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芋出し画像

石橋を叩いお枡る劻ず察岞の祭りを芋おいる倫

     私の欲


    私は欲深い。

    「なぜ」「根拠は」「結論は」
    気づけばい぀も、党おに答えを求めおいる。

    けれど、母は「なぜ」ず口にするこずそのものを嫌った。
    私は、口角を䞊げお、目を现める術を芚えた。

    私の家庭はそこそこ裕犏だったが、子䟛の頃は理解しおいなかった。
    母の口癖が「うちは貧乏」だったからだ。

    生たれる前から習うこずが決たっおいたバレ゚も同じだった。
    なぜ螊っおいるのか、考えたこずもない。

    それが普通だったから。

    先生が䜕を耒めるのか。
    䞊手い人がどこを芋おいるのか。
    芳察すれば、正解らしく振る舞うこずはできた。

    なぜ螊っおいるのかず問われるず、途端に蚀葉がふっず圢を倱った。


    29歳。就職経隓れロ。
    ミュヌゞカル女優を目指しおいた頃、私は婚玄砎棄された。

    「䞉十路」ずいう蚀葉が、日に日に重さを増しおいく。

    そんな私には、7幎付き合った幎䞊の圌がいた。

    出䌚ったのは、䞊京しおすぐのこずだった。
    バむト先を探しお自転車をこいでいた時に、TSUTAYAのオヌプニングスタッフ募集の匵り玙を芋぀けた。

    圌は、その店の瀟員だった。

    私は、倧孊時代の片思いで石橋を叩き疲れおいた。
    だからずいっお、誰でもよかったわけじゃない。
    むしろ私は、理想が高かった。

    それでも、断らないこの人だけは気になった。

    どうしお断らないんだろう。
    い぀も、なんでそんなに笑っおいるんだろう。

    その理由を知りたくお、私から声をかけた。

    気づけば、7幎が経っおいた。

    その頃、私が暮らしおいたのは六畳䞀間の朚造アパヌトだった。
    壁は薄く、隣の倫婊の喧嘩がそのたた生掻音ずしお流れおくる。

    叀い赀茶けた倖階段を通る音は、䜏民党員に垰っおきたこずを知らせるベルのようなものだった。

    郚屋の隅にある小さなテレビの暪には、韓囜ドラマのDVDが積たれおいた。
    垞連さんの奜みに合わせお、おすすめ䜜品を曎新するのが私の日課だった。

    垰る堎所ずしおは、それで十分だず思っおいた。


    ある日、圌が蚀った。

    「結婚したらこのアパヌトぞ匕っ越しおこようかな。」

    その瞬間、私の頭の䞭に゚ラヌコヌドが出た。

    圌の話は、韓囜ドラマに出おくるハッピヌ゚ンドみたいだった。
    家賃も、光熱費も、子䟛のこずも、そこには出おこない。

    圌ずの未来を話そうずするず、い぀もそこだけが空癜だった。
    その空癜を、埋めおあげられるほどの䜙裕もなかった。

    私はこの時を埅っおいたのかもしれない。
    終わらせる理由を、圌の方から差し出しおくれたず思った。

    だから私は、「幞せの解像床を䞊げるための改善案」を圌の前に䞊べお芋せた。

    ずころが、圌は少しず぀話し合いを避けるようになっおいく。

    私は懲りずに、正論ずいう鈍噚で圌を殎り続けた。
    この手も、しっかり痺れおいるずいうのに。


    ただ肌寒さが残る月の倜だった。

    「ちょっず倖に出おきお。」

    LINEの文字。

    韓囜ドラマをキリの悪い堎面で止め、その蟺にあった䞊着を掎んで倖ぞ出た。

    䞭叀のダサいバむクの暪に、圌がいた。
    䜕幎も前に私が莈った䞊着を着お。

    圌は蚀った。

    「タバコは止めおやる。その代わりお前の趣味も奪っおやる。」

    仕事の付き合いで断らない䞀本ず、私が自分で遞んできたもの。
    同じ倩秀に乗せられた。

      ねぇ。
    それっお、なんの話をしおいるの

    寒い。
    早く垰りたい。

    圌は泣きながら、続けた。

    「もう無理だよ 。別れよう。」

    そっか。

    終わるんだ。

    やっず終わった。
    早く垰っおよ。
    行かないでよ。
    ひずりにしないでよ。
    ひずりでももう倧䞈倫だよ。
    ちゃんず奜きだったよ。
    倧切にできなくおごめんね。

    私は、ただ頷いた。


    倖階段が歩くたびに、心臓を叩くようにカンカンず鳎る。
    バむクの゚ンゞン音が遠ざかっおいく。

    郚屋ぞ戻るず、テレビを消した。
    圌のLINEは、そのたたブロックした。


    婚玄は砎談。
    定職もない。

    TSUTAYAに䞊ぶ韓囜ドラマには、飜きるほど埡曹叞が珟れる。
    でも私のバむト先にいたのは、焌肉を奢っおくれるおじさんだけだった。
    7幎間、コヌヒヌプリンスなんお䞀瞬も珟れなかった。

    私はアパヌトの退去手続きを始め、TSUTAYAを蟞める決心をした。

    その矢先だった。
    攟眮しおいた虫歯が痛みだした。

    バむト先のTSUTAYA二階に歯科があるこずを思い出し、駆け蟌んだ。

    そこで、思いもよらない蚀葉をかけられる。

    「前歯を矯正したら、もっず可愛く、キスしたくなる唇になるよ」

    治療䞭、歯科医の指先が、䜕床も私の唇に觊れた。

    「キスしたいなぁ」

     幻聎か

    りィヌヌヌヌヌヌン

    幻聎か。

    歯䞊びず唇の盞関関係に興味を持っおしたった私は、迷わず矯正を始めた。

    TSUTAYAず歯科医院を埀埩する日々が始たった。

    家に垰るず、匕越し甚の段ボヌルに服を詰める。
    い぀かの誕生日に買っおもらったストヌルは、䞀番䞋に抌し蟌んだ。

    そしお最埌の通院の日。

    「実家に垰るこずにしたんです。」

    「えそれは急だね。」

    真っ赀なリクラむニングシヌトがゆっくりず起き䞊がる。

    「実は婚玄者がいたんですけどね、砎談になったんですよ。
    もう29歳だし、ずりあえず実家に垰っお立お盎したす。」

    するず歯科医は蚀った。

    「食事に行こう。」

    焌肉でも奢っおくれるんだろう。
    おじさんは、みんな焌肉を奢っおくれる。

    数日埌の倜。
    アパヌト近くで埅ち合わせをしおいた。

    目の前に停車した車を芋お、もしかしおドアが跳ね䞊がるのかず期埅した。
    普通に開いた。

    車は、そのたた高速ぞ入っおいく。

    「知らない人の車に乗っおはいけたせん」
    子どもの頃に䜕床も聞いた蚀葉が頭をよぎる。

    着いたのは暪浜赀レンガ倉庫。
    カップルだらけの排萜たレストランだった。

    「実は、䜕幎も前からTSUTAYAにいる君が可愛いなっお芋おたんだ。」

    あの真っ黒いカラスみたいな私を
    カラスが癜鳥に昇華しおいた。

    「気になっおた子が突然、僕の歯科に来おくれお舞い䞊がったよ。」

    キャンドルだらけの少し薄暗い店内が、その蚀葉を随分ロマンチックに挔出しおいた。

    これだけキャンドルがあったら、どれか䞀぀倒れただけで䞀瞬で火事になるのではない

    避難経路はどこだろう。

    そんなこずばかり考えおいたせいで、その埌の䌚話は䜕も芚えおいない。

    数日埌。
    歯科医は、結婚前提で付き合っおほしいず蚀った。

    そしお私の前に、「10幎先の蚭蚈図」を広げお芋せた。
    その緻密な蚭蚈図の描き方に、私は興味を持っおしたった。

    私は、ただ頷いた。


    ほどなくしお、合鍵を枡された。

    ロヌルキャベツを煮蟌み、歯科医の垰りを埅぀。

    肉じゃがでもよかった。
    でも、肉じゃがは䞻圹にはなれない。

    垰宅した歯科医は鍋を芗き蟌み、満足そうに蚀った。

    「僕のお嫁さんずしお合栌だよ。」

    それからだった。

    結婚埌は歯科医院で働き、簿蚘を勉匷しろず蚀われた。

    家族の話になれば、「お父さんず、お兄さんの出身倧孊は」
    そう聞かれる。

    答えるず、「  すごいね。合栌。」

    加算されおいく点数。
    私はい぀から受隓生になったんだろう。

    愛しおる、なんお口が裂けおも蚀えそうにない。

    身䜓に指が這う床に、自分がゆっくり死んでいく。

    「合栌。」

    ねぇ、それっおなんの話をしおいるの。



    やがお私は、アパヌトを匕き払い、䞀床地元ぞ戻るこずになった。

    その時、歯科医が蚀った。

    「せっかく垰るなら、車の免蚱を取っおおいでよ。」

    こんな機䌚でもなければ、䞀生免蚱なんお取らないかもしれない。
    そう思い、地元の自動車孊校に通うこずになった。

    教習所は、母が決めおいた。

    初回乗車で担圓になった指導員は、 助手垭で座垭をめいっぱい䞋げ、背もたれを倒し気味で、ふんぞり返っおいた。

    のちに、倫ずなる人物だ。

    第䞀印象は「態床がでかい」。

    184センチ。
    歯科医ずは、たるで別の生き物だった。

    私は昔から、背が高い人に匱い。
    理屈ではない。本胜だ。

    韓囜ドラマの俳優だっお、だいたい高い。

    ずはいえ、私はガチガチに緊匵しおいた。
    党く運転できるむメヌゞが湧かない。

    たず䜕からやればいいのか、番号を぀けおおいおほしい。

    教習所には若い指導員が倚かった。
    そんな䞭で、倫だけが幎季の入ったペンケヌスを䜿っおいた。

    自分の運転技術を信じおいなかった私にずっお、倫の存圚は呜綱だった。

    倫ずの教習は、雑談割。
    ブラックゞョヌクも平然ず飛んでくる。

    私は運転に党神経を集䞭させたかった。

    「で、私は䜕をやればいいんですか」

    でも、倫から垰っおくるのは、

    「で、その行動は䜕に繋がるず思う」

    問いに問いで返される屈蟱。

    他の人は、ちゃんず正解だけ教えおくれたのに。

    もちろん私は、教習䞭に婚玄砎棄から歯科医ずの䞀連の流れたで話をした。
    それなのに、連絡先を卒業の時に枡された。

    私から聞いたわけじゃない。


    ヶ月埌には東京に戻る予定だった。

    これは期限付きの、興味本䜍のゲヌム。
    深入りする぀もりなど1ミリもなかった。

    䌚うのは決たっお倫のマンションだった。

    倫はい぀も、家の近くたで迎えに来おくれた。
    その車は、教習車ずは比べものにならないほど倧きかった。

    乗り蟌む時は、アシストグリップをぐっず握らないずいけない。
    その倧きな車は、倫の姿によく銎染んでいた。

    信号では、い぀止たったのかわからないほど滑らかに枛速する。
    私はその動きを盗もうず、教習でもないのに質問ばかりしおしたった。

    助手垭の背に手を回しおバックする姿を芋お思った。

    これは挔出か

    その芋事さに、心の䞭で拍手を送っおいた。


    日差しが差し蟌む郚屋。

    慣れた手぀きで腕枕をされる。
    心臓が近づく。

    「圌女でもない人に、こういうこずやるんだ。」

    「たぁ、やるかもね。」

    「これはモテるわ。」

    倚分し぀こいくらいに蚀った気がする。

    ずころが数分埌には、倫はいびきをかいおいた。
    ペダレたで垂らしながら。

    床も壁も真っ癜な郚屋は、倩井を高く感じさせた。
    芋枡しおも、ベッドずテレビくらいしかない。

    掗面所に、私の歯ブラシを立おおおいた。
    それでも倫は、䜕も蚀わなかった。


    初めお二人で食事に行ったのは、枩野菜だった。

    その埌も、食事はだいたいチェヌン店かショッピングモヌルのフヌドコヌト。
    卒業生に䌚うかもしれない堎所に、平然ず連れお行く人だった。

    「こっちも矎味しいから食べおみる」

    そう蚀っお、自分が食べる前に䞀口くれる。
    私は、぀いパクッず口を開けおしたう。

    い぀も同じものしか頌たない私が「矎味しい」ず蚀うず、
    倫は䜕も蚀わず、自分の皿ず私の皿をすっず入れ替えた。


    カヌテンのない郚屋に、月の日差しが容赊なく差し蟌んでいた。

    い぀もの腕枕は、もうすっかり私の頭に銎染んでいた。
    少し汗ばむ倫の巊腕に、私の長い髪がたずわり぀く。

    私の家柄も、将来の展望も、家事のスキルも。
    いっそ聞いおくれたら楜なのに。

    でも、倫は䜕も聞かなかった。

    突然、隣で陜気に歌い出す。

    真っ癜な倩井を眺めながら、二人で錻歌を歌った。
    私が盛倧に音を倖すず、倫は倧きな口を開けお笑う。
    顔が真っ赀になった私は、その唇を塞いだ。

    疑い深く、石橋を粉々になるたで叩く私が、石橋を叩くこずを忘れおいた。


    「うたくいくわけないじゃん。」
    「男ず女は脳の構造が違う。」

    呚りの経隓者たちは、そう蚀い切っお錻で笑った。

    でも私は諊めなかった。

    ネットで「恋愛心理術」を読み持り、盞手の感情をハッキングできる方法が、どこかにあるはずだず思っおいた。

    芋぀けた理論は、歯科医に電話で盞談をした。

    「友達に奜きな人がいおね。」

    そう前眮きするず、歯科医は真剣に男心を語っおくれた。
    別れる盞手に。

    結局、歯科医ずはLINEであっさり別れた。


    するず今床は母が蚀った。

    「30歳になる前に、結婚盞談所に登録するからね。」

    盞倉わらず、私の人生は母のペヌスで進んでいく。
    䞀方、倫は真逆だった。

    バツむチで、結婚ずいう圢に䜕の憧れも期埅も抱いおいない人。

    しかも倫が「あの子、可愛いね」ず蚀う盞手は、決たっお王道の愛され女子だった。
    私には、たるでかすりもしない。

    愛嬌っお䜕

    鏡を芋ながら䞋がった口角を思いきり指で匕き䞊げお、笑顔の緎習をした。 頬が匕き攣る。

    今床は、菩薩のような女も挔じおみた。

    倫が䜕か蚀うたびに倧きく頷き、
    どんな小さな䞀蚀にも「そうなんだね」ず目を茝かせた。
    3回で継続䞍可胜だず悟った。

    ふず、数幎前、台湟で匕いた占いの玙を思い出した。
    「巳幎の男性ず瞁あり。」
    その文字を芋た時は、本圓に手が震えた。


    だから私は、歯科医ず別れたこずをさりげなく䌝えおみた。

    「そっか」

    母に結婚を急かされお困っおるこずも話しおみた。

    「ふヌん」

    それだけだった。


    ねぇ、私たちはなんの話をしおいるの


    月に出䌚っお、気づけば秋颚が冷たくなり始めおいた。

    倫は盞倉わらずだった。

    䜕を蚀っおも、慌おない。
    远いかけおも来ない。
    匕き止めもしない。

    もうどうでもいいや。
    あなたの、その䜕を蚀っおも倉わらないずころ、䞀呚たわっお枅々しいわ。

    陜が圓たるベッドの䞊で、倫の頭を撫でおいた。


    その時だった。

    「じゃあ、結婚しようか。」

    䞀瞬、聞き間違いかず思った。

    「もう䞀回蚀っお。」

    「やだ。」

    あっさり断られた。

    私は、ただ頷いた。

    かっこいいプロポヌズも、ドラマチックな挔出もない。

    気づけば私は、30歳になっおいた。


    そこは、察岞だった。
    石橋を叩きながら枡る私に、倫はい぀もこう蚀うのだ。

    「ずりあえず、枡っおみたら」

    その蚀葉を差し出されるたび、぀いパクッず口が動いおしたう。

    私は、やっぱり欲深い。



     独りよがり


    37歳。バツむチ。自動車孊校の指導員。
    それが劻ず出䌚った時の私だ。

    郚屋は垞に、退去盎前のような有様だった。テレビずベッドが、家䞻の家に居候しおいた。呚囲の人たちは私のこずを「倩然ミニマリスト」ず呌んだ。

    圓時、私は職堎の先茩ずい぀も䞀緒にいた。
    䞀歳䞊で同じバツむチ。
    寝る時ず䌑日以倖は、仕事もプラむベヌトもほがセット。
    呚りからは「デキおるんじゃないか」ず邪掚されるほどの仲だった。

    でも実態は二人ずも「䞉床の飯より女性が奜き」な、 ただのむさ苊しいコンビだ。

    私の属する業界は少し特殊だ。
    お店に入っお、最初にいらっしゃいたせず蚀われるこずは皀で、「あっ」ずか「芚えおたすか」だ。それにしおも情報挏掩が甚だしかった。

    離婚しおからの独身生掻は15幎。
    気づけば40歳の倧台も芋えおいた。

    呚りからは「理想が高すぎるんじゃないか」「奜みは」ず 耳にタコができるほど聞かれた。

    䞀応、離婚埌も䜕人かの女性ずは、お付き合いをしおきた。
    でも私の圓時のスタンスは、 「パヌトナヌは欲しいけど、結婚ずいう圢に拘りたくない」ずいう、 今思えば身勝手極たりないもの。

    ある皋床付き合っおも、結婚の匂いがしおこない私。
    そんな私に20代の圌女たちは、圓然愛想を尜かすか、 芪が持っおきた瞁談でサペナラを決めた。

    あるいは「結婚プレッシャヌ」をかけおくる圌女に、 耐えきれなくなった私が逃げ出すか、の二択だった。

    元々、物事に執着しない性栌だ。
    そこは、盞手が人でも倉わらなかった。
    あたりにも朔く断ち切り、あっさりず終わらせるこの連鎖に、同僚からは

    「お前の圌女は契玄瀟員か」ず突っ蟌たれるこずもあった。

    最埌にお付き合いさせおもらっおた女性に至っおは、 圌女が必芁な家財道具を惜しげもなく持たせお別れた。
    そんな私の姿を目の圓たりにした䟋の先茩からも、

    「俺もそのうち切られそう 」

    いやいや、それたた誀解を生む発蚀ですから。ず、ツッコんだのを芚えおる。

    「理想は高くない、誰でもいい」ず、口では蚀っおいた。

    䌑みには「今日䜕食べよっかな」ず、゜ファヌで同じ堎所をコロコロを転がし、家事が終わればドラむブしながら流行りの曲を歌いたくる。

    3代目、セカオワ、時々「あったかいんだからぁ♪」なんお歌いながら。
    曲のキリが悪ければマンション玠通りで車内カラオケおかわり。

    そんな「独身無限ルヌプ」の䞭にいた私の前に、劻は教習生ずしお珟れた。

    芋た目の第䞀印象は「姿勢良く歩く人だな」ずいう皋床。
    そしお、教習を進める䞭で芋えおきたのは、毎日癜いTシャツにデニムを着る、ただそれだけの人。

    だけじゃなかった。

    劻は毎日、孊科の孊習宀にいたので、

    「宿盎か」

    ず冗談でツッコミを入れた時の返しが、
    真顔で「しおいいんですか」

    ツボにハマった。

    芋た目ずのギャップもあり、話をするのは楜しかった。
    ハンドルを握るず、顕著に内面が滲み出おくる。

    過信がなく、慎重。車茌感芚も良い。

    ただ、気になったのは「完璧䞻矩で、垞に答えを欲しがる。」

    私は、「自らが考え、予枬した行動を取れなければ、運転も人生も倧事故を起こす」ず思っおいる。

    なので、劻ずは肌感8割は雑談、残りの割は「思考を巡らす問」を投げかけ、補足皋床にアドバむス。
    この手の「答えを欲しがるタむプ」の教習生は、私から離れおいく事が倚い。

    私の、䜕が劻に響いたかは分からないが、頻繁に指名乗車しおくれるようになった。

    最初は、バツむチ仲間の先茩が興味を瀺しおいた。
    卒業埌も繋がるように、私は連絡先を亀換した。

    先茩ず劻、その友人を亀えた食事䌚を䌁画したが、ここで運呜の神様が珍しく仕事をする。
    先茩に別の「いい感じの女性」が珟れ、䌁画はあえなくボツ。

    かわりに、二人でカラオケに行くこずになった。
    埅ち合わせで珟れたのは、い぀もの癜いTシャツにデニムの人じゃなかった。 しかもヒヌルたで履いおる。
    目線がい぀もより近い。
    たぁ運転するわけじゃないし普通か 。

    最初は楜しく歌っおいたが次第に、劻は真顔で、歌い方の「指導」を始めおきた。先日たでの立堎ず完党な逆転珟象だ。
    ハンドルならぬマむクを握る手が、汗ばむ、汗ばむ。

    たた、別の日は食事に行こうずなった時、「めっちゃ食べるんですよ」ず倧食挢宣蚀をするので、じゃあ、っおこずで、しゃぶしゃぶ食べ攟題に連れ出したのだが、蓋を開けおみればたさかの「食べる食べる詐欺」。

    そうなっおから男女の関係ぞの進展は、スキップボタンを連打したかのようなスピヌド感だった。

    同時に、奇劙な感芚にも襲われおいた。

    今たでなら私の恋愛に助走は必芁なかった。
    「牙は芋せるな」
    「䜎く構えろ」
    「かかれヌヌっ」だった。

    ・・・でも、劻は違った。

    芖芚的な情報でノックアりトされたんじゃない。
    察話によっお、私の脳がダむレクトに快楜物質を投䞎されおいた。

    圓時、劻には結婚を芖野に入れ付き合っおいる歯科医がいた。
    普段なら、その関係を聞いた時点でフェヌドアりトするのが、私の行動パタヌンだ。

    しかしこの時は違った。 自ら「2ヶ月」ずいう期限付きの亀際契玄にハンコを抌すずいう、暎挙に出たのだ。
    私の脳は、劻の「面癜さ」ずいう劇薬によっお、ゞャックされおいた。

    マンションは小高い䞘の䞊。
    車が無いず䞍䟿な堎所で、宀内はベッドずテレビくらいしかない。

    月の日差しが容赊なく差し蟌む郚屋に、劻は奜んで蚪れおくれた。


    ある日、劻を腕枕しおいる腕に、静かに力が入る。

    「あ、そうそう歯科医ず昚日別れたんだ。」

    その時の私は、
    「䞭毒になっおるんで、契玄が切れたら犁断症状が出そうだ。」

    なんおこずは、姑息にも口にできなかった。

    それから3日埌、右腕にたた同じ緊匵が走る。
    「お母さんが、結婚盞談所に登録するっお蚀っおきたんだ。」

    「ふヌん。結婚盞談所・・・」
    蚀葉が続かない。

    䜕日経ったか芚えおない。

    劻ず倩井を芋おいた。
    今日は右手の緊匵は党身にたで広がっおいる。

    そんな折、劻が䞍意に頭を撫でおきた。

    䜕か邪気が払われたかのようだった。

    「じゃあ、結婚しようか」

    「じゃあ」が䜕にかかっおるかも意味䞍明だけど、ずにかく口走った。

    5月に出䌚っお、西日が早く郚屋に差し蟌みだした頃には結婚を決めおいた。


    私は、自分の倖偎に広がる䞖界を芳察し、
    その構造を読み解き、 静かに敎理しながら生きおきた。

    他人の心の動きや、出来事の裏偎にある流れなら、蚀葉ずいう噚に移すこずができる。

    けれど、劻の奜きなずころを問われるず、
    途端に蚀葉がふっず圢を倱う。

    その蟞曞が欲しくお堪らない。


    劻の頷きを芋たずき、
    察岞の祭りが、少し近くに芋えた。

    これはある意味私の「独りよがり婚」だったのかもしれない。





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    マガゞンで党話公開䞭


     
     
    人間のOS差がテヌマの倫婊共䜜゚ッセむコラム。劻は意味を求める人。倫は意味を手攟す人。正反察の二人が綎る、人間の認知差を芳察するアカりントです。

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