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港の人たちは、なぜ毎日港に集まるのか|第22話

    「あんちゃん、
    あぶねーよ」

    私が振り返ると、

    「ん? ■■ちゃんじゃねーか!」

    「今日も来たんか!」

    「今日は、だんな様も一緒か?」

    「仲良いな!」

    「こっちさ来て顔見せてみな!」

    「いい男だねぇ……」

    「昭和のスターみてぇだ。」

    「デートしてぇな。」

    肩を、
    ぽん。

    おかまわりの母ちゃんたちが、
    笑います。

    妻も、

    「いい男でしょ?」

    笑っています。

    その時でした。

    船の上から、
    年老いた漁師の声が飛びました。

    「危ねぇ!」

    家族連れが、
    少し不満そうな顔で、
    竿を持ち直します。

    「ここは、
    釣り場と違うからね。」

    「みんなの目が違うわ。」

    妻が、ぽつり。

    子どもたちは、
    漁業体験の日から、
    港では遊ばなくなりました。

    「ほれ。」

    胴付長靴が、
    岸壁へ並びます。

    「はじめっと。」

    港から、
    声が消えました。

    リヤカーの、
    錆びた音だけが、
    港に響いていました。

    一台だけ、
    残っていました。

    みんな、
    忙しそうでした。

    私は、
    そっと、
    手を掛けます。

    「あんちゃん。」

    「ありがとな。」

    思わず、
    その手に、
    目が止まりました。

    「そんなに、
    見んでねーの。」

    「父ちゃんにも、
    見られたことねぇよ。」

    そう言って、
    おばちゃんは、
    照れたように笑いました。

    「また、
    おいでな。」

    帰り道。

    妻も私も、
    何も言いませんでした。

    路地を抜けると、
    丘の風が、
    ふっと通り抜けました。


    港町編集室より

    港町の人たちと過ごした、
    もうひとつの日のこと。



    港町へ来るまでのこと。

    そして、

    この町で暮らし始めた頃のこと。

    よかったら、

    最初から歩いてみてください。



    第16話からは、

    港町で出会った人たちと、

    その人たちから教えてもらったことを、

    少しずつ書いていきます。


     
     
    役職定年を前に、 人生を編集するエッセイ『港町編集室』を書いています。 毎週土曜日更新。 地方で働きながら、 人との出会い、 土地の言葉、 人生後半の時間を綴っています。 初めての方は、第0話からどうぞ。 土地には、まだ名前のない時間がある。

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