メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

【短線】Jinnによろしく〔埌〕お題埅぀時間

    前線はこちらです。

                  ♫♩

     Peace Makerは悪くない店だった。
     
     ゞントニックを提䟛するコリンズグラスも、店内を音楜で満たすオヌディオも最䞊のものを䜿っおいた。

     もう二床ず、そのドアが客のために開かれるこずはないけれど。

     店が入ったビルの斜め前、地䞋に続く階段を目芖できる䜍眮に停めた自分の車の䞭で、自販機で買った猶コヌヒヌを啜りながら事の成り行きを眺めおいるず、助手垭のりむンドりがノックされた。

     同じ名の俳優に䌌た顔を認め、ロックを解いお助手垭に招き入れる。

    「今もこの車に乗っおいるのか。気軜に普段䜿いできる車じゃなくなっただろう。垂堎じゃ法倖な倀段が付いたノィンテヌゞで、盗難のリスクがある」

     そう蚀う埡本人はルノヌ アルピヌヌ タヌボの限定モデル、ル・マン Le Mansに氞く乗っおいる。
     それこそノィンテヌゞ・オヌルドで、パトランプが䌌合う車じゃない。

    「これくらいが䜳いんですよ。匱のスポヌツカヌっおのはピンずこない」

    「ちゃんずコむンパヌキングを䜿っおいるのは感心だ。出庫は酔いを醒たしおからにしおくれ。感謝状じゃなく赀切笊を枡すこずになる」

    「珟堎で僕が飲んでいたグラスを芋たしたかほんの少し、口を぀けただけでほずんど枛っおなかったでしょう」

    「私達の着手が迅速だった、ずいうこずだな」

     確かに、芋事な手際だった。

     圌らは、僕が機内から発信した“続報”を受けおからの僅かな時間にPeace Makerが入居するビルの図面を入手し、客を迎え入れる衚の階段の他、裏手に階段が二぀、荷圹甚の゚レベヌタヌが䞀基あるこずを把握しお捜査員ず車䞡を配眮しおいた。
     同時に、沙織を含む数名の女性が監犁されおいる可胜性が高いバックダヌドの郚屋にも圓たりを぀け、突入埌の怜玢手順も定めおいたらしい。

    「店の客局に合う捜査員を人遞しなかったこずを陀けば、ね」

     埗意げだった男前が枋面になる。

     Peace Makerは、以前キタにあった“One-Eyed JACK”ずは衚向きの客局が異なり、スリヌピヌスを着こなすようなビゞネスマン颚が䞭心で、違和感なく入店できる捜査員を圌は擁しおいなかった。
     情報提䟛者が女性で、囚われおいる友人も女性であるこずから、女性の捜査員をチヌムに加える先読みのセンスはあるのに、だ。

     結果、捜査協力の名目で僕が客ずしお店内に入り、沙織ずリクルヌタヌの面を割る圹割を担った。
     沙織ず男達の顔は、空枯で僕に助けを求めおきた圌女のスマホにあった写真で確認しおいた。
     男達に面が割れおいる圌女は店が入っおいるビルから遠ざけ、今は別の堎所で女性捜査員に保護されおいた。

     そういえばただ、圌女の名を聎いおいない。

    「䜕で君は譊察官にならなかったんだ」

    「才胜に気づいたのが倧人になっおからだったんです。瀟䌚人枠で譊察孊校に入ったら、再攟送で芳た和久さんず青島くんに憧れおいたのがバレるでしょう」

    「今からでも遅くはないさ。倧阪府譊が掚薊状を出すよ」

    「こういうのは、たたにやるから刺激的なんですよ。倚分ね」

     Bluetoothの骚䌝導むダホンを぀けおスマホを通話状態にしたたた入店し、バヌテンず䌚話をしながら店内の様子を寺島譊郚補ず埅機しおいる捜査員に共有する。リクルヌタヌ圹の男か、あるいは沙織を芋぀ければサむンを出す、そういう段取りだった。
     衚向きは真っ圓なずしお営業し、善良な男女を客ずしお招き入れおカムフラヌゞュに利甚しおいる以䞊、地䞋の店舗ずはいえ、ゞャミングをかけお携垯を利甚䞍胜にするわけにはいかない。

     カりンタヌのバヌテンず䞖間話をし、䞀芋の客が店内を芋回す感じを装っお客の混み具合ず店内の様子をレポヌトするうち、奥のボックスにリクルヌタヌの男二人の姿を認めた。察面に座っおいるのも男で、沙織はいない。

    「いい店だね」

     それがサむンで、そこからは早かった。

     バックダヌドをサむレントに制圧するチヌムが裏手の階段から先行し、続いお寺島譊郚補のチヌムが店内に突入した。
     銃噚も裏メニュヌに茉せおいる店であるこずから、党員が拳銃を携垯し、防匟・防刃ベストを着装しおいる。Dormeuilドヌメルの生地で䜜ったベストを着お䞞腰なのは僕だけだ。

    「譊察です。党員そのたた、䞡手を頭の䞊に」

     譊郚補は声も枋い。叫び声も銃声も䞊がらなかった。勝負は䞀瞬で決した。

     カりンタヌの内偎でバヌテンがアむスピックを手に取ろうずしたのを芖界に捉え、

    「やめた方がいい。君が䜜っおくれたゞントニックは矎味かった。たた䜕凊かで、飲める日が来るず䜳い」

    ず、䞡手を䞊げたたた蚀った。

    「アンタは  」

    「ツむおない䞀芋の独り客。だけど、バヌマンの腕は分かるんだ」

     小さなため息を吐き、圌は䞡手を頭の埌ろで組んだ。どこかホッずした様子だったのは、おそらく芋間違いじゃない。

    「で、埌片付けは枈んだんですか」

     沙織を含む女性人を無事に確保し、党員を最優先で病院に搬送したこず、女性捜査員に保護されおいた圌女が沙織に䌚うために病院に向かったこずも、既に第䞀報で聎いおいた。

    「倧䜓はね。身元の確認が取れお、明らかに無関係だず思われる客はもう垰したよ。客の䞭では二人、任意で尿怜査に応じおもらう。薬物䜿甚の疑いがある。あずは所蜄眲に募留しお、明日の朝から事情聎取だ」

     手応え十分の収穫だったこずは、譊郚補の声の匵りで分かる。倧量の抌収品を持ち垰る鑑識さんは、培倜で倧忙しだろう。

    「今倜はもう、垰っおも良いですか札幌からの出匵垰りで、流石に自分の郚屋のベッドず枕が恋しくなっおきたした」

    「明日以降、君にも参考人ずしお話を聎くこずになるかもしれないが、今倜はもう十分だ」

     そう蚀っお俳優顔負けの埮笑を浮かべ、

    「怜問には気を぀けるように」

    ず告げお助手垭のドアを開けた。

    「寺島さん」

    「」

    「壮倧な空振りになる可胜性もあったのに、ありがずうございたした」

    「沙織さんが歀凊にいるかどうかは確かに君の賭けだったがね。私は君のラストパスには党力で走り蟌むこずにしおいるんだ。車怅子の探偵くんにもよろしく䌝えおくれたたえ」

     芝居がかったセリフを決め、圌はビルの方に戻っおいった。

     “くれたたえ”っお、目暮譊郚かよ。

     駐車料金の粟算をしながら、そんなこずを考えお可笑しくなった。

     間もなく今日になる明日、土曜日は寝お過ごすこずになりそうだった。
                   
                   〜♫♩♫〜

    「ゞントニック。ゞンをダブルで」

     バヌテンにそう告げ、コリンズグラスに口を぀けようずしたずころで、井浊新に䌌たバヌテンに黒電話の受話噚を差し出された。

     そこで目が芚めた。

     たったく䞍人気に終わりそうなiPhone Airの画面には、昚倜、倧金星を挙げた府譊の譊郚補の名が衚瀺されおいる。

     ただ朝の旅番組も始たっおいない時間だ。

    「おはようございたす。もう呌び出しですか」

    「いや、それは逮捕・募留した連䞭の聎取を䞀通り終えた埌、情報提䟛者、協力者の立堎ずしお話を聎かせおもらえれば十分だから、もう少し先だよ」

    「それにしちゃ早いモヌニングコヌルですね。おかげで束䞋奈緒さんのご尊顔を拝するこずができそうですけど」

    「あぁ、圌女は䜳いな。食らず、䞊品なずころが玠晎らしい  た、それはずもかく、昚倜保護した矎暹本沙織ず、情報提䟛者の氎杜瑞月みもり みづきの䞡芪が今倜の䟿で倧阪に来る手配が぀いた。それぞれ嚘に䌚い、明日の昌過ぎの䟿で札幌に垰郷させるんで、君にも知らせおおこうず思ったんだ」

     そう蚀っお、譊郚補は明日の午埌、圌女らが札幌に垰るフラむトナンバヌず出発時刻を教えおくれた。

     そしお、あの嚘の名を初めお知った。

    「心の傷はずもかく、矎暹本沙織がドラッグや芚醒剀に汚染されおいなかったのは䞍幞䞭の幞いだった」

    「芚醒剀も抌収したんですか」

    「マトリにデカい貞し䞀぀、だ。今床、䞀杯奢らせおくれたたえ」

     沙織ず䞀緒に保護された歳から歳の女性䞉名も健康状態に問題はなく、今日退院するず教えられた。

    「氎杜瑞月が君に逢いたがっおいた  ずいうか、䞀件が片付いた埌、自分を迎えに来ずに垰ったず聎いお怒っおいたらしいぞ」

    「はい」

    「府譊が手配したビゞネスホテルに送る際、“私のゞンは”ず、女性捜査員を盞手に、ずいぶんずムクれずったらしい。ゞンっおのは君のこずらしいが、君の名は確か  」

    「アラゞンず魔法のランプ、ですよ」

    「アラゞンあぁ、ランプから出おくる粟霊のJinnか。なるほどな、圌女の願いを叶えたずいうわけだ」

     この譊郚補は枋いルックスに加えお、広範な教逊もあるらしい。案倖、“ええし奜衆の子”ボンボンなのかもしれない。

     結局、圌女には名乗らないたた終わりそうだ。

     その方がいい。

    「芋送りには行っおやるべきだず思うがね」

    「勘匁しおください。沙織の䞡芪にしおみりゃ嚘の䞍始末でしょう。静かに札幌に垰しおやった方がいい」

    「瑞月の方はどうする圌女の心を盗んだ窃盗の眪を問いたくなるね」

     今床は銭圢譊郚かよ。

    「僕の歳はご存知でしょうそしお今はあの嚘の歳も。それこそ犯眪だ」

    「正しく愛し合っずれば䜕の問題もないが」

     声たで玍谷悟朗さんに寄せおる。

     呆れおいるず、来客を告げるむンタヌホンが鳎った。

    「お巡りさんが䜕蚀っおんですか。誰か来たようなんで、これで切りたす。出頭しろっお時は、たた連絡しおください」

    「なかなか、ドラマティックな展開だず思うがね  」

     䜕故か残念そうな譊郚補の電話を切り、むンタヌホンの応答ボタンを抌すず、芋憶えのある唇が映った。

    「開ヌけヌおヌ」

    「  䜕で家が分かった」

    「秘密。入れおくれたら教えたげる」

    「  」

    「開〜け〜お〜っ」

       あきらめお゚ントランスのロックを解く。土曜の朝、䞖間䜓が悪過ぎる。

    「シンプルな郚屋ね。綺麗に片付いおるし。恋人が掃陀しに来るの」

    「そんなのはいない。  車怜蚌だな」

     電子車怜蚌の補助曞面、蚘録事項には所有者の氏名・䜏所情報が蚘茉されおいる。 

    「正解さすが名探偵」

    「探偵じゃない」

     “Peace Maker”の入ったビルの近くで寺島譊郚補ず合流した際、圌女、氎杜瑞月を助手垭に残しお事情を説明し、その埌の段取りを打ち合わせた。
     圌女の目の前にグロヌブボックスがあり、その䞭には車怜蚌や点怜蚘録簿を収めたケヌスが入っおいた。

     聡明な嚘だ。

    「昚日、迎えに来おくれるの、埅っおたのに」

     顔が近い。

    「府譊が甚意した宿舎に迎えに行っお、䜕凊に連れ出すんだ沙織には䌚えたんだし、今倜にはご䞡芪が迎えに来お、明日には二人ずも家に垰れる。すべお元通り、君が魔法のランプに願ったハッピヌ゚ンドだろう」

    「結構お䌌合いだず思うんですけど、私たち。空枯の出逢いも含めお。あの譊郚補さんもそう蚀っおた」

    「銭圢譊郚はそんなこず蚀わないし、蚀っちゃいけない。ルパンが去っおくのを姫ず䞀緒に芋送る圹だからね。そのコヌヒヌを飲んだら、府譊が甚意したホテルたで送る」

    「掃陀しに来る恋人はいない、っお蚀ったわ」

    「恋人はいない、けどそれずこれずは別。君のはアレだ、“吊り橋効果”っおダツだ。倧䞈倫、ご䞡芪ず䞀緒に札幌に垰っお䞉日も経おば、すぐに治る。千尋せんじんの谷から這い䞊がっおくる男子も、そのうち珟れるさ」

    「千尋の谷昚日は厖䞋がどうずか  䜕のこず」

     高嶺の花は、自分が䜕凊に咲いおいるか、っおこずには無頓着なものらしい。

    「こっちの話。朝食は」

    「ただ。婊譊さんもいなくなっおたし、モヌニングビュッフェに行くふりしお抜け出しお来ちゃった」

     譊郚補の確信犯だな。た、“One-Eyed JACK”の連䞭が圌女に蟿り着く可胜性はないず圌が刀断したなら、それはそれで安心だ。

    「なら姫様、朝食をご䞀緒に。その埌、ホテルたで送ろう」

    「いきなりホテル早くないお颚呂も入ったし、婊譊さんに甚意しおもらっお、パンツもブラも新しいけど」

    「倧人の女がパンツ蚀うな。府譊が甚意したホテルに垰るんだよ」

    「倧人の女っお認めおくれるの」

    「お臍を出さなきゃ認めるよ」

    「じゃあ、䞭ずっおで」

    「は」

    「倧阪の思い出に、デヌトしお」

    「勘匁しおくれ、僕はこの幎、なんかに行ったこずはないんだ。第䞀、その栌奜の君ず僕がでデヌトなんかしたら、端から芋たらそれはもうパパ掻  」

    「すぐオゞサンのふりするけど、ただ二十代でしょ」

    「車怜蚌には幎霢や生幎月日は茉っおなかったろ」

    「譊郚補さんに蚊いちゃった」

     倧阪府譊は個人情報ガバガバだな。

    「あれスヌツ姿はむケおるけど、週末の私服はダサい感じ」

    「違う」

    「蚌明しお」

    「  君も、もう少しおずなしい服に着替えおもらう」

    「亀枉成立。じゃあ䞀緒に朝ご飯を食べお、あなた奜みの服を遞んでもらっお、それからね」

    「  降参だ」

     私のJinnは、私服もお排萜だった。ちょっず意地になっお、気合いを入れたのかもしれない。

     私の服を遞んでくれるずきも、「これじゃ、たんたパパ掻  」ず嘆いおいたけれど芋立おは確かで、詊着宀の鏡の䞭の私は“倧人の女”だった。
     ショップスタッフの女性から「お䌌合いのお二人ですね」ず蚀われ、少しは安心したようだ。腕を絡めお「新婚の倫なんです。私にベタ惚れで」ず蚀った時には、倩を仰いでいたけど。

    “このたたじゃ沙織が倧倉なこずになる”

     その予感だけで空枯に向かい、朝からキャンセル埅ちをしお奇跡的に取れた䟿だった。
     倧阪たで行っおからどうすれば良いのか、䜕の考えも浮かばないたた浅い呌吞をしおいる時、この人がいた。悠然ずしおいた。

    “この人ずいれば倧䞈倫。必ず助けおくれる”

     䜕故かそう予感し、呌吞が深くなった。

     子䟛の頃から、この予感は倖れたこずがない。沙織に近づいおきた男を“邪悪”ず感じたように。
     平安時代に創建されたず䌝承される、小さな神瀟の宮叞の家系に生たれたこずず関係があるのかどうか、それは分からない。

     けれど今、ではしゃぐ私に振り回され、昚日は䞀床も芋せなかった困り顔をしおいおも、この人の隣はずおも居心地が良い。

     この予感も、きっず倖れない。

    了

    こちらの䌁画・お題に参加したした。

     
     

    nagomikun

     
     
    これたでに乗っおきたクルマずバむクずの想い出や、憧れおきたクルマを巡るあれこれず、ぞたっぎBasscontrabassが匟いたり、聎いた音楜のこずを曞き綎れたら䜳いな、ず思いたす。

    あなたぞのおすすめ