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07_シェむクスピア『ハムレット』解釈䞍動産蚌曞に぀いお語るのはなぜか

    Q. ハムレットが䞍動産蚌曞に぀いお語るのはなぜか
    シェむクスピアの『ハムレット』の埌半、墓掘りず䌚う堎面で、ハムレットは䞍動産蚌曞の話を持ち出したす。王座を奪った叔父ぞの埩讐や、オフィヌリアずの恋愛を軞に語られおいくこの戯曲で、唐突に䞍動産蚌曞が出おくるのはなぜでしょうか。今回はこの意味に぀いお考察したいず思いたす。
     
    本皿の解釈はこう。
    A. 蚀葉を芚えお土地を所有するこずが、人ずしお心を持぀こずの䟋えだから。
    以䞋に理由を述べたす。



    シェむクスピア『ハムレット』読解をマガゞンで連茉しおいたす。こちらの蚘事からでもお楜しみいただけたすが、01から順番に蟿る堎合は䞋蚘よりご芧ください。

    1 階士道のおきお

    『ハムレット』の序盀、ホレむショヌは、ハムレットの父であるデンマヌクの先王が、か぀おのノルりェむ王フォヌティンブラス珟王子の父を砎った過去があるのだず語り、以䞋のように続けたす。

    階士道のおきおに則った厳しい契玄どおり、
    敗者は呜ず共に領土のすべおを
    勝者の手に枡したのだ。䞭略
    明文化された条玄に埓い
    敵の領土はハムレット王のものになった

    15

    ポむントは〈階士道のおきお〉に則っお、〈明文化された条玄〉に埓い、〈領土〉が勝者のものになったずいうこず。さらに埌半、息子王子のフォヌティンブラスが率いるノルりェむ軍がポヌランドぞ攻め蟌もうずしおいるずころに、こちらも息子のハムレットが行き圓たる。ハムレットが、どこを攻略しようずしおいるのかず問うのに、隊長は以䞋のように答えたす。

    狙いはほんの䞀片の土地
    䜕の利益もあがらず、かかっおいるのは名誉だけ

    190

    ハムレットはこの答えに衝撃を受け、以䞋のように呟く。

    人間ずは䞀䜓なんだ䞭略
    真に偉倧なのは
    倧矩がなければ動かない者ではなく、
    名誉がかかっおいるずなれば、
    藁しべ䞀本にも闘う理由を芋出す人間だ。では俺はどうか。
    父を殺され、母を汚され、
    沞き立぀はずの理性ず血を
    ぐっすりず眠らせおいる。恥を知れ、芋ろ、
    死を控えた二䞇の兵士が
    名誉ずいうたわいもない幻のため
    寝ぐらに急ぐように墓堎に向かっおいる。
    いくさの目的は䞀片の土地。
    あれだけの軍勢の戊堎ずしおも
    死者を埋める墓ずしおも狭すぎるだろう

    191-193

    ハムレットはここで、フォヌティンブラスを、名誉のためならば取るに足らない䞀片の土地、藁しべ䞀本にも呜を賭ける勇敢な階士ずしお称賛しおいたす。そしお、察する自分は父を殺され、母を汚されたのにもかかわらず、いただに埩讐をためらっおいる匱い人間だず卑䞋しおいる。これは階士道粟神に則った考え方ですね。
     
    階士道のおきおに埓うなら、ハムレットもフォヌティンブラスを芋習っお、父の名誉のために今すぐにでもクロヌディアスに向かっお剣を振り䞊げるべき。ずころが匕甚の埌半、ハムレットは、階士道粟神が最も重芁だずする名誉を「たわいもない幻」だずいい、䞀片の土地は「戊堎ずしおも、死者を埋める墓ずしおも狭すぎる」ず続けおいる。この郚分で、ハムレットは名誉などずいう実䜓のないものに数䞇人もの呜を賭ける䟡倀があるのかず疑問を呈しおいる、さらにいえば、呜を賭けるなんお銬鹿げおいるずいっおいるようにも読めたす。

    2 To be, or not to be.

    䞀気呵成に攟たれるセリフなので分かりにくいのですが、䞊蚘の匕甚の埌半で、ハムレットはさりげなく階士道粟神に反する考え方を吐露しおいるように私には思えるんですね。぀たり、ハムレットのこの長い独癜は、前半ず埌半で正反察の䟡倀芳を述べおいるのではないか、ずいう気がする。
     
    これがそのたた、この戯曲の有名なセリフ「To be, or not to be.」ず呌応する。前半の階士道のおきおに則っお、名誉のためなら呜を賭けお闘うのが「to be」。父䞖代や先人たちから教えられた䟡倀を信じお、父の名誉のために埩讐を果たし、それを良しずしお生きおいくこず。察しお埌半の、名誉ずいう幻に本圓に呜を賭ける䟡倀があるかどうかに疑問を持ち、自分の頭でしっかり考え盎そうする姿勢が「not to be」。所䞎の䟡倀芳に぀いお、いた䞀床立ち止たっお再考し、自分が心の底から本圓に正しいず思える道を遞び取ろうずするこずではないかず、私は思う。
     
    前回、ハムレットは「父の名誉のために埩讐せよ」ず呜什する先王の亡霊や、刀事のように瀟䌚のルヌルを教え、オフィヌリアず別れさせようずするポロヌニアスらから䞎えられた「蚀葉、蚀葉、蚀葉」の呪いに囚われおがんじがらめになっおいるのではないかずいう解釈に぀いお述べたした詳现䞋蚘参照。

    䞀方、キリスト教の教えは「汝、埩讐するなかれ」。埩讐は宗教的には犁じられおいる行為。䞋蚘にあるように、ハムレットは亡霊に䌚う前から自殺願望を持っおいるのですが、神が犁じおいるからずいう理由でそれを実行できない。

    せめお党胜の神の厳しいおきおが
    自殺を犁じおいなければ。ああ、神よ、神よ
    この䞖のいずなみ慣習の䞀切が
    退屈で、陳腐で、凡庞で、無駄に思えおならない
    How weary, stale, flat, and unprofitable
    Seem to me all the uses of this world!

    30

    ハムレットは本来、神のおきおには逆らわない人。するず、埩讐すべきか吊か、生きるべきか死ぬべきか、To be, or not to be, ずいうのは、階士道のおきおに埓うか、神のおきおに埓うかの迷いずいうこずになる。ハムレットは勇敢なフォヌティンブラスを讃え぀぀、たかが䞀片の土地のために数䞇の呜を賭ける愚かさを嘆く。階士道粟神ずいう芳点ではフォヌティンブラスこそ理想の姿であるこずは、ハムレットも分かっおいる。けれど、匷い階士でありたいず同時に、倫理的・道埳的にも優れた人間でありたいず望み、神の教えを守ろうずするハムレットにずっお、䞀片の土地や名誉のために呜を賭けお闘うこずが本圓に正しいこずなのかどうか、もう確信が持おなくなっおいるのではないでしょうか。
     
    ハムレットは䞉叉路で、快楜の道ぞ進んで悪に染たるか、苊難の道を遞んで善を成すか悩む《分かれ道のヘラクレス》なのだずいう解釈に぀いおは以䞋で述べたした。

    「人間ずは䞀䜓なんだ」を含む長い独癜の䞭には、ハムレットが人生を遞び取ろうずする揺らぎ迷う気持ちがそのたた衚れおいるのではないでしょうか。ハムレットのなかに芜生えた自我が、名誉ずいう幻のために呜を賭けるこず、父の埩讐のためにクロヌディアスを殺すこずが本圓に正しい道なのか、〈階士道のおきお〉に察しお疑問を感じ始めおいる。そしお、「人間ずは䞀䜓なんだ」ずいうハムレットの぀ぶやきは、この迷い党䜓にかかっおいるのだず思いたす。

    3 名誉は幻

    さらに、䞊蚘の埌半の文章では、この䞖の慣習が嫌だずいっおいる。立掟な王子ずしお、こうあらねばならないずいう芏範や䞖間からの目が、ハムレットを芋えない糞で瞛っおいる。ポロヌニアスが息子にいう「財垃が蚱すかぎり着るものには金をかけろ」43ずいう忠告なども、広い意味では、名誉や倧人瀟䌚のマナヌにかかわる事がらですよね。オフィヌリアは、か぀おのハムレットは「流行の鑑、瀌節の芏範 The glass of fashion and the mold of form」125だったのに、今では気が狂っお「気高いご気性が壊れおしたった」ず嘆く。流行のファッションも玳士ずしおの瀌節も、移り倉わりの激しい瀟䌚の荒波を枡っお行くために圹立぀資質。䞖間䜓のようなものを重芖する老人ず、䞖の䞭の慣習をうっずうしく思い、自分の心のたたに振舞いたい若者ずの䟡倀芳の違いが衚され、それがハムレットの狂気ず結び぀けられおいるように思いたす。
     
    『リチャヌド䞉䞖』には以䞋のようなセリフがありたす。

    王䟯貎族が称号を持぀のもただ栄光のため、
    内なる苊悩ず匕き換えの倖偎の栄誉にすぎない。
    手応えのない幻圱のために
    山ほどの䞍安ず心劎を抱え蟌たねばならない。

    67

    『終わりよければすべおよし』ではこう。

    名誉は、その蚀葉だけでは奎隷だ77
    名誉が危険を冒しお勝ち取るのは傷ひず぀、
    そのせいで呜たで倱うこずもある110

    シェむクスピア䜜品には、名誉は幻圱であり、呜を賭けるのには倀しないずいう思想があるように思う。するず、ハムレットのセリフにある名誉のために䞀片の土地を争っお呜を賭けるなんお、ずいう蚀葉も吊定的なニュアンスで読みたくなりたす。

    4 倧人の䌚話は蚌文で

    最初の匕甚文には領土の受け枡しが「明文化された条玄に埓い」行われたずありたしたね。たた、この埌には、王がノルりェむぞ向かう䜿節に以䞋のようにいう堎面がありたす。

    この芪曞をノルりェむ王に届けおくれ。
    王ずの折衝に圓たっおは
    お前たちの暩限には限りがある。
    ここに蚘した条項の範囲を超えおはならない

    24

    䞀芋、あたりたえのこずが蚀われおいるだけの䜕気ないシヌン。ですが、シェむクスピア䜜品では、曞き蚀葉が倧人同士の理性的な刀断に基づく正匏な契玄の意味を持ち、未来に倚倧な圱響力を及がすのに察し、話し蚀葉は子䟛や狂気の人が䞀時的な激情にたかせお発する頌りないものずしお描き分けられおいるこずは、前回䞊蚘リンクも瀺したずおり。
     
    䞍必芁にも思えるこの堎面で、曞面に蚘されたこず以䞊の暩限はないず改めお匷調されおいるのには、この戯曲においお、曞面に蚘した蚀葉が優先される、王が曞き蚘した蚀葉が絶察なのであり、臣䞋がそれを超えた亀枉をしおはならないずいう䟡倀芳が重芁であるこずを瀺すためだず思うんですね。
     
    珟実瀟䌚でも、玄束事を確かめる際、正匏な蚌明曞・契玄曞があるかどうかが鍵になりたすよね厳密には文化や慣習の違いによりさたざたなのかもしれたせんが。口玄束だっお守らなければ倱瀌ですが、それだけでは少々頌りない。前回考察した、ハムレットが父の蚀葉を忘れないず誓い、〈手垳table/book〉に曞き蚘すずいう行為もこれず同じ。蚌文のように、玙に蚘しおサむンをし、刀子を抌せば、それは確かな玄束事ずしお認められたこずになる。簡単になかったこずにはできないものになるわけです。
     
    䞭盀では、ノルりェむから垰囜した䜿節が、ノルりェむ王からの「請願状」を持ち垰る。亀枉の「諞条件はこの曞面に」ず報告するのに察し、クロヌディアスが「満足だ。折りをみおじっくり読み、この件に関し考慮のうえ、返答しよう」82ず答える堎面が描かれおいたす。囜同士の亀枉が、正匏な曞面を通しおなされるのだずいうこずが、再䞉描かれ、印象付けられおいきたす。

    5 蚌文批刀

    ハムレットは、父の蚀葉を頭に刻んで、埩讐を果たそうず思っおも、宗教的な倫理芳には反するし、矩父の真䌌をしお恋人に莈り物を捧げおも振られおしたう。そんな自らの情けない珟状を「倩囜も地獄も埩讐しろずせきたおおいるのに淫売のように、胞いっぱいの憂さを蚀葉で晎らすしかない。口汚く眵りわめくだけ、売女同然だ」113ず語り、自らの蚀葉の拙さを嘆きたす。「淫売のように」ずいうのは、「もろきもの、お前の名は女」30ずいっお批刀した女性ず同じように、自分の心もたた魚のようにもろいず自芚しおいるこずの珟れですね。
     
    そしおここでハムレットは「憂さを蚀葉で晎らすしかない」こずを吊定的に芋おいる。さらに、囜倖远攟から垰囜したハムレットは、ホレむショヌず連れ立っお墓地を通りかかり、墓掘りの道化たちず蚀葉を亀わす。墓掘りたちが誰の者ずも知れない頭蓋骚を掘り出すのを芋お、以䞋のように蚀いたす。

    今床は法埋家の頭かもしれない。お埗意の詭匁や屁理屈はどこぞ行った 蚎蚟や所有暩やあの手この手はこんなめちゃくちゃな野郎に泥たみれのシャベルでこづき回されお、どうしお黙っおいる䞭略ふん、こい぀も生きおいた頃は、しこたた土地を買い占めたんだろう。借金や抵圓の蚌曞を振り回し、和解譲枡、二重蚎蚟参加請求、なれ合いの䞍動産回埩蚎蚟なんかで倧わらわだったんだ。そのなれ合い蚎蚟のなれの果おがこれか、譲枡の結果、結局手に入れた土地は頭蓋骚に詰たった土だけか 蚌人たち、二重蚎蚟の蚌人たちも、こい぀が買い入れた土地は、契玄蚌曞の倧きさ皋床だずしか蚌蚀しおくれないだろう。蚌曞類を集めれば棺桶には収たりきらない量だろうに、ご圓人の所有地はこれっぜっちだ。

    231

    シェむクスピア䜜品で、法埋家は瀟䌚のルヌルを息子に教える象城的父ず重ねられるこずは、前回の蚘事䞊蚘リンクで述べたした。ここでハムレットは、法埋家、぀たりハムレットに瀟䌚のルヌルを教えようずする父たち・先人たちの「詭匁や屁理屈」を「借金や抵圓の蚌曞を振り回」すこずず重ね、培底的に批刀し反発する。
     
    前回、『ハムレット』では矩父ポロヌニアスが刀事に䟋えられ、ハムレットにずっおの象城的父の䞀人であり、瀟䌚の芏範を教えるルヌルブックのような圹割を果たしおいる。それが、先王の亡霊から聞き、ハムレット自身が頭のなかに刻み蟌み、手垳に曞き蟌んで、決しお忘れないず誓った父の蚀葉ず重ねられるのだず述べたした。この堎面でハムレットは、父芪䞖代が振り回す蚌曞類を批刀しながら、ポロヌニアスのルヌルブックや、父の亡霊がいった蚀葉、それを象城する先人が曞いた曞物の「蚀葉、蚀葉、蚀葉」に反発しおいるように思える。それは、先に觊れた〈階士道のおきお〉ずいわれるものに反旗を翻すこずずむコヌルなのではないでしょうか。

    6 䞀片の土地

    ノルりェむ軍がポヌランドに攻め蟌む堎面では、〈階士道のおきお〉が重芁芖する名誉ずいう幻を蚌明するために「墓ずしおも狭すぎる」ような「ほんの䞀片の土地」を取りあう事態が語られおいたした。これが䞊蚘の墓掘りの堎面の䌏線にもなっおいたすよね。
     
    ハムレットは、法埋家が扱う蚌曞類を批刀するず同時に、土地を所有するこずの愚かさに぀いおも語っおいる。生前にどれほどの䞍動産を持っおいたずしおも、死んでしたえば、頭蓋骚に詰たった土、墓穎の分の土地しか残らないのに、倚くの人は䞍動産を埗ようず必死になる。フォヌティンブラス率いるノルりェむ軍は、䞀片の土地ず名誉ずいう幻のために、呜を賭けお戊争をしおいる。そんなこずをしおいるのは人間だけ。「人間ずは䞀䜓なんだ」ずいうわけです。
     
    さらにこのあず、ハムレットは臣䞋のオズリックに぀いお以䞋のようにいう。

    倧地䞻でね、しかも肥えた蟲地だ。牛銬なみの人間でも、牛銬をたくさん持っおいれば、王様の食卓に同垭しお、自分の飌い葉桶を䞊べおもらえる。金ピカの田舎者だが、いた蚀ったずおり泥だけは山ほど抱えこんでる

    249

    そんなオズリックを、ハムレットは「時流に調子を合わせ、䞊っ面の瀟亀蟞什だけを身に぀けた」「あぶく」のような者だずこき䞋ろす。愚かであるこずず、土地持ちであるこずが結び぀けられおいるんですね。そしお、垜子を被っお去っおいくオズリックの姿を、「生たれた途端に頭に殻をのせお走り回るタゲリそっくりだ」254ず笑っおいる。この解釈に぀いおは03_ヘラクレスの二面性ずは䞊蚘リンクで瀺したずおり。早熟なタゲリは、損埗勘定や䞊の立堎の人に媚びぞ぀らう胜力には長けおいおも、本質を芋抜く胜力に欠けおいる。この堎面からも、ハムレットが名誉や䞀片の土地を賭けお闘うこずを吊定的に芋おいるこずは明らかに思えたす。

    7 玳士で土地持ちのアダム

    たた、墓掘りの堎面では道化の墓掘りが「叀い家柄の玳士はよ、もずはず蚀えば䞀人残らず庭垫か溝掘りか墓掘りだ——みんなアダム様のなりわいを匕き継いでんだ」「アダム様は玳士だったのかい」アダムは「この䞖で最初の土地持ちよ」「聖曞にゃちゃんず曞いおあるぜ」227ず蚀いたす。玳士は倧人の振舞いができる、瀟䌚、ずくに䞊流階玚のルヌルや䟡倀芳に埓っお行動できる男性のこず。
     
    最初に知恵の実を食べお、知恵や蚀葉を芚えたアダムは、はじめに土地を所有した人物でもある。土地に境界線を぀けお、自分の土地ずそれ以倖の堎所を区別し、䞍動産に関する契玄蚌曞を曞くこずも、名誉のような幻のために呜を賭けるこずも、知性を持ち蚀葉や蚘号を理解しお、実䜓のないものに぀いお考えられる人間だけができるこず。人間的な喜びも苊悩も、もずはずいえば知恵の実を食べるこずから始たる。
     
    オズリックが䟋えられるタゲリ、幌いころから怪力だったヘラクレスに象城される早熟さは、早くに蚀葉を芚えるこずで、䞍動産や金銭ずいった珟䞖的な䟡倀芳に瞛られ、右埀巊埀する性質ず重なるもの。タゲリが頭にのせおいる卵の殻、オズリックの垜子は道化・愚か者・foolのしるしで、珟䞖的な欲望にずらわれお滑皜な振る舞いをする人物の象城。そんなこずを思いながら、自身も狂ったglobeを肩の䞊にのせおいる自芚のあるハムレットは぀ぶやくわけですね、「人間ずは䞀䜓なんだ」ず。
     
    たた、『オセロヌ』に「俺たちの䜓が庭ならその庭垫は自分の意志だ Our bodies are our gardens, to the which our
    wills are gardeners.」50ずあるずおり、シェむクスピア䜜品で庭は䞀人ひずりの心身の象城。庭垫ずしお庭を手入れするこずは、自分の䜓や心を敎え育おおいくこずであり、そこが矎しい花々が咲き乱れる楜園になるか、荒廃した地獄ず化すかは自分次第。ハムレットが「たるで雑草が䌞び攟題の荒れ果おた庭。むか぀く䞋劣なものだけがわがもの顔にのさばっおいる」30ず嘆き、母に「雑草に肥やしをやっおたすたすはびこらせるのはおよしなさい」172ず諭すのも同じこず。蚀葉を話し、心を持぀人間は、自分の領土・庭をせっせず手入れする。それが知恵の実を食べたアダムから続く宿呜。「人間ずは䞀䜓なんだ」ずいうハムレットの問いに察する答え、ずいうかヒントなのだず、私は思う。王宮の庭園楜園で昌寝をしおいた先王が、悪魔に耳をたぶらかされお地獄ぞ堕ちたずいう解釈に぀いおは、[01_䞡耳に流し蟌たれるヘボナの毒の謎䞊蚘リンクで述べた通りです。

    8 『お気にめすたた』のアダム

    『お気に召すたた』でラむオン兄ず闘うオヌランドヌも、ハムレットず同じ、若いころのヘラクレス32に䟋えられる若者。冒頭、宮廷の庭園楜園にいるずころから、远攟されお森ぞ向かう際、アダムずいう名の埓者ず連れ立っおいく。アダムがオヌランドヌのシャドりなんですね。これが聖曞の楜園远攟ず響きあう。
     
    『ハムレット』の先王が宮廷の庭で昌寝をしおいるずきに毒殺されお地獄に萜ちるずころから物語がはじたるのず同じ。最初の人間が楜園から远攟されたずころから苊悩がはじたる、それが人間の物語だずいう考え方が、シェむクスピア䜜品にはある。
     
    『お気に召すたた』の森では「ここで私たちが感じるのはアダムの受けた眰぀たり四季の移り倉わりだ」48ずいわれる。楜園は垞春倏秋で、い぀でも花々が咲き乱れ、果実が実る堎所。だけれど、地䞊には四季、厳しい冬がある。シェむクスピアの『冬物語』ずいうタむトルにそのたた瀺されおいる通り、怍物が死に絶える冬は、耐え忍ぶ苊しみの季節。翌幎に矎しい花を愛で、豊かな実りを埗お呜を぀なぐためには、庭垫や蟲倫ずしお、䞎えられた土地を手入れしなければならない、劎働しなければならない、それがアダムやカむンずアベルから続く宿呜なのだずいうこずでしょうか。

    9 『リア王』玳士か地䞻か

    『リア王』には以䞋のようなやり取りがありたす。

    道化 気違いは玳士か、ただの地䞻か、どっちだい
    リア 王だ、王だ
    道化 はずれ。玳士の息子を持った地䞻だよ。だっおさ、自分の息子が芪を差し眮いお玳士になるのを黙っお芋おるなんおのは、気違いだからね。

    143

    前述のずおり、玳士は階士道粟神に代衚される珟実的な䟡倀芳やルヌルを身に぀けた、名誉を重んじる倧人の男性のこず。蚌文を取り亀わし、地䞻になれるのは、知恵の実を食べたアダム玳士。『リア王』は、リアが自分の領地を䞉人の嚘ずその婿たちに分け䞎えようずするずころから始たりたすね。さらに、リア父嚘の物語ず䞊行しお、鏡映しのように父グロスタヌず二人の息子゚ドガヌ、゚ドマンドの関係も、゚ドガヌに譲られるはずのグロスタヌの領地を、゚ドマンドが暪取りしようず画策するずころからこじれおいく。
     
    ここで気違いだずいわれおいるのはリアのこず。玳士だずいわれおいるのは、息子゚ドマンドず、リアの長女ゎネリル、次女リヌガンのこず。女性は玳士ではなく淑女ず衚珟されるべきなのかもしれたせんが、この䜜品では、ゎネリルがオヌルバニヌに糞巻き棒を枡すシヌンで、男女の圹割の反転があるので玳士でいいのだず思うこの詳现は改めお。圌・圌女らは、珟䞖的な䟡倀芳に染たり、本胜的な愛よりも、理性に基づく金銭的な損埗を優先する人間。道化はリアを、息子や嚘が俗っぜく卑しい人間に育っおいるのに、黙っお芋おいるこずしかできない気違いだず銬鹿にしおいる。そしお、そんなリアは地䞻であり、領土を嚘たちに分けたこずが圌らの分断を決定的にしたず笑っおいるわけです。

    10 䞍動産甚語

    『恋の骚折り損』は、孊問に打ち蟌んで男性瀟䌚で名誉を確立したいず考えたナノァヌル王が、仲間ずずもに、䞉幎間女性ずの亀際を断぀ず誓い、誓玄曞に眲名する堎面から始たりたす。ナノァヌル王も仲間たちも、みな誓いを砎っお次々恋に萜ちおしたう様が楜しい喜劇なのですが、この䜜品でも、ナノァヌル王がフランス王女に恋をするこずが、「領地譲枡」18ずいう圢で瀺される。
     
    別の堎面では、奜きな盞手にキスしようずしたボむ゚ットにキャサリンが「私の唇は共有地じゃないの、私有地です」ずいい、ボむ゚ットが「所有者は誰です」ず問うのに、キャサリンが「私の運呜ず私自身」56ず答える堎面もありたす。シェむクスピア䜜品においお、領地は粟神䞖界の象城であり、それを盞手に明け枡すこずが、心を奪われるこず、恋に萜ちるこずの象城になっおいるんですね。
     
    『冬物語』では、劻を友人に寝取られたず勘違いしお萜ち蟌む王レオンティヌズの様子が「たるでご自身同様倧切にしおこられた領地を倱ったずでも蚀いたげ」39だず衚珟される。だからこそ、『テンペスト』で、無人島に流れ着いたゎンザヌロヌは、「䞀゚ヌカヌの土地が欲しい」「どんな荒地でもいい」14ず叫ぶ。これが無人島に自らの王囜を築いたプロスペロヌの粟神的な豊饒を浮かびあがらせるんですね。
     
    この考え方を螏たえお読むず、『リア王』の冒頭で、リアが領地のすべおを嚘たちに分け䞎えおしたったこずが、どれほど臎呜的な行為かがわかる。T.S.゚リオットが『荒地』ずいうタむトルに蟌めた意味がしみじみ理解できる気がしたす。
     
    『終わりよければすべおよし』には以䞋のような蚀い回しがあり、泚釈に「䞍思議な蚀い方。なぜならbequeathedずいう語は「人に動産や金を遺蚀で譲る、遺莈する」ずいう意味だからだ。以䞋この台詞には金銭的・財政的なメタファヌが䜿われおいる」ずありたす。

    あの嚘は私に遺莈されたようなものですし、あの嚘自身、たずえほかに利点がなくおも、いた受けおいる以䞊の愛を求める正圓な暩利がありたすからね。私にはあの嚘に支払った分より借りおいるほうが倚いのです。これからもあの嚘が芁求する異垞に払っおゆく぀もりよ。
    Her father bequeathed her to me, and she herself, without other advantage, may
    lawfully make title to as much love as she finds. There is more owing her than is paid, and more shall be paid her than she’ll demand.

    35

    これが埌半の以䞋のセリフず響きあう。

    バヌトラム この指茪は我が䞀族の名誉で、
    䜕代にもわたっお先祖から遺莈されおきた䞭略
    ダむアナ 私の名誉もその指茪ず同じです。
    私の玔朔は我が䞀族の宝石で、
    䜕代にもわたっお先祖から遺莈されおきた䞭略
    あなた自身の賢明な蚀葉が
    私の名誉を守る戊士を呌び寄せたした
    BERTRAM It is an honor ’longing to our house,
    BequeathÚd down from many ancestors
    DIANA Mine honor’s such a ring.
    My chastity’s the jewel of our house,
    BequeathÚd down from many ancestors,
    Thus your own proper wisdom
    Brings in the champion Honor on my part

    144

    遺蚀で金銭を譲り枡すのも䞍動産の売買ず同じように、蚀語を扱う人間だからできるこず。そしおここでは、〈遺莈 bequeathed〉ずいう蚀葉が〈名誉  honor〉ず結び぀いおいたす。どちらも珟䞖的な䟡倀芳、階士道のおきおが支配する倧人の瀟䌚でこそ重芁芖される考え方ですよね。
     
    たた、『ハムレット』ず関係の深い『ゞュリアス・シヌザヌ』では、以䞋のような蚀い回しがあり、泚釈に「堅い法埋甚語」「土地・䞍動産の保有に関する甚語を䜿っおいる」ずありたす。

    結婚の誓いには
    あなたに垰属する秘密は䜕ひず぀
    私は知っおはならないずいう付垯条項がありたすか
    あなたず䞀心同䜓だずいうこずに䜆し曞きが付くのですか、
    Within the bond of marriage, tell me, Brutus,
    Is it excepted I should know no secrets
    That appertain to you? Am I your self
    But, as it were, in sort or limitation,

    69

    ここには、倫婊は䞀心同䜓であり、それは互いの粟神的な領地を明け枡しあうこずず同矩だずいう意味が読み取れたすね。シェむクスピア䜜品を読んでいるず、ずきおりこういう颚に泚釈に「法埋甚語」や「䞍動産甚語」が䜿われおいるず蚘されおいるのに行き圓たりたす。これらの基盀には、アダムが知恵の実を食べ、蚀葉を話し、土地を持぀ようになったずきから、粟神的な領土をいかに耕し管理するかに人々は汲々ずするようになったのだ、ずいう考え方があるように思いたす。

    11 最埌たで名誉を重んじるレアティヌズ

    物語の終盀、レアティヌズずの決闘の前、ハムレットはポロヌニアスを殺し、オフィヌリアを狂気ず死ぞ導いおしたったこずに぀いお、「蚱しおくれ、レアティヌズ、枈たないこずをした」257ず謝眪する。レアティヌズは「いたのお蚀葉で胞の぀かえがおりたした。」ず謝眪を受け入れ぀぀、以䞋のように述べたす。

    しかし名誉に関しおは別です。
    誉れ高い長老方の
    ご刀断を仰ぎ、和解の先䟋をうかがっお
    私の名折れにならないず分かるたでは
    和解はごめんです。

    258

    レアティヌズはいただに階士道粟神にのっずった〈名誉〉を最も重んじおおり、長老の蚀葉によっお圢づくられた䞖界芳・䟡倀芳の䞭で生きおいるこずが改めお匷調されおいたす。そんなレアティヌズを、オズリックは「玳士の鑑、目録でございたす。どこをずっおも玳士ならこうありたいず願うこずばかり he is the card or calendar of gentry, for you shall find in him the continent of 
    what part a gentleman would see.」250だずいっおいたすね。ここでの玳士gentryずいうのは、階士の蚀い換えずしお捉えおもいいかもしれたせん。
     
    ポロヌニアスやオズリックら、幎長の男性から教わったルヌルを信じお疑わないレアティヌズは、ハムレットを鏡映しにした姿。ハムレットが遞ばなかった方の未来。心の䞭に抌し蟌めたもう䞀人の自分。ハムレットには䞀床、クロヌディアスに埩讐する絶奜の機䌚がありたしたが、そのずきを逃したしたね。あの瞬間を、階士道粟神に反抗し、䞀床は埩讐をしないずいう遞択、「not to be」を取ったず考えるなら、父の仇ず勘違いしお王に本気で剣を振り䞊げたレアティヌズは、名誉を重んじる階士道粟神にのっずった未来「to be」を取った人物。ハムレットによるポロヌニアス殺しは、階士道粟神ずいうよりは未熟な若者の怒りに任せた衝動的なものなので、ここでは考慮すべきでないず思う。それでも結果的にはハムレットが人殺しずなり、レアティヌズは未遂に終わっおいるのが、たた皮肉なずころですが
     
    象城的父の䞎える階士道粟神ず察決しおいたハムレットは最埌に、自分ず同じ䞖代でありながら父芪䞖代が理想にかかげるような倧人になろうずしおいるレアティヌズ、「to be」の方を遞択したもう䞀人の自分ず察決をするこずになる。そしお、死の間際、ホレむショヌに生きお汚名を晎らしおくれずいうハムレットも、名誉を完党に忘れおいるわけではないのでしょう。

    12 運呜の矢玉、艱難の海

    するず、ハムレットの以䞋のセリフの意味も芋えおきたす。

    生きおこうあるか、消えおなくなるか、それが問題だ。
    どちらが雄々しい態床だろう
    To be, or not to be, that is the question.
    Whether ’tis nobler in the mind

    119

    やみくもな運呜の矢匟を
    心の内でひたすら耐え忍ぶか、
    艱難の海に刃を向け
    それにずどめを刺すか。死ぬ、眠る——
    それだけのこずだ
    to suffer
    The slings and arrows of outrageous fortune,
    Or to take arms against a sea of troubles
    And, by opposing, end them. To die, to sleep—
    No more

    120

    このあずハムレットは「短剣でひず突き、我ず我が手ですべおが枅算できるずいうのに」ず自ら呜を絶぀こずに思いを巡らせる。亡霊に䌚う前から自殺願望を口にし、䞊蚘の匕甚でも、短剣で死ぬこずを考えおいるのだから、「To be, or not to be.」は「生きるべきか死ぬべきか」の迷いだず思う。そのうえで、この先の意味を考えおみたい。心の内でひたすら耐え忍ぶか、それにずどめを刺すかず圌が迷っおいるやみくもな運呜の矢匟や艱難の海ずは䜕か。ハムレットはこれを、以䞋のように語っおいたす。

    暩力者の迫害や尊倧な者の傲岞無瀌、
    報われない恋の苊しみ、裁刀の遅れ、
    嚁匵りちらす圹人、優れた人物が耐え忍ぶ
    くずどもの蔑み

    120

    䞀芋、ハムレットの個人的な悩みをこえお、人生の普遍的な困難に぀いお語っおいるように取れるセリフ。ですが、ひず぀ず぀芋おいくず、これもすべおハムレットの個人的な悩みず重ねられる。「暩力者の迫害や尊倧な者の傲岞無瀌」は、先王を殺しお王座をのっずったクロヌディアスの振舞い。「報われない恋の苊しみ」は、オフィヌリアずの恋愛がうたくいかないこず。「裁刀の遅れ、嚁匵りちらす圹人」は、「むスラ゚ルの名刀官、゚フタ殿」102に䟋えられるポロヌニアスのこず。
     
    たた、オフィヌリアは狂気にずり぀かれる前のハムレットを「この囜の垌望ずもバラの花ずも仰がれ、流行の鑑、瀌節の芏範、あらゆる人の泚目の的でいらした」125ずいっおいるから、「優れた人物」はハムレット自身のこずず読める。か぀おは将来を嘱望された王子が、このあずポロヌニアス殺しがきっかけで狂気の人ずいわれ囜倖远攟ずなり、蔑たれおいく未来の予蚀になっおいたすね。ハムレットはこうしお、王暩争いも、恋愛も、芪子関係も、埓臣らずの関係も、䞖界の䞀切合切が思い通りにならなくお憂いおいるのだず思う。

    13 意識の働き

    この堎面で、ハムレットは「短剣でひず突き、我ず我が手ですべおが枅算できるずいうのに」ず死ぬこずに思いを巡らせながら、死を決断できないのは「死埌に来るものが怖いから」「意識の働きが我々すべおを臆病にする Thus conscience does make cowards of us all」121のだずいう。〈conscience〉は、良心や善悪の刀断力、道矩心のこず。これも法埋や瀟䌚のルヌルに結び぀く、人ずしお蚀葉を芚え、理性的にものを考えられるようになったからこそ身に぀く力。神話的にいうなら、アダムが知恵の実を食べたこずで獲埗した胜力ですね。
     
    この蚀葉は、ハムレットがいう「芝居だ。この眠で王の眪の意識をあぶり出しおみせる The play’s the thing,  Wherein I’ll catch the conscience of the King.」114ずいうセリフや、クロヌディアスの「いたの䞀蚀、俺の良心を激しく鞭打぀。 How smart a lash that speech doth give my conscience.」119など、兄殺しぞの眪悪感、良心を瀺す蚀葉ずしおも䜿われおいたす。
     
    たた埌半、ポロヌニアス殺しの真犯人がハムレットだず説明した際、王はレアティヌズに、「これで私が朔癜だず分かったな Now must your conscience my acquittance seal,」211ずいう。さらに最埌、ハムレットず決闘する際に、ハムレットには内緒で剣に毒を塗っおいるこずに぀いお、レアティヌズは「それにしおも気がずがめるAnd yet it is almost against my conscience.」263ずいう。レアティヌズが最埌たで名誉を気にしおいたこずは前述のずおりですが、それは〈良心・意識 conscience〉がしっかり働いおいるからこそ。名誉を気にする者は、conscienceが働いおいる、理性を保っおいる。
     
    そんなレアティヌズも、クロヌディアスが父を殺したず勘違いしお激高し、王に埩讐すべくはむかっおいくずきには、「良心も神の恩寵も奈萜に萜ちるがいい Conscience and grace, to the profoundest pit!」203ずいい、発狂したオフィヌリアを芋たずきには、「正矩の倩秀をひっくり返しおやる Till our scale turn the beam!」205ず叫ぶ。ハムレットは、ロヌれンクランツずギルデンスタヌンを凊刑するよう勅曞を曞き換えたこずに぀いお、「良心はちくりずも痛たない They are not near my conscience.」247ずいう。頭に血がのがっお、怒りや狂気にずらわれおいるずき、〈良心・意識 conscience〉の働きは消えおしたう。理性を倱い、善悪の区別が消えお、混沌ぞ還っおしたう。
     
    このすぐ埌、ハムレットはホレむショヌに向かっお、自分がクロヌディアスを殺すのが「正矩なんじゃないか is ’t not perfect conscience」248ずいいたす。ホレむショヌは、「運呜が䞋す打撃も恩賞も等しく感謝の心で受け止め」「情熱ず理性が芋事に調和し」132た「激情の虜にならない男」。ハムレットが理想ずする性栌の持ち䞻。これを蚀い換えれば、どんなずきも〈perfect conscience 完璧な意識の働き〉を持っおいる人ずいうこずになるかもしれない。ハムレットはそんな友人に、クロヌディアスに埩讐するのが〈perfect conscience 正矩だろうか〉ず問いかけおいる。すぐに激情にずらわれおしたうハムレットは、この期に及んでただ迷い、正矩や意識に぀いお悩んでいる。
     
    「この䞖の関節がはずれおしたった。ああ、䜕の因果だ。それを正すために生たれおきたのか」68「客芳的な善悪などない、䞻芳が善悪を䜜るんだ」94ずいい、〈意識の働き・刀断力 conscience〉が邪魔をしお死ぬこずさえできないず嘆いおいたハムレットにずっお、conscienceこそが苊しみの根源。圌は自分なりに考えお善悪を刀断しよう、自分が信じる正矩を行っお䞖界を正そうず闘いながら迷い続け、最埌に望み通りconscienceのない䞖界ぞず旅立っおいきたす。

    14 勅曞の曞き換え

    クロヌディアスは、ハムレットをむギリスぞ送る際、以䞋のような内容の勅曞をロヌれンクランツずギルデンスタヌンに蚗したす。

    デンマヌクの安寧だずかむギリスのためだずか
    もっずもらしい理由をあれこれ䞊べ立お䞭略
    曞状䞀読のうえは䞀囜の猶予もおかず、
    いや、斧を研ぐ間も埅たず
    ハムレットの銖をはねよ

    245

    ハムレットは船䞊でこの勅曞を、囜王からの䟝頌状ずいう䜓裁で曞き換えたこずに぀いお、以䞋のように説明したす。

    むギリスがデンマヌクの忠実な属囜であるならばずか
    䞡囜間の友奜が棕櫚の繁るに䌌たるならばずか
    平和の女神が垞に繁栄の花冠を頂き
    䞡囜の宥和の絆ずなるならばずか
    そういったもったいぶった「ならば」を䞊べ立お、
    この曞状䞀読のうえは
    本状持参の者をすみやかに死刑に凊し、
    懺悔のいずたも䞎えぬこずず曞きかえた

    246

    そしお、偶然財垃の䞭に入っおいた「デンマヌクの囜璜の写しを刻んだ父䞊の指茪」で封印をしたずいう。
     
    王クロヌディアスの勅曞は、デンマヌクが他囜ず亀流し、王囜を運営する瀎ずなるもの。階士道のおきおに基づき、明文化された契玄での領地譲枡ず、それが蚌明する名誉に疑問を呈し、䞍動産蚌曞を批刀しおいたハムレットが、王の正匏文曞を曞き換えるずいうこずは、ハムレット息子が、クロヌディアス象城的父の創り䞊げた䞖界芳を乗り越え、自分なりの䞖界芳ぞず塗り替えるこず、再創造するこずを瀺す行為ずもいえるのではないでしょうか。
     
    「棕櫚の繁る」「平和の女神」「繁栄の花冠」は豊饒や楜園、花が咲き乱れ果実が実る理想の庭のむメヌゞ。たた、この戯曲では、珟王クロヌディアスが「わが囜の関節がはずれ Our state to be disjoint and out of frame」23ずいい、これず呌応する圢で、ハムレットも別の堎面で「この䞖の関節がはずれおしたったThe time is out of joint.」68ずいいたすね。この関節jointは、桶などを぀なぎずめる箍を想起させる蚀葉ずもいえる。ハムレットが口にする「この䞖」が神話の円環䞋蚘参考のむメヌゞだずしたら、勅曞の封印に䜿われた指茪は、この円環が閉じるむメヌゞ、はずれおしたった関節が、䞀連の悲劇を経お再び぀なぎ合わされ、デンマヌクに平和が蚪れるこずを暗瀺しおいるようにも思えたす。

    ハムレットがこの勅曞の曞き換えを、「前口䞊を考え出す前に芝居の幕が䞊がったようなものだ」245ず衚珟しおいるのは、䜕が正矩なのか未だに迷い続けおいる、䟝然ずしお未熟な、王になる準備がただ十分にできおいない自分が、勅曞を曞き換えるずいう王ず同栌の行為を行い、クロヌディアスを倒すためにデンマヌクぞ戻らなければならないこずぞの䞍安ず芚悟を瀺したものではないでしょうか。
     
    ただ、ハムレットが新たに創造しようずしおいる䞖界で、王子はロヌれンクランツずギルデンスタヌンを容赊なく殺しおしたう。これもデンマヌクに平和をもたらすため、神話的な浄化の意味で必芁な死の䞀郚なのか。あるいはハムレットが仮に最埌のレアティヌズずの決闘で勝利し、次の王になったずしおも、父芪たちず同様、階士道粟神に基づいた名誉のような幻や損埗勘定のために戊争し、埩讐が埩讐を呌ぶ悲劇の歎史が繰り返されるだけだずいうシェむクスピアの皮肉なのか。この解釈は、優柔䞍断なハムレットのようにいただ私の䞭で揺らぎ続けおいるのですが  。

    今回はここたで。お読みいただき、ありがずうございたした。


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    文孊䜜品の新たな読み方を考える蚘事を曞いおいたす。サリンゞャヌ、シェむクスピア、村䞊春暹など。 yomikata.ken@gmail.com

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