
ショートショート|葉の色が|シロクマ文芸部
「今年もずいぶんと鮮やかな景色になったものだ」
男は大通りのベンチに座り、目の前を行き交う色彩を眺めて目を細めた。
赤と黄色に染まった無数の葉が、街の景色を縫うように次々と流れていく。昔はごく一部でしか見かけなかったが、今や見渡す限り、至る所で鮮やかに色づいた葉が列をなしている。
「最近はとくに増えましたね。街角で葉の色が紅葉するスピードも、年々早くなっている気がします」
隣に座った若い男が、深々とため息をついた。
「時の流れというやつだろう。風情があっていいじゃないか」
「風情なんてのんきなことを言っている場合ですか。あんなに大量の紅葉が、鉄の塊とともに猛スピードでこちらへ向かってくるんですよ。私は毎日、道を歩くたびに命の危険を感じています」
「大げさだな」
「大げさなものですか。見てください。あそこでもまた一枚、完全に制御を失って暴走していますよ」
若者が青ざめた顔で指差した先で、けたたましいブレーキ音が響き、一台の乗用車が赤信号の交差点へふらふらと突っ込んでいった。
男はそれを見て、ゆっくりと首を振った。
車体の前後には、赤と黄色に色づいた「葉」のステッカーがしっかりと貼り付いている。
もはやこの国では季節など関係ない。一年中、街の至る所で「もみじマーク」をつけた高齢者たちの車が、終わりのない紅葉前線を形成して走り続けているのだ。
(終)
こちらの企画に参加させていただきました。
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30分で書いて100スキ超えのショートショート作成術をまとめました。
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