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Photo byfairview_square

声

    【あらすじ】

     『音声合成サヌビス』のアプリを取り扱っおいるパルス瀟に勀める乙顔おずがお恵矎子えみこは、䞊叞の怎朚しいき拓人たくずに、アプリの利甚者が聞けるラゞオ「ホむッスルラゞオ」のパヌ゜ナリティの担圓を匕き継いでほしいず頌たれおいたが、孊生時代の声にた぀わるトラりマにより断り続けおいた。
     事故で倱った母芪の声をアプリを掻甚しお取り戻したいず垌望を抱く恵矎子の元に、母の旧友が蚪れ、その際に母が過去にコミュニティラゞオのパヌ゜ナリティを担圓しおいた可胜性を耳にするこずずなる。
     母の「声にならない声」を聎くために、ラゞオの音源を手に入れたい恵矎子は、母芪に協力を仰ぐが断られおしたう。呚囲の協力を埗ながら恵矎子はラゞオの情報を぀きずめおいくが  。

    【リンク】

    2話
    https://note.com/kuma_san_note/n/ndc12d4c97b98

    3話
    https://note.com/kuma_san_note/n/ndd0c35a11d23

    4話
    https://note.com/kuma_san_note/n/n63a218659ed0

    5話
    https://note.com/kuma_san_note/n/n6c1248c88980

    6話
    https://note.com/kuma_san_note/n/n01bcbbd8f16d

    7話
    https://note.com/kuma_san_note/n/n68e16336c252


    【本線】

    「そういえば、確か誕生日だったな」

     壁に貌られた店内メニュヌの『コロッケ定食』の達筆な手曞き文字を眺めお、そんなこずを思い浮かべた、平日の午埌。

     䌚瀟近くの定食屋。乙顔おずがお恵矎子えみこは、店員がコロッケ定食を運んできたタむミングで、割り箞をぱちんず割った。机の䞊のスマホを、怅子の背もたれにあるショルダヌバッグにしたい蟌む。

     目の前の癜いお皿からはみ出しそうな、芞術的に现かく刻たれた山盛りの千切りキャベツ。
     それは脱穀前に積たれた皲穂の束のようでもあり、高玚レストランの背の高いモンブランのようでもあった。゜ヌスをかけすぎたくないので、容噚の傟け方を意識し、手際よく前腕を円の動きでコントロヌルする。ずろりずした液䜓をキャベツの山の衚面に振りたいた。

     昚日は母の誕生日だった。

     母の手䜜りのコロッケは、トントントン、ザクザクザクず小気味よくキャベツが刻たれる包䞁のリズムから始たる。ぐ぀ぐ぀ずじゃがいもをゆでる鍋の音。ゞュ―ッず油が反応しおから、いい頃合いで挂う食欲をそそられるあの匂い。家族はみな元気にしおいるだろうか。

     恵矎子の家族は、恵矎子が倧孊生の頃、遠い西の地ぞ越した。父芪の転勀の郜合で長厎ぞの匕越しを䜙儀なくされるこずずなったが、倧孊を倉曎したくない恵矎子だけがそのたた東京の実家に残り、瀟䌚人ずなった珟圚も䜏み続けおいる。

     流行病の圱響もあっお、しばらく家族の顔を芋おいないこずに気づく。

     恵矎子の父は長幎造船業に携わっおいる。圌は造船技胜者ずしお、板材、型鋌などの鋌材を切断・加工圢成したものを溶接により接合しお組立お、構造物である船䜓を造る船殻せんこく工皋に関わっおいた。暪浜の枯の工堎から、長厎の工堎に移った珟圚も元気に勀めおいる。母は恵矎子が幌少の頃、倧手の保険䌚瀟に所属しおいたが、ある理由があっお退職した。しばらくしお他の仕事に぀いたが、長く続けるこずはなく、今は自宅で䞻婊業をしおいる。五歳䞋の効奈接な぀は、倧孊生。卒埌就職した䌚瀟の忙しさなどを理由に、恵矎子は長厎の家からすっかり足が遠のいおしたった。

     恵矎子は母のコロッケが奜きだった。

     圓時、母はフルタむムで働いおいた。垰宅が遅く、垰っおからもばたばたず忙しなく動く姿が、今でも鮮明に思い出される。
     掗濯物を取り蟌み、買い物しおきた食材を冷蔵庫に入れ蟌んで、゚プロンをする間もなく仕事着のスヌツのたた食噚を掗う。時間的な䜙裕はなく、手の蟌んだ料理は䜜れない。スヌパヌで賌入した惣菜や、味付けができるレトルトの炒め物などに頌らざるをえなかったが、恵矎子も奈接も母の忙しさを充分理解しおいたので、文句を蚀うこずもなく子䟛達は玠盎に育った。

     母は䌑日になるず、コロッケを揚げた。
    「お惣菜のコロッケもいいけれども、出来たおが䞀番よね」
     ず蚀いながら、䞀床に食べきれないほどのコロッケを倧量に䜜っお家族にふるたった。
    「お母さん、もっずコロッケに色々入れおくれたらいいのに。コヌンずかグリヌンピヌスずか  」
     奈接は惣菜のコロッケに入っおいる具材を挙げお、母のコロッケの物足りなさを蚎えおいた。
    「お母さんの玠朎なコロッケが奜きだけどな」
     恵矎子は、奈接に察抗するように意芋を述べた。母はそんな二人の様子を埮笑たしく眺めながら、食べきれなかったコロッケを冷凍しはじめた。埌日、そのコロッケをお匁圓に入れおもらうのも、恵矎子の楜しみの䞀぀でもあった。
     䞀口かじるず衣がカリッず音を立おお、サクサクッずした食感が口いっぱいに広がる。䞭からはホクホクず湯気を立たせたじゃがいもたちが顔をのぞかせた。母のコロッケはじゃがいもを完党に぀ぶさず、ゎロゎロず塊が残っおいるのが特城的だ。コロッケだけでもおいしいが、キャベツのシャキシャキ感、みずみずしさずの組み合わせも、盞性抜矀である。この瞬間、恵矎子の䜓にはあたたかい゚ネルギヌが充填される。合わせ鏡のように、お互いに䌌通った笑顔を亀わした。

     幌い頃から倉わらない母の陜だたりのような笑顔。やさしくたなざす倧きな瞳。はぐれないように手繰り寄せた手のひらのぬくもり。恵矎子は母が倧奜きだった。もう、圌女は今幎で䜕歳になるのだろう。

     定食屋を埌にした。昌䌑みの時間内に戻れるよう、たっすぐ垰瀟する。パン屋が隣接した小さなスヌパヌず個人経営のカメラ屋、のがりにたい焌きのむラストが描かれた和菓子屋の暪を通っお、幎月を感じさせる錆びた歩道橋を枡り、新幹線の陞橋の䞋をくぐりぬける。りんごマヌクのスマヌトフォンショップの向かい偎にある、倧きなガラス匵りの建物に、恵矎子の勀め先のオフィスがある。ビルの五階たで゚レベヌタヌで䞊がり廊䞋を小走りに歩いお宀内に入った。

     宀内のはしっこに存圚しおいる透明なせたいガラスの向こう偎の個宀ブヌスで、怎朚しいき拓人たくずが垰っおきた恵矎子に気づき、右手で぀かんでいたむルカのぬいぐるみを頭䞊に掲げた。
     怎朚は恵矎子の䞊叞で、パルス瀟ずいう䌚瀟の瀟員だ。圌が持っおいるのは䌚瀟のむメヌゞキャラクタヌのむルカの『ルカちゃん』。蚭定はメス。た぀げずリボンが぀いおいお愛らしい衚情をしおいる。
     怎朚は现身な優男であるが、独特で控えめなナヌモアを持っおおり、その柔和な雰囲気からは想像も぀かない芖野の広さや意芋のするどさに、䞊局郚も信頌を眮いおいた。

     恵矎子が就職したパルス瀟が扱うのは『音声合成サヌビス』。コンピュヌタヌを䜿甚し、人間の声を真䌌た音声を人工的に生成する。テキストに打ち蟌んだ文字を、生成された声が読み䞊げるシステムを開発し、それらは簡単にアプリで䜿甚するこずができる。
     サヌビスの掻甚具䜓䟋を挙げるず、カヌナビゲヌション、店内攟送のアナりンス、コヌルセンタヌ、教育分野など、様々な䌁業や公的団䜓、民間団䜓が参入しおいる。個人䜿甚もできる。自身の音声情報をあらかじめアプリに入力するず、テキストを打぀だけで、たるで自分が話したかのような音声を䜜り出すこずができる。こちらはV-tuberや、介護分野などで幅広く掻甚されおいる。

    「これからラゞオだから、おずさんはシヌッね」

     怎朚は口に人差し指を圓おお、ガラス越しに恵矎子に話しかけ目配せをした。恵矎子はオッケヌサむンを胞元に䜜っお怎朚ぞ芋せ、自身のデスクぞ戻る。

    「さお、本日もホむッスルラゞオが始たりたした。この番組はわたくし怎朚が担圓させお頂きたす。よろしくお願いしたす。本日の内容は圓瀟のサヌビスを利甚されおいる方たちの『声』に぀いおご玹介をしおいきたいず思っおいたす。ず、その前に今日の『声』にた぀わる話。今日は『可聎音』に぀いお」

     怎朚はアプリの利甚者が聞けるラゞオのパヌ゜ナリティを担圓しおいる。音声合成サヌビスを扱っおいる䌚瀟がわざわざではない声で配信する事に、疑問を持たれるこずは倚い。それは、圓然の疑問だず恵矎子は思う。通垞ならこの番組は、合成した音声がいかに流暢に話せるのか、違和感なく盞手に情報䌝達できるのかを、顧客にお披露目できる良いチャンスだからだ。

     だが、怎朚はあくたでも生身の人間が䌝えるずいうこずにこだわった。

    「いくら機械やコンピュヌタヌが優れた䞖の䞭になっおも、僕は人間が発する声の質感に優るものはないず思っおいる。本圓に倧切な事はやっぱり、きれいに䌝えなくおいいんだよ。たどたどしくたっお匱々しくたっお、自分の声で䌝えたいでしょ」

     怎朚はこずもなげに恵矎子に説明した。圌は圌なりのスタンスや軞がある。恵矎子はそんな圌の信念を奜たしく思っおいた。理屈はよくわからないが、圌の発蚀には確かな枩床ず重みを感じた。

    「たあ、そうやっお蚀っおおけば、僕が噛んだり蚀い間違ったりしおも、蚱しおくれるかなぁずいう狙いもあるんだけどさ」
     怎朚は頭をかきながら、最埌にきちんず自身をオチに぀かっおその堎の空気を和たせた。

     恵矎子は圌の意芋には、毎回近く賛同した。圌のアむディアがうたく運ぶように郚䞋ずしお力を尜くした。けれども恵矎子は、最近圌が提案しおきたある䞀぀の意芋には、最埌たでむ゚スず銖を瞊に振るこずができなかった。
     その提案は、圌が務めおいる『ホむッスルラゞオ』のパヌ゜ナリティの担圓を恵矎子に匕き継がせたいずいう申し出だ。

    「ちょっず  私なんかには務たらないですよ」
     ず、考える䜙地もなく、怎朚に結論を䌝える。
    「私、倉な声だし  倧きな声が出ないし  コンプレックスなんです」
    「おずさんの声、僕奜きなんだけどな。けっこうラゞオのパヌ゜ナリティ向けだず思っおる」
     怎朚の返事は予想倖だった。しかし圌は、消極的な圌女の返事を聞いおから、以埌、匷く意芋を䌝えおくるこずはなかった。


     恵矎子は自身の声にた぀わる苊い思い出があった。



    話ぞ




     
     

    くた

     
     
    奜きなものや奜きなこず、気になったこずを気たたに曞いおいたす。2人の子どもがいたす。基本的には暪に寝そべっおいたいタむプです。音楜や映画にた぀わる事は気になっおしたいたす。 高田玔次同盟の䌚長。 「すたいるスパむス」のパヌ゜ナリティをやっおいたした(2025幎限定で卒業)

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