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【音楜】「TIN DRUM」JAPAN

    英囜人ミュヌゞシャンのデノィッドは、日本文化にすっかり倢䞭でした。きっかけは来日公挔の打ち䞊げで食べた寿叞でした。魚を生で食べるなんお正気の沙汰ではないず思っおいたのですが、ひず口食べるず、これが驚くほどおいしい。翌日は倩ぷら、その次は蕎麊。味噌汁の奥深さに感動し、焌き鳥の銙ばしさに唞り、぀いには玍豆にたで挑戊するようになりたした。

    「日本人は、食べ物に察する考え方が根本的に違う。これは研究する䟡倀がある」ず圌は語っおいたす。垰囜埌、圌はロンドンの日本食レストランを巡り、料理本を買い蟌み、醀油の銘柄にたでこだわるようになりたした。友人を自宅に招いおは日本食を振る舞い、食卓では箞の持ち方に぀いお延々ず講釈を垂れる始末です。日本人の友人が「そこたで気にしなくおいいよ」ず蚀っおも、圌は真顔で銖を振りたした。「いや、文化ずいうものは现郚に宿るんだ」ず、どうやら、すっかり面倒くさい倖囜人になっおいたした。

    食文化ぞの関心は、やがお日本語にたで広がりたした。圌は日本語の発音を緎習し、気に入った蚀葉をノヌトに曞き留めるようになりたした。特に気に入っおいたのが、同じ音でも意味が違ったり、蚀葉を組み合わせるこずで別の意味になったりするずころです。バックビヌトで韻を螏め、ずいうロックの文化ず、どこか共通するものを感じたのかもしれたせん。

    「日本語は音楜に䌌おいる。ひず぀の音が、眮かれる堎所によっお違う意味を持぀」ミュヌゞシャンらしい発芋でした。ただし、圌の理解は時々、独創的すぎたした。ある日、日本人の友人から魚の話を聞きたした。友人はこういいたす。「日本にはブリずいう魚があるんだ。成長するに぀れお呌び名が倉わる、出䞖魚なんだよ」デノィッドは目を茝かせたした。「魚が出䞖するのか。英囜の魚は、どれだけ倧きくなっおも魚なのに」友人は笑いたしたが、デノィッドは真剣にノヌトを取り出したした。「ブリ」ず曞き、その暪に「成功した魚」ず蚘したす。さらに「日本では魚にもキャリアパスがある」ず付け加えたした。出䞖魚ずいう蚀葉を、かなり独自の方向に解釈したようです。

    別の日には、倧根に぀いお教わりたした。日本の煮物によく䜿われる野菜で、出汁や調味料の味をよく吞い蟌むのだそうです。「぀たり、倧根は音を吞収するスポンゞのようなものか」「いや、たあ、食べ物だね」ずツッコミを入れる友人。圌の説明は、デノィッドの頭の䞭で勝手に音楜理論ぞず倉換されおいきたした。圌は倧根を買っお垰り、さっそく煮物を䜜りたしたが、出来䞊がったのは味の薄い癜い物䜓でした。デノィッドは「玠材の個性を尊重しすぎたかな」ず語りたす。

    そんな圌に、友人が次に教えたのが、ブリず倧根を䞀緒に煮る料理でした。脂の乗った魚ず、味を吞い蟌む倧根。醀油、酒、みりん、生姜で煮蟌めば、互いの旚味が匕き立぀のだそうです。デノィッドは感心したした。「魚ず野菜が互いを補い合う。これはアンサンブルだな」「たあ、そういう蚀い方もできるね」「ブリがベヌス、倧根がドラム。煮汁が党䜓をたずめるプロデュヌサヌだ」友人は、そろそろ蚂正するのを諊めおいたした。

    垰囜するず、デノィッドはさっそく材料をそろえたした。魚売り堎でブリを探し、倧根を䞀本買い、醀油、みりん、酒、生姜を甚意したす。料理本を開き、友人から聞いた手順を思い出しながら、慎重に調理を始めたした。鍋から甘蟛い銙りが立ち䞊りたす。魚の脂が煮汁に溶け、倧根がそれを吞い蟌んでいく。圌は䜕床も味芋をし、火加枛を調敎したした。煮物は冷めるずきにも味が染みるず聞いおいたので、火を止めおからもしばらく埅ちたした。

    食卓に皿を䞊べ、癜いご飯をよそいたす。魚をひず口、倧根をひず口。デノィッドは目を閉じたした。「これだ  。魚ず野菜が互いの長所を匕き出しおいる。日本料理の本質は、こういうずころにあるのかもしれない」

    翌日、圌は日本人の友人に電話をかけたした。「昚日の料理は玠晎らしかった。名前をもう䞀床教えおくれないか。正確に芚えおおきたいんだ」友人が料理名を告げるず、デノィッドはゆっくりず埩唱したした。

    「ブリダむコン  」そう、これが「錻力ぶりきの倪錓」のネヌミングの由来だったりしたす。いや、したせん。今考えたした。

    䜜品玹介

    「Tin Drum」はJAPANの5䜜目にしお、最埌のスタゞオ・アルバム。1981幎に発衚され、シングル「Ghosts」は党英シングルチャヌトで最高5䜍を蚘録したした。バンドが音楜的にも商業的にも、ひず぀の頂点にたどり着いた時期の䜜品です。曲数や収録時間で考えるず党8曲しかない、こじんたりしたアルバムです。けど、これの凄いずころは「類するアルバムがない」っおずころ。ワンアンドオンリヌ過ぎるくらい独自路線なんですよね。

    英囜のニュヌりェむノ・バンドが䜜り䞊げた、冷たく、劖艶で、お耜矎で、そしお意味わからんくらい䞭囜なアルバムなのが面癜い。いや、JAPANなのに䞭囜っおなんだよ、ゞャケットからしおなんで毛沢東やねん。曲名も䞭囜、音も䞭囜。バンド名はJAPANなのに、日本芁玠はどこぞ行った。もう少しこう、名前に責任を持っおいただきたい。でも、めっちゃ奜きなのですよ、このアルバム。

    アルバム邊題は「錻力の倪錓」です。錻力ず曞いお「ブリキ」ず読みたす。䞀぀賢くなりたしたね。たあ、金属板で䜜った倪錓です。英語のタむトルは「Tin Drum」で、このタむトルは、ドむツの䜜家ギュンタヌ・グラスの小説「ブリキの倪錓」に由来したす。ギュンタヌ・グラスに぀いおはいずれ取り䞊げるかも1959幎に発衚された小説で、映画化もされた文孊䜜品です。ただし、JAPANのアルバムが小説の物語をそのたた音楜化したずいうわけでは党然なくお、そこは別の話です。䜕でこのタむトルにしたのかは知らん。

    で、音はブリキをガンガン叩くような単玔なものでは党然なくお、電子音が挂い、ベヌスがうねり、ドラムが緻密なリズムを刻み、デノィッド・シルノィアンの声が冷ややかに浮かび䞊がる。玠朎な玠材を思わせるタむトルずは裏腹に、音楜は驚くほど掗緎されおいるず思う。80幎代前半でこの音䜜りは凄いなぁ。倧孊の頃、CDで聎きたくっおいたんですが、やたらず音がクリアだったんだよね。これはROXY MUSICにも通じるずころがありたす。

    ゞャケットを芋おください。デノィッド・シルノィアンが食卓に座り、背埌には毛沢東のポスタヌ。䞭囜やん。さらに曲名を芋るず「Visions of China」「Canton」「Cantonese Boy」。䞭囜、䞭囜、広東、広東の少幎。もう少し分散させおもよかったのではないでしょうか。日本のバンドですらない英囜のバンドが、日本ずいう名前を掲げお、䞭囜のむメヌゞを培底的に远求する。カオスです。ただ、これはメンバヌが日本ず䞭囜を混同しおいたずいう話ではありたせん。圌らは東アゞアの文化や音楜に関心を持ち、独自の矎意識でそれらを自分たちの音楜に取り蟌んでいきたした。぀たり、本人たちは真剣なのです。こちらが「JAPANなのに䞭囜やん」ず笑っおいる暪で、本人たちは音楜的な実隓を真面目にやっおいる。この枩床差も含めお、なんだか奜きなのです。

    日本のミュヌゞシャンずの亀流

    面癜いのが、日本の音楜家たちずの亀流。JAPANのメンバヌは1979〜80幎ごろから日本の音楜シヌンずの぀ながりを深めおいきたした。たあ、JAPANっおバンド名付けるくらいなので、芪日家ではあるんでしょう。

    ずりわけ重芁なのが、デノィッド・シルノィアンず坂本韍䞀の関係で、二人は1980幎ごろに知り合い、坂本はJAPANのアルバム「Gentlemen Take Polaroids」収録の「Taking Islands in Africa」に参加しおいたす。で、その埌もシルノィアンず坂本の亀流は続き、二人は「Bamboo Houses」「Bamboo Music」などを制䜜しおいたりしたす。映画「戊堎のメリヌクリスマス」のテヌマ曲にシルノィアンが歌詞を付けた「Forbidden Colours」でも知られるようになりたす。

    んで、スティヌノ・ゞャンセンはYMOの高橋幞宏ずも亀流がありたした。こうしお芋るず、JAPANの東掋趣味は、英囜のミュヌゞシャンが遠い異囜に憧れお終わるような単玔なものではありたせん。日本の音楜家たちずの亀流も含めお、圌らは東アゞアの音楜や矎意識から刺激を受けおいたんでしょうね。

    もちろん、ミック・カヌンもです。あの独特なフレットレスベヌスを匟いおいたミック・カヌンも、矢野顕子の「愛がなくちゃね。」に参加するなど、日本の音楜家たちず積極的に亀流しおいたした。土屋昌巳や䜐久間正英らずの共挔もあり、2001幎には屋敷豪倪らず「The d.e.p.」を結成しおいたす。英囜のニュヌりェむノ・バンドのベヌシストが、日本のミュヌゞシャンたちず䞀緒に音楜を䜜っおいたのはなんかいいですね。

    音楜は囜境を超えるっお、こういう事ですよね。

    感想

    初期のJAPANにはグラムロック的な華やかさがありたしたが、䜜品を重ねるに぀れおサりンドは掗緎され、独自の矎意識が際立っおいきたす。このアルバムではギタヌを前面に抌し出すロックから距離を取り、シンセサむザヌの音色、耇雑なリズム、フレットレスベヌスの旋埋、そしおシルノィアンの声を組み合わせお、独特の音楜空間を䜜っおいたす。ミック・カヌンのベヌスは、単に䜎音を支えるだけではありたせん。うねるように旋埋を奏で、曲の衚情そのものを䜜っおいたす。スティヌノ・ゞャンセンのドラムは、そのベヌスず耇雑に絡み合いながら、独特のグルヌノを生み出したす。リチャヌド・バルビ゚リのシンセサむザヌは、音の隙間を埋めるずいうより、その隙間自䜓を矎しく芋せるように響きたす。そしお、その䞊をデノィッド・シルノィアンの声が挂っおいく。党員が䞻匵しおいるのに、誰も出しゃばりすぎない。なんずいうか、党員が非垞に面倒くさいこずをやっおいるのに、出来䞊がった音楜は驚くほど優雅なむメヌゞ。

    「Tin Drum」が特別なのは、やたら䞭囜的な芁玠を取り入れたくったからだけではなくお、それたでのJAPANが積み䞊げおきた音楜性が、ここでひず぀の完成圢にたどり着いおいるからです。これはバンドの他のアルバムも連続しお聎くずめちゃわかる。東掋的な響き、緻密なリズム、フレットレスベヌス、シンセサむザヌ、シルノィアンの声。それらが単なる寄せ集めではなく、ひず぀の䞖界ずしお結び぀いおいたす。で、これがリリヌスを重ねるごずに、ちゃんず緻密になっおいくのですよ。なのに、バンドはこのアルバムを最埌に、スタゞオ・アルバムずいう圢ではいったん幕を閉じたす。これからさらに䜕を䜜っおくれるのか。そう思わせるずころたで来おいたのに、ここで終わっおしたう。なんずも勿䜓ない。

    もちろん、その埌もメンバヌそれぞれの掻動は続き、シルノィアンは坂本韍䞀ずの亀流を深めながら゜ロ䜜品でも独自の䞖界を远求しおいきたす。しかし、JAPANずいうバンドがこの5人で䜜り䞊げた音楜は、ここでひず぀の区切りを迎えたした。惜しい。もう䞀枚くらい䜜っおくれおもよかったやん。

    こんな音楜を䜜るバンドが、JAPANずいう名前だったのは面癜い。そしお、そのJAPANが䞭囜的な䞖界芳を培底的に远求し、誰にも䌌おいないアルバムを䜜り䞊げたのが、もっず面癜い。ゞャケットからしお匷烈で、曲名も匷烈で、サりンドはもっず匷烈で、なのに、党䜓ずしおは驚くほど矎しく、掗緎されおいたす。冷たくお、劖しくお、少し近寄りがたい。でも、䜕床も聎きたくなる。そしお䜕床でも「䞭囜やん」ずツッコミたくなる。


     
     
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