
【追悼】村上龍氏
作家の村上龍氏(1952/2/19-2026/10/17 74歳没)の逝去が公表されました。近年は風貌の変化が激しく、体調不良が噂されていて、思い入れのある作家(多方面で活躍された方ですが、私の認識は作家)だったので、ネット記事を発見した時には、心がざわつきました。合掌。
衝撃だった『限りなく透明に近いブルー』
私が村上龍氏を知ったのは、氏のデビュー作であり、群像新人賞文学賞、芥川賞を受賞している『限りなく透明に近いブルー』でした。高校3年生になったばかりの春、私を可愛がってくれた母方の祖父が亡くなり、そのお通夜に向かう夕方の電車の中で読み、衝撃を受けたことを鮮明に覚えています。
それまで割と健全に生きてきた高校生には、刺激が強過ぎる内容でした。暴力・ドラッグ・セックス.... 退廃的でアウトローな気怠さに満ちていて救いがなく、とめどなく堕ちていくような描写の数々に圧倒されました。私が本格的に読書に取り組む前のことであり、何故この小説を持っていたのか、祖父の通夜という特別な日に何故読んだのか、不思議でなりません。
特別な思い入れのある作家
その後、本格的に読書する日々に足を踏み入れると、『海の向こうで戦争が始まる』『コインロッカー・ベイビーズ』『テニスボーイの憂鬱』『69 sixty nine』など、氏の初期の代表作を読み漁りました。
当時から、村上氏の文体は独特だと感じていました。乾いていて、途轍もなく冷たいものの、まとわりつくようなざらつきも感じさせます。読む者に緊張感を強いるような気がしていました。まるで鋭利なナイフを突き付けられているような緊迫感です。それは、エッセイの『すべての男は消耗品である。』シリーズでも発揮されていて、終生変わらない、村上龍という作家の唯一無二の個性だったように思います。
私にとっての村上龍氏の位置付けは、あくまでも小説家・作家ですが、実際にはあらゆる分野でマルチに活躍した人でもありました。私の大学生の頃には、『Ryu's Bar 気ままにいい夜』(1987.10-1991.3)という自身の冠番組を持っていました。毎回ゲストを招き、酒を飲みながら語るというスタイルの番組は今でもありますが、その走りのような番組だったように思います。当時の私にはまだ早い、成熟した大人の世界を垣間見ているように感じて、憧れていました。また、テレビ東京の長寿番組『カンブリア宮殿』のメインインタビュアーも長く務められました。関心の守備範囲が広く、知的探究心も旺盛な稀有な人だったと思います。また、貴重な人がこの世を去ってしまいました。