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#2-11 語られざる名前|追憶のオリジン〜氷の女王の眠る街〜

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    第11話 語られざる名前


    「あなたは、塔の守り人なのですか?」


    タトの問いかけに、女性はわずかに視線を逸らした。


    「いいえ。私は違います。彼女――本来の守り人は、数十年前に亡くなりました。私はその代理です。後継が育つまでの仮の役割を任されています」


    「……そうでしたか」


    「申し遅れましたね。私は、フェリサリアの代理の守り人、エリザと申します」


    エリザは胸に手を当て、深く頭を下げた。

    タトもそれに倣い、丁寧に礼を返す。


    「それにしても……たった2週間ほどで隣町から来られるなら、ぜひともルミナリーに使いを出したいところです」


    エリザが言ったとき、タトは小さく頷いた。


    「途中まで、こちらの“ミミ”が同行してくれて、とても助かりました」


    タトがその名を口にした瞬間、エリザの表情が強張った。


    「……ミミ?あの子に、会ったんですか?」


    その語気の強さに、タトは思わず目を見開く。


    「失礼しました。ですが、彼女にはとても――。
    タト、その子に怪我をさせられてはいませんか?」


    「いえ。まったく」


    それを聞くと、エリザの顔から緊張が少しだけ緩んだ。

    けれどその目は、険しくどこか遠い過去を見つめていた。


    「ミミは……この街の問題児でした。いえ、“でした”では足りません。街人すべての総意で、勘当された子です」


    タトは耳を疑った。


    エリザは、視線をそっと壁の表に移して言った。

    「彼女は、貴重な獣族の血を引いています。
    そして、大きな力を持っていました――けれど、それは制御不能でした」


    「制御……できなかった?」


    タトはこれまでにミミと過ごした時間を振り返った。


    旅の途中で出会ったミミは、無邪気で、自分の感情に素直で、さみしがり屋で、幼くて――
    だが、破壊をもたらすような子には、到底思えなかった。




    (つづく)

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    ぼんやりと生きています。心に湧いたお話は『ナルニア国物語』を思わせる、「児童文学ファンタジー」をちょっぴりと目指しています。 ◆note: 長編小説「追憶のオリジン」(全話公開中)イラスト 短編/短歌/自由詩/エッセイ ◆tales: 「追憶のオリジン(改訂版)」「読み切り」

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