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Photo byithem_noramoyo

日食。

    その日、人類は思い出した。
    太陽が世界を照らしていたことを。

    月が太陽を食べる?
    ありえないだろ。

    「ありえない?」
    「すべての現象には必ず理由がある。」

    テキトーな年号と、それっぽい理屈を並べて
    チョークで黒板を塗っていく。

    ガリレオごっこ。

    どれだけ意味不明なことを言っても
    最後にあの一言を言えば、それっぽくなった。

    福山雅治が演じた人物。
    湯川学。通称「ガリレオ」
    そのモデルとなった人物がいる。

    ガリレオ・ガリレイ

    望遠鏡が発明されると
    彼はすぐに空を見上げた。

    「月にデコボコがある!」

    他にもたくさんの発見をした。

    『チ。』において重要なシーンがある。
    地動説の証明のため、
    満月のように光輝く金星を見たかった。
    天動説の場合には、
    満ちた金星を見ることはできないから。

    「見えろ!満ちてろ!」

    実際に
    その満ち欠けを観測したのも
    ガリレオらしい。

    「満ちてる。」

    太陽の黒点を見て
    太陽も自転していると発見したのも
    彼みたいだ。

    太陽をじっくり観察しようだなんて
    思ったことがない。

    自分はというと、
    『となりのトトロ』のメイちゃんのように
    くしゃみをして終わってしまうくらいだ。

    あの日もそうだった。

    ざわつく校庭。
    みんなが空を見上げた。

    昼間なのに、どんどん薄暗くなっていく。

    皆既日食。

    先生たちが
    素晴らしい教材だと言わんばかりに
    全校生徒を外に出した。

    高校時代の自分は冷めていた。
    空を見上げることに早々に飽きていた。

    どうせレポート提出があるんだろうな。
    面倒くさいな。

    それよりも、
    見上げているみんなの顔の方が
    印象に残っている。

    みんな、満面の笑みだった。

    なんで、そんな顔ができるんだ。

    興味がわかない。
    勉強に身が入らない。
    何をしたいかわからない。

    浪人した。

    たぶん、
    朝顔の観察も自由研究も
    今のほうが楽しめるだろうな。

    浪人時代も相変わらずやさぐれていた。
    部屋は散らかり放題。

    テストも人生もバツ印ばっかり。
    もはや、バツを見ても何も思わない。
    悔しいという気持ちさえ失っていた。

    でも、ふとした瞬間に
    モヤが一気に晴れることがあるらしい。

    そんなときに
    自分に声をかけてくれたやつがいる。

    「男は黙ってMTだろ!?」
    数年後、その一言で誘ってくるあいつだ。

    海の見える公園。
    その時をふたりで待つ。

    他愛もない話に花が咲く。

    久々に笑った。
    気持ちがいい。

    「そろそろ時間だぞ。」

    だんだん薄暗くなっていく。
    空を見上げた。

    金環日食。

    空には大きなマルがあった。

    ふたりで顔を見合わせる。
    満面の笑みだった。

     
     

    mugi

     
     
    忘れない。

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