
【思い出語り】昔アパートで…(約2000字)
ミムコさんの記事を読んで
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ふと、40年近く前のある出来事を思い出したので、徒然なるままによしなしごとを書いてみます。
確か結婚したばかりの頃です。
私と旦那は、同じ課内の同期職場結婚でした。某メーカーのSEをしていて、旦那はダムの制御システム、私は河川や農業用水管理システムを主に担当していました。
ある日、旦那の担当する四国の某ダム担当営業から、私宛に電話が入りました。職場には各自の机の上に電話があり、課内にかかってくる電話は誰でも取れて「◯◯さ〜ん、お電話です」と呼びかけて取り継ぐ…そんなスタイルでした。
「Mさんの奥さんでいらっしゃいますか?◯◯営業所でご主人と◯◯ダムを担当しているUです。実は、折り入って奥さんにご相談したいことがありまして…」
「はい、Uさん。いつも主人がお世話になっております。私に相談とは何でしょう?」
「電話の取り継ぎで、よく奥さんの声を聞いていて「いい声だな」と思っていて… ダム放流時の音声に使わせていただけないかと」
「えっ?ダム放流の音声って…『これからダムを放流するので、川にいる人は離れてください』とかいうアレですか?アレは…私みたいな素人の声でいいんですか?」
「顧客納品用音声テープは、アナウンサーとかプロの方にお願いするんですが、テスト用の音声に。お礼はできませんが、音声録音や編集時の作業は、勤務時間に入れて大丈夫です。どうでしょうか?」
「ちょっと主人と相談してみます」
旦那に聞いたら「えっ、マジでUがお願いしてきたの?確かに前からそんなこと言ってたけど」と、ビックリ。私も驚いたけれど、面白そうだから請けることにしました。
旦那と一緒に◯◯ダムを担当しているSさんが「Uさんから、原稿とテープ預かったよ」とのことで、週末にSさんの家で録音することになりました。
◇
Sさんは会社のそばのアパート1階に住んでいました。我が家よりも音響システム類が充実しているので、収録会場となりました。収音マイクもけっこう上等のものだとか。旦那と共にお邪魔しました。
まず原稿をスラスラ読めるようにして…
「ダムって山にあるから、声がすごく反響するんだよね。こだまになってさ。だから早口だとダメで、ゆっくりと、時々『間』も持たせて話さないといけないんだ」
なるほど…ということで、ゆっくり&間も開けて原稿を読んでみました。
「こ ち ら は(2秒位の間)
し こ く ち ほ う(2秒位の間)
け ん せ つ き ょ く(2秒位の間)
◯ ◯ ダ ム(2秒位の間)
と う ご う か ん り じ む し ょ(2秒位の間)
で す(2秒位の間)
た だ い ま(2秒位の間)
ダ ム ほ う り ゅ う(2秒位の間)
テ ス ト ち ゅ う(2秒位の間)
ダ ム ほ う り ゅ う(2秒位の間)
テ ス ト ち ゅ う」
もう40年位前のことだから、ちゃんとした文章は忘れましたが、上のような内容だったと思います。「川から離れて…云々」は、本番用?なのでプロの方が録音されるので、あくまで私は『テスト中』の内容です。
こちらは四国地方建設局
◯◯ダム統合管理事務所です
ただ今、ダム放流テスト中
ダム放流テスト中
たったこれだけの文章。ゆっくりめで間を開けて…の練習も「ま、いいんじゃない?」ということで、いよいよ収音マイクに向かって録音です。
◇
マイクに向かってしゃべるのは、小学校の放送委員だった時、給食時のお昼の放送でなんかの本を朗読したり、BGM曲紹介した時以来かも…
「さっきも言ったけど、このマイクけっこう高性能だから、鼻息とか気をつけて…」
鼻息!思わず、用もないのに鼻を何度もかんで準備し、マイクに向かい語り始めました。
「こ ち ら は…」
アパートの前の道路から、車のクラクション音が聞こえてきました。やり直しです。
「こ ち ら は…」
アパートの隣の部屋の人が帰宅したのか、鍵をガチャガチャさせてドアを開け、バタンと閉める音が… やり直しです。
「こ ち ら は…」
今度は、アパートの外階段をカツンカツンと駆け上がる音が聞こえてきました。
「アハハハハ… おかしくって、ちょっと無理!」
私もですが、旦那もSさんもしばらく爆笑してました。こんなに生活音って、気にすると気になるなんて知らなかったです。
一旦食事して気を取り直し、多少車の音が入っても気にしないで… 作業終了しました。
後日、Uさんから「ありがとうございました。大変助かりました」と連絡ありましたが、その後どうなったのかはわかりません。
昔々のことでございます。