
市役所公務員の未来:ケースワーカーに全振りする時代が来るかも
あなたは「市役所の仕事」と聞いて、何を思い浮かべますか?
窓口での書類手続き、住民票の発行、各種申請の受付——そういった光景を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
しかし、その「市役所らしい仕事」が、静かに、しかし確実に消えつつあります。
もうすでに変化は始まっています。
戸籍謄本などの公的書類はコンビニで発行できるようになり、住民票の移動もマイナンバーカード一枚で完結するようになりました。
さらにマイナンバーカードへの運転免許証・健康保険証の集約が進んだことで、行政手続きの効率化は急速に加速しています。
かつて「わざわざ市役所に行かなければできなかったこと」が、次々とデジタルに置き換えられているのです。
余談ですが、個人的に、次に進んでほしいのは医療データの連携です。
病院をまたぐたびに紹介状を書いてもらい、同じ問診票を何度も記入する——あの非効率な体験を、マイナンバーと医療データの連携で一気に解消してほしいと感じています。
診察の経緯や処方履歴が、マイナンバーの提示ひとつでどの医療機関でも確認できる設計になれば、患者にとって大きな恩恵があります。
なかなか進まない背景には、医療業界のデジタル化が遅れているという構造的な問題があります。
そして——これは完全に個人的な見立てですが——「自分の診断を他の医者に見られることへの抵抗感」も、一部には働いているのではないかと思っています。
横道それてしまいましたが、そもそも公務員という仕事は、法律に従って動くことが前提です。
もちろん法律の中にも裁量の余地はあります。
ただ、その裁量にも一定の幅があり、大体が最良の狭い「決まったルールに基づいて処理をする」という性質の業務が多い。
そして、ルールが明確な仕事ほど、AIや自動化との相性が良い。
書類の審査、申請の受付、定型的な案内——こうした業務はAIに代替されやすい領域です。
法律という「判断基準」がすでに存在しているぶん、むしろ他の業種よりもAI化が進みやすいとも言えます。
もう一つ、見落としてはならない社会の変化があります。
単身世帯の増加です。
プライバシーへの意識が高まる現代において、地域のつながりは急速に希薄化しています。
かつて近所づきあいや地域コミュニティが担っていた「困っている人を見つけて助ける」という機能が、社会から失われつつあります。
孤独死、引きこもり、家庭内の問題——これらは以前なら近隣住民や地域の目が早期に気づくことができました。
しかし今は違います。誰も気づかない。気づいたとしても介入できない。
その「気づく役割」を、最終的に担える可能性があるのは行政であり、ケースワーカーです。
最近のすさまじいAIの進化は一瞬で世の中を変えるでしょう。
単純労働を中心に、効率という観点だけで見れば人間よりAIが優れている領域は急拡大しています。
そこから弾き出された人々が職を失い、生活保護へと流れていく——これは遠い未来の話ではなく、すでに始まっている現実です。
生活保護受給者が増えれば増えるほど、その一人ひとりに寄り添い、自立を支援し、複雑な事情を抱えた相談に対応するケースワーカーの需要は爆発的に膨らんでいきます。
定型業務がAIに移行するぶん、空いたリソースは全てここに注ぎ込まれるべきではないか——そう感じています。
生活保護の相談、障害福祉の支援、虐待対応、孤独死の防止——こうした業務は、マニュアル通りにはいきません。
目の前の一人ひとりが抱える複雑な事情に向き合い、関係機関と連携しながら、人間として寄り添う力が必要とされます。
AIにはできない、人間だからこそできる仕事です。
もう一つ、個人的に強く思っていることがあります。
図書館や市営体育館、学校体育館の24時間運営です。
現在、こうした施設の多くは民間委託で運営されており、コスト削減という名目のもとで開館時間が制限されています。
しかし、孤独を抱えた人、居場所のない人、夜間しか動けない人にとって、「いつでも行ける公共の場所」は命綱になりえます。
委託ではなく、直接管理で。24時間で。
それは単なる利便性の話ではなく、社会的孤立を防ぐセーフティネットとしての機能です。
公務員の仕事として、まさにここにこそ人を配置すべきではないかと思っています。
近い将来、市役所の事務職は大きく二極化するかもしれません。
一方には、完全にデジタル・AIに移行した定型業務。
もう一方には、人間の判断と共感が不可欠なケースワーク。
その移行が進むとき、公務員に求められるスキルも根本から変わります。「正確に処理できる人」から、「困難な状況にある人と向き合える人」へ。
あなたが今、公務員を目指しているなら——あるいはすでに公務員として働いているなら——この流れは、決して他人事ではないはずです。