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mint green┊︎〝ペパーミント〟がくれた最初の背伸び┊ ブラーノ島🇮🇹

    イタリアのカラフルな漁村・ブラーノ島の路地。
    〝ペパーミントグリーン色〟の壁の前で、足が止まった。

    グリーンというにはやわらかすぎて、
    ミントというには少し甘い。

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    ▲この色

    ──ちなみに、この色。
    正しい名称はペパーミントグリーンじゃないかもしれない。

    でも、あの日、あの子がそう呼んだから。
    わたしの中では今でも、この色はペパーミントグリーン──。

                🍃🍃🍃

    小学三年のとき、ひとりの転校生と仲良くなった。
    地元にはあまりいないタイプの女の子。色白で、都会っぽくて、華奢で、お洒落で、でも気取らない。風通しのいい子だった。

    「親友」という言葉も、「DREAMS COME TRUE」も、「決戦は金曜日」というキーワードも、彼女が教えてくれた。

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    ▲彼女が好きだと言った色
    〝ペパーミントグリーン〟


    その子に「まゆちゃん」と呼ばれると、自分の名前が少しだけ、別の響きに聞こえた。

    声もかわいくて、大人びていて、関西弁じゃないその音が、
    いつもの私を、ちょっとだけ“背伸びした私”に変えてくれる気がした。

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    ある日、「好きな色ってある?」と聞かれた。
    さあ、なんと答えただろう。覚えていない。
    たぶん「紫」とか「緑」とか、そんな感じだったと思う。

    逆に私も聞いてみた。
    「好きな色、ある?」

    そのときの彼女の表情と、口にした言葉は、今でもはっきり覚えている。

    「──ペパーミントグリーン。」

    清々しい顔で、あの子はそう言った。

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    ▲ベネツィアの丸い屋根もこの色
    サン・シメオン・ピッコロ教会


    赤とか青とか単純なものを想像していたわたしは、
    そのおしゃれすぎる響きに面食らって、
    「それって……ガム?」としか返せなかった。

    それ以来、彼女がその色の文房具やハンカチを持っているのを見るたび、
    「ペパーミントグリーン、ペパーミントグリーン」と、
    頭の中でそっと唱えた。

    少し、背伸びした気分で。

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    ▲〝(彼女的)ペパーミントグリーン〟の壁


    でも、ある日。
    彼女はまた、どこかへ転校していった。
    爽やかな空気をまとったまま、〝ペパーミントちゃん〟はいなくなった。

    そのあと、少しだけ文通をした。
    私の誕生日には、手紙と一緒にカセットテープが届いた。
    再生すると、「お誕生日おめでとう」っていう、彼女の大人びた声。
    ふっとまた、ペパーミントグリーンのイメージが広がった。

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    ▲ブラーノ島への水上バス(ヴァポレット)
    今気づいたけど、ちょっとミントグリーン色だよね


    便箋も、文字も、貼られたシールも、名前の書き方も。
    そして、カセットテープでメッセージをくれるという、その発想も。全部がいちいち、当時の私には“都会的”。

    彼女の風はいつも、
    私にちょっとした“背伸び気分”を運んできた。

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    ▲探し始めると、追いかけてしまう色

    ──ペパーミントグリーン。

    日本語にすれば、薄荷緑。
    最近、家で薄荷やバジルを育てたりするようになって気づいた。
    ペパーミントグリーンって、あの子が勝手にそう呼んだだけで、
    実際の色とは違うぞ? と。

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    でも、それはもうどうでもいい。
    わたしの中で、この色はきっとこれからもずっと〝ペパーミントグリーン〟だから。

    ペパーミントグリーン。
    今もこうしてすぐ目の前にあるのに、
    この言葉だけは、今でもほんの少し──暗号のよう。
    それに、彼女の名前はもう、忘れてしまった。

    でも、この色の名前を初めて聞いたあのときの、
    “背伸び”の感覚だけは、ちゃんと覚えている。

    きっと私はずっと──
    この色のなかに、人生最初の背伸びをしまいこんでいる。




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    ▼カラフルな島「ブラーノ島」に関する記事です🖋️



     
     
    色フェチです。北京在住🥢「旅×写真×文字」を更新中📚“カラフル”を肴に、今宵も晩酌がてら、ニンマリひとつ。早稲田大学政経学部卒。創作大賞2025中間選考通過(エッセイ部門)🍷 旅の役には立ちません。暮らしの役にも、たぶん。 夫(🇯🇵)と二人暮らし。 ──なお、ブタは仮の姿です。

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