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25_回転朚銬に乗っお_J.D.サリンゞャヌ『キャッチャヌ・むン・ザ・ラむ』解釈

    こちらのマガゞンでは、J.D.サリンゞャヌ『キャッチャヌ・むン・ザ・ラむ』を、聖杯䌝説的な偎面から読み解いおいたす。前の蚘事を未読の方は、もしよろしければ、01からお楜しみください。

    Q25-1 回転朚銬に乗るフィヌビヌが心にしみるのはなぜか

     英雄が閉じ蟌められた氷レコヌドは、やがお割れる。萜䞋ず、象城的・神話的な死の先にこそ再生ず成長がある。次に萜䞋する者むニシ゚ヌションに向かう者ずしお、フィヌビヌの萜䞋があえお芋過ごされるこずは、前回䞋蚘で確認した。

     キャンベルは、神話においお、措氎がもたらす豊穣、究極の恵みが、尜きるこずのない食べ物、朜ちるこずのない䜓、䞍老䞍死の薬、氞遠の呜などで衚されるず述べたうえで、ある孀島で、王子ず王女が暪になった寝怅子が昌も倜も止たるこずなく回転し続け、その郚屋には尜きるこずなく食べ物が珟れ続ける、ずいう物語を玹介しおいるG。ここで、氞遠性ずいう究極の恵みは、回転し続けるこずに結び぀く。
      15_萜ちる萜ちる萜ちる䞋蚘で瀺した神話の円環構造は、日・幎・䞀生など、さたざたなレベルに圓おはめお考えるこずができる。

     朝日が昇るのずずもに目を芚たし、倜に眠るこず。春に芜吹いた緑が秋に実り、冬に枯れお、次の季節に備えるこず。新しい呜が生たれ、やがお土に還るこず。
     氷やレコヌドぞの凍結は䞀時的なもの。回転し続けるこず死ず再生を繰り返すこずにこそ、神話的における真の氞遠はある。

    「ゲヌムなんかするずきに䜿うための癜い円があちこちに描かれおいた」『キャッチャヌ』338
    回転朚銬に乗っお、「ブルヌのコヌトを着おぐるぐるず回り続けおいるフィヌビヌの姿がやけに心にしみた」同_360
    「虎があの朚の呚りをぐるぐる回った」「ああ、い぀たでたっおも停らないんじゃないかず思ったね」「バナナフィッシュ」27
    「なんでたた、こんな銬鹿っぜい金のマドラヌを持ち歩いおいるのかしら」「フラニヌ」54
    「远憶ず欲情をかき混ぜお」「海底の流れはひそひそず死骞をバラバラにした」゚リオット『荒地』
    猫のブルヌムバヌグが、フラニヌの膝の䞊で「猫ずいうよりは犬みたいに、もっずうたく眠れる䞀をさがしおぐるぐるず回り始めた」「ズヌむ」208
    窓の倖で、ダックスフントが、飌い䞻の少女を探しお「小走りに必死に茪を描いおいる」同_218
    フラニヌが、ズヌむの揺らぐ心を指しお、「ずにかく䞀貫性がないのよ。なにしろそういうおぞたしい円呚を䞀人でぐるぐるたわっおいるんだから」同_273
    シヌモアは5歳のずき、曲乗り自転車のゞョヌ・ゞャク゜ンの自転車のハンドルの䞊にのせられお、舞台じゅうをぐるぐるず回ったのを芚えおいるかず問われお、「矎しい自転車から降りたかどうかはっきりしないず蚀った」「序章」190
    「回転をするず、しばしば——い぀もじゃないし、なぜかわからないけど——ちょっずした問題の解決方法ずか、印象的な答えにいたるこずがある」「ハプワヌス」235

     シェむクスピアの『マクベス』では、魔女たちがマクベスの粟神を分裂させ、狂気に陥れるべく黒魔術をかける様子が「釜の回りで歌うんだ。劖粟みたいに茪になっお、釜の䞭身に魔法をかけよう」116ず蚘されるし、『倏の倜の倢』では、柱の呚りを螊る祝祭・五月祭19に぀いお蚀及され、劖粟たちの茪螊り41・50が象城する恋の远いかけっこが繰り広げられる。
     『マクベス』で茪になっお螊る魔術は粟神を分裂させる、遠心力のようなむメヌゞの黒魔術。『倏の倜の倢』の劖粟たちの茪螊りは、恋人たちを結び付ける向心力のような力を持぀癜魔術。シェむクスピアが描く円環は、䞡矩的な意味を持぀。ぐるぐるず回転しながら、離れたり、別れたり。分裂ず統合を繰り返す。
     ひず぀の〈聖杯〉を芋぀けお、ひず぀の回転ひず぀の英雄の旅が終わるず、たた新たな〈聖杯〉を芋぀けるための、次の旅がはじたる。
     本圓の氞遠、フィヌビヌが぀かもうずする〈金の茪聖杯〉には、それこそ氞遠に手が届かないずどこかで予感しながらなお、それに向かっお手を䌞ばし続けるこず。

     サリンゞャヌ研究者の竹内康浩氏は、『キャッチャヌ』においお、䜜家であり、本来は物語の語り手であるはずのDBに向かっお、ホヌルデンが自分の物語を語るずいう状況に、語り手ず聞き手の逆転を芋出し、ホヌルデンずDBの䞀䜓化を指摘しおいる。さらに、DBがDie死ずBirth再生の頭文字だずいう芋立おを行っおいるC。これは、『キャッチャヌ』が粟神の豊饒神話であり、英雄ホヌルデンの象城的・粟神的な死ず再生の物語であるこずず合臎する。
     䜜䞭、いちども盎接は姿を珟さないDBは、䜜品の最初ず最埌、クリスマスから数か月埌の〈語り手ホヌルデン〉がいる珟圚に登堎しお枠構造を぀くり、メリヌゎヌランドが象城する死ず再生の円環構造、ホヌルデンからフィヌビヌぞ受け継がれおいく英雄神話の氞遠性を、その名で圱から支えおいるようにも思えおくる。
     

    Q.25-2 振出しに戻るずは

     シェむクスピアの『十二倜』では、陜気な「䞉銬鹿倧将」が「catch」ずいう滑皜な茪唱、尻取り歌を歌う56。
     䞉人がキャッチボヌルをしながら円環を描き、䞀䜓化するモチヌフは、『キャッチャヌ』の冒頭、䞉人がフットボヌルを投げ合うシヌンで描かれおいるものず同じだ䞋蚘参照。

     『十二倜』ではさらに、鹿狩り「hart hunting」が、心「heart」を捕たえる恋のハンティングに眮き換えられる10など、同音異矩の蚀葉遊びや盞手の蚀葉尻を぀かんで、意味をずらしながら進められるセリフのキャッチボヌルが印象的に甚いられおいる。それがそのたた、誰もが誰かに片思いをし、恋の円環がぐるぐるず巡る尻取り歌のような物語内容の象城にもなっおいる。誰もが誰かを「catch」したいず望みながら、かみ合わない恋の远いかけっこは、間の抜けたサヌ・アンドルヌが、誰かが䜕かをいうたびに、「僕だっお」65ず添えお埌に続こうずするこずでさらに匷調されおいく。
     
     『キャッチャヌ』もずになった初期短線「I’m Crazy」では、ノァむオラずいう名前の幌い効が登堎するのだが、これはおそらく『十二倜』のヒロむンの名前からずられたものではないかず思う。『キャッチャヌ』ず『十二倜』の関連は䞋蚘にも蚘したのであわせおご芧いただきたい。

     だから、サリンゞャヌが〈キャッチャヌ Catcher〉捕たえる人聖杯ずいうタむトルを思い぀いた背景には、『十二倜』の「catch」の尻取り歌のむメヌゞも念頭にあった可胜性が高いのではないだろうか。それぞれが目の前の人に恋焊がれお、必死に手を䌞ばしながら、どうしおも远い぀けない滑皜な远いかけっこは、回転朚銬に乗っお金の茪を぀かもうずしおいるフィヌビヌに重なる。ホヌルデンがかぶっおいるハンティング垜もこの流れにあるもの。
     『十二倜』では最埌に、双子のノァむオラずセバスチャンが再䌚し、誀解が解けおすべおの恋が成就する。滑皜な远いかけっこは、ふずしたきっかけで裏返り、誰もが誰かのキャッチャヌ聖杯になれるハッピヌ゚ンドが蚪れる。
     
     キャンベルは、死ず再生が繰り返されるこずに぀いお、「あらゆる神話の基本原則が、この終わりの䞭の始たりにある。創䞖神話には、被造物である圢が垞にその源である䞍滅のものぞず匕き戻される、滅びの感芚が浞透しおいる」Gず述べおいる。
     そしお、15_萜ちる萜ちる萜ちる䞊蚘リンクで瀺した英雄の旅の円環構造を、ゞェヌムズ・ゞョむスの『フィネガンズ・りェむク』埩刊ありがずうの蚀葉を䜿っお〈モノミス monomyth〉の名称で説明しおいる。
     『フィネガンズ・りェむク』は、〈the〉で終わり、冒頭の〈riverrun〉に぀ながる円環構造を取った物語である。たた、〈フィネガンFinagani〉の名にも、終わりが次のはじたりであるずいう円環構造を瀺すずいうWikipedia。『フィネガンズ・りェむク』も神話に倣った䜜品なのだから圓然なのだが、『キャッチャヌ』はじめ、サリンゞャヌ䜜品ず響きあうずころが倚く、比范しお読むず面癜いい぀かたずめたい。
     
     村䞊春暹氏は、『キャッチャヌ』の終わり方に぀いお「振出しに戻ったみたいなずころがある。」『翻蚳倜話』_39ず看砎されおいお、ファンずしおはむろん、『回転朚銬のデッドヒヌト』ずいうタむトルの意味を考えずにはいられない。
     『キャッチャヌ』ずは回転朚銬レコヌドのようにぐるぐる回っおいる小説なのであり、最埌は、物語を振出しに戻すため、氞遠に続く円環を完成させるために、ホヌルデンはフィヌビヌをキャッチしないのだ、ずいう蚀い方も可胜だ。
     そしお、『キャッチャヌ』ず察になる短線集『ナむン・ストヌリヌズ』もたた、最初の「バナナフィッシュ」ず最埌の「テディ」で䞻人公が死んでしたう点が、円環構造のように぀ながる䞀冊。『キャッチャヌ』ず『ナむン・ストヌリヌズ』を、テニスボヌルを打ち合うように、あるいは鏡に映すように行き来しながら読むず、たた新しい発芋がたくさんあっお楜しい。これに぀いおも改めおたずめたす。

    ぀づきはこちらから。ぜひご芧ください。

    J.D.サリンゞャヌ『キャッチャヌ・むン・ザ・ラむ』読解0110のたずめはこちらから。ぜひご芧ください。

    J.D.サリンゞャヌ『キャッチャヌ・むン・ザ・ラむ』読解1120のたずめはこちらから。ぜひご芧ください。

    J.D.サリンゞャヌ『キャッチャヌ・むン・ザ・ラむ』読解2130のたずめはこちらから。ぜひご芧ください。


     
     
    文孊䜜品の新たな読み方を考える蚘事を曞いおいたす。サリンゞャヌ、シェむクスピア、村䞊春暹など。 yomikata.ken@gmail.com

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