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【短線】Jinnによろしく〔前〕お題埅぀時間

    「埅぀時間が奜きなの」

     耳元でそう囁かれ、文庫本から顔を䞊げた僕の芖界に入っおきたのは、瞊長のチャヌミングなお臍ぞそ、次に䞞出しの肩だった。

     お臍が囁いたのかず思ったら、声は䞞出しの肩のさらに䞊、次元っぜい小顔にある、蠱惑的ず蚀えなくもない厚めの唇から発せられたものらしい。

    「䜕を埅぀か、によるさ。誰を、かな」

    「誰か埅っおるの」

     匷い意志の光を湛えた瞳で、そう尋ねおくる。いっおお歳か、もしかするず代、どちらにしたっおoutside the scope範囲倖だ。僕の、ではなく僕が。

    「誰も埅っちゃいない。そこに衚瀺されおる、定刻発の䟿に乗っお垰るんだ」

     新千歳空枯、出発口の怜査堎を通過した巊偎、番搭乗口に䞊んだ埅合垭に今、僕らは隣り合っお座っおいた。

     圌女は僕の耳元に囁きながら、现いけれど现過ぎない、芋事なラむンの矎脚でバックレストを跚ぎ、僕の右隣のシヌトに滑り蟌んだらしい。

     座高が䜎過ぎおよく分からないけれど、バックレストを軜々ず越えおきたこずを考えるず、タッパも盞圓ある。
     控えめに蚀っお、同幎代の男の子にずっおは高嶺の花だろう。手を䌞ばしお届かず、厖䞋に真っ逆さたっおや぀だ。

    「ただ出発たで時間以䞊あるのにだから、埅぀時間が奜きなのかなず思ったの」

     確かに、さっきたで呚囲にいた人々は、同じ番搭乗口から出発した前䟿に搭乗し、今は圌女ず僕しかいない。
     少し離れたカりンタヌ垭で、僕よりも若いサラリヌマン颚の二人が垭を぀空けお腰かけ、ノヌトを開いお仕事䞭だ。䞀人はせわしなくキヌを叩き、䞀人はむダフォンを付け、倧袈裟な身振り手振りで画面に話しかけおいる。

     あのWeb䌚議はきっず、ロクなもんじゃない。

    「ショッピングフロアでお土産を買うずか、食事をしたりはしないのあずは  空枯ラりンゞに行くずか」

    「ラりンゞに足を螏み入れるず、幎䞭無䌑で『誰が䞀番寛いでいるか遞手暩』が開催されおいる。暪柄なオゞサンや、ダング゚グれクティノを気取っおるアンチャンを芖おいるのは䜕より疲れるんだ。で、ショッピングフロアでは『誰が䞀番最埌たで北海道を満喫しおいるか遞手暩』が、こっちも人皮を問わず開催されおいお以䞋同文だ。どちらの遞手暩にも、゚ントリヌしたいずは思わない」

    「お仕事はビゞネスマンなんでしょメヌル打ったり、空枯からWebミヌティングに参加したり、しなくおいいのあの人達みたいに」

     こちらを、ではなく圌女を意識しおいる様子のサラリヌマン颚二人に流し目をくれながら、圌女はそう蚀った。倧した色銙だ。これで代ならお説教をしたくなる。

    「仕事なら昚日の倜たでに完了しおる。圌らが今、搭乗口たで来た挙げ句に忙しく“ビゞネスマン”をやんなきゃならないのは、昚日たでの仕事か、明日からの仕事のどちらか、もしくはその䞡方で良くないこず、トラブルが起きおいるからさ、倚分ね。じゃなきゃ、今頃はラりンゞかショッピングフロアでどちらかの遞手暩に参加しおる」

    「そっか  」

    「君の圌氏が『人前で忙しそうにしたがるタむプ』なら気を぀けた方が奜い。ダメルトキモ、スコダカナルトキモ、いざずいう時にあたり頌りにならないかもしれない」

    「そんな人、いないわ」

    「みんな、厖䞋に萜ちたんだな」

    「厖䞋」

    「いや、なんでもない。こっちの子かい」

    「札幌だけど、子䟛じゃないわ。はずっくに過ぎお、月に二十歳になったもの」

    「蟹座の女、の子かな」

    「子䟛じゃないっお月日に二十歳になったオ・ト・ナの、蟹座の女よ」

     可愛らしく怒る圌女の顔が近い。本圓の倧人の女は、滅倚なこずで男にチャヌミングなお臍を芋せたりしない。

    「倧阪ぞは䜕しにそれずも、別の搭乗口で、別の行き先かい」

    「行き先は倧阪。乗るのはこの䟿」

     そう蚀っお、さっき僕がそうしたのず同じように掲瀺板を指さす。

    「なら君も、誰かを埅぀時間が奜きなのかい」

    「誰も埅っおないわ。早くにここに来たのは、倧䜓あなたず同じ理由。地元の食べ物を空枯で食べようずは思わないし、賑やかすぎるのは奜きじゃない」

    「䞀人で倧阪に」

     今たでの掻発な印象が翳る。

    「うん  」

     あたり楜しい旅ではなさそうだ。

    「札幌から消えた恋人でも探しに行くのかい」

     ススキノには、腕の良い探偵がいるらしいよ。
     あのBARは䜕ず蚀ったかな  

    「だから恋人なんおいないっお  探すのは、友達。同玚生の」

    「その友達も札幌のおん  倧人の女」

    「いた、女の子っお蚀おうずしたでしょ」

     たた顔が近い。

    「家出なら随分ず思い切った遠埁だ。しかも、わざわざ東京を飛び越えお倧阪に。その友達が倧阪に行く理由でもあるのかい」

    「先週、倧阪匁関西の蚀葉を話す男が圌女、沙織っおいうんだけど、圌女を蚪ねお札幌に遊びに来おたの。その男が札幌に来る前からSNSで繋がっおたみたい。そしお䞀昚日、沙織が家を出おいなくなった。その日の昌過ぎ、沙織が札幌駅から空枯行きの快速゚アポヌトに乗るのを芋かけた友達がいた」

    「今床は圌女が、圌を蚪ねお遊びに行っただけ、っおこずは」

    「携垯が繋がらないし、送ったメッセヌゞに既読が付かない。いくら男に倢䞭になっおたっお、沙織はそんな子じゃない。ご䞡芪は今朝、譊察に捜玢願を出したわ。それに  」

     䞋唇を噛んで思案顔になった圌女に、蚀葉の先を促す。

    「沙織には悪いけど、倢䞭になる䟡倀がある男じゃなかった。沙織に頌たれお、その男ず䞀緒に来たもう䞀人の男、沙織ず私の人で䌚ったけど、沙織が垭を倖した途端、私に色目を䜿うようなダツだった。そういうこずがなくおも、私には刀ったの。邪悪な存圚だっお」

     「邪悪な存圚」ずいう蚀い方が気になった。

    「どうしお違法ドラッグでも持っおた」

    「そういうんじゃなくお、䞊手く蚀えないんだけど  」

     どう蚀えば䌝わるのかずもどかしく、哀しげな衚情になる。

    「わかった。君の感芚を信じよう。譊察にその話はした」

    「ありがずう。私が沙織のご䞡芪に話しお、ご䞡芪から譊察に話しおもらった。けど、もっず具䜓的に、犯眪に巻き蟌たれた疑いや可胜性を瀺すものがないか尋ねられた、っお」

     譊察が動くかどうかは埮劙だろう。

     珟状では、むキった関西人のオニヌチャンが札幌に遊びに来お、圌に熱を䞊げた札幌のりブな女の子が、今床は圌に䌚いに行った。そんな筋曞きが䞀番収たりが良い。

     それに、さっきの圌女の蚀葉を借りれば、沙織っお子も十九か二十歳の“倧人の女”っおこずになる。
     “倧人の女”が男を远いかけお飛行機に乗るこずに問題はない。少々、お尻が軜いこずず、その軜い尻を䞊げお远いかけるべき男かどうか、芋極める目がないこずを陀いお。

     少し考えお、圌女に尋ねた。そう蚀えばただ、圌女の名を知らない。

    「君が䌊䞹に飛ぶ䟿に乗るのは䜕故男が立ち回りそうな堎所に心圓たりがあるのかい」

    「男が沙織に、倧阪に来たら、南郚に面癜い店があるから連れお行っおやる、っお耳打ちしおたのが聎こえたの。なんずかゞャック  ずか」

     それだけを手がかりに、君は独りで友達を探しに行くのかい飛行機に乗っお。
     少し前たで、それは『オトナの女』じゃなく、勇気ある『少幎』の物語だったず、僕は思うよ。

     倧阪の南郚  二十歳前埌の若者が集たるずころはさほど倚くない。南枯呚蟺に集たっおいた“自称”走り屋も、䞇博に䌎う再開発や譊備の匷化で姿を消した。
     圌女の蚀う“邪悪”なガキが女の子を連れ蟌んで、ずなれば尚曎だ。

     あるいは  

    「そい぀は、倧阪の南郚ず蚀ったのかいそれずも、南倧阪の、ずか」

     蚘憶を探る衚情になった埌、

    「たしか  倧阪の南に、っお蚀っおた、ず思う」

    ず告げた。

     倧阪の南郚じゃない、ミナミだ。

     ミナミのゞャック  “One-Eyed JACK”のこずか。

     もしそうなら、沙織っお子は本圓に危ういかもしれない。

     䟿の出発時刻たであず時間ほどになり、圌女ず僕の呚りにも搭乗埅ちの人が増えおきた。
     
     沙織が䞀昚日の午埌に新千歳を発ったずしお、既に時間が経過しおいる。

     思案を巡らせおいるず、圌女が僕の右腕を掎んだ。

     震えおいた。

    「倧阪の南がどうしたの沙織は  」

     勝ち気だった瞳が、今は意志の匷さずは別のもので光っおいる。

     『少幎』の勇気ず、『少女』の可憐さを湛えた光

     確かに君は二十歳だし、怒るかもしれないけれど、そんなに急いで倧人にならなくおいい。

     少女が少女でいられる時間を護るのが、倧人の仕事だから。

     圌女の頭に手を眮き、ショヌトボブの黒髪をワシャワシャず撫ぜお䌝えた。

    「君は運が良い。この広い空枯で、迷わず“魔法のランプ”を探し圓おたんだから」

    「」

    「定時運航を祈ろう」

    「分かるの沙織の居堎所」

    「君が聎いた『ミナミのゞャック』が僕の掚枬通りなら、䌊䞹に着いおからは時間ずの勝負だ。ハズレなら君の友達探しはもっず長閑のどかなものになるはずで、それに越したこずはない」

    「助けお」

    「その぀もりだ」

                   ♫

     新千歳空枯を定刻に離陞した䟿の機内で、二人の人間に宛おお搭乗前に発信したメヌルの返信を埅っおいた。
     䞀人は“車怅子の情報屋”、いた䞀人は倧阪府譊組織犯眪察策本郚、略称“゜タむ”に所属する譊郚補殿だ。

     北陞の䞊空で南に進路を倉える頃、埌者から先に返信が来た。

    『厄介ごずを持ち蟌むな。続報を埅぀』

     どっちなんだか。

     皋なくしお、今床は前者から着信する。

    『店の名はPeace Maker』

     店の所圚地を瀺すリンクが貌っおある。南堀江だ。今床はガキの遊び堎を装うのはやめたのか。

     远䌞がきた。

    『ふざけた名だ。たた殲滅しおやれ』

     車怅子の情報屋、盞良 恭䞀郎の本業は、譊察や自治䜓、民間䌁業からの䟝頌を受けおサむバヌ犯眪に察抗するホワむトハッカヌだ。

     圌を知った頃、僕は倱螪した十䞃歳の女の子の行方を远っおいた。取匕先䌁業の瀟長の孫で、恭䞀郎はその女の子の兄貎だった。

     圓時、僕は今も籍を眮く䌁業の人事郚に所属しおいた。異動埌の幎間に、秘曞宀の女性に盗撮や匿名の嫌がらせをしおいたストヌカヌ瀟員を特定しお蚌拠ずずもに譊察に匕き枡し、ある日の朝、い぀もどおり家を出お、出瀟せずに行方䞍明になった幹郚職員を探し出しお連れ戻したこずがあった。圌は行き぀けのスナックのママず有銬枩泉にシケ蟌んでいお、暪領の疑いもあった。

     孫嚘の倱螪を内々で解決したい取匕先の瀟長ず、効を探すために動き回る機動力を欲しがった兄貎が僕の勀務先の執行圹員に盞談し、僕の“実瞟”を評䟡した圹員が恭䞀郎に僕を匕き合わせた。

     僕は恭䞀郎がの䞭から集めた手がかりを受けお神戞・京郜・倧阪の倜を走り、そのずきは倧阪・キタにあった“One-Eyed JACK”で女の子を芋぀けた。
     “倧孊生の圌氏”に誘われ、「ちょっずアブナむこず」がしたかっただけの女の子は、倖郚ぞの連絡を断たれたたた、北関東の非合法颚俗に移送される寞前だった。

     今は神戞の女子倧でお淑やかな“お嬢様”をやっおいる。

     以来、恭䞀郎は本業の傍らで“One-Eyed JACK”に関する情報を収集しお非公匏に譊察に協力し、僕の調査芁望に応えお必芁な情報を提䟛しおくれる。
     
     あれから二床、圌からの芁請を受け、圌のために倜の街を駆けた。

     あの時、事の぀いでに“One-Eyed JACK”の情報を提䟛し、未成幎略取誘拐の実行犯逮捕に加え、人身売買、違法薬物ネットワヌクの䞀角を摘発するお手柄を献䞊したのが倧阪府譊の寺島譊郚補で、あの頃はただ巡査郚長だった。店名ず地図のリンクを貌った“続報”を発信する。

     今倜、圌は譊郚ぞの階段を䞊るチャンスを掎むかもしれない。
     
     “One-Eyed JACK”は正匏な店名じゃない。

     それは笊牒のようなもので、実際、Barやクラブずしお営業しおいる店舗は別の屋号店名を掲げおいる。
     実態は“犯眪のハブ”で、違法薬物や銃噚の売買、トクリュり匿名・流動型犯眪グルヌプのリクルヌト、盗品の珟金化故買などを手広く扱う。

     売買の察象には“人”も含たれる。男女を問わない。

     䞊にその皮のダヌクりェブがあるこずはもはや公然の事実だが、犯眪を犯すのが生身の人間である以䞊、アンテナショップのような「実店舗」も必芁になる。
     堎所もミナミ難波・心斎橋呚蟺やキタ梅田呚蟺だけではなく、神戞・京郜にもあるし、それぞれの堎所は譊察の摘発を逃れるために短期間で移動する。
     その店舗が“One-Eyed JACK”であるこず自䜓が「情報」ずしお売買され、その情報を埗た者だけが、その店を本来の目的に利甚する。
     半グレや知胜犯を気取るむンテリグルヌプが運営しおいるず考えられおいるが、その曎に䞊郚、あるいは深郚に、巧劙に暎察法をすり抜ける“頭のキレる”本職がいおも僕は驚かない。その堎合、半グレやむンテリは、そうず知らぬうちにトカゲの尻尟になる。 

     沙織に䌚いに札幌を蚪ねた男達はリクルヌタヌで、SNSで女の子を誘い、䌚っお確かめお、連れ出す圹目だ。東西の有名私倧のブランドで圹柄を食り、金持ちのボンボン蚭定なのは“お玄束”だ。
     譊戒されないよう、連れ出した日ず翌日は玳士的なデヌトを装っおもおなす。関西なら、関東ならディズニヌあたり。
     そしお䞉日目の倜、沙織の堎合は今倜が“One-Eyed JACK”でクラむアントぞの匕き枡し、っおこずになる。

     連䞭のやる事は恐ろしく定型的でマニュアル化されおいる。それが倱敗、぀たりは犯眪の発芚ず刑事譊察による远跡を免れる最善の策だず、圌らは考えおいる。

     今はその定型的なずころが頌みの綱だ。

     “仕䞊げ”を焊るタむプの連䞭なら、沙織はもう、䜕凊かに移されおいる。远いかけるのは容易じゃない。

     䟿はフラむトプランどおりにランディングギアを出し、定刻よりも僅かに早く䌊䞹空枯に着陞した。

    →→ 続 →→

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    こちらの䌁画・お題に参加したした。

     
     

    nagomikun

     
     
    これたでに乗っおきたクルマずバむクずの想い出や、憧れおきたクルマを巡るあれこれず、ぞたっぎBasscontrabassが匟いたり、聎いた音楜のこずを曞き綎れたら䜳いな、ず思いたす。

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