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書斎派アウトドア司書の冒険読書#10/『神秘の島』(『海底二万マイル』続編)【児童文学のすすめ】

    暑い夏こそ、読書で「冒険」に出かけましょう!

    「夏の冒険読書」の連載では、児童文学の名作たちを、
    毎回1冊ずつ配本(紹介)していきます。

    ▶️バックナンバーは『夏の冒険読書ガイド』マガジンからどうぞ!

    配本を届けたい方としては……
    ・子育てや教育に関わっている方
    ・読書好きの方/昔、読書が好きだった方
    ・日々の生活に疲れ、現実逃避したいと思っている方

    つまり、これを読んでいる方、ほぼ全員ですね(笑)。

    さて、今回お届けするのは……

    無人島モノの集大成ともいえる、巨匠の最高傑作です。


    第10回配本

    『神秘の島』 ジュール・ヴェルヌ(福音館書店)

    今回は、究極の無人島モノ、『神秘の島』です。

    他の日本語タイトルとしては『神秘島物語』、『ミステリアス・アイランド』などもあります。

    原題である『ミステリアス・アイランド』は、
    東京ディズニーシーのエリア名になっていますね。

    ジュール・ヴェルヌの作品としては、すでに『十五少年漂流記(二年間の休暇)』、『海底二万マイル(海底二万里/海底二万海里)』を紹介しており、本書で3冊目となってしまいますが、物語の面白さや類書にない特徴などを総合的に考えると、どうしても外せなかったのです。

    1.これぞ「究極の無人島モノ」

    物語は、南北戦争のさなか、気球で脱出した5人の仲間(と犬1匹)が嵐に巻き込まれ、無人島に漂着するところから始まります。

    本書が、他の無人島モノと違うところは、
    漂流者が持っている装備のあまりの少なさ。

    ロビンソンや十五少年たちが、難破した船から、ありとあらゆる装備を持ち出していたのに対して、本書の漂流者が持っていたのは……

    マッチ1本、小麦1粒、懐中時計、手帳、犬の首輪――

    その程度です。

    嵐の中、気球にかかる重量を軽くするため、ほとんどの装備を捨ててしまっているんですね。

    にもかかわらず、この状態から、科学と知恵を総動員して無人島でのサバイバルを続けるわけです。

    その内容も、類書と一線を画します。

    レンガやガラスを作る。
    釜を作り、パンや陶器を作る。
    鉄を作る、電気を起こす、火薬を作る……

    といった具合に、さまざまな道具を作っては、
    そこからさらに、ありとあらゆるものを作っていくのです。

    こんなふうに、1つの無人島を丸ごと「文明化」していく展開は、
    「いくらなんでもそれはないやろー」と突っ込みつつ、
    「え、マジで? どこまでやるん!?」という驚きに満ちています。

    漂流者の知識もすごいですが、これを考え出して、小説にする、
    作者ヴェルヌの想像力に脱帽です……。

    さらには海賊との戦いや火山噴火、島からの大脱出など、
    物語の面白さも十分。

    これぞ、究極の無人島モノであり、
    「冒険読書の最高到達点」といいたい1冊なのです。


    2.『海底二万マイル』との関係

    実はこの作品、前回ご紹介した『海底二万マイル』と深い関係があります。

    もっというと、『グラント船長の子供たち』という作品とあわせて、「三部作」を構成しているのです。

    『グラント船長の子供たち』の方は、図書館などで簡単に読めるのであれば、読んでも損はないと思います。
    「グラント船長・・・」の登場人物がゲスト出演する、という程度のゆるいリンクなので、未読でもまったく問題ありません。

    ただ、『海底二万マイル』については、かなり濃厚な関係があるので、本書の前に、「海底・・・」は読んでおいた方がいいと思います。

    というより、逆に、「海底・・・」を読んだことがある人は、ぜひ、本書を読んでほしいです。
    それくらい、ほとんど「続編」といっていい内容になっています。

    以下は、本書のネタバレにもなる説明なので、ネタバレ一切なしに本書を読みたいという方は飛ばしてください。

    でも、できれば、ネタバレを気にせず、以下の説明も読んでほしいです。

    だって、「海底二万マイル」を読んだ人が、続編である『神秘の島』の存在を知らないとすれば、ネタバレより、そっちの方が残念だと思うので。

    <海底二万マイルとの関係/ネタバレ>

    本書『神秘の島』には、ネモ艦長(ネモ船長)が超重要人物として登場します。それだけではなく、『海底二万マイル』で明かされなかったネモ艦長のの出自、半生が明らかにされます。
    もう、ネモ艦長が本書に出てくること前提で、「いつ出てくるのか」、「なぜここに出てくるのか」に意識を向けて読んだほうがいいと思います。

    以上、ネタバレ終わります!


    3.東京ディズニー・シーとの関係

    東京ディズニー・シーにある「ミステリアスアイランド」は、まさにこの『神秘の島』(+他のヴェルヌ作品)のイメージを土台にしています。

    中央のプロメテウス火山、地底旅行、潜水艦ノーチラス号――

    すべてヴェルヌ世界からの借景です。

    『海底二万マイル』『地底旅行』の世界観と
    『神秘の島』の舞台を融合させた「テーマパーク版ヴェルヌ世界」。

    つまり、アトラクションに乗った人は、『神秘の島』はじめ、ヴェルヌの世界観を体験しているわけです。


    4.映画との関係

    本書の原題「ミステリアス・アイランド」をタイトルに持つ映画は複数ありますが、実は、本書の「映画化」ではないことが多いので、注意が必要です。

    代表的作品を以下に紹介します。

    (1)1961年『SF巨大生物の島』
    (原題:Mysterious Island)
    日本語タイトルからわかる通り、まったくの別物。
    レイ・ハリーハウゼンの特撮は一見の価値あり。

    (2)2005年『ミステリアス・アイランド』
    (原題:Mysterious Island)

    上記『SF巨大生物の島』のリメイク作品。もちろん別物。

    (3)2012年『センター・オブ・ジ・アース2 神秘の島』
    (原題:Journey 2: The Mysterious Island)
    2008年の映画『センター・オブ・ジ・アース』の続編。
    動物の大きさの大小が逆になるという法則がある島での冒険を描く。
    「神秘の島」という名称だけ借りた、完全な別物。


    5.似た設定を持つ作品たち

    『神秘の島』の「0→1」感を味わえる作品を2つご紹介します。

    (1)映画『オデッセイ』
    火星に取り残された男が、知識の限りを尽くして生き延びる、
    火星版「DASH村」。原作はSF小説『火星の人』。

    (2)マンガ『Dr.STONE』
    文明崩壊後に科学の力で文明をゼロから再建していく物語。

    ヴェルヌの発想は、さまざまなジャンルで生き続けているのです。


    6.「驚異の旅」シリーズへの旅

    ジュール・ヴェルヌが作り出した「驚異の旅」シリーズは、
    62の長編と19の短編で構成されています。

    『気球に乗って五週間』
    『地底旅行』
    『月世界旅行』
    『八十日間世界一周』

    ……あたりが特に有名で、日本語訳も探しやすいです。
    『十五少年漂流記』や『海底二万マイル』も含まれます。

    ちなみに、『月世界旅行』の続編に『地軸変更計画』という作品があることはあまり知られていないのではないでしょうか。

    2冊あわせて「大砲クラブもの」といわれています。
    『地軸変更計画』は私も未読ですが、ぜひ読んでみたいですね。


    7.まとめ

    『神秘の島』は、ただの無人島サバイバル小説ではなく、「人類と科学の可能性」というテーマを冒険譚に落とし込んだ壮大な実験場です。

    ディズニー・シーで火山を眺めたり、昔の特撮映画を楽しんだり、あるいは最新のSFマンガを読んだり……

    その背後には、150年前に描かれたこの物語のDNAが息づいている――

    そう考えると、「ジュール・ヴェルヌ、本当にすごい人だな!」と改めてリスペクトの念が湧き起こるのです。

    私も、未読の「驚異の旅」を踏破してきたいと思います。


    最後に:児童文学のすすめ

    「夏の冒険読書」の連載は、一応、今回で最終回となります。
    今までお読みいただきまして、ありがとうございました。

    とはいえ、これからも、児童文学の記事は書き続けたいと思います。

    今回ご紹介した10冊は、すべて、私が子どもの頃に、夢中で読んだ本ばかりです。

    そして、「冒険読書」という企画は、私が30代の頃、子育てをしている時期に、近所の「子どもの本とおもちゃを扱う店」の会報誌に寄稿していたコラムで生まれたものです。

    今回選んだ10冊は、当時選んだ本もあれば、入れ替えた本もあります。

    ただ、紹介文を流用した本であっても、当時の原稿をそのまま使うことはできませんでした。

    理由は、
    ・時事ネタ、地元ネタが満載だったため
    ・約20年のときを経て内容が古くなってしまったため
    ・当時は字数制限があり全然書き足りなかったため
    ……です。

    気づけば私も50代になりました。
    今、改めて「冒険読書」を連載するにあたり、どのような立場で紹介文を書けばいいのか、最後まで悩んでいました。

    子どもの頃に夢中で読んだときの気持ちで書くべきか。
    司書として、子育て世代に寄り添う気持ちで書くべきか。
    それとも、大人になった今、もう一度読み返した気持ちで書くべきか。

    結局スタンスは定まらず、毎回、試行錯誤の連続でしたが……

    私は、今でも児童文学が大好きです。

    本は読むたびに違う顔を見せてくれます。

    子どもの頃の自分にも、
    子育てをしていた自分にも、
    そして、今の自分にも。

    だから私は、これからも児童文学に関する記事を書き続けていきます。

    児童文学以外の話題も多い私のnoteですが――
    どうかまた、私と一緒に本の旅に出かけていただければ嬉しいです。


    <小学生の頃の読書、児童文学への思いを綴った記事>


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    関西在住。1級FP、独立系司書。50代でFIREを達成し、 何があっても「この先、生きのころー!」をテーマに 自称「マルチ・ポテンシャライター」(多趣味ライター 的な造語)として活動。今まで読んだ5000冊以上の本 から生まれたアイデアをもとに、童心で楽しむ日常 や創作を発信中。

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