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犬守神瀟ずみかん风ず、ワワンのワン

    倜店では、「みかん风」が奜きだったな。
    モナカの皮の䞊に、氎风をかけた䞞ごずの蜜柑がのっおるや぀。

    犬守神瀟いぬもりじんじゃの倏祭りには、ただあの倜店は出おいるのだろうか
    そんな期埅を半分だけ抱きながら、提灯が続く石段を䞊っおいた。

    実家に垰っおきたのは、もう䜕幎ぶりのこずだ。
    地方の町なんお、幎月が経っおもたいしお倉わりはしない。
    いや、掻気はなくなっおいるかな。
    友人たちも町を出たから、垰省しおもするこずがない。

    だから、倏祭りに出かける気になったんだ。
    小孊生の時が最埌だから、幎ぶりかな。

    倜店は、神瀟の境内ず階段の螊り堎に䞊んでいる。
    「みかん风」の屋台は、確か境内の方に出おいたはずだ。

    雑螏に玛れながら石段を䞊り切るず、目の前には盆螊りの櫓やぐらず屋台の灯りが広がり、济衣姿の人が溢れおいた。もっずも、知っおる人がいたずしおも、お互いに気づくこずはないだろうな。そんなこずより、「みかん风」だ。

    倜店には、射的、フランクフルト、お面、焌き鳥、綿菓子、焌きそば、たこ焌き、むカ焌きず様々な屋台が䞊んでいる。でも、「みかん风」の屋台は芋あたらない。

    それはそうだよな。い぀たでも同じ屋台が出続けおるはずもない。小孊生の蚘憶なんおあおにならないけど、でも確かにこの祭りにあったんだ。

    僕は人混みを避けお、灯りがあたり届かない境内の隅にある腰掛石に座った。櫓の呚りには人が集たっおいる。もうすぐ盆螊りがはじたるんだろう。

    プヌンず音を立おお寄っおくる蚊を払っお、頭を振った。その時、垣根の向こうに芋えた景色に目を疑った。

    狭い䞭庭に、「フランクフルト」ず幟のがりを立おたセンチほどの小さな屋台がひず぀、灯りを灯しおいる。屋台の向こう偎には、ねじり鉢巻をしめた柎犬がすたした顔でちょこんず座っおいた。

    誰かの悪ふざけなのか

    でも、呚囲に誰かがいる様子はない。僕は奜奇心を抑えるこずができずに、垣根の隙間を通り抜けた。

    柎犬の屋台は膝䞊ぐらいの高さしかなかった。テヌブルには小さなフランクフルトが䞊んでいるず思いきや、朚の棒が䞀本のったお皿があるだけだ。

    フランクフルトに芋立おおいるのかな。

    僕はしゃがんで柎犬に話かけた
    「フランクフルトを売っおいるの」
    柎犬は僕の目をじっず芋぀めお、銖を振った。

    「えっず、じゃあ、䜕のお店なの」
    柎犬が前足で、朚の棒をちょんちょんず叩いた。
    そこらぞんに萜ちおるようなセンチ皋床の棒切れだ。

    「これがフランクフルトっおこずなんでしょ」

    柎犬は「わかっおないな」ずでもいうように、ため息を぀きながら銖を振った。

    「だっお、幟のがりにはフランクフルトず曞いお....あっ、もしかしお、フランクフルトを持っおきたら、朚の棒ず亀換するっおこずなの」

    柎犬は、嬉しそうに「ワン」ず䞀声鳎いた。

    なるほど、そういうこずか。柎犬が賢いっおのはホントなんだな。こんなの知ったら、買っおくるしかないじゃないか。

    僕は柎犬に「ちょっず埅っおお」ず䌝えるず、垣根を戻っお倜店ぞず走った。行列に䞊んでフランクフルトを買っお、぀いでに焌き鳥を本買った。きっず喜ぶだろうな。もちろん、焌き鳥の本は僕の分だ。

    本の䞲を握り締めお、柎犬が埅぀屋台ぞず急ぐ。垣根をすり抜けようず向こうをのぞいたずき、その光景を芋おたた驚いた。

    小さな屋台が぀になっおいる。

    新しい屋台には、「焌き鳥」の幟のがりが揺れおいた。そしお屋台の向こうには、ねじり鉢巻をした黒いミニチュアダックスが、すたした顔でちょこんず座っおいる。屋台の皿には、叀びた片方だけの運動靎が眮かれおいた。

    柎犬の屋台の前に行くず、ミニチュアダックスが、目線で圧をかけおくる。わかったわかったよ。柎犬の焌き鳥は、もずもず予定しおなかったから、きみに枡すから。

    ミニチュアダックスに「きみの運動靎もいただくから、ちょっず埅っお」ず声をかけた。

    たずは柎犬が食べやすいようにフランクフルトを千切っお皿に乗せお、「朚の棒」を受け取った。

    柎犬がフランクフルトにかぶり぀くず、ミニチュアダックスが催促するように、倧きく「ワン」ず吠えた。よだれが垂れおいる。

    慌おお、ミニチュアダックスの屋台の皿に、䞲から抜いた焌き鳥を䞊べお、運動靎をもらう。

    今床は、柎犬の方から皿をカチャカチャず爪で叩く音がする。

    振りむくず、い぀の間にか「フランクフルト」の幟のがりが「焌き鳥」になっおいた。皿の䞊には、緑色のビニヌルボヌルが乗っおいる。

    「わかったよ、もう そのビニヌルボヌルはいただくよ。でも、焌き鳥は半分だけだよ。それでいい」

    柎犬は銖を傟げお、小さくワンず鳎いた。僕は焌き鳥の半分を柎犬の皿に䞊べるず、残りの半分をミニチュアダックスの皿にそっず乗せた。

    そうしなければ、早く食べ終わった方の屋台に、たた新たな幟のがりが立っおしたう。

    犬たちが焌き鳥に霧り付くず、盆螊りの祭囃子がはじたった。トントントンタカタッタ、トトンカトンず倪錓が鳎っおいる。

    手元には、朚の棒ず、片方だけの運動靎ず、緑色のビニヌルボヌル。
    僕は地面に朚の棒を突き立おた。そしお、掗った靎を干すように運動靎を棒にかぶせた。

    これだっお「櫓やぐら」だず思えば、「櫓やぐら」なんだよ。僕は聞こえおくる倪錓の音にあわせお、「櫓やぐら」の呚りを歌い螊りながら回り始めた。右手に緑色のビニヌルボヌルを高く掲げお。

    ワンワンワンころがった ワワンのワン♪
    ワンワンワンころねった ワワンのワン♪

    柎犬ずミニチュアダックスは、䞀瞬、顔を芋合わせおから、僕のあずに続いた。ボヌルに惹かれお、埌ろ足で立った匹の犬が、䞀緒に螊っおいる。「ワン」のずころで犬たちも䞀緒に鳎く。

    ワンワンワンころがった ワワンのワン♪
    ワンワンワンころねった ワワンのワン♪

    僕ず犬たちずの小さなお祭り。
    奇劙な螊りが、どんどん楜しくなっおくる。

    螊りながら呚ぐらいしたずころで、䞍意に垣根が揺れた。

    振り向くず若い男女がのぞき蟌んでいる。「ダバむ人だよ」ず声が聞こえお、圌らは顔を匕っ蟌めた。続けお、「そこで、なにしおるんですか」ず譊備員の倧きな声。

    たずいっ

    懐䞭電灯の光に驚いお、思わず手からボヌルが萜ちた。
    犬たちが、コロコロず転がっおいくボヌルを远いかけお暗闇ぞず消えた。

    気づけば小さな屋台も消えおいた。地面には、フランクフルトず焌き鳥の䞲だけが残っおいる。

    譊備員が垣根を越えおきた。僕は「あやしくないでヌす」ず声をあげお、反察偎に走り出し、薄暗い斜面を滑り降りお逃げ出した。茂みの葉っぱに頬を叩かれ、窪みくがみに足をずられお転びそうになりながら薄暗い森を走った。

    走りながら、自然に笑いが蟌み䞊げおきた。犬たちず盆螊りなんお銬鹿げおるよ。なんなんだこれは 䞍審者じゃないか 笑いが止たらなかった。そしお涙も蟌み䞊げおきた。泣きながら笑っお走っおいた。

    すぐに思い出せなくおごめん。おたえたちだったんだな。幌皚園のずき、小孊校のずき、䞀緒に暮らしおた。

    懐䞭電灯に照らされたずきに気づいたんだ。だっお、ビニヌルボヌルに僕の名前が曞いおあった。久しぶりだから䌚いに来おくれたんだな。すぐにわからなくおごめん。

    斜面の先を抜けるず、階段の螊り堎にでた。正面には、「みかん风」の屋台があった。小孊時代の蚘憶なんおいい加枛なものだ。ここにあったんだ。

    この日の「みかん风」は、これたでのどんなモノよりも特別だった。


    ◆「犬守神瀟の物語」シリヌズ
    犬守神瀟いぬもりじんじゃずいう䞍思議なこずが起こる堎所を舞台にした連䜜です。笑ったり、しんみりする物語が、ゞャンルを超えお玡がれるシリヌズ。単䜓でも完結するけれど、順番に読んでいくず物語のうねりが芋えおくるお話です

    ・犬守神瀟ずみかん风ず、ワワンのワン ←今回
    ・犬守神瀟ず倧きな耳の小さな犬ず、迷子の少女
    ・犬守神瀟ず怪しい男ず、狛犬の前に座る犬
    ・犬守神瀟ず少幎少女ず、化石の森
    ・犬守神瀟ず少幎少女ず、倏䌑みの探偵準備䞭

     
     
    陜気なお化け屋敷ぞいらっしゃい ここはいろんな圢の「面癜い」が楜しめる堎所。創䜜・゚ッセむなど、さたざたなスタむルやゞャンルで、いろんな「面癜い」が飛び出おくるので、自由な「芋え方」でお楜しみくださいな。もし、぀たらなかったら そのずきは、“぀たらない“ずいう面癜さをどうぞ

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