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本番前に1分で不安を軽くする方法|サイクリック・サイのすすめ

    最近、メディアに出る機会がちょっと増えた。普段ならYouTubeで見るような人たちと、同じ場所で話すこともある。

    「緊張しなそう」って、よく言われるけど、普通に緊張する。相手が有名なら、すごい緊張する。

    昔は大事な発表の前に、よく瞑想をしていた。目を閉じて呼吸に意識を向ける。今でも寝る前とかにすることがあるけど、本番前だとネックがある。

    時間と場所だ。

    本番まであと数分。直前まで資料を確認している。周りには人がいる。メディアだとメイクなんかもあったりする。静かな場所もない。

    そこで目を閉じてじっと瞑想し始めたら、緊張しているのが丸わかりだ。
    「うわ、あいつ瞑想始めたんだけど草…大丈夫かな…」ってなる。瞑想は熟練しないと時間もかかる。

    もっと短くて、人前でもできる方法はないか。そう思っていたときに知ったのが、サイクリック・サイだった。

    英語ではcyclic sigh。physiological sighと呼ばれることもある。sighとは、ため息という意味だ。鼻から一度吸い、息を吐かずにもう一口だけ吸う。そのあと、口から長く吐く。

    瞑想はやっているのがバレちゃうけど、このサイクリック・サイなら、ほぼバレない。周りからは、少し深呼吸しているようにしか見えない。

    ある本番の前、自分も何回か繰り返してみた。緊張は消えはしないけど、不安感と心拍数は落ち着いてちょうどいい感じになった。

    もちろん、一度の体験だけでサイクリック・サイのおかげとは言えないけど、本番前に頼れる手段が一つ増えたのはデカい。道具はいらない。アプリもいらない。一円もかからない。

    サイクリック・サイは「毎日5分」で注目された

    サイクリック・サイが広く知られるきっかけになったのは、2023年に『Cell Reports Medicine』へ掲載された研究だった¹⁾。スタンフォード大学の研究チームが成人108人を4つのグループに分け、それぞれの方法を毎日5分、28日間続けてもらった。

    • サイクリック・サイ

    • ボックス呼吸

    • サイクリック・ハイパーベンチレーション(過換気呼吸)

    • マインドフルネス瞑想

    ポジティブ感情(前向きな気分)の改善が瞑想よりも有意に大きかったのは、サイクリック・サイだけだった。安静時の呼吸数が瞑想より有意に下がったのも、サイクリック・サイだけだった。

    4群とも、毎日の実践前よりその場の不安は下がった。

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    不安の下がり方は瞑想と差がなく、前向きな気分の改善は瞑想より大きかった。
    時間もかからない。1日5分でいいから、仕事の前後にも入れやすい。

    やることは、二回吸って長く吐くだけ

    手順は3つ。

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    1. 鼻からゆっくり息を吸う

    2. 息を吐かずに、鼻からもう一口だけ吸い足す

    3. 口からゆっくり長く吐く

    二回目は、もう一度大きく吸い直すわけではない。一回目の吸気の最後に、少しだけ空気を足す。吐く息は吸う息より長めにするが、苦しくなるまで吐き切る必要はない。

    一度吸う。もう一息吸う。長く吐く。

    二回吸って一回吐くのサイクル=サイクリック・サイ

    サイクリック・サイは、二段階の吸気と長い呼気を意識して繰り返すが、人の不安が軽くなる仕組みはまだすべてわかっていない。

    ただ、考えてみるとため息は昔の歴史書とかにも出てくるし、太古から人類はため息をついていたわけだ。リンディ効果を考えると、ため息という所作が連綿と現代まで続いてきていることこそが、ため息にご利益があることの証明なんだと個人的には思う。それを裏付ける感じの研究だと思った。

    出番まであと3分

    この研究は毎日5分のサイクリック・サイだった。でも、出番まであと3分なら時間が足りない。

    直前まで資料を確認し、頭の中で最初の一文を繰り返していると、残り時間はすぐなくなる。自分が欲しかったのは、毎日続ける5分ではなく、出番まで数分しかないときにも使える呼吸法だった。

    2026年4月、その状況に近い小規模な予備研究が報告された²⁾。対象は18歳から30歳の大学生47人だった。参加者は普段の生活で緊張や不安を感じたとき、スマホを開いた。そして、やることがランダムに指示された。

    その場で行ったのは、次のどれかだ。

    • 約70秒のサイクリック・サイ

    • 約69秒のボックス呼吸

    • 何もせず普段どおりに過ごす(これを引いたらハズレ感がすごい)

    二つの呼吸法では、何もしなかったときより、不安の下がり幅が大きかった。サイクリック・サイとボックス呼吸の間に差はなかった。

    対象は47人と少なく、43人が女性。平均年齢も約21歳で、仕事の本番前にそのまま当てはめられるとは限らない。呼吸法への期待が結果に影響した可能性(プラセボ効果)も残る。

    約1分の呼吸を行ったとき、何もしなかったときより、不安の改善効果が大きかった。

    研究が確かめたのはそこまでだ。「1分で不安がゼロになる」「プレゼンがうまくなる」までは確かめていない。

    研究では、約70秒の動画に合わせて呼吸していた。「二回吸って長く吐く」という形は同じでも、秒数と回数には型がある。

    研究で使われた約70秒

    研究の動画では、次の呼吸を繰り返していた。

    1. 鼻から4秒かけて吸う

    2. 息を吐かずに、鼻から1秒だけ吸い足す

    3. 口から8秒かけて吐く

    一回が13秒なので、5回で大体70秒になる。途中に息を止める時間はない。

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    1回目の吸気で8割くらい吸って、2回目の1秒で少しだけ空気を足す。
    8秒の呼気が苦しければ、無理に合わせる必要もない。

    この秒数は研究で使われた手順であり、全員にとって唯一の正解ではない。このあたりは個別にやりやすい秒数を探すのがいいと思う。

    🚩ここから先では、本番前の1分を自分がどう使っているか、ボックス呼吸とどちらを選ぶか、普段の5分とどう使い分けるかを、安全面まで含めてメンバーシップ「Dr.もさりラボ」で読めます。

     
     
    東大医学部卒の総合内科・呼吸器専門医。医学博士。経営者のパーソナルドクター。NewsPicks公式の健康番組にレギュラー出演。HALEO最高科学・医療顧問。外来では話しきれない健康の話を、論文だけでなく自分でも試して、失敗まで書いています。深掘りはDr.もさりラボで。

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