
EA列伝⑯(Night Hunter Pro)
FX自動売買(EA)の歴史において最も有名な名作の一つである「Night Hunter Pro(ナイトハンタープロ)」の誕生から現在(2026年現在)に至るまでの歴史、秘話、そして現在のリアルな状況を詳しく解説します。
0.天才の登場
少なくとも2018年7月から
EA界の歴史を変えるであろう1人の天才が活動を始めます。
名はValeriia Mishchenko(ヴァレリア・ミシチェンコ)。
ロシア人の女性です。
1.誕生秘話と歴史:業界の常識を覆した「硬派な夜スキャ」
(1)誕生:2021年6月の衝撃
「Night Hunter Pro」は、2021年6月14日にMQL5マーケットプレイスで公式にリリースされました。開発者は、現在MQL5で不動の世界的トップ開発者グループとなっているValeryTrading(Valeriia Mishchenko氏)です。
当時、FXの自動売買業界は「ナンピン・マーチンゲール(負けたらポジションを倍々にしていく手法)」の全盛期でした。一時的には綺麗な右肩上がりの利益を生むものの、定期的に口座をゼロにする(強制ロスカット)ナンピンEAに疲弊していた世界のトレーダーたちの前に、Night Hunter Proは「全く異なるアプローチ」で登場しました。
(2)開発の背景とロジックの美学
開発者のValeriia氏は、市場が最も穏やかになる「ニューヨーク市場閉鎖〜アジア市場開始(日本時間早朝)」の数時間に目をつけました。
スマートなエントリー/エグジット:高度なフィルタリングで「最も安全」と判断された瞬間だけ、12もの主要通貨ペアで超高精度な逆張り(スキャルピング)を仕掛けます。
絶対にナンピンをしない:1ポジションごとに、必ず厳格な損切り(Stop Loss)を設定しました。
プロップファームの救世主:この「大ドローダウンを起こさない(口座を破綻させない)安全性」が、当時世界中で爆発的なブームを巻き起こしていたプロップファーム(FTMOなど、厳しい資金管理ルールをクリアして他人の資金を運用するテスト)の挑戦者たちにぶち刺さり、「プロップを突破できる数少ないEA」として爆発的な人気を獲得しました。
(3)価格の吊り上げ(プレミアム戦略)
ValeryTradingの代名詞とも言えるのが「販売数が伸びるたびに価格を値上げする」という戦略です。
最初は数百ドルで買えたこのEAは、実績が積み重なるにつれて、2,000ドル、2,340ドル、そして2,800ドル(約40万円以上)へと跳ね上がっていきました。価格が高騰しても「勝てる本物のEA」として世界中がこぞって購入したのです。
2.現在の状況(2025年〜2026年):直面している厳しい現実
リリースから4年以上が経過した現在、Night Hunter Proの評価は「かつての金字塔から、過渡期・不透明な未来へ」と大きく変化しています。
(1)パフォーマンスの「長期的な停滞(フラット化)」
Myfxbookで完全公開されている開発者のリアル口座(2020年10月始動)を見ると、その歴史が数字に表れています。
2020年〜2022年:文句なしの爆益。資産曲線は綺麗な右肩上がりを描く(累計+200%以上を達成)。
2023年〜2024年:徐々にボラティリティ(乱高下)が激しくなり、利益が残りにくくなる。
2025年〜2026年:資産曲線が完全に横ばい(フラット)、または緩やかなドローダウンに突入。
4年以上のトータルでは約+215%の利益を残しているため「詐欺ではない本物」であることは証明されていますが、「ここ2〜3年に高額で購入したユーザーはほぼ利益が出ていない、あるいは含み損を抱えている」という厳しいフォワード結果になっています。
(2)相場環境の変化と「スプレッド負け」
勝てなくなった最大の理由は、世界的な金融政策の変化や地政学リスクによる「夜間ボラティリティの激化」と、「ブローカー(FX業者)のスプレッド拡大」です。
夜間スキャルピングは、1回の取引で狙う利益(利確幅)が数pips(約3〜7pips程度)と非常に小さいのが特徴です。そのため、FX業者に支払うコストである「スプレッド(買値と売値の差)」の広さが勝敗を完全に左右します。
① ロールオーバー(日本時間早朝)の魔の時間
毎日、ニューヨーク市場が閉まる時間(日本時間の午前6時頃、サマータイム時は午前5時頃)は、日付が変わる「ロールオーバー」と呼ばれます。
この時間帯は、世界中のインターバンク(大手銀行)が決済処理を行うため、市場の流動性(取引量)が極端に低下します。その結果、通常時は「0.3pips」の主要通貨ペアであっても、この時間帯だけは一時的に「5.5pips」や「10pips」以上にスプレッドが急拡大します。
② スプレッドフィルターによる「機会損失」
優秀なEAであるNight Hunter Proには「スプレッドが〇pips以上の時はエントリーしない」というスプレッドフィルターが備わっています。
しかし、近年の相場ではこの「スプレッドが広がっている時間」が以前よりも長くなっています。その結果、「絶好のエントリーチャンスなのに、スプレッドが広すぎてEAが注文を見送る」という機会損失が多発し、利益を積み上げられなくなっています。
③ フィルターをすり抜けた時の「コスト負け」
運悪くフィルターの基準値ギリギリでエントリーできたとしても、スプレッドが広い状態でポジションを持つため、スタート時点で大きなハンデ(含み損)を背負います。
5pipsの利益を狙うトレードで、スプレッドに3pips持っていかれたら、実質2pipsしか手残りがないどころか、少しの逆行ですぐに損切り(ストップロス)にかかり、スプレッドのコストだけで口座残高が削られていくことになります。
(3)開発アップデートの停滞
MQL5のレビュー欄や海外フォーラムで今最も指摘されているのが、「開発チームが他のEAの最適化を優先し、Night Hunter Proの大型アップデートをここ1年以上行っていない」という点です。
2026年2月にもマイナーアップデート(バグ修正や仕様変更)は行われていますが、現在の相場に合わせた「根本的なロジックの刷新」がなされていないため、ユーザーからは「時代遅れ(Outdated)のロジックになりつつある」と批判的なレビューが増えています。
現在、Night Hunter Pro(NHP)のアップデートが停滞している最大の理由は、開発チームのリソース(時間と人員)が他の「稼ぎ頭」のEAに完全に奪われているからです。
① 『Waka Waka』と『Golden Pickaxe』の世界的メガヒット
開発者のValeriia Mishchenko氏は、NHPのリリース後、2022年〜2023年にかけて『Waka Waka』(グリッド系EA)や『Golden Pickaxe』(ゴールド専用EA)といったモンスター級のヒット作を連発しました。
特にWaka Wakaは、Myfxbookで数年間「破綻なしの右肩上がり」を維持し、MQL5マーケットプレイスの全期間ランキングで1位に君臨するほど世界中から資金を集めました。結果として、開発チームにとってはNHPよりも、これら後発の主力製品のユーザーサポートやロジック最適化の方が圧倒的にビジネス上の優先度が高くなってしまったのです。
② 姉妹作『Evening Scalper Pro』への注力
同じ夜間スキャルピングジャンルにおいて、開発チームは後継機とも言える『Evening Scalper Pro(ESP)』をリリースしました。
NHPが「深夜〜早朝」の最もスプレッドが広がる魔の時間帯を狙うのに対し、ESPは「夕方〜夜(GMT 16:00〜)」の、比較的スプレッドが安定している時間帯を狙うロジックへとシフトしています。開発側も「現在の相場環境ではNHPの夜スキャよりも、ESPの夕方スキャの方が勝率が高い」と判断しており、夜スキャのアップデート開発リソースはESPへ偏重しています。
3.まとめ:今からNight Hunter Proを導入すべきか?
結論として、2026年の現環境において、約40万円(2,800ドル)を払って新規にNight Hunter Proを購入する価値は極めて低いというのが、世界のEAコミュニティの共通認識です。
もしどうしても ValeryTrading の夜間スキャルロジックを試したい場合、公式HPで提供されている「14日間の無料トライアル」を利用し、デモ口座で現在の相場に通用するかを必ず自身の目でテストしてください。購入するにしても、MQL5マーケットプレイスより開発者の公式サイト(ValeryTrading)経由の方が安く設定されていることが多いです。
「Night Hunter Pro」は、現在も現役で深夜(日本時間早朝)の狩りを続けています。

天才はその歩みを止めません。
彼女も彼女のEAも、現在進行形で既に伝説になっています。
次回も天才、Valeriia Mishchenko(ヴァレリア・ミシチェンコ)のEAを紹介します。