
【コーヒーブレーク】記者クラブって、どんな場所?
今回は少し肩の力を抜いて、コーヒーブレーク回です。
「記者クラブ」と聞いて、何を思い浮かべますか。大企業や役所の話で、うちには関係ない。そう思う方もいるかもしれません。
「リリースの書き方」の記事の最後に、記者クラブのことはいつかコラムで書く、と書きました。リリースを書いたら、次は届け方です。今回は、私が以前見てきた記者クラブの様子を、雑談のつもりでお話しします。
最近は、記者クラブに資料を配らず、ワイヤーサービス(リリースを多くのメディアに一斉に届ける配信サービス)を使う企業も多いと思います。そういう方にも、記者クラブという場所があることを知ってもらえたらうれしいです。
机の上には、紙のリリースの山
私が見てきた記者クラブには、報道各社のブースが並んでいました。一社ごとのスペースは、とても狭いものです。
ただでさえ狭いその机の上に、紙のリリースが高く積まれていました。記事にしてほしい企業が、それぞれ持ってきたものです。
ざっくり言えば、記者クラブは「記者が詰めている場所」です。ただ、詰めているはずの記者の多くは、ブースにいません。おそらく、取材に出ているのでしょう。
運よく会えた記者には、リリースを紙で渡して、簡単に説明します。親切に聞いてくれる記者も、もちろんいます。でも、多くの場合はこう返ってきます。
「ありがとうございます。そこに置いておいてください」
明らかに嫌そうな顔をされることもありました。記者は忙しいうえに、似たような訪問が一日に何度もあります。無理もないと思います。
「リリースの書き方」で、記者は忙しく、タイトルとサマリーしか読まない、と書きました。あの机の山を見ると、それも納得です。
そもそも、記者クラブとは
ここで少しだけ、まじめな話を。
日本新聞協会は、記者クラブを、公的機関などを継続的に取材するジャーナリストたちによって構成される「取材・報道のための自主的な組織」としています。役割はいくつか挙げられていますが、その中には、誘拐報道協定(被害者の生命・安全に配慮して、報道各社の間で結ぶ取り決め)など人命・人権にかかわる取材・報道上の調整や、市民からの情報提供を受ける「共同の窓口」があります。
企業がリリースを届けるのも、この「窓口」に向けて、と考えると分かりやすいと思います。
始まりは、1890年の第1回帝国議会とされています。取材を制限された記者たちが「議会出入記者団」をつくったのがきっかけだそうです。
ルールは、クラブごとに違う
記者クラブには、クラブごとにルールがあります。日本新聞協会の見解に強制力はなく、運営はクラブごとに行われているそうです(J-CAST ニュースの記事での協会の説明)。
私がお世話になっていたクラブでは、発表の前に、タイトルと概要を予告しておく決まりがありました。予告が間に合わないまま、急に発表するのは基本的にNGです。例外は、よほど影響の大きい発表に限られていました。
普段付き合いのないクラブに頼ることもあります。たとえば、ある地方でも発表したい案件が出たときです。そのクラブに電話をかけて、こう聞きます。
「〇月〇日に発表したいのですが、どうすればよいですか」
返ってくる答えは、さまざまです。代表のメールアドレスにリリースを送ってくれればよい、というところもあります。厳格なルールがあるところもあります。
だから、基準は一つです。分からなければ、まずそのクラブに聞く。 私も、そうしてきました。
地方で書いてほしいなら、早めに会いに行く
最後に、これだけは覚えて帰ってください。
地方で記事にしてほしいとき、相談先は、県政記者クラブや市政記者クラブが一般的だと思います。
知っておきたいのは、記者の担当範囲です。特に全国紙では、一人の記者がその県や市のことを幅広く担当しているケースが多いのです。政治、経済、行政、事件まで、あらゆることです。
あなたの会社の業界に詳しい記者とは限りません。いきなり発表して書いてもらおうとするのは、かなり乱暴です。
早めに記者とコンタクトを取り、レクチャーから丁寧に始めてください。 レクチャーとは、発表の前に、事業や背景を記者に説明しておくことです。
余談:記者クラブが出てくる小説
コーヒーのおともに、小説を2つ紹介させてください。どちらも横山秀夫さんの作品です。作者は元新聞記者で、読んでいると臨場感がすごいのです。
『64(ロクヨン)』は、D県警の広報官・三上が主人公です。県警の広報室と記者クラブが、匿名発表をめぐって対立します。広報の側から記者クラブを見る物語なので、このnoteを読んでくださる方にはぴったりだと思います。誘拐事件が物語の軸にあるので、先ほどの誘拐報道協定を頭の片隅に置いて読むと、より楽しめるはずです。
『クライマーズ・ハイ』は、1985年の日航機墜落事故を報道する、地方紙の記者たちの1週間を描いた物語です。こちらは警察ではなく、新聞社の中の話。記者の側から見た報道の現場です。
記者クラブは、記者との入り口
記者クラブは、記者に資料を届ける入り口の一つです。
ただ、置いたリリースが読まれるとは限りません。あの机の山を思い出してください。入り口の先にある、記者一人ひとりとの関係づくりが大切です。
記者との関係については、これからも書いていきます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
このnoteでは、広報担当がいない会社や、実際に広報をやっていて悩んでいる方に向けて、広報の判断基準を書いています。
・謝罪会見・発表の採点(不定期)
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次に読むなら:リリースが書けないのは、文章力のせいではありません。記者が書きたくなるリリースの作り方
参考にした公開情報
日本新聞協会「記者クラブに関する日本新聞協会編集委員会の見解」(2002年1月17日、2006年3月9日一部改定)(記者クラブの定義と役割) https://www.pressnet.or.jp/statement/report/060309_15.html
J-CAST ニュース(2009年)(見解に強制力はなく、運営はクラブごととする協会の説明) https://www.j-cast.com/2009/01/13033517.html
Wikipedia(英語版)「Kisha club」(1890年の第1回帝国議会と「議会出入記者団」) https://en.wikipedia.org/wiki/Kisha_club
文藝春秋 BOOKS(横山秀夫『64(ロクヨン)』『クライマーズ・ハイ』) https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163818405 、 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163220901