
リリースが書けないのは、文章力のせいではありません。記者が書きたくなるリリースの作り方
「リリースを書いてほしい」と言われて、手が止まったことはありませんか。
私はこれまで、数百本のリリースを書いてきました。それでも、いまだに難しいと感じます。端的に、分かりやすく伝えること。これが本当に難しいのです。
ただ、長く続けて分かったことがあります。リリースが書けない理由は、文章力ではありません。多くの場合、書く前の「理解」と「言語化」でつまずいています。
結論から書きます。リリースの唯一の正解は、「記者が書きたいと思うリリースを書く」ことです。
つまずきは3段階ある
私がつまずいたのは、次の3つです。
何がすごいのか、そもそも分からない
事業を理解できておらず、すごいと思う点がズレる
理解できても、言葉にするのが難しい
リリースは、広報だけでは作れません。案件を担当する部署と、二人三脚で作り上げるものです。そのプロセス自体が難しいのです。
①②の対策:インタビュアーになる
何がすごいのか分からないとき。私はインタビュアーになります。
スタンスは「自分は素人なので、詳しく教えてください」です。実際、素人です。素人が分かる言葉にできれば、記者にも伝わります。
そして、こう伝えます。「技術的にすごいことも、性能が高いことも分かりました。素晴らしいです。これを一般の人が分かる文章にしましょう」。
さらに、もう一歩踏み込みます。「私を理解させてください。そうしたら、記者に刺さる文章にします」。
ここで大事なのは、相手に気持ちよく話してもらうことです。
「へぇ、すごい!」
「え、そんなことができるんですか!」
「それって、つまりこう言い換えられませんか?」
「世の中の人には、こんなふうに役立ちますか?」
こうしたキャッチボールを重ねます。
相手から見て、私は「安心して話せる相手」でありたい。話を聞いてくれて、それをうまく発信するために汗をかいてくれる人。そう思ってもらえると、情報は自然と集まってきます。
言い過ぎのラインを攻める
話を聞いたら、次は「どこまで書けるか」を探ります。
リリースはファクトを書くものです。広告のような表現はNGです。ただ、事実の範囲で最大限の価値を出す工夫はできます。
たとえば、こんなやり取りです。
「〇〇業界における△△という課題を解決する、日本初のサブスクリプションサービス」と言えますか?
そこまでは言えない、と返ってきたら、条件を足してみます。
「〇〇業界における△△という課題を解決する、X技術を活用した日本初のサブスクリプションサービス」ならどうでしょう?
足したのは「X技術を活用した」だけです。それでも、事実として言える範囲に収まることがあります。
誤解のないように書いておくと、これはあくまで例です。「日本初」と言えれば必ず良い、という話ではありません。ただ、「初」と言えると希少性が高まり、ニュースバリューを出しやすくなります。だから、どうすれば言えるかを一緒に探すのです。
もちろん、根拠は必要です。私は担当部署に、根拠資料を出してもらっていました。裏付けのない表現は書かない。これは必ず守ります。
③の対策:言葉にするための型
理解できたら、次は言葉にします。ここでの工夫は3つです。
1. タイトルは最後に書く
最初に書くと、全体がまとまっていないので、ぼやけます。本文を書き終えてから、いちばん伝えたいことを一行にします。
2. 一文は30文字を目安にする
句点でだらだらつなげた文章は、読みづらいものです。テンポよく読めるのは、一文が30文字ほど。なるべくそれを意識していました。
3. 型を決めて、サマリーを必ず入れる
リリースは、型を決めると書きやすくなります。たとえば次の流れです。
タイトル、サマリー、背景、概要(ポイント)、最後に会社情報。
これに正解はありません。会社ごとに決めれば十分です。ただ、一つだけ取り入れてほしいものがあります。サマリーです。
記者は忙しい。タイトルとサマリーしか読みません。なんなら、タイトルしか読みません。
みなさんにも心当たりがあるはずです。メルマガが届いても、タイトルだけ見て読まないことがありますよね。記者には、1日に数百本のリリースが届くこともあります。全部読むのは不可能です。
専門用語で、担当部署と意見が割れたとき
専門用語は、なるべく避けたい。ここは、担当部署とよく意見が割れました。
「一般の言葉では説明できない」
「言い換えるとニュアンスが変わる」
「分かる人に分かればいい」
気持ちは分かります。そのうえで、私はいつも、リリースの目的に立ち戻ります。
リリースを出す目的は何でしょうか。記者に届けて、理解してもらい、記事にしてもらうこと。それによって、自社の取り組みをより広く伝えることです。
だとしたら、自分たちが書きたいリリースを書くのは、自己満足です。
記者が書きたいと思うリリースを書く。これが唯一の正解です。
もっと言えば、記者が書きたくならない内容は、リリースではなく、他のチャネルで発信すべきです。
「分かる人に分かればいい」の落とし穴
メディアの記者は、さまざまです。その道20年のベテランもいれば、着任したばかりで、業界に詳しくない人もいます。大手メディアでは、異動も頻繁です。
「分かる人に分かればいい」と考えたリリースは、自分たちで記事化のチャンスを減らしているかもしれません。
業界専門紙だけを狙う、という戦略
ここで、反論があると思います。「業界の専門紙なら、専門用語でも通じるのでは」と。
たしかに、その可能性はあります。非常に特殊な業界もあります。実際に、他社と連名で発表する機会に、さまざまな業界の方とご一緒してきました。「業界1位2位の専門紙に載ればいい。それ以外は目指しません」という発表もあります。
それは、その会社の戦略です。どこで戦い、どこで勝つのかを決めているなら、それで良いのです。
大事なのは、決めたうえで書いているかどうか。なんとなく専門用語を使っているのと、狙って使っているのは、まったく別物です。
明日からやること
最後に、明日からできることを一つだけ。
次に担当部署と打ち合わせをするとき、インタビュアーになってください。
目標は一つ。「相手に気持ちよく話してもらうこと」です。
「教えてください」と聞く。「すごい!」と驚く。「それって、こういうことですか?」と言い換える。たったこれだけで、集まる情報の量と質は変わります。
リリースの文章は、そのあとで十分に間に合います。
次回予告
今回は、リリースを書く前の「理解」と「言語化」の話でした。
では、そもそも自社の「何を」伝えるべきなのか。この見つけ方は、また次の回で書きます。
なお、記者クラブの仕組みについても、いつかコラムとして書こうと思っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
このnoteでは、広報担当がいない会社や、実際に広報をやっていて悩んでいる方に向けて、広報の判断基準を書いています。 ・謝罪会見・発表の採点(不定期) ・広報戦略の立て方、記者との関係のつくり方(毎週)
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