物育成ライトというと、以前は特殊な色の光を思い浮かべる方もいらっしゃいました。しかし、今回取り上げた製品の光源は、どちらも白色LEDです。
カタログの特長欄にも「お部屋に馴染む白色の光」と書かれています。リビングや寝室に置いても、普段のインテリアの雰囲気を壊しません。
また、スペック表を見ると「平均演色評価数 Ra95」という数字があります。一般のLED電球はRa82でした。
演色評価数は、照明の下で物の色がどう見えるかを表す数字です。数字が大きいほうが、色が自然に見えます。
ここで、ひとつ念を押しておきます。これは人の目から見た色の話です。 Ra95のほうが植物がよく育つ、とはカタログのどこにも書かれていません。葉の緑がきれいに見える、というところまでです。
ついでに申し上げると、どちらの製品も光源は「白色LED」で、交換はできません。電球のように、あとから色を替えることは想定されていないわけです。
なお、「白色の光と暖色の光のどちらが植物によく育つか」という疑問については、この2つの製品の資料には記載がありません。育ちの優劣を語る根拠がない以上、室内の明かりの色味やお好みに合わせて選ぶのが自然でしょう。
⑦ まとめ — 私の答え

観葉植物の店を三十年やってきましたが、葉を落としたり元気をなくしたりして持ち込まれる鉢の多くは、日当たりを人間の目の感覚だけで判断してしまったことが始まりでした。
枯れるのには、必ず理由があります。
ここまで見てきたように、植物育成ライトと普通のLED電球の違いは、明るさでは見分けられません。
カタログを見るときに確認すべきポイントは、次の通りです。
■ ルーメンの数字にとらわれず、PPFDと推奨照射距離の記載があるかを確かめる
■ 育成ライトであっても、光を集める構造によって直下の強さが異なる
■ 光は距離によって急激に減衰するため、推奨照射距離(5〜10cm)を守って近づける
■ タイマー仕様の通り、8時間から16時間の点灯を目安にし、必ず消灯時間を作る
部屋の置き場所や窓からの光の入り方については、別の「光と置き場所のカルテ」で詳しく整理しています。まずは今検討しているライトのカタログを手に取って、PPFDと距離の数字がきちんと書かれているか、その1行を確かめてみてください。
よくある質問
Q1. 普通のLED電球では、観葉植物は育ちませんか。
A. 結論:育つか育たないかは、同じ条件で比べた資料がないため断定できません。 一般のLED電球のカタログには、植物が利用するPPFDや推奨照射距離が書かれていません。人の目には明るく見えても、植物に必要な光の強さが足りているかを数字で確認できないのが最大の違いです。
光が足りない場所に置き続けると株がどう変わっていくかは、こちらのカルテで3つの段階に分けています。
Q2. 1日何時間つければいいですか。
A. 結論:メーカーのタイマー仕様にある8時間から16時間が目安です。 折り畳み式には8時間・12時間・16時間の切り替えがあり、吊り下げ式には16時間のタイマーが入っています。まずは8時間から12時間を目安に照射し、植物の様子を見ながら調整してください。
Q3. つけっぱなしにしてもいいですか。
A. 結論:一日中つけっぱなしにするのは避けてください。 メーカーの仕様でも、点灯時間のあとには必ず8時間から16時間の消灯時間が組み込まれています。植物にも光合成を行わない暗い時間が必要ですので、夜間は消灯してください。
Q4. 電気代はどれくらいかかりますか。
A. 結論:消費電力は折り畳み式で14.0W、吊り下げ式で7.0Wです。 電気料金単価はお住まいの地域や契約プランによって異なるため金額は出せませんが、一般のLED電球(60形相当で6.6W)と比較すると、吊り下げ式はほぼ同等、折り畳み式はおよそ2倍の消費電力となります。
Q5. 白色と暖色は、どちらを選べばいいですか。
A. 結論:育ちへの影響は資料に記載がないため、部屋の雰囲気に合わせて選んで問題ありません。 今回取り上げた育成ライトは「お部屋に馴染む白色の光」を採用しており、平均演色評価数もRa95と高いため、リビングに置いても違和感なく植物の本来の緑色を楽しめます。
植物の不調や日々の手入れで迷ったときは、いつでも店先のカルテをめくるように思い出してください。
では、よい緑を。