メインコンテンツへスキップ
見出し画像

#4-14 二人のタト|追憶のオリジン〜氷の女王の眠る街

    ←前のはなし   |   次のはなし→


    ザワ、ザワ……

    心の奥で、何かがざわついていた。

    けれど、それが何なのか、タトには分からない。


    *


    ヴァリスを出て野営中。

    タト、ミミ、レイ、そしてルリの四人になった一行は、次の街を目指していた。

    みんなはすでに眠っていて、タトは一人、火のそばにいた。

    昼間のことを思い出す。


    水辺で、

    「髪を伸ばそうかな……」

    何気なくこぼれた一言。

    それを、レイに聞かれてしまった。


    「……似合わない」

    カツン、と靴を鳴らし、レイは踵を返して去っていった。

    タトの顔が一気に熱くなった。


    ――なぜ、口をついて出てしまったのか。

    頭を抱え、ため息をつく。

    *


    ルミナリーをでてから、ここまで、色々とあった…

    初めて見ること、初めて感じる責任、初めて味わう感情…

    タトの世界は、目まぐるしく変わっていく。

    そしていま――


    ルリに出会って、ボクは……

    ボク?

    ……ほんとうに?


    わたし…? いや、ボクだ。

    ボクなんだ。

    ボクは、ルミナリーのタト。



    熾石を胸元から取り出して、じっと見つめる。

    何度も加熱し直され、表面はすっかり古びていた。


    婆はどうしているだろう。

    ジルやニナ、故郷ルミナリーの街のみんなは――。


    ボクは……いや、わたしは、

    あたしは……


    タトは、ふと、遠い記憶に触れた気がした。

    守られていた、小さな頃の記憶。

    あの頃の自分と、ルリの笑顔が重なる。

    好きだったこと。憧れていたこと。

    でも、強くなりたかった。

    男のように。誰かを守れるように。

    それも、確かに本当だった。


    体を鍛え、技術を身につけ、今の自分には満足だ。

    けれど――

    ルリは、そのままで、強い。

    女性なのに、笑っているのに、強い。

    美しい……

    ルリは、ほんとうに、美しい。


    *


    ふと気づけば、空が白みはじめていた。

    みんなの静かな寝息が聞こえる。


    ――いつの間に、眠っていたのか。


    薪をくべようと手を伸ばすと、隣にいた誰かも同時に薪へ手を伸ばした。


    えっ?

    ……誰だ?

    顔を上げて目を合わせる。

    ――タト、だ。

    自分だ。

    なんだ、自分か……?

    ……え?

    ええ?

    ええええええーーーー!?!?


    タトは目を剥き、声にならない声を上げた。

    その様子に、ミミが目を覚ました。



    「あれ、タト……? ふたり……?? なんで?」
     

    タトは、なぜか――ふたりになっていた。




    (第五章へつづく)


    ←前のはなし   |   次のはなし→


    ■第四章のまとめ



    〇全話はこちらから




    この記事が参加している募集

     
     
    ぼんやりと生きています。心に湧いたお話は『ナルニア国物語』を思わせる、「児童文学ファンタジー」をちょっぴりと目指しています。 ◆note: 長編小説「追憶のオリジン」(全話公開中)イラスト 短編/短歌/自由詩/エッセイ ◆tales: 「追憶のオリジン(改訂版)」「読み切り」

    あなたへのおすすめ